今の私にしか作れない曲を──新進気鋭のSSW“ロイ-RöE-”、ドラマOP曲配信開始&インタヴュー掲載
2017年夏に行われた、ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル〈unBORDE〉主催のイベントにてレーベルへの所属を発表した新進気鋭のSSW、ロイ-RöE-。2018年10月、初となるEP『ウカ*』のリリースに続いて、ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』のオープニング曲となる「VIOLATION*」を配信リリース。 OTOTOY初登場となる今回、新曲についてはもちろん、まだまだ知られていない彼女が音楽を始めたきっかけから今後の展望などについてたっぷりと語ってもらった。
ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』OP曲!!
INTERVIEW : ロイ-RöE-
昨年10月にデビューしたばかりのシンガーソングライター、ロイ-RöE-が作り上げた新曲「VIOLATION*」は、デビュー作とはまるで異なる歌詞、メロディ、サウンドで構築され、見事にドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』のオープニング・テーマ曲という大役を果たしている。歌いまわしや、ビジュアルも大きな変化を遂げているため、前作で彼女を知ったリスナーは驚いたのではないだろうか。ただ、それは決して方向転換をしたわけではなく、ロイ-RöE-にとっては最初から自覚していた変化だったようだ。アーティストとして、まだ何色にも染まっていない彼女。インタヴュー開始当初の“ぶっ飛んだ女の子”的なイメージは、1時間後にはとてもクレバーな印象に変わっていた。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
キラキラというよりギラギラ
──本日はよろしくおねがいします。OTOTOYってご覧いただいたことありますか?
ありますよ。ロゴがわかりやすくてカワイイなって。ロゴは大事ですよね。自分もアーティスト名を見た目でも選びましたから。
──そうなんですか? ではまず、アーティスト名の由来を教えてください。
それこそOTOTOYみたいに、見た時にロゴっぽくなる名前が良くて。歌手である自分を表現するためにRとEの真ん中に記号(ウムラウト)を入れて、歌ってる顔みたいなマークにしたんです。Tシャツとかキャップとか、グッズを作ったときにブランドみたいに映える形を選びました。
──なるほど、すごく考えて付けられているんですね。
そうなんですよ。
──「VIOLATION*」を聴いてから、前作『ウカ*』の3曲を聴かせてもらったんですが、全然印象が違いました。
自分の中で音楽をやる上のテーマが「飴とムチ」とか、2面性みたいな感じなんです。少女から女に変わりゆく危うい成長期みたいなところを書きたくて。だから、ときに闇に行ったりするというか。前回のイメージが白だったんですけど、今回は真っ暗で。暗い方も行きたいし、明るい方も行きたいんです。
──その方向性が今回『ストロベリーナイト・サーガ』のイメージともリンクして、ダークな曲になったということですね。
はい、そうです。『ストロベリーナイト・サーガ』のOPテーマ曲になると聞いて、「あの『ストロベリーナイト』か!」って思って、前作も見直して、林ゆうきさんのサントラも聴きまくってました。OP曲でドラマのイメージって一気に印象が付くじゃないですか? そこでイメージを壊してしまわないようにすごく考えました。
──もともと、原作の「姫川玲子シリーズ」は好きだったんですか。
以前から好きでしたから、イメージはしやすかったですね。『ストロベリーナイト・サーガ』は、グロいところもありますけど、グロいだけじゃなくてそれを美しく描こうとしている姿勢がすごく好きです。ただの刑事ものじゃなくて、そこで芸術になっていると思うんです。ドラマも、小説も、血の舞い上がり方とか、闇の描き方が綺麗なんですよね。キラキラして見えるんですよ。そういうところが好きです。
──パッと見ると、前作のイメージの方がキラキラという感じだと思うんですけど、ロイ-RöE-さんからすると、「VIOLATION*」の方がキラキラしている?
