音は鋭さを増し、より意思は明確に──Limited Express (has gone?)、新作『perfect ME』をリリース
Limited Express (has gone?)、3年ぶり6枚目となるアルバム『perfect ME』をリリース! 前作『ALL AGES』以降、ロベルト吉野とのコラボ作『Escape from the scaffold』などを経て制作された今作。MVも公開されている今作を象徴する1曲「フォーメーション」からも分かるように、サウンドはよりタイトでソリッドに、そしてフロントマンとしてさらに存在感を増したYUKARIのヴォーカルとこれまで以上に現代社会と密接にリンクした歌詞。フレッシュかつ痛快、これは間違いなく傑作でしょう! さぁ、今すぐそのサウンドでブチ上がれ! 正気に戻るスキなんて無いぜ!
6枚目となるオリジナル・アルバムをハイレゾで!
INTERVIEW : Limited Express (has gone?)
1998年の結成以来、新作を出すたびに音楽性を刷新させてきたLimited Express (has gone?)。14年に谷ぐち順(LessThanTV)、もんでんやすのり(ふくろ / GROUNDCOVER.)が加入し、元々ベース・ヴォーカルのYUKARIがハンドマイクで歌い始めた現体制においても、このバンドの「いちどやったことは繰り返さない」というオルタナティヴなスタンスは当然のように貫かれている。そんな彼らのキャリア通算6作目となるスタジオ・アルバム『perfect ME』は、リミテッド史上もっともコンシャスな一枚。社会的メッセージとハイテンションなサウンドが交錯してゆく今作について、さっそくメンバー4人に話を聞いた。
インタヴュー&文 : 渡辺裕也
編集 : 高木理太
写真 : 小原泰広
曲を持ってきたひとのイメージに近づくことがゴールになった
──前作『ALL AGES』から現在の体制になって、リミテッドの音楽性はずいぶんと変化しましたよね。恐らく曲の作り方もそれ以前とはまったく違うんだろうなと。
谷ぐち順(B)(以下、谷ぐち) : 旧体制と比べたら、ケンカは少なくなったんじゃないかな? 以前はこの2人(飯田とYUKARI)が憎しみ合いながら作ってたんですけど、自分が加入してからはYUKARIのそれがぜんぶこっちに向かってくるようになったんで(笑)。それで最近の仁一郎は涼しい顔してるんですよ。
飯田仁一郎(G)(以下、飯田) : ストレスが減ったのは確かですね(笑)。
YUKARI(Vo) : なんか私がめっちゃ悪い人みたいになってない(笑)? でも、たしかにいろいろ変わってきたところはあって。私、以前はいつ終わってもおかしくないなと思いながら、このバンドをやってたんですよ。でも、今は死ぬまでバンドをやりたいと思ってるんです。だから、今までは彼(飯田)が持ってきたフレーズに対して「そんなん絶対にやりたくないし!」とか言ってたんですけど、ひとりじゃバンドできないし、今はメンバーをもうちょっと尊重しようと思ってて。
谷ぐち : でも、わかるんですよ。というのも、このバンドの曲作りは仁一郎のくそダサいフレーズから始まることがわりと多いんで。あ、怒ってる?
飯田 : もう慣れましたし、当たり前ですけど、自分ではダサいとは思ってないです(笑)。
谷ぐち : じゃあ、言い方を変えると(笑)。仁一郎がバンドに持ってくるフレーズはかなり個性的なので、最初はまず戸惑うんですよね。でも、やっぱり曲として仕上げていく以上は彼がイメージしているものを共有して、そこに近づいていかなきゃいけない。出来るかどうかはともかく、そう心掛けるようにはなったんです。
YUKARI : たしかに、今までは全員がちゃんと納得できるところまで持っていかなきゃと思ってたんですよ。でも、今回は曲を持ってきたひとのイメージに近づくことをゴールとして目指してたのかも。
飯田 : 今このバンドには3人のコンポーザーがいて、それぞれ用意してきたものをバンドで仕上げていくっていうスタイルなんです。で、『ALL AGES』は比重として僕の持ってきた曲が多かったんですけど、今回の1~5曲目は僕じゃないんですよね。それは今のリミテッドを象徴してると思う。まずは谷さんやYUKARIちゃんがもってきた曲を先に聴いてほしいなと。
谷ぐち : 僕は途中からこのバンドに入ったので、それこそ当初は曲も作ってなかったんですけど、「谷さんもハードコアなやつ作ってきてくださいよ」とかはよく言われてたんです。それで僕も作っていくんですけど、なんていうか、ハードコアってなるとビートのニュアンスが違うので、そこがまた難しくて。「ちょっと違うんだよなー」みたいなことが多かったんです。
YUKARI : もんちゃん、ブラストビートとか叩いたことなかったんじゃない?
