THIS IS JAPAN、メジャー・ファースト・シングルで魅せつける“俺たちのニュー・ワールド”
2011年、大学の先輩後輩で結成された4人組みロック・バンド、THIS IS JAPAN。オルタナティヴ・ロックやパンクを軸に表現される荒々しくザラついた音楽性とパフォーマンスに注目が集まり、数々のフェスでトリを勤め、2019年には〈FUJI ROCK FESTIVAL〉出場を果たした。また、活発なライヴ活動を行う一方で、映画の挿入歌や主題歌を担当するなど各業界からの視線も熱く、その表現の場をどんどん広げている。そんな彼らが今年の2月にメジャー・デビュー、さらには7月末にTVアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』のEDテーマを収録したメジャー・ファースト・シングル「new world」のリリースを達成。最新作の話題を中心に、こうなるとは「想像していなかった」と語るバンド活動の現状とこれからについてメンバー4人に話を伺うインタヴュー。
予定調和を突き刺す唯一無二のミクスチャー・ロック
INTERVIEW : THIS IS JAPAN
今年2月に〈Ki/oon Music〉からメジャー・デビューしたTHIS IS JAPAN。以降、配信シングルのリリース、多くのバンド仲間が集結した弾き語りオンライン・フェス〈NOT FORMAL Vol.11 STAY HOME GIG〉の開催、無観客ワンマン・ライヴ〈NOT FORMAL vol.12 〜THIS IS JAPAN ONLINE ONEMAN GIG 2020〜〉の生配信など、積極的に表現の場を作って活動を続けている。そんな彼らが2020年7月29日にリリースした2曲入りメジャー・ファースト・CDシングル「new world」。表題曲はTVアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』のハードボイルドな世界観と、インディーズ時代から変わることのない一貫したバンドの硬派な姿勢が重なり合った強烈な1曲だ。今年1月には完成していたというものの、番組の放送延期に伴って変更されたリリースのタイミングもあり、奇しくも現実社会とリンクした感のある「new world」について、メンバー4人に語ってもらった。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 作永裕範
THIS IS JAPAN、メジャーへ
──今年2月にメジャー・デビューして以降、はじめてのインタヴューとなります。周囲の反響っていかがですか。
杉森ジャック (Vo&Gt / 以下・杉森):久しぶりの人とか親から連絡が来るっていうわかりやすい反響はありました(笑)。あと、ずっとお世話になっていた新宿Motionでメジャー・デビューの発表をしたのでライヴハウスの人たちもお客さんも喜んでくれたのがうれしかったですね。
かわむら (Dr&Cho):バンド界隈にぜんぜん興味ない人たちが、「あ、おまえらちゃんとやってんだ? すごかったんだね」って連絡をくれたり。周りの体制が変わったとかはあるんですけど、実際なにも変わってないですねえ。親は喜んでいましたけど。はじめて親孝行できたんじゃないですかね(笑)。
小山祐樹 (Gt&Vo / 以下・小山):対バンしてたバンドとかからは、メジャーに行くように見られてなかったみたいで、ビックリされました。個人的にはなにも変わってないので引き続き頑張りたいです。
水元太郎 (Ba&Cho / 以下・水元):いつかやってみたいことがひとつ達成できて、とにかくうれしかったですね。周りからの反響で言うと、僕の場合はあんまり…… 親はバンドが嫌いなんですよ。
一同:ははははは(笑)。
水元:なので、「いつまでおまえはダラダラやってるんだ」みたいな感じで。メジャーに行ってもよくわかってないですね(笑)。
──まあでも、本心では喜んでくれてるかもしれないですよね。
水元:そうですね、心の中では(笑)。
──「いつかやってみたいことがひとつ達成できた」という意味では、今回“new world”がTVアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』のEDテーマに起用されたというのもそのひとつでは?
