ミュージシャンとしての進化を遂げた「のん」へ渾身のインタヴュー! 大量の撮り下ろし写真と共にどうぞ!!!
女優、創作あーちすととして様々な分野で活躍を見せる「のん」が、新ミニ・アルバム『ベビーフェイス』をリリース! 前作『スーパーヒーローズ』は矢野顕子、真島昌利をはじめとした豪華制作陣も参加した作品となったが、今作でものんのスーパーヒーローが作品に参加。かねてより憧れを抱いていた元 GO!GO!7188のノマアキコ、ユウ(チリヌルヲワカ)とのタッグを組んだ「やまないガール」「涙の味、苦い味」の2曲のほか、のん作詞作曲の3曲を収録し、より進化したのんの姿を楽しめる作品になった。彼女の黒歴史も飛び出したこのインタヴュー、ぜひ作品と一緒におたのしみください。さまざまな「のん」の表情を切り取った、カメラマン・沼田学による撮りおろし写真も要チェックです!
元GO!GO!7188のふたりも参加した新ミニ・アルバム!
INTERVIEW : のん
「眩しいくらい輝いているのは変わっていないけれど、音楽的魅力が膨らんだな」。インタヴューをして思ったことだ。GO! GO! 7188のふたりが参加した今回の『ベビーフェイス』は、よりまっすぐに我々の心を打ち抜く! 清志郎が「ベイベー」で客を狂喜させるように、彼女の歌を聴いていると、まっすぐでシンプルなものほど強いものはないなって思う。『スーパーヒーローズ』と今作、ぜひ聴き比べて欲しい! 彼女の新しい一面を発見できるはずだ!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 鈴木雄希
写真 : 沼田学
「ここが自分が生きている場所なんだ」と思えるくらい自由に
──今回の『ベビーフェイス』で、のんさんがよりミュージシャンになったように感じました。
ほんとですか?! ありがとうございます!
──もうバンドにも慣れてきましたか?
バンド自体は最初からずっと楽しいです。ただ、ステージの上での立ち方や楽しみ方、どのように会場にいる人たちと一体感を出すことができるのか、そこはまだ模索中ですね。やっぱり難しいです。
──どういうことが難しい?
自分が演奏を楽しむだけじゃダメだと思っていて。その演奏だけを聴いてもらうんじゃなくて、動き回ったり会場を盛り上げたり…… みんなには目でも「のん」という存在を楽しんでもらいたいと思います。(忌野)清志郎さんが憧れなので、ステージ上で「ここが自分が生きている場所なんだ」と思えるくらい自由になりたいですね。
──なるほど。のんさんから見た“清志郎さんの魅力”はどんなところでしょう。
やっぱり清志郎さんの歌声が好きです。あと清志郎さんがステージ上で「ベイベー!」と客席に語りかけるときの感じと、それを受けてお客さんも興奮していく感じはすごいですよね。あの感覚を私も掴みたいです。
のんが忌野清志郎について語った記事はこちらから
──のんさんがやっている様々な創作活動の中で、音楽への比重はどんどん大きくなってきているんですか?
そうですね。もともと大きな存在なんですけど、音楽に対する自分の中の資料がどんどんたまってきていて。「こんな風にやりたいな」とか「ライヴでこんなことをしゃべりたいな」、「曲への思いをもっともっと話したい」、「もっといろんな人に伝えたい」という欲がどんどん湧いてきています。
──まだまだ伝わっていないというジレンマもあった?
そうですね。〈KAIWA(RE)CORD〉というレーベルも立ち上げたし、最初は「音楽でなら会話ができる」と思っていたんです。だけどいざ音楽をやってみたら、自分の口でも伝えたいという欲が出てきて。“音楽での会話”と“口から出る会話”が切磋琢磨し合っているというか……。今回でいうとユウさん(チリヌルヲワカ)とアッコ(ノマアキコ)さんに作ってもらった曲(「やまないガール」「涙の味、苦い味」)では特に自分の“喋りたい欲”が掻き立てられました。
恥ずかしいこともそのまま書いてみよう
──ユウさんやノマさんと一緒にやってみて、ミュージシャンの先輩としてすごいと感じたことはありますか?
私が中学生のときにGO! GO! 7188(以下、GO! GO!)のコピー・バンドをしていたんですけど、そのときに好きだった部分を思い出せたというか。曲も歌詞もめっちゃかっこいいんだけど、そのなかに女の子の意志の強さや力強さ、攻撃性みたいなものもあって。それでありつつ、ユーモアや可愛いおとぼけが含まれているんです。それがまたかっこいいなと思いましたね。キマっているだけじゃなくて、おもしろく伝える方が私は好きなので。
──制作中はどうでしたか?
