Helsinki Lambda Clubは“ニューオルタナティブ”!! Analogfish下岡プロデュースの初フル・アルバム完成
Helsinki Lambda Clubがついにフル・アルバムをリリースする。バンドが敬愛するAnalogfishの下岡晃(Vo, G)をプロデューサーとして迎えて制作された『ME to ME』。学業優先のためバンドを離脱していた佐久間公平(G, Cho)に代わって、サポート・ギタリストとしてライヴにも参加していたGroup2のクマガイタイキ(G)やKidori Kidoriのマッシュ(Vo, G)が引き続き録音に、またThe Wisely Brothersの真舘晴子(G, Vo)がコーラスで参加している。
アルバム完成に至り、下岡から送られたコメントのなかには「僕らの新しい選択肢(ニューオルタナティブ)」の文字があった。その言葉を背負った彼らはいま、これまでになく欲張りになっているようである。今回のインタヴューは一時バンドを離脱していた佐久間を除く3人のみではあるが、現在の心境を彼らに訊いた。
Helsinki Lambda Club / ME to ME
【Track List】
01. This is a pen.
02. Skin
03. NEON SISTER
04. メサイアのビーチ
05. Justin Believer
06. Morning Wood
07. lipstick
08. 彷徨いSummer Ends
09. 声
10. 目と目
11. マニーハニー
【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
単曲 205円(税込) / アルバム 1,543円(税込)
INTERVIEW : Helsinki Lambda Club
未来が見えない不安、葛藤、焦り、そしてメンバーへの苛立ち… そんな想いをすべて音楽にぶつけ、最高だと言い切る作品を作る。なんてバンドっておもしろいんだろう。青春真っ只中のHelsinki Lambda Clubは、まじで最高のバンドだと思う。そして同世代のロック・バンドの中では、群を抜いて音楽がおもしろい!
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎
編集補助 : 宮尾茉実
写真 : 坂脇卓也
再加入に関しては、佐久間自身がバンドに戻ってきたいと思っているのか? っていうのが大事な部分だった
──学業に専念するため一時脱退していた佐久間公平くん(Gt&Cho)の卒業はどうなりました?
橋本薫(Vo&Gt、以下橋本) : 卒業はもう決まって、11月のツアーから一応戻ってくる感じです。
──うぉー良かった。でも一応? なんか腑に落ちない感じですね。
稲葉航大(Ba&Cho、以下稲葉) : インタビュー出だしから佐久間くんに文章取られるのなんか嫌ですね(笑)。
橋本 : 佐久間には厳しいな(笑)
──佐久間くんが一瞬抜けたことでメンバーいろいろ考えたと思うんですけど、なにか変わったことや学べたことはありますか?
橋本 : 彼がいないあいだに都内と関西でそれぞれ違うサポートを入れて弾いてもらいました。あとKidori Kidoriのマッシュさんにも弾いてもらったりして、ギタリストって同じ曲を弾いたとしてもこんなに違って人間性っていうものが出やすいんだなっておもしろかったし、とても勉強になりました。
──その人間性の違いっていうのは佐久間くんのギターだとどういう感じ?
稲葉 : 佐久間くんっていい意味でも悪い意味でも期待を裏切るような感じがあって、それは曲作りにおいてのフレーズとか解釈の違いでわかることですね。ライヴとかも情熱的に身体で弾く感じです。
橋本 : 普通ここはこういう雰囲気で弾くだろう。っていうところにトリッキーなフレーズを入れるところが佐久間にはちょいちょいあったりするんです。それがやりづらくもあるけど、ハマる時はハマる。全く趣味が似通っていたらこのままストレートなガレージとかの音楽になっていたかもしれません。だから、そういう部分では個性を与えてくれていると思います。
──戻ってきてもらうって決めた理由はなに?
橋本 : これは本当に難しい質問なんですよ。今まで僕あまりインタヴューとかで言わなかったんですけど、やっぱりあいつには腹が立ってた(笑)。
──なるほど。
橋本 : バンドのメンバーが抜けるっていうのはお客さんからしても大きなことだと思うし、それによっていい感じに仕上がってきてたバンドの調子がガッと落ちちゃう可能性も充分あったわけだし。このタイミングで、しかも自分の学業のことでバンドを抜けるってなったときにはめちゃめちゃムカつきましたね。でもサポートに入ってもらったら思っていた以上に楽しいし、実際バンドとしてもすごい状態が良くて、結果的に前の流れを引き継いで大きいライヴもできるようになりました。再加入に関しては、佐久間自身がバンドに戻ってきたいと思っているのか? っていうのが大事な部分だったんです。そしたら「卒業してこのバンドでやりたいです」って言ってくれたんで、そこは信用するしかないなと。
稲葉 : 別に俺らがバンドとして佐久間くんが戻ってくるのが嫌なわけじゃないんです。ただ1回僕らも新しい人とやって様々な経験をしたので、気合いを入れて戻ってきて欲しいなとは思っています。
──なるほど。3人は売れたいって思ってるの?
