camelliaの新作がOTOTOY特別仕様で配信開始!
もはやこれはポップスの仮面を被った現代音楽として捉えるべきか。いやいや、彼らがひたすら複雑なアンサンブルを紡ぎ続けることにスノビッシュな狙いはなにもないはず。あくまでも彼らの快感原則に沿って演奏したらこうなったということなんだろうが、それにしてもあまりにストイックである。06年から千葉で活動を開始して以来、camelliaは瞑想に近い集中力で自らのイマジネーションと演奏家としての技量を伸ばすことに腐心し続けている。そこから生まれたこのプログレともミニマルともつかない怪奇なトリップ・ミュージックをぜひ体感して頂きたい。
インタビュー & 文 : 渡辺裕也
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camellia / "22'16"
【Track List】
01. "4'19" for download / 02. "9'43" part1 for download / 03. "9'43" part2 for download
04. "8'14" part1 for download / 05. "8'14" part2 for download
孤高の存在感を放ちつつあるcamelliaの新作。前作同様に、長尺の"インスト"と言われる楽曲が中心。ゲスト・ミュージシャンにLA-PPISCH、KEMURI等のサポートとして活動する増井朗人がトロンボーンとして参加。そして、海外からex-Buttholl Surfers、Daniel Johnstonのプロデューサー等として知られるKRAMER氏に、自身からプロデュースを希望されるなど、大絶賛。国内からはjoji氏(dustbox)、村田幸雄氏(MY WAY MY LOVE)等からも賛辞の言葉を頂くなど、聞き手の好みを選ばない完成された世界を構築している。圧倒的な芸術性を言葉で表す事は非常に難しい。
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camellia / "22'39"
【Track List】
01. "6'56" part1 for download / 02. "6'56" part2 for download / 03. "9'06" part1 for download
04. "9'06" part2 for download / 05. "7'37" part1 for download / 06. "7'37" part2 for download
今回の収録楽曲は発表当初から、英国REVERB WORSHIPの希望により枚数限定での海外リリース。仏国人映像作家、Miles Supicoへの楽曲提供。米国Poison Tree Recordsより配信限定リリースをする等、全世界規模にて密かな話題に。本作は、2008年の発表以来、上記の様な評価を獲得し、国内ではライブ会場限定のみで販売されていた音源のリマスター、音質改善盤。今後の動向が注目されていた中、自ら立ち上げる”leaves records”第1弾アーティストとしていよいよ配信開始。
camellia(石渡隆史)インタビュー
――camelliaの楽曲は長尺のインストゥルメンタルが軸になっていますが、これはいわゆるジャム・バンド的な作り方で出来たものなんでしょうか。それとも石渡さんのイメージを具現化して出来たものなんですか。
石渡 : 曲の外枠に関しては僕が作り込んでいますね。その中身はけっこうルーズです。ただ、尺、フレーズはあらかじめある程度決めて臨むので、いわゆるジャムみたいなものとは全く違います。
――作品名と楽曲名がタイム表記になっていますが、ここにはなにか意図があるのでしょうか。
石渡 : それはむしろ意図を持たせずに、ただ形として残したかったからそうしているというか。元ネタはジョン・ケージですね(笑)。
――なるほど。では、ジョン・ケージのどんなところに惹かれてそのアイデアを採用したのですか。
石渡 : 発想ですね。「すべてを音として扱う」という発想が自分にとっては興味深いものでした。たとえばこういう音とかも(机をトントンと叩く)楽曲として成立させるという考え方。僕が試したいのは、ある程度綿密に書かれた楽曲の中に、どれだけそういった遊びを忍ばせられるかということで。何をするにも相反する要素を入れたくなるんですよね。きっちり書いた部分があれば、他をぐちゃぐちゃにしたくなる。あるいは人が聴いてぐちゃぐちゃだと感じる部分は、実は自分達が綿密に作った箇所だったりするわけです。ただ、曲名に関しては、単純に録り終わったらその時間だったからそうしようかというだけで、深い意味はまったくないですよ。ジョン・ケージのこともそこまで重たく捉えているわけではなくて、単純にアイデアを借りただけなので。彼のようになりたいとか、そういうのはまったくないです。
――楽曲は主にギターから作っていくんですか。
石渡 : 最近はピアノで作ることが多いですけど、基本的に楽器は何でもいいですね。頭で鳴った音をまずはその時近くにあるもので一度音にしてみるんです。その後からそれを各々のパートに置き換えるようなやり方です。ただ、自分の中で完成させちゃうとそこで終わっちゃうので、その前にメンバーとスタジオに入るようにはしています。完成前にまず遊びを残して、そこから作り込んでいくことが今の僕らは多いですね。懲りすぎてもつまらなくなるし、全てを決めてしまっても各プレイヤーの能力が出し切れなくなる気がするので。