もんでんやすのり(Dr)(以下、もんでん) : そうですね。
谷ぐち : でも、そういうときに「ここ、もうちょっとこういう感じにしてくれる?」とか言っちゃったら意味ないんですよ。だったら普通にハードコア・パンクのバンドをやればいいわけで。そうやって試行錯誤しながら曲作りを重ねていくなかで、ちょっとずつリズム隊が馴染んできたっていうのは大きいよね。ファストなビートもちゃんと速く聴こえるようになったし、リミテッドなりのハードコア・テイストが出てきたのかなと。
飯田 : うん、すごく馴染んできましたよね。このバンドの音がやっとできた感じがする。
──もんでんさんは如何でしょう? 谷ぐちさんとのコンビネーションを築くのは大変でしたか?
もんでん : いや、僕はけっこう最初からいい感じだったというか、ずっと気持ちよく叩けてますね。単純にプレイヤーとして一緒にやるのが楽しいので。
谷ぐち : とはいえ、なんだかんだこのバンドはトータルで見ていくと仁一郎の采配で決まっていくことがわりと多いんですよ。そこがまた憎たらしいんですけど(笑)。
もんでん : (飯田は)段取り能力がすごいんですよ。〆切を設けたうえで曲作りをどんどん進めてくる。それにリミテッドは回転がものすごく早いんですよね。曲が出来るペースは僕がやってるバンドのなかで一番早い。
──谷ぐちさんにベースを委ねてヴォーカルに専念したことで、YUKARIさんの意識はどのように変わりましたか?
YUKARI : ベースを弾かなくなった直後はライヴでも手持ち無沙汰だったんですけど、最近はそうでもなくて、歌わなくてもへっちゃらというか。でも、意識は特に変わってないと思います。
谷ぐち : いや、あきらかに変わったでしょ! ヴォーカリストとして歌詞で伝えていこうっていう方向性に変わってきてるよ。
YUKARI : 確かにそれはそうだね。今までのアルバムと今作で絶対的に違うのは、歌詞なんです。今までは意味ないことが意味を持っていたというか、もうすこし抽象的なイメージだったんですけど、今回はメッセージが明確にあるので。
──その変化を促したものは何だったんですか?
YUKARI : それは音楽が自分の人生とリンクしたからなんです。私のなかでは音楽と普段の生活って別モノだったんですけど、今は音楽が自分の人生そのものだなと思えるようになった。そしたら音楽が自分の生活はもちろん、社会ともつながっていって、それで歌詞がどんどん具体的になっていったんです。
さらけ出していくヴォーカル・スタイルへの変化
──そこでYUKARIさんがまず歌わなきゃいけないと思ったイシューとはなんだったんでしょう?