橋本 : うーん。もちろん売れたい気持ちはありますけど、売れたいってことより、自分がちゃんとやるべき事とかやりたいことを満足いく関係性の中でやることが前提ですかね。そういう部分で内側をもっと充実させたいって気持ちが強かったんで、尚更脱退から再加入って部分に感しては、シビアな目で見ているのかもしれないです。
ただのBGMとしての音楽でも聴けるし、音楽が大好きな人が聴いてもグッとくる要素もあるっていうのを欲張りだから求めた
──彼もいろんな思いを経験しただろうし、楽しみですね。制作期間はどんな感じで作ったんですか?
橋本 : 古い曲だったら1年以上前からある曲とかもあります。でも、レコーディングの日程を抑えて、ライヴでもサポートしてくれているGroup2というバンドでギターを弾いているタイキ(クマガイ)とスタジオに入って仕上げた曲も2、3曲あったりするので、ここ1年くらいで集中して作った感じです。
──RECはいつどこで?
橋本 : 6月の末から8月にかけての大体1ヶ月半くらいです。最初のオケ録りとかはいろいろ機材とか常備してあるサウンドクルーというスタジオで録らせてもらって、そのあとのダビングやミックスはMajixっていう風知空知(下北沢にある飲食店でもあり、ライヴイベントも行っている)の上にあるスタジオで録りました。
──どんなアルバムにしようと思ってたの?
橋本 : 最初に出したミニ・アルバム『olutta』は割と個人的な内容を歌っていて、メロディとかはキャッチーなんですけど歌っている側としては歌詞が重たくて、好きでやっていてもそればっかりだと疲れるなって思ったんです。で、前作のマキシシングル『友達にもどろう』に入ってる「TVHBD」で全然意味のないくだらない歌詞の曲を作ってみて、それが良かった。だから両極端を経てフル・アルバムで遂にバランスが取れた感じです。重すぎず軽すぎずっていうバランスは、アルバムを作っている時に意識していたかもしれないです。
──なるほど。重すぎず軽すぎず。聴きやすいアルバムにしようって思ったってこと?
橋本 : そうですね。全11曲で33分ちょっとしかないんですけど、ただのBGMとしての音楽でも聴けるし、音楽が大好きな人が聴いてもグッとくる要素もあるっていうのを欲張りだから求めたんだと思います。
──アベさんはどんなアルバムにしたいと思ってましたか?
アベヨウスケ(Dr&Cho) : 自分の経験上、終盤とかになってくると好きなバンドとかでもフル・アルバムは飽きてしまうこともあって。だから気づいたら終わっちゃうくらいのサラッと聴ける、でもフル・アルバムっていうボリューム感を曲の長さとかではなく、気持ち的に感じてもらえるようなバランスがうまく取れたものになればいいなと思っていました。
──稲葉くんは?
稲葉 : 前作の『olutta』は曲調とかが似ているというか、ストレートに作った曲が多かったんです。でも今回は、僕らがいろんなジャンルが好きなのもあって、その好きな要素を各々で活かせるよう挑戦しました。1曲1曲で見るとジャンルとかもあっちこっちいっちゃっているんですけど、アルバムを通してヘルシンキってこんなバンドなんだなって感じが出ればいいなって。
橋本 : それはみんな思っていたと思います。このバンドはYouTubeで1曲見てこういうバンドだって伝わるバンドじゃないなってずっと思っていて。その1曲だけで判断されて気に入ってもらえなかったりしたらすごい歯がゆいなって。だからフルアルバムっていう多面的に見せられる機会でちゃんと全体を通して「これがHelsinki Lambda Clubなんだ」っていうのが伝わればいいなっていうのはずっと思っていました。
──ファースト・フル・アルバムの気負いみたいなものはなかったんですか?