TVアニメ「ノー・ガンズ・ライフ」HP
http://nogunslife.com/
かわむら:これに関しては、完全に夢でしたね。メジャー・デビューって、もちろんありがたいことだしすごいことだって思うんですけど、いまいち実感が沸かない話というか。ただ、アニメのEDテーマというのは、自分たちの曲がアニメ・漫画文化に影響を与えるし、とてつもない話だと思いました。
杉森:メジャー・デビューも想像してなかったですけど、アニメのEDテーマというのも想像してなかったことなので(笑)。最初はぜんぜん実感がなかったんですけど、自分たちの作った音に合わせて動いているキャラクターを見たときに、「本当にアニメのED曲になったんだ」という実感がすごくあったし、ぶち上がりましたね。それと、『ノー・ガンズ・ライフ』は世界観がカッコイイと思っていて。勝手ながらTHIS IS JAPANが憧れているものと近いなと。ダーティーだったり退廃的だったり、そういう世界観はすごく良いなと思っていたので、その作品に携われたことはめちゃくちゃうれしいです。
──“new world”はどうやって作った曲なんですか。
杉森:最初のデモは1コーラスの仮歌だったんです。だけど、EDテーマの候補に上がってきているというお話をいただいて、そこからメンバーでセッションをして歌詞や歌を作っていきました。まずベーシックな部分は自分が作って、かわむらが歌と詞を考えて、小山が編曲して。そして水元がベースを。
──そこが謎というか(笑)。作曲クレジットが杉森、かわむら、小山となっているので、水元さんはどこのあたりから加わってくるのかなと。
水元:いや、自分は「ベースはやります。ベースのことは任せてください」という感じで。
一同:(笑)。
──ベース・プレイヤーとしてアイデアを出しつつ、小山さんと話してアレンジしていく?
水元:いや、なんも話さないで勝手に僕がやります。モチーフがあるものはそのまま使いますけど。
小山:ベースはもう一任しているので。
杉森:たしかに「なんで水元だけクレジットされてないのか」って言われてみればそうだよね(笑)。
かわむら:我々もなんであえてこの表記にしたのかちょっとわからない(笑)。まあでもしょうがない。水元はベースを頑張ってくれたからさ、それを俺たちは広めていくよ。
水元:まあ、ベースはあんまり聴こえないですからね。
杉森:頭からめっちゃ聴こえるじゃん(笑)。まあ、THIS IS JAPANとして劇的になにかが変わったわけではないということです。
これはもう、「“new world”しかないっしょ!」って
──前作では、さまざまなアプローチを試みた曲が入っていましたよね。今回の2曲にはセッションで作っているようなバンド感を感じたのですが、どうでしたか。
小山:前までは「せーの」でジャムセッションをして作ることが多かったんですけど、最近は誰かがデモを作って、そこに歌を乗せて戻して進めることが多くて。“new world”も、もともとのデモに合わせて演奏した録音があって、そこから制作していく感じでした。
杉森:メンバーひとりひとりの作曲における役割分担が、『WEEKENDER』のときにクリアになった感じがあって。いまこうやって段階を追って説明できるようになったのも、『WEEKENDER』を経たからかもしれませんね。ジャムセッションをする前にお互いに脳みそがクリアになってるからこそ、バンド感を出せるようになってきたのかな。
──何度も聴いていて思ったんですけど、この曲って『ノー・ガンズ・ライフ』にかけてガンズ・アンド・ローゼズ(以下、ガンズ)みたいなハードや要素を入れようとしたんですか?
小山:いまはじめて言われました(笑)。
杉森:ガンズは誰もちゃんと聴いてないもんね? “ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル”しか知らない(笑)。
かわむら:でも“new world”は、サウンドや世界観としてアメリカンな感じとか、ハードロックというかヘヴィな感じはわりと意識していました。いままでやってきたところから踏み出したことによって、そうやって思われたんだったらうれしいですね。
──展開が凝ったアレンジですけど、王道ロック的なダイナミックなところもあるように思います。
かわむら:たぶん、普段我々が自由に作っていいよって言われたときにはやらなかったアレンジだとは思います。
杉森:アニメという下地があるからこそ、いつもと違うことをやっても終着点が見えてちゃんと形にできそうだなっていうのはありました。そこにいかに自分たちらしさを出していくかっていう。
──小山さんはアレンジする上でどんなイメージを持っていたんですか。
小山:もともと、僕も「重く」っていうのはずっと思っていて。エンジニアさんにも「次に録るのはドラムとかも『ドンガラガッシャン』って感じで、重く激しくバーッと広がる音作りにしたい」ということは話していて。プラスで、アニメを見て「金属っぽい音も入れよう」と思いました。
──それを歌詞のイメージとすり合わせていった?