YUKARI : あれは何年前だったかな。私、ライヴで痴漢に遭ったんです。そのあたりから、女性として生きていくこととか、とりまく社会とかに真正面から向き合うようになって。音楽でそれを発信していこうと思うようになった。あとは『MOTHER FUCKER』も大きかった。あの映画は「女性としてどうやって子供を育てながら音楽をやっていくか」がテーマのひとつだったんですけど、その映画に対して、勇気をもらったとか、元気がでたとか、そういう反応がたくさん返ってきて。そのときに「あ、私なにかの役に立てるのかも。ていうか、それをやらなきゃ」と思ったんです。
──飯田さんはそんなYUKARIさんの変化をどう見ていましたか。
飯田 : めちゃくちゃいいなと思ってます。ひとりでフロントに立ったことや、谷さんと一緒に生活していくなかで、YUKARIちゃんは劇的に変わったと思う。パンク的なアティチュードが明確になっていったというか、絶対にいい方向にきてると思うし、この人たちを俺が支えなっていう気持ちも強くなりましたね。
谷ぐち : YUKARIは自分と違ってド・オルタナ世代なんで、ドライというか、クールさにこだわってたんですよね。だから、映画のときも彼女はけっこう葛藤してたと思うんです。少なくとも母親としての日常を見せるってことは、たぶん彼女が本来やりたかったこととは違うだろうなと。そこについては僕とも「生活とかでカッコつけることなんてもう何もないんだから、もっと曝けだしていったほうがいいんじゃない?」みたいなやりとりはあったんですけど、それでもやっぱり基本的にストレートで熱いものは苦手なんじゃないかな。だから、ライヴもああいうスタイルになったんだと思う。
──なるほど。あのハンドマイクで会場中を無軌道に駆け回っていくYUKARIさんのライヴ・パフォーマンスは、そういうところから来てるんですね。
YUKARI : うーん、どうなんやろ。でも、たしかに彼(谷ぐち)からよく言われるんです。「お客さんはみんなYUKARIしか見てないよ。それくらいのつもりでやって」って。で、実際に私もそういう気持ちでやってるんですよね。「たったの30分だけど、思いっきり発信する。だから、みんな私から目を離さないで。次なにするかわからないっていうドキドキを感じながらずっと見てて。」といつも思ってるので。
──アルバム1曲目“百鬼夜行”で、YUKARIさんはなんども「I’m a god!」と繰り返しますよね。これはどういう思いから出てきた言葉なんでしょうか?
YUKARI : おこがましい話かもしれないけど、傷ついてたり迷ってる女の子たち全員の代わりに、私が戦ってあげたいなと思ったんです。「信じるものはぜんぶ救い出す見解」という歌詞もそう。私も40歳になって、いろんなことをそれなりに経験してきたので、まだまだ先がある若い女の子たちにはもう同じような思いをさせたくない。だから、私が代わりに戦ってあげる。みんな信じてついてきてって。まあ、その時めちゃくちゃ自信満々だったんでしょうね(笑)。同時に自分を鼓舞してるっていうのもあります。
──約20年間リミテッドの一員として活動してきて、女性ミュージシャンを取り巻く状況はなにか変わりましたか?
YUKARI : ちゃんと考えてくれる人は増えつつあるかな? くらいの感じですね。それこそ何年か前までは私に対して、紅一点とか、おてんば娘とか、じゃじゃ馬みたいな枕詞が絶対についてきてたけど、そういう言い方は世の中的にもちょっと減ってきたような気はする。まあ、リミテッドに関してはメンバーの性別関係なく集まってるバンドなので。ただ、やっぱり自分が女性であるということはすごく意識してるし、私はニーハオ!!!!というガールズ・バンドもやってるので、自分のなかでその使い分けはあるかもしれないですね。ニーハオ!!!!の場合はそんなにストレートに歌わなくても、女子だけのバンドってだけで伝わるものがあるし。
──たしかにそうですね。
YUKARI : それに、今回はこういうメッセージを込めたアルバムになりましたけど、私自身いろいろ変わっていく過程かもしれない。今現在にしても、そんなに歌いたいことがたくさんあるわけじゃないんですね、ただ、わたしはわたしとしていたいし、ほかの誰かはその人としていてほしいっていうだけで。だから歌詞の言葉選びも、実際、今回は「そんなにどんどんできないって!」と言いながらつくった部分もあるので(笑)。
谷ぐち : スタジオが終わったあとも僕らは一緒じゃないですか。で、そのときに歌詞がまだ出来てないと、YUKARIは家でもめちゃくちゃ機嫌が悪いんですよ(笑)。
YUKARI : なんていうか、音楽をやることで誰かの役に立ちたいと思ったり、なにかを変えたいと思えば思うほど、自分の首を絞めてる感はありましたね。だから、ここから先はまたバカバカしいことも同じように歌いたいなと思ってて。
──リミテッドをずっと続けていくためには、絶対にそっちも大切ですよね。
YUKARI : うん、そのへんの塩梅は大事だなって。それに今回のアルバムで歌い方や節回しのヴァリエーションが増えたので、そこはもっと拡げていけたらなとも思ってて。(飯田に向かって)どう思ってる? かっこよくなってるでしょ? YUKARIのヴォーカル。
飯田 : めちゃくちゃかっこよくなってるよ、それはもう。
──間違いなくそこが今作のポイントですよね。ライヴのエキセントリックな感じとはまた違う側面が見えてきたというか。
YUKARI : せっかくこんなふうに歌を録音できたんだから、ライヴでもそこを伝えられたらなっていつも思うんです。でも、いざライヴが始まると忘れちゃうんですよね(笑)。ライヴでもアルバムみたいな緩急がつけられたらいいんだけど。
谷ぐち : それは俺もちょっと思ってるよ。例えばワンマンをやるときなんかはそういうやり方もアリなんじゃない?