橋本 : 気負い…。ありましたね。作る前もあったし、作った今もすごい気負いはあるんですけど、作っている最中は売れる売れないとかはあえて突き詰めずに、遊びながら作っていましたね。クリエイティブの部分では雑念というのがあまり入りこまずにやれたから、表現者としてはいい姿でまだいれてるなっていうのは感じています。
──ギタリストが佐久間くんじゃなかったのは、どの曲ですか?
橋本 : アルバムの曲作りが終わってない段階で佐久間が抜けてしまったので、さっきも話にあがったサポートをやってくれているタイキにも曲作りに参加してもらいました。1曲目の「This is a pen.」はタイキのセンスもあってか、完璧に新しい音になってて、あとは「Justin Believer」も佐久間がいる時に作ったんですけど、タイキに弾いてもらって、「Morning Wood」も完全に彼の功績ですね。「lipstick」、「マニーハニー」もかな。なので半分くらいです。
──サポート・ギタリストとやった曲とそうでない曲って、自分たちにとってはどんな変化だったと思いますか?
アベ : 佐久間の時は薫がデモの段階である程度決めたり、佐久間が持ってきたものに対して俺らが具体的に指示を出す感じでした。でも今回はせっかく違うギタリストが来てくれているわけだし、本人にサポートだからって思わないで自分をガンガンに出して欲しくて、曲作りも結構責任を負ってもらいました。「なんかとりあえず弾いてよ」みたいに丸投げする感じで。
橋本 : 無茶振りしたよね。いままで僕らはセッションとかをやってこなかったんですけど、わずかなサンプルの中から広げて作ってみるようなことがスムーズにできたので、それは経験としてとてもでかかったですね。
下岡さんが命名してくれた「ニューオルタナティブ」を掲げ、僕ららしく音楽を続けていきたい
──なるほど。今回プロデュースに入っているAnalogfishの下岡晃さん(Vo&Gt)は、誰からのオファーでしたか?
橋本 : もちろん僕らからです。
──彼にやってほしいって思った理由は?
橋本 : 僕らは、もともとAnalogfishの音楽と歌詞が大好きで、尊敬してる部分がたくさんあったし、元々聴いてきた音楽が近いのも知っていたので、今回初めてプロデューサーに入ってもらうなら、好きなバンドの人にお願いしたいと思っていたので。
──なぜプロデューサーを入れようと思ったの?
橋本 : 今までの作品は完全にセルフ・プロデュースでやってきて、自分の中にあるもので作るっていうのは当たり前だったんですけど、現段階でのアイディアをレコーディングで具現化させるには共通言語も少ないし、サウンドメイキングに関しては僕らはまだまだ素人なこともあって今回お願いしました。
──下岡さんとは、どういうアルバムにしようって話をしましたか?
橋本 : 「こうしてほしいとかっていうのは言わない」って言われて(笑)。でも僕たちの思い描いているものをなるべく忠実に再現したいっていうのが下岡さんのスタンスでした。相談にのってもらって「こういう案もあるよ」って提示してくれて、選択肢が増えたのでとてもやりやすかったです。
──なるほど。アベさんは下岡さんが入って1番変わったところはどこだと思いますか?
アベ : 個人的には曲作りの際、どこをゴールにするのかっていうのが自分たちだけでは決めづらかったです。でも下岡さんがレコーディングで録ってみて「今の最高に良かったよ」とか言ってくれると、自分たちが大好きで尊敬できる人がプロデューサーとして来てくれて、オッケーって言ってくれたのならいいものが出来てる!って思いながらレコーディングを最後まで終えられたっていうのが良かったですね。
──下岡さんはAnalogfishをやってるからちゃんと音楽、歌詞、メロディを聴かせたいって思ったんだろうなっていうのは、この音源を聴きながら思いました。すごいそこがわかったし、改めて橋本くんの面白い歌詞に耳がいったのは、下岡さんの力なのかなって。
橋本 : そうですね。エンジニアさんと下岡さんが僕らのいないところでもがっつり歌の聴こえ方とかは考えてくれていました。
──「Skin」の歌詞は、今作の中でも、とくにキャッチーだなって。前の「TVHBD」の延長でもあり、ヘルシンキの真骨頂な気もした。でも友達は死んじゃうし(「Morning Wood」の歌詞より)みたいな、橋本くんのダークな部分もアルバムを通して聴くと見えてきておもしろかった。
橋本 : ありがとうございます。メンバー然り、客演として参加してくれたThe Wisely Brothersのハルコちゃんや、Kidori Kidoriのマッシュさん、タイキをはじめ、エンジニアさんや下岡さんたちみんなと一緒に作って、いいチームでいいものが出来たなって思います。
──プロデューサーっていう客観視点が入ったことが大きかったんですね。アベさんは、どんなアルバムが出来たと思いますか?