私はただのファンにならないように必死で抑え込んでいたので、あんまり覚えていないんです(笑)。でも、あんまり曲のことを悩まないというか…… 躊躇がないんです。ユウさん、アッコさん、マシータさん(ex.BEAT CRUSADERS / NATSUMEN)の4人で「いっせーの」で演奏をしたんですけど、途中からユウさんがギターを足していったり、アッコさんのコーラスが足されていったりして、どんどん曲ができていくんです。曲がどんどんできていく、かっこよくなっていく過程が楽しいし、気持ちはどんどん熱くなってくるんですけど、曲作り自体はすごくクールに、フラットに進んでいって。
──やっぱりみなさんの経験がすごいんでしょうね。
ユウさんとアッコさんも何年かぶりに一緒にやったみたいで。目の前でおふたりの演奏を見ることができる特別感をすごく感じて、冷静じゃなかったかもしれないですね(笑)。
──それはファンとして見ちゃいますよね。
「大先輩のレコーディング姿を見て勉強しよう」という気持ちまでいってなくて、とにかくもう演奏に集中しなきゃと思って。でもやっぱりちょっと観察したいから、馬とかシマウマみたいな感じで視野を広げて、すごい集中するみたいな。でもそれもミーハーな観察なのでファンとしてののんは大満足なんですけど、ミュージシャンとしてののんはこの機会を無駄にしちゃいました。
──(笑)。今作の歌詞はすごくストレートなものが多いと感じました。今回歌詞を書くにあたって意識したことはありますか?
『スーパーヒーローズ』のときも、どストレートな歌詞が多かったと思うんですけど、“怒り”の感情ばっかりで。「怒っているぞ〜!」という感情は、私の中で気に入っている感情だったので出しやすかったんです。今回はいままで胸の奥に押し込んでいた恥ずかしいこともそのまま書いてみようと思って。それが変わった部分だと思います。今回のように、自分が隠したい“黒歴史”のようなものをさらけ出すことによって、今回のアルバムのテーマでもある「青春」が浮かび上がってくるのかなって思っていました。
──「青春」というテーマはしっかりと感じ取ることができましたよ。なぜこのテーマが出てきたのでしょうか。
ユウさんとアキコさんのおふたりに楽曲提供してもらうのは、もともと私が「このおふたりとできたらいいなぁ」と言いはじめて実現したもので。私は、GO! GO! のコピー・バンドをしていたときの自分がいちばん好きなんですね。なのでGO! GO! そのものが青春だったと言っても過言ではないくらい。だからおふたりは私の青春のスーパーヒーローなんです。そこで今作は『スーパーヒーローズ』の続編、“青春のヒーロー・バージョン”という裏テーマで作ってみたんです。
──おー! なるほど。
最初は自分の青春を詰め込んでいたんですけど、自分の中から出てくる歌詞とかもだんだん客観的な目線で出てくるようになって。だから聴いてくださる皆さんにも共感してもらえる歌詞になったんじゃないかなと思います。「やまないガール」もそうですけど、心にグッと届く曲が揃ったのかなと思いました。
──ちなみにこの“やまない”はどういう意味なんですか?
お聞きしたところによると、「病まない」と、「鳴り止まない」の“やまない”がかかっているそうです。
──『ベビーフェイス』というアルバムは「やまないガール」から広がって、のんさんが自分の青春時代を思い出してできた作品なんですね。
そうですね。「憧れて」はまさにそうやってできて、おふたりへの憧れと、自分の青春が重なり合った曲になっています。
──「涙の味、苦い味」もGO! GO! のおふたりによる楽曲ですね。
アキコさんは鹿児島在住なんですけど、去年私がツアーで福岡に行ったときに打ち合わせをすることができて。そのときに、私の中のイメージや曲の世界観を言葉にしたものを一緒に見ていったんです。歌詞という訳でもなく並べた言葉を見ながら、一緒にその言葉を掘り下げていって、この曲につながったんです。
──そうだったんですね。
ちなみに歌詞に出てくる〈ラストライヴ〉は、私がGO! GO! さんをコピーしていたバンドのラスト・ライヴのことで。そのライヴは、すごく楽しんでやれて、すごく熱いライヴになったんですね。それでライヴが終わったら、客席にいた友達や対バン相手が、最後だからという理由でアンコールをしてくれて。人生初アンコールだし、そんなことを考えていなかったから、アンコールのための力なんて残してなかったんですよ(笑)。でもうれしいから出ていったら、客席からその日のライヴで私が歌った「雨上がり アスファルト 新しい靴で」(『パレード』収録)という曲をリクエストしてくれた人がいて。私としてもその日は会心の出来だったからうれしかったんですね。でもはじめてみたら、歌もギターもボロボロのひどい演奏で終わっちゃったんですよ。アンコールがなければ気持ちよく終われていたんですけど(笑)。
──そんな逸話があったとは(笑)。
そのときの話をアッコさんにもお話しして。そのときの自分に「大丈夫だよ」って言ってあげたいということも歌詞になっていて。でもこの話は最近まで誰にも話してなかったんですよ!
──それはのんさんの中で黒歴史なんですか?
黒歴史ですね。たぶんバンド・メンバーもみんな同じ気持ちだと思います。でも、そういう失敗や恥ずかしいことも含めて、キラキラした青春なんだっていうことを伝えたいと思って。
怒りを踏み台にしてやれ!