かわむら:そうですね。主人公の乾十三(いぬい じゅうぞう)は、頭が銃になっていて筋骨隆々なんです。いま我々が生きている現代とは違う、物語の舞台になっている架空の大戦後のようなハードボイルドな世界観を前提に小山がサウンドを作っていて。もちろんみんなアニメを観ていて、共通するヴィジョンをなんとなく考えていたんですけど、たぶんみんな一致していて。それを自然と歌詞にした感じです。
──そうした世界観の中にも、「相変わらず紛い物ばかり」という、THIS IS JAPANらしい尖ったフレーズが出てきますね。
かわむら:“反体制的”みたいものは全編共通してあるものだと思っています。我々の音楽もそれに近い精神を持ち合わせていたし、普段曲を作るときに考えることとそこまで離れていない世界観だった分、やりやすかったんですよね。それは音を作った小山もそうだったと思います。こんな言葉も音も入れられたのは、作品の世界観がリードしてくれたからだと思う。それに対して俺たちはなにができるかという作業だった気がします。だからすごく楽しかったですよ。
──その結果完成した曲のタイトルが“new world”。
かわむら:これはもう、「“new world”しかないっしょ!」って言った覚えたあります(笑)。大層なことを言ってるというか、結構パンチがあるタイトルじゃないですか? 普段ならちょっと躊躇すると思うんです。でも我々は(主人公の)十三のことを信じているので、新しい世界を見せてくれるって感じで、堂々とタイトルを付けました。
──どうしてもいまのご時世とリアルにシンクロする部分は生まれていると思います。それに対してはどう感じていますか?
かわむら:結果的に重なりましたね。
杉森:本当“結果的に”だよね?
かわむら:もともとアニメの放送が延期になってリリースも延期したので、レコーディングは1月頃だし、コロナのことはまったく出てなかったですから。タイトルもその時点で決めてました。
杉森:この曲関連のことは、全部コロナ禍になる前に終わってましたから。
──いまの状況から、新しい世界を創っていくという意味での“new world”と受け取る人もいるのではないかと思います。
かわむら:そう聴こえたとしたら、それはコロナ禍でも十三とTHIS IS JAPANがやっていける証なんじゃないですかね。
杉森:いいね! やっていけるよ。自分は最初に“new world”ってタイトルを聞いたときに、「おおっ!」って思ったけど、いまは逆にこれしかないなって思っています。ラッキーなことに新しく踏み込む勇気をもらえたと思ってます。
──よくよく考えると、バンド名も相当大胆ですもんね。
杉森:そうですよね。THIS IS JAPANの“new world”って。でもその思い切りの良さ、細かいところは気にしないっていうのが、このバンドのよさだと思ってます。
THIS IS JAPANは杉森のバンド
──もう1曲の“RRRIOT”は杉森さんの作詞作曲ですが、ストレートな8ビートで歌心がある曲ですね。
杉森: “new world”がアグレッシヴな曲なので、直情的でロマンティックな音像という、THIS IS JAPANのもうひとつの側面を表現したいと思って作りました。曲自体は3年前ぐらいからあったんですけど。
かわむら:めっちゃ前からず〜っと曲作っているんですけど、リリースするタイミングがきたときにそのストックの中から選んでいて。“RRRIOT”はかなり前に作った曲で、“new world”は最近作った曲なので、混乱するんですけど。
杉森:“RRRIOT”は3年前にオケまで録っていて、このタイミングで歌を入れたんです。
水元:この曲はもっと前の段階で発表したかったんですよ。でもそのときは「ちょっといまじゃないかな」っていう感じがあって。
かわむら:今回は、「いけんじゃん!」っていう感じでしたね。
杉森:曲がたくさんあるのは楽しいですよ。そのときに自分たちがやりたかったことがちょっとずつ違っているのがわかるし。
──いまは、ストックした曲に加えて新しい曲も作りつつ、アルバムに向かっている感じですか?