アベ : 今まで作ってきた作品の中で1番納得がいっています。今までも後悔があったとかではないんですけど、どうしてもレコーディングしていると自分たちの曲を聴きすぎてしまい、出来上がった作品をがっつり聴くっていうのがなかったんです。でも今回のアルバムに関しては出来上がってからもずっとひとりでも聴いていますね(笑)。
──総合してこのアルバムは自分たちにとってどんなアルバムになったと思う?
橋本 : そうですね。全11曲の塊として、ようやくちゃんと自分たちらしさが余すことなく提示できている作品になったのかなって思います。さっきも言ったように一面だけ見られて判断されたら悔しい部分はありましたから。あと、僕らはもっと音楽好きの人に聴かれても良いって思っているし、かといってコアな方向に寄りすぎるかといえばそうじゃない。誰が聴いても良いと思ってもらえる可能性が詰まっていると思うんで、とにかく聴いて欲しいですね。
──なるほど。最後にヘルシンキ「らしさ」ってどこだと思いますか?
橋本 : 僕らはどこのシーンにも属してないけど、誰にでも手を差し伸べられる雰囲気っていうのはあると思います。下岡さんが命名してくれた「ニューオルタナティブ」を掲げ、僕ららしく音楽を続けていきたいと思っています。
LIVE INFORMATION
インストアイベント
2016年10月31日(月)19:30 @タワーレコード仙台パルコ店(橋本弾き語り)
2016年11月5日(土)18:00 @タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
2016年11月9日(水)19:00 @タワーレコード福岡パルコ店
2016年11月12日(土)20:00 @タワーレコード難波店5Fイベントスペース
2016年11月16日(水)18:30 @タワーレコード名古屋パルコ店 西館1Fイベントスペース(橋本弾き語り)
Helsinki Lambda Club『ME to ME』Release Tour "From ME to YOU"
2016年11月1日(火)@宮城enn 3rd
2016年11月10日(木)@福岡UTERO
2016年11月11日(金)@HIROSHIMA 4.14
2016年11月15日(火)@池下CLUB UPSET
2016年11月23日(水祝)@長野ALECX
2016年11月29日(火)@稲毛K’s Dream
2017年1月22日(日)@心斎橋Live House Pangea
2017年1月27日(金)@渋谷WWW
OTOTOYで配信中の過去作
>>『友達にもどろう』発売インタヴュー(2016年6月10日)
>>『olutta』発売インタヴュー(2015年3月18日)
>>『初ワンマン・ライヴ@稲毛K's Dream』期間限定配信インタヴュー(2014年12月10日)
PROFILE
Helsinki Lambda Club
2013年夏、西千葉駅前整骨院でバンド結成。Dinosaur Jr.とThe Strokesが恋人同士になったような、そこから紆余曲折を経てThe LibertinesとHappy Mondaysが飲み友になってしまったかのような、まるで、ビバリーヒルズ青春白書的な、なんでもありなニューオルタナティブ・サウンドを特徴とする。
シャンプーをしながら無意識で口ずさむぐらい、曲がポップ。そして、正統派ソングライターの橋本の歌詞はぐっとくるばかりか、歌詞内のさりげない小ネタにも知的センスを感じてしまう。
2014年上旬から数々のオーディションに入賞し、UK.PROJECT主催のオーディションにて、 応募総数約1000組の中から見事最優秀アーティストに選出され、同年12月10日にUK.PROJECTから2曲入り8cmシングルをリリース。2015年3月18日にファースト・ミニ・アルバム『olutta』をリリースし、FX2015、VIVA LA ROCK2015、MUSIC CITY TENJIN2015への出演を果たす。同年12月18日にはシングル『TVHBD/メリールウ』をライヴ会場と通販のみ限定500枚でリリースしたが、3ヶ月ですべて完売。2016年6月8日にファースト・マキシ・シングル『友達にもどろう』をリリース。同年10月26日にファースト・アルバム『ME to ME』をリリースする。
2016年はそこそこ注目され、業界の関係者からはヘルシンキ盛り上がってきてるねー。と言われる頻度が増えてきたこともあり、2017年はセルアウトします。厭らしく行きます。生きます。イキます。
>>Helsinki Lambda Club official web