「VIOLATION*」は、キラキラというよりギラギラかもしれないですね(笑)。前作は一番最初の作品だし、MVとかも無垢な感じなイメージにしたくて。ロイ-RöE-という名前も男か女かわからない無味無臭な感じじゃないですか? まだ真っ白で、何色にでも染まりますよっていうことを伝えたくて、衣装も自分で白にしてほしいって言ったんです。そういう意味で今回は、良い意味で『ストロベリーナイト・サーガ』に染まったという感じです。何かが入ることによって、どんどん変わっていくアーティストだっていうことを伝えたかったです。
──歌詞の内容も、まるっきり違いますもんね。
『ウカ*』は、上京前の心境とか、狭い世界の中にある1人1人の感情を歌った曲たちだったんですけど、今回は宇宙みたいなイメージです。もっと大きい、壮大な感じ。全人類を含めて、みたいな感じです。
──それが、冒頭の〈終に、重力に負け 星になった生命よ〉という歌詞になっている?
そうなんですよ。
──『ストロベリーナイト・サーガ』って、すごく人間臭いストーリーが描かれている作品で、人間の奥底にある感情を描いたりしていますよね。それが宇宙のイメージと繋がったのは何故なんですか。
「VIOLATION*」を作っているときに、「火の鳥」(手塚治虫作品)を観ていて。それが上手いこと混ざって、Aメロとかは「火の鳥」っぽくなったんですよ。『ストロベリーナイト・サーガ』の赤い背景に「火の鳥」が飛んでいるような映像が自分の中でずっと流れてていて。すごく影響されましたね。
タイトルだけの広告のような曲を魅力的に感じている
──ロイ-RöE-さんは、中学卒業後から独学で作曲を開始したそうですが、どんなきっかけで曲を作ろうと思ったんでしょうか。
それまでは全然楽器もやっていなくて、人前で歌ったりしたこともなかったんですけど、週5回ぐらいダンスをやっていて、人前で踊ったりもはしていたんです。ただ、怪我をしてダンスを辞めることになって。好きでやっていただけだから、将来のこととかを考えてなかったんですけど、ダンスを辞めてから何をやっていいかわからなくて。刺激がほしいって思ってたんです。それで、テレビが好きだったから、どうやったらテレビに出られるか考えたときに、歌手だったらどうかなと思ったんですよ。自分でなにかを作りたい、表現したいという気持ちはもともとあったので。
──テレビの世界への憧れが最初にあったんですね。ちなみに一番好きな人っているんですか?
ダウンタウンの浜ちゃん(浜田雅功)です。音楽を始めようと思ったときに、どうやっていいかわからなくて、楽器屋さんに行って1万円の「アコギ初心者セット」みたいなギターを買って。ボロボロのやつで、いま考えたらあんなのギターじゃないよってぐらいの感じなんですけど(笑)。それで、独学でコードを覚えて曲を作り始めたんです。
──誰かに教わったりせずに?
周りにいないですもん、そういう人が。教室とかもなかったし。それに、音楽をやっていることを周りにも言ってなかったですし。努力してます、みたいなことが恥ずかしくて。必死な自分を知られたくなかったから。でもやってるうちに楽しくなってきて、そこから20曲ぐらい作って。
──そもそも、ギターコードを覚えて、どんな音楽をやろうと思ったんですか。
それもとくに決めてなかったです。聴いていた音楽もヒップホップとかだったから、全然ギターの音楽じゃないんですよね。アコギで歌う曲も知らなくて。ギターを持ったこともなんとくなので。そのとき、長いネイルをしていて。それだと弾けないっていうこともわからなくて。
──いや、わかるでしょ普通(笑)。
買ってきてから、「ギターってどうやって弾くんだろ?」って思って。そこから爪が短かったら弾けるんやって気付くいうぐらい、何の知識もなかったんですよ。だから、そのときに作った曲のデモとか、今聴いても面白いんですよ。ジャンルがわからないというか。でたらめなんですけど、一応曲になってはいるっていう。
──曲を作るとなると、誰かの曲を参考にしたりすると思うんですけど。
本当になかったです。カバーもしていなかったし。歌詞とかも、自分の思いを書くんじゃなくて、「みんなのうた」に出てくる曲みたいに、物語チックな、フィクションみたいな歌を作っていて。今考えると、無知って良いなって思います。音楽知識がなかった分、自由な歌になってると思うので。
──自分でもどんな曲ができるのかわからない感じで?