飯田 : いいですね。でも、みんながぐちゃぐちゃになってくライヴの面白さも絶対にあるからさ。
YUKARI : どっちにしても、私たちのライヴは誰かにとってのハレの日であってほしいと思ってるんです。また明日から頑張れると思えるような1日になってほしいなって。それで毎回ああいう感じになっちゃって、いつもみんなから「怪我するなよ」って言われちゃうんですけど(笑)
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過去作はこちらにて配信中!
LIVE SCHEDULE
『perfect ME』リリース・ツアー
2019年11月22日(金)@福岡 UTERO
2019年11月24日(日)@熊本 FACTOR
2019年12月20日(金)@静岡 Toast Bro
2019年12月21日(土)@大阪 火影-HOKAGE-
2020年1月19日(日)@新代田FEVER ワンマン
2020年2月1日(土)@京都Live House nano ワンマン
2020年2月8日(土)@名古屋HUCK FINN
2020年2月9日(日)@横浜K.I Sound Studio
2020年3月7日(土)@四日市VORTEX
2020年3月8日(日)@彦根ダンスホール紅花
and more…
ボロフェスタ2019
2019年10月27日(日)@京都KBSホール
OPEN 11:00 / START 11:25
出演 : Homecomings Chamber Set / でんぱ組.inc / カネコアヤノ / KID FRESINO / Limited Express (has gone?) / GEZAN / Have a Nice Day! / シャムキャッツ / フィロソフィーのダンス / オメでたい頭でなにより / 超能力戦士ドリアン / BiS / 愛はズボーン / teto / ハンブレッダーズ / ズーカラデル / Acidy Peeping Tom (From Taiwan) / Hi,how are you? / 金佑龍 / xiangyu / YOLZ IN THE SKY / チーターズマニア / ELEKIBASS / Sawa Angstrom / ときめき☆ジャンボジャンボ / NaNoMoRaL / Ribet towns / the seadays
【Talk Event】アジア・インディー・ロック徹底研究(出演 : 菅原慎一(シャムキャッツ) 司会/ 進行 : 岡村詩野)
MY DISCO ジャパン・ツアー
2019年11月27日(水)@渋谷TSUTAYA O-nest
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV. \3,000+1D / DOOR \3,500+1D
出演 : MY DISCO / Limited Express (has gone?) / HOPI / Mars89 / NENGU
詳細やその他のライヴなどはこちらをご確認ください
PROFILE
Limited Express (has gone?)
JJ(Guitar)
YUKARI(Vocal)
JUN TANIGUCHI(Bass)
YASUNORI MONDEN(Drums)
RYOTA KOMORI(Sax)
2003年、US、ジョン・ゾーンのTZADIKから1st albumをリリースし、世界15カ国以上を飛び回る。その後、memory labより2nd album、best albumをリリース。WHY?、NUMBERS、そしてダムドの日本公演のサポートを行うなど、名実共に日本オルタナ・パンク・シーンを率先するバンドになるも、2006年突然の解散宣言。半年後、突然の復活宣言。ニュー・ドラマーには、JOYのTDKを迎え2枚のアルバムを制作。TDK脱退後は、ふくろ / GROUNDCOVER.等でもプレイするもんでんやすのりが、ベーシストにはLessThanTVの谷ぐち順が加入。またサポート・メンバーとしてSAXに小森良太を迎え第3期がスタート。限定7inch、Have a Nice Day!とのスプリット・アルバム、2MUCH CREWとの合体音源を発売し、満を持して5thアルバム『ALL AGES』をリリース。そして、ロベルト吉野とのコラボ・アルバムの発売を経て、ニューアルバム『perfect ME』を発売する。
Official HP : http: / / www.limited-ex.com