──のんさんにとっての青春は中学時代のイメージだったんですね。でもいまののんさんの活動も青春感がある気もしますよ。
青春感ありますよね! たぶん中学時代の心残りがあったから、いまもう1回音楽をやりたいと思えた気がします。
──アンコールがずっと続いている感じなんですね。
そうですね。だからいまバンドができていることがすごい幸せですね。ライヴは絶対にバンドでやりたかったので、“のんシガレッツ”というバンドを組んだんです。今回は「憧れて」と「蒼い灼熱」の2曲は、のんシガレッツで録音しています。去年、ツアー目前の時期に、音楽モードに入ってしまって「曲を作りたい!」ってなってできたのが「蒼い灼熱」で。気持ち的に「もうレコーディングも待てない!」って感じだったので、そのツアーで初出ししたんです。
──なぜその衝動が生まれたんですか?
絵を描きたいときと、演技をしたいときと、音楽をしたいときで、自分の中で濃度があって。音楽に集中しているときは、ギターを触っていると曲を作りたい思いが強くなってくるんです。そういう状態のときは、寝ようと思って布団に入っても、うずうずし出して、飛び起きて作るみたいな感じで。
──じゃあ「蒼い灼熱」は一晩でできた曲なんですか?
この曲はそうでしたね。でも「モヤモヤ」と「憧れて」は、今回はひとりで作るのではなくてプロデューサーの飯尾(芳史)さんが「一緒に作りたいね」って言ってくれて、飯尾さんと作った曲です。フレーズやメロができた段階で飯尾さんに送って、飯尾さんからアイデアをもらいながら共同作業する感じで。「5時までは起きてる」って言われたから「あーじゃあこの時間までOKですね」みたいな感じでやりとりしつつ(笑)。
──そうだったんですね。
「モヤモヤ」は、まさにいま私が悔しさをバネに音楽をしていることと一緒で、モヤモヤした感情や怒りも消さずに持っていれば自分の力になっていくんだということを歌詞にしました。
──今作で歌われていることは、『スーパーヒーローズ』のときのひとつのテーマでもあった“怒り”からくるエネルギーではないんじゃないかなとは思っていました。
楽しい曲にしようと思っていても怒っている曲ばかりできてしまっていたんです。それを飯尾さんにお話ししたときに、「怒りの先も書いたらいいんじゃない」っていうことを言われて。それで「モヤモヤ」や「蒼い灼熱」ができたんです。『スーパーヒーローズ』のときは「怒ってます!」という感じだったんですけど、今作は怒りを持つことによって、それを踏み台に自分が前に進むことを書いていますね。なのですごいポジティヴな怒りというか、「怒りを踏み台にしてやれ!」という力強い気持ちです。
──なるほど。
去年の夏から「怒りの先も書こう」とは言われていたけど、『スーパーヒーローズ』のときはうまく消化できなかったんです。
──怒りの先が書けるようになってちょっとラクになりました?
「これは人に伝わる歌詞かもしれない」って思えてきて、みんなに届けたい気持ちがどんどん増してきました。その面で音楽をやっている意味をじわじわ感じられるようになってきて。これまではライヴに来てくれたみなさんと楽しむのがいちばん大切だったんですけど、「伝えたい」という欲望が湧いてくるようになりました。
──この歌詞なら伝わると思いますよ。
伝えたいですね…… 伝わってほしいです!
──のんさんの音楽活動としてこれからやっていきたいことはありますか?
〈のん、KAIWA フェス vol.2〉をやりたいなと思っていて! 前回は「男!」って感じのみなさんに出ていただいたので、次は女の子のバンドを集めて開催したいなと思っています。構想中です!
──楽しみですね! 曲もどんどん作っているんですか?
そうですね。なんとなくストックはたまってます。でもいまはなんとなく音楽のモードだから、曲を作って眠れなくなってます。
──やっぱり眠れなくなるんですね(笑)。
そうなんです。絵を描いているときもそうで、夜になるとものづくりが冴えてくる派ですね。どっち派ですか?
──僕は朝派です。朝のいちばん頭が冴えているときに活動したいですね。ローリング・ストーンズのミック・ジャガーは、早寝早起きをして毎日4キロ走っているそうですよ。
早寝早起き?! はぁ〜、勉強になりました! 本日はありがとうございました!
編集 : 鈴木雄希
編集補助 : 永田希望、鎭目悠太
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PROFILE
のん
女優、創作あーちすと。
1993年兵庫県生まれ。
2016年公開の劇場アニメ「この世界の片隅に」で主人公・すずの声を演じ、第38回ヨコハマ映画祭「審査員特別賞」を受賞、高い評価を得る。
2017年に自ら代表を務める新レーベル〈KAIWA(RE)CORD〉を発足。シングル「スーパーヒーローになりたい」「RUN!!!」とアルバム『スーパーヒーローズ』を発売。
創作あーちすととしても活動を行い、2018年自身初の展覧会〈‘のん’ひとり展‐女の子は牙をむく‐〉を開催。
【公式HP】
https://nondesu.jp
【公式ツイッター】
https://twitter.com/non_staffnews