そうです、ジャンルもよくわからない感じで。
──でも、今回は『ストロベリーナイト・サーガ』という既存のイメージのある作品をテーマとして曲にしないといけないわけじゃないですか? どんな曲ができるかわからない、というわけにはいかないですよね。
それは、やっていくうちに作りたい曲ができるようになったというか。たぶん、音楽が向いていたと思うんです。曲を作って出来上がるのが楽しくて。それに、自分もどんどん音楽が好きになっていくし。自分が今聴きたい曲を作ろうという気持ちで作って行って、レベルアップしてきたと思います。だから、今は逆に今回みたいにお題があった方がやりやすいんですよ。音楽の中でも、やりたい方向がいっぱいありすぎるから、こういう風に1つ方向が見えたらそこに突き進むだけなので、すごくやりやすかったです。
──今もギターで曲を作っているんですか?
最近は、ピアノでメロディを作って、打ち込みすることが多いです。トラックから作ることもあるんですよ。それも全部独学で、遊びながら覚えていく感じです。人に言われても覚えられない、みたいな(笑)。自分でやるのが一番やりやすいです。
──特定のアーティストに強烈に影響されている、ということもなく?
あまりいないんですけど、1人お名前を挙げるとしたら、菅野よう子さんですね。CMソングが好きで。色んなジャンルですごく魅力的な曲を作るから、全部好みなんですよ。サントラを買って聴きまくったり。菅野よう子さんは好きですね。声もめちゃくちゃ良いですし。自分も、ゆくゆくは30秒ぐらいのCM音楽を作ってみたいですね。
──それは、今回テーマを与えられてOPテーマ曲を作ったことで自信になったんですか。
いや、以前からずっと言っていたことで、1つの物語というか、タイトルだけの広告のような曲を魅力的に感じているんです。CMソングが好きでテレビでも飛ばさずに見ますし。自分は「サウンドロゴ」って呼んでいるんですけど、今回のジャケットを手掛けているQ-TAさんにテーマを渡してコラージュを作ってもらって、そのテーマに合った曲を30秒ぐらい作って、インスタグラムに載せたりしていて。それはもう、趣味ですね。
──じゃあ今はむしろテーマをもらった方が曲作りにしやすいんですね。
それが最高ですね。そういうことに関われるのも嬉しいですし。なかなか、人の脳みそを借りて曲を作ったりできないですけど、タイアップという名目があればそれも楽しくできるなって。
何色でも染まれるような曲を作りたくて
──そうやって作った曲で、自分の声が毎週木曜日22時にテレビから聴こえてくるってどんな気持ちなんですか。
最初に、オンエアの1週間ぐらい前に試写を観たときは「大丈夫かな?」ってめっちゃドキドキして、ソワソワしすぎて全然覚えてなくて。それから1週間経って初回のオンエアを家で観た時は落ち着いて観れたので、「良かった、合ってたのかな」って、安心しました。MVもすごくいいんですよ。今回は自分もアイディアを出させてもらったんですけど、少女と女性に変わる寂しさとか恐怖を表したくて、それぐらいの危うい年代の女の子に5人出てもらったんです。出来上がりを100回ぐらい観てるほど、お気に入りです。今のところ、世界にあるMVで一番良いです。もう、スクショしまくったから(笑)。
──ところで、「VIOLATION*」の歌詞って誰の目線で書いているんですか。
(二階堂ふみ演じる主人公の)姫川と自分の目線ですね。書く前に、姫川と自分がリンクする場所を探したんです。例えば、悲しむことを恥だと思っているところとか、弱いところがあっても、か弱いところは絶対見せたくないところとか。かわいそうって思われたくない、強い部分だけ見て欲しい、同情されるぐらいなら歯向かうぜっていう姫川の性格が自分とリンクして。そういう意味でも悲しむことへの違反(VIOLATION)みたいな感じでこのタイトルになったんです。普通の悲しい歌詞だったら、〈わたしは凍えている〉だけで良いんですけど、それが恥ずかしいと思っているから、〈なんとなく凍えているんだ〉にしているんです。
──「VIOLATION*」はオープニングの映像ととても合ってますよね。今回これが出ることで、ロイ-RöE-さんのイメージも決定づけると思うんですが、そのことに関してはどう感じてます?
