最近はダンス・ミュージックを取り入れたロック・バンドがフロアを盛り上げているらしい。うん、別に悪いことじゃない。悪い事じゃないけど、同時に、なんかしゃらくせー話だなぁとも思うのだ。いや、そもそも必須条件だと思うんですよ。ロック・バンドの音にやられる経験っていうのは、つまり各楽器(ヴォーカルがいればそれも含めて)が混然一体となって叩き出すビートに身体が持っていかれるって事でしょう。それはどんなジャンルに細分化されようが同じだと思うんです。ところがその所謂「ダンス・ロック・バンド」の大半は、キックの音を硬くしてリニアなビートを鳴らしてるだけだったりして、げんなりさせられることもしばしば。もちろんそれを楽しんでいる人がいる以上あまり文句を言うべきではないけど、少なくともそういうものに音楽的な野心は感じられないんです。
つまらない前置きをしてしまったけど、ここで紹介するクリーン・オブ・コアはもちろんその「ダンス・ロック・バンド」ではない。マス・ロックをベースにした、プログレッシヴなインストゥルメンタル・バンドだ。で、これはかなり踊れます。彼らの演奏には聞き手の肉体を未体験の領域に誘おうという意志が確実に宿っている。常にダンス・フィールは失われないが、だからと言ってワン・フレーズをループさせていく訳ではなく、とにかく転調に次ぐ転調で、聴き手の緊張感が弛緩する事を一切許さない。リフを主体としつつもコード感を上手く残したギター・プレイは歌ものからの反響もありそうだし、目眩く展開は言葉以上にストーリーを感じさせる。確かに『Spectacle』というタイトルは言い得て妙だ。全編が強靭なビートで埋め尽くされていて、隙がない。その隙のなさが彼らだけの個性を見えづらくしているようにも思えるけど、どちらにせよこの作品で彼らのプレイヤビリティ、ポテンシャルの高さは露わになったと言えるだろう。何よりここには聞き手への挑発がある。是非それを体感してほしい。リスナーにひよった末の軟弱なダンス・ビートでばかり踊ってたら、そりゃロックなんてつまんなくなっちゃうよ。このバンドがマス・ロックやプログレが好きな人にしか届かないようではもったいない。(text by 渡辺裕也)
→「time wave」のフリー・ダウンロードはこちら (期間 : 8/13〜8/20)
激情&叙情! おすすめエモーショナル・ミュージック
box / aie
日本屈指のエモーショナル・ロック・バンドの1stアルバム。ハード・コアやポスト・ロック等の様々な要素を吸収したサウンドを作り出してきた彼等が更なる成長を遂げ、もはやEMOという形容では収まりきらない、圧巻のスケールでサウンドを展開。美しいメロディーには更に磨きがかかり、ポップな曲はよりポップに、アグレッシヴな曲はよりアグレッシヴに! アルバムを通して1つの物語を観ているかのような心地になります。
dis is the oar of me / Discharming Man
蛯名啓太率いる、Discharming man。今作では、札幌シーンの最重要人物の一人、bloodthirsty butchersの吉村秀樹もギター、プロデュースで全面的に参加しており、尋常じゃない重量感と張り詰めた空気感を醸し出しています。そして、特筆すべくは唄。決して孤高の世界で完結しない、全霊で思いの全てを吐き出す唄には感情を揺さぶられます。
シンボリック・エレファント / wooderd chiarie
バンド自身初となるフル・アルバム。前作の『アルモニ・カフカ』で全曲日本語詞に挑み、「愛と感謝」をコンセプトに文学的な要素を取り入れた世界観でバンドとしての方向性を確立。今作ではさらにストーリー性を秘めた叙情的な詞の世界と、表現者として評価が高まる上邨のボーカルが聴くものを魅了します。
LIVE SCHEDULE
- 9月12日(土) @下北沢ERA
w / Clean Of Core(VJ mitchel) / 9dw / nhhmbase / aie
- 9/21日(月) @札幌 KLUB COUNTER ACTION
- 9/22日(火) @札幌 HALL SPIRITUAL LOUNGE
- 9/25日(金) @熊谷 BLUE FOREST
- 9/26日(土) @前橋 DYVER
- 9/27日(日) @水戸 club SONIC
- 10/03日(土) @千葉 稲毛K's Dream
- 10/04日(日) @大阪 鰻谷SUNSUI
- 10/11日(日) @徳島 銀座crowbar
- 10/12日(月) @愛媛 松山星空JETT
- 10/23日(金) @仙台 仙台BIRDLAND
- 10/24日(土) @山形 sandinista
- 11/02日(月) @福島 いわきSONIC
- 11/03日(火) @秋田 Club SWINDLE
- 11/14日(土) @名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
- 11/15日(日) @京都 METRO
- 11/21日(土) @大阪 中百舌鳥 club massive
- 11/22日(日) @神戸 BLUEPORT
- 11/23日(月) @岡山 PEPPER LAND
- 11/27日(金) @東京 下北沢SHELTER -FINAL-
PROFILE
Clean Of Core
2005年、高校の同級生であった武田と加藤を中心に千葉で結成。インストゥルメンタルというスタイルをとりながらも、そこにエモーショナルな要素を吹きこみ、タイトかつハードな音を掻き鳴らしたたみ掛けるプログレッシヴな展開は圧倒的である。そして緻密な構成の中に時折みせる叙情的な旋律は彼等が“創造”する世界を更に拡大させる。現代のマス・ロックを代表するバンドや、70年代プログレッシヴ・ロックからの影響を受け希有の存在を目指した、正に先進的(=progressive)であり独特の世界観からなる音楽性は、新世代プログレ/マス・ロックから生まれた新しい形の云わばダンス・ミュージックでもある。昨年はデビュー前にも関わらず、山形のフェス「do it 2008」に出演し話題に。またこれまでに、数多くの海外インディー・バンドの来日公演をサポートするなど精力的なライブ活動を展開してきた。そして長い間リリースが待たれた彼等は遂に日本デビューを果たし、更には10月にヨーロッパでのデビューも決まっている。長い間リリースが待たれた彼等だが、国内ではsgt.やwooderd chiarieなどを輩出してきた、Penguinmarket Recordsから待望のリリースとなる。
10月中旬には、54-71、LITE、Zなどをライセンス販売している、アイルランドのレーベル「Transduction Records」から9曲入りフル・アルバムでイギリス、ヨーロッパ圏内での発売も決定している。
- official web : http://penguinmarket.org/cleanofcore/
- Penguinmarket Records web : http://penguinmarket.org/
- Transduction Records web : http://www.transductionrecords.com/