――camelliaにはプレイヤーの3人の他に、音響を担当するメンバーがいますよね。そこにはどんな狙いがあるのでしょう。
石渡 : ライヴを作品に近づける為ですね。録音する時には3人がリアル・タイムで演奏するもの以上の音が出ているので、その再現を目的とした部分が最初は特に大きかったです。PAにも直接音を出してもらっているので、曲も覚えてもらわないといけないし、いわゆる外注のPAさんにやってもらうのは悪いな(笑)、という仕事量が僕らのバンドに関してはあって。
――つまりライヴ演奏と音源で聴かせるものを合致させたいということですか。
石渡 : えーと、そういうわけではないんです(笑)。作品は作品、ライヴはライヴとしてクオリティを変えずに違う方向性でしっかりと作り込んで、もっと異なる感じを出したい。それもさっきの真逆の要素を欲するという話と一緒ですね。
――では、camelliaの制作において、これまでなにかヒントになった音楽があれば教えて頂きたいです。
石渡 : それは時期によって変わるのでなんとも言えないですけど(笑)。たとえば、先ほどのジョン・ケージの話だと、サティの曲を易経で並べ変えたものがあったり、そういったアイデアがすごく好きなんですよね。
――いわゆるポップスからは離れるんですね。
石渡 : 手法としてはそうかもしれないですね。ただ、音程、リズムは所謂ポップなものを選んでいるときもあります。
――たとえば、演奏力が向上していくと自ずとフリー・インプロヴィゼーションに向かうプレイヤーもいますが、camelliaのみなさんもそういったアプローチに関心はあるのでしょうか。
――音色に関してはどうなんでしょう。
石渡 : ここは直感なんです(笑)。レコーディングの時もその場で作ります。記録もなにもせず、戻れない状態で全部やります。というのも、前にやったことを覚えちゃうと、その時のよかった印象をなぞっちゃいそうで。だから僕らはプリプロもやりません。すべてその場で考えます。大枠はありますけど、上モノのフレーズとかはその場で決めていきます。だから、あとになってどんな音を入れたかもよく覚えてないんですよね。これは、さっき言った神経質な部分が出過ぎない様自分に言い聞かせているルールみたいなものです。
――一方でヴォーカルが入った曲はとてもメロディアスで歌詞もかなり具体的ですよね。そこもまたアンビヴァレントな感じがしますが。
石渡 : たとえばテクノを聴く楽しさと、ビートルズを聴く楽しさって、自分の中ではあまり変わらなくて、自分が書いた曲を聴きたい順番で並べたら自然と歌が入ってきたというだけです。ただ歌詞を書くことはあんまり得意じゃないと思います(笑)。すごく時間がかかりますね。目的を持って書いちゃうとイメージが制限されちゃうので。
――つまり語感重視? かといって散文というわけでもないですよね。
石渡 : 散文まではいきませんけど、語感重視の部分はあります、本当に好きにとってもらいたいです。自分はその歌を書いた時と今では気持ちが変化しているのにそれを歌い続けることはできないというか、そういうものに興味が持てなくて。さっきも言った様にイメージの制限もしたくないので、長い期間を経て残った言葉を並べていく、と言う感じです。逆に、その時に思っていることをすぐ言葉にできるなら、歌詞は歌う度に変わってもいいとも思ってます。
――音楽性だけでなく、歌詞で表現されるエモーションもその度に更新されていかないと不自然だと。そうなると音源という記録物を作ることへのモチベーションってなかなか上がらないんじゃないですか。
石渡 : うーん(笑)。思ったことをそのままきれいな形にして出せる能力が自分にはまだまだないので。それに、さっき言ったような録り方をしているから、すぐに忘れちゃうんですね。でも、自分が録音したものをあとになって聴いてみて、悪いもんじゃないなと思うことはありますよ。今回の作品に関しては古い作品をリマスターしてリリースさせてもらうので。
「型ができているな」と自覚したら、それはもうやらない。
――録音されたのは『"22'39"』が2008年、『"22'16"』が2009年なんですよね。
石渡 : そうです。だから今になって聴くと「そんなことをやったなぁ」という感じなんです。その時の自分が好きでいたものを思い出したりしますね。作品を作ること自体はすごく好きなので、ある意味つまらないと言われるくらいきっちりやりたくなる。それは生で演奏する時とのギャップを作りたいからというのもあって。さっき音響の話をしましたけど、ライヴの時に僕がレコーディングで弾いた上モノをPAがそのまま出すわけではないんです。PAも自分が持っているネタの中から、演奏に合わせてアプローチしていくんです。
――余談ですが、trico(石渡がベーシストとして参加していたバンド。2010年5月に解散)で活動されていた時、石渡さんはバンド内ではどういう立ち位置だったんでしょう。