違いすぎたら違和感があるかもしれないけど、合ってるから良いと思ってます。あのオープニング、好きなんです。しかも、曲先行で映像を作っていただいたので。出来上がったのを見てすごくいいなと思いました。包帯に血がにじむところとかは、姫川のトラウマを表現していて、それでも姫川がニヤッと笑うシーンもサブリミナル的に入っていたりして。ただ病んでるだけの人じゃなくて、ちゃんと普通の人間としての感情もあるっていうのも人間味があっていいなと思うし、それが自分の曲と合ってると思います。「VIOLATION*」も、ただ重いだけの歌詞にしたくないから、〈~なっちゃうよね〉っていう砕けた言葉遣いにしているんですよ。そういう手法は同じなので、ただグロいだけじゃなくて、アートになっているところが良いなって思います。
──曲を作りを始めて以降、そういう曲を書くときのテクニック、引き出しがどんどん増えている?
そうかもしれないです。中原中也とか三島由紀夫の本を読んだりするんですけど、その2人のどこが好きかと言ったら、重たいこととか、自分が思っている傲慢なこととかを、すごく美しく砕けた感じで書くんですよ。それによって読んだ相手が納得せざるを得ないというか。そういう技術は、何回も読み直して学んでますね。自分の教科書みたいな感じです。
──色んな文化の色んな要素をちょっとずつ音楽に取り入れている感じなんですね。
音楽作りを始めたときは、歌をお手本にするというよりは、歌詞は文学をお手本にして、曲はインストをお手本にしていました。1つ1つに集中して魂を込めて作ったものを合わせた方が、より良くなるんじゃないかなって、自分なりに考えて。
──お話を聞いていると、クリエーターとして考え抜いて作ってますよね。
そうなんですよ、今しか作れない曲をどんどん作っていきたいなって思ってます。
──今日話を聞いていて、ロイ-RöE-さんの音楽性ってこれから作って行くところなんだろうなって思いました。
やりたいことはたくさんあるんですけど、まだ今は最初だから。最初のイメージって大事だと思うから、今はそこを一番考えてますね。最初に暗い曲を出していたらそのイメージに引っ張られやすいし、何色でも染まれるような曲を作りたくて最初に「泡と鎖*」を作ったんですけどね。
──そこで、ロイ-RöE-というアーティストネームが、イメージを限定されない記号的な役割を果たしているわけですね。
そうなんです。そういう面ですごくこの名前にして良かったです。「ö」をどうやって打ったらいいのかわからないとか、色々な問題はあるんですけど(笑)。浸透させていこうと思ってます。これからは、テレビとかラジオとか色んなメディアに出て、音楽に限らず、ファッションとか、詩とか、絵を描くことも好きだし、色んな表現を広げていきたいです。芯が通っていて、どこに行ってもブレない、どこに行っても自分色に染め上げることができる、そんな人間になりたいです。
『VIOLATION*』のご購入はこちらから
前作『ウカ』はこちらにて配信中!!
LIVE SCHEDULE
〈LIVEHOLIC 4th Anniversary series〉
2019年6月30日(日)
open 17:30/Start 18:30
出演:カノエラナ 、 瀧川ありさ、ロイ-RöE-
会場:東京 下北沢LIVEHOLIC
〈SAKAE SP-RING 2019〉
2019年6月1日(土)・2日(日)
※ロイ-RöE-は6月1日(土)に出演
2019年6月1日(土)
open 11:30/Start 12:00
会場:名古屋栄 TIGHT ROPE
〈GRAND MENU〉
2019年6月18日(火)
open 18:30/Start 19:00
出演:熊川みゆ、ロイ-RöE-
会場:東京 月見ル君想フ
ライヴの詳細はこちらをご確認ください
PROFILE
ロイ-RöE-
頭から離れないメロディーと個性的な歌詞を紡ぎ出すシンガーソングライター。
中学卒業後から独学で作曲を開始。
2017年夏に行われた、ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル<unBORDE>が主催するライブイベント<unBORDE Summer Xmas Party 2017>において、レーベルへの所属を発表。2018年、<unBORDE LUCKY 7TH TOUR>に出演決定。
10/19、1st Digital EP「ウカ*」をリリース、unBORDEよりデビューを果たす。
公式HP : http://roeworld.com/
Twitter : https://twitter.com/RoEstaff