杉森:そうですね、まさしく。
──アルバムとしての方向性はいまの時点で見えているのでしょうか。
杉森:僕個人としては、“new world”を配信ライヴでやったときに、いままでと違う感触というか違う筋肉を使っている楽しさがあって。だからまた新しい感じでデモ作れそうだなっていう感じでいま作っています。
かわむら:杉森は、最近やる気がすごくてですね。この前「俺に任せろ!」って言っていたんですよ。我々も結構ビックリしたんですけど、すごくいいなと思っていて。基本的には、THIS IS JAPANは杉森のバンドだと思っているんです。杉森が思っていることとかやりたいことが強くあるんだったら、それを実現する。なおかつ他の3人もヴィジョンを見失わずに、それをくっつけたり削ったりしながら、やっていけばいいのかなって。
小山:ちょっと前よりも、4人で合わせたときのイメージがわかるようになってきたんです。その上で、4人で合わせたときにはじめて生まれる違和感とかおもしろさがあるのでそこは絶対外せないですね。次の作品がどうなるかまだわからないですけど、このバンドの良さが生きてくる曲を作っていきたいなと思ってます。
いい意味で気持ちがフラットな状態に戻ってきてる
──いまはなかなか先が見えない状況ですが、THIS IS JAPANはバンド・ミーティングを生配信するとか、つねになにかを発信していますね。これからの活動にどんな思いを持っていますか。
かわむら:もちろんライヴをしたいとは思うんですけど、我々はすごくありがたいことにアニメのEDで毎週自分たちの曲を聴けて、曲も作れて、レコーディングの予定も立てられているんです。この状況の中で無理せずに自分たちがやりたいこと、表現したいことを発信しているので、特にがんばってるというわけでもないんですよね。
杉森:もともとすごい本数のライヴをやっていたので、ライヴができないとなったら他になにができるかということを全部自然に選んでいるというか。できることをどんどんやっているだけという気はします。やり方がちょっと変わっただけで、ペースとしてはコロナ前とそんなに変わらないですね。
小山:自分はミックスやシンセとか、興味あることの理解を深める時間ができて。いつ使うかわからないですけど、それを武器として使えたらいいなと思って過ごしています。
水元:時間がすごくあるので、できなかったことにチャレンジできるし、不謹慎ながら誰かがくれた時間みたいな気持ちもあって。なので結構楽しいです。僕もついに曲作りをやってみてたんです。やろうと思えばできるということがわかりました(笑)。発表されるかはわからないですけど。
杉森:いや、よかったよ!
──水元さんの曲が新たにストックに加わる可能性がある?
杉森:水元によるクレジットの逆襲が(笑)。
水元:次のアルバムは全部「music:水元太郎」になってるかもしれないです(笑)。
──こういう期間を経てバンドに還元されることもあるわけですね。
かわむら:ありますね。配信ライヴってこういう状況にならなければやらなかったことだし。いろんな人の力を借りながら、我々にしかできないことを考えられたのがおもしろかったですね。
杉森:弾き語りのフェスもいつもなら絶対やらないですからね(笑)。でもあれもやってみておもしろかったし。毎週毎週、うるさい音でライヴをやるっていうのを続けて来てたから、いまいい意味で気持ちがフラットな状態に戻ってきてる感じですね。
かわむら:自然に創作に取り組める心境とこれからの健康に気を付けて行こうと思ってます(笑)。
──その先に、THIS IS JAPANにとっての“new world”がある?
かわむら:そうです!“new world”をキーワードにやって行こうと思います。
編集 : 鈴木雄希、綿引佑太
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PROFILE
THIS IS JAPAN (ディス・イズ・ジャパン)
2011年、サークルで先輩(杉森・かわむら)後輩(小山・水元)である4人が、上智大学在学中にTHIS IS JAPANを結成。その後、オリジナル曲も制作し、新宿Motionを中心にサークル外の活動もスタートさせる。
2018年5月2日、オルタナティヴアティテュードにTHIS IS JAPANなりの解釈を加えた覚醒盤となるセカンド・ミニ・アルバム『FROM ALTERNATIVE』が完成した。そのほかメインストリームにとって変わる可能性を持ったアーティストを集めた通称オルタナコンピを企画・制作なども行う。
2019年11月27日3rd EP『WEEKENDER』発売。約50曲のデモ曲中から、今のTHIS IS JAPANとこれからのTHIS IS JAPANを橋渡しする作品を完成させた。
2020年02月11日、ファースト・デジタル・シングル「Not Youth But You」をリリース。この作品をもって、THIS IS JAPANは〈Ki/oon Music〉よりメジャー・デビュー。〈Ki/oon Music〉と所属の先輩方には強い影響も受けていたので、さらに邁進すべく現在も音楽に精力的に活動中。
【公式HP】
https://thisisjapan.net
【公式ツイッター】
https://twitter.com/this_is_japann