石渡 : tricoに関しては、作曲には口を出さないと自分の中で決めていて。提出された曲を整えるのが自分の仕事だと思ってました。他の人間からでてきた楽曲に自分が手を加えることで、どこまでよい形にしていけるか。そこに取り組むのがすごく楽しかったんです。最初に聴かせてもらった段階でピンとこなかったとしても、そのルールに従ってやると最終的にいい結果に繋がることがあって。みんなが持ち寄ったアイデアのバランスが取れて曲を形作っていくので、すごく時間はかかるんですけど、それがすごく楽しかった。(camelliaは)すべて自分の判断で形にしていくので、同じようにじっくり時間をかけてやると、果たしてこれがいいのか悪いのかが分からなくなる時があって。だからこのバンドに関しては時間をきっちり決めることがすごく重要で。考えすぎちゃうとよくないことの方が多いから。ここで終わりにするということだけを決めたら、あとはひたすらやって、時間が来たらきっちり終わる。それに、どれだけこだわって作ったものでも、半年くらい経過すると興味がなくなるんですよね。だから深く考え込まずに力を抜いて、その時の感覚に従うようにしています。自分の作品もあまり聴かない方だと思います。
――他のアーティストの作品はどうでしょう。
石渡 : 昔はめちゃくちゃ聴き込むタイプでしたね。それこそ曲の構成とかアプローチをすべて覚えるまで。好んで聴いていたものは70年代以前の作品が多かったです。ただ、今は人の音楽にしても、曲を覚えるのがいやなんですよね。好きなアーティストのライヴを観に行く時も、その時に思ったことを大事にしたいので、予習はしません。曲を覚えると、演奏が始まった瞬間に最後までのイメージがある程度出来ちゃうじゃないですか。それが面白くないというか。過去に聴いたことがある楽曲でも、久しぶりにパッと聴いた瞬間に何を感じるかで、過去と現在の自分の差が理解できるというか。聴こえ方が変わっていることを自覚しながら、自分の変化を確認しているのかもしれません。
――お話を伺っていると、(camellia)結成当初と現在では音楽性もだいぶ変わっているんだろうと思ったのですが。
石渡 : 昔は尺も短かったし、いわゆるギター・ロックの域から出ないものだったと思います。自分が聴き手として好きなレベルのものを自分で作れると思ってなかったし、ある意味諦めていました。でもそれをがんばって突き詰め始めたら、今のような形になってきたんです。具体的な変化で言えば楽曲の長尺化、ポリリズム、クロス・リズムの多用等だと思うんですけど、こういったアレンジってある程度の長さがないと何が起こっているかが分かりにくいと思うんですよ。なんか変なことが起こっているなということをうまく伝えるには、あれくらいの長さが必要だと思っていますので(笑)。昔の曲を聴くともっと長くても良かったかな、ってのもたまにあります。と言うか、その日の気分で変えたいくらいです。
――以前は発想に演奏力が追いつかなかったということですね。
石渡 : まだ今もそうです。いつもみんなが演奏できない曲ばかりで(笑)。でも、能力が足りないことを理由に楽曲へのアプローチを変えることはないし、それが演奏していくうちにできるようになることも、もう全員わかってくれているので。ひたすら各々が自分の集中力を試している様な感じです。いわゆるジャム・バンドのような、誰かしらのメンバーがきっかけを作って曲を動かしていくやり方に今はあまり興味が持てなくて。それよりも膨大な尺の中をなんのきっかけもなくどんどん移り変わっていく方がびっくりするんですよね。それをやると自ずと長くなってしまうというか。でも、ただ長ければいいわけではなくて、適切な形というのが大切なんです。とにかく同じことを繰り返したくないんです。これは楽曲のミニマルな部分とは矛盾しますけど(笑)。「型ができているな」と自覚したら、それはもうやらない。それだけがルールですね。
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LIVE INFORMATION
2011年11月19日(土)@新宿motion
camellia new maxi single"22'16"ご購入者特典無料ライブ
open 11:30 / start 12:00
charge free(+1D)
※TOWER RECORDS先行発売各店舗にてお買い求め頂いた"22'16"に封入されているチケットをご持参下さい。
(先行発売店舗、特典詳細はこちらを参照ください。)
2011年11月20日(日)@千葉稲毛K's Dream -tour start-
2011年11月23日(水)@仙台FLYING SON
2011年11月24日(木)@新潟CLUB RIVERST
2011年11月25日(金)@群馬高崎club FLEEZ
2011年11月26日(土)@長野伊那GRAMHOUSE
2011年11月27日(日)@名古屋新栄CLUB ROCK'N'ROLL
2011年12月02日(金)@大阪心斎橋火影 -HOKAGE-
2011年12月03日(土)@神戸ART HOUSE
2011年12月10日(土)@熊谷Blue Forest
2011年12月11日(日)@下北沢ERA -tour final-
PROFILE
camellia
kazuya notsuke(bass、voice)
yukinori hijikata(drums、voice)
shogo kaneda(public address、synthesizer)
2005年1月楽器隊3人にて結成、2006年1月より活動開始。2010年1月よりPAを加え4人編成となる。圧倒的に自由な精神はcontemporary music~popsを自在に行き来し構築、破壊を繰り返す。無秩序な演奏とも相まり純粋に結果的avant-garde。