日暮愛葉、中尾憲太郎を中心にした新生シーガル、15年ぶり復活作! GuruConnectによるアルバム・リミックスをフリーDL配信
国内オルタナティヴ・ロックの雄、Seagull Screaming Kiss Her Kiss Herが帰ってきた。日暮愛葉を中心に1992年結成。2002年の活動休止後も長きに渡って復活を熱望する声が絶えぬなか、2014年1月、中尾憲太郎の呼びかけにより全く新しいメンバーによる新生Seagull Screaming Kiss Her Kiss Herが再び姿を現した。
新生シーガルは、日暮、中尾を中心に、ギターに快速東京の一ノ瀬雄太、キーボードに385など様々なバンドで活躍する蓮尾理之、ドラムにはTHE GIRLでも日暮とともにしたおかもとなおこ、コーラスにMiila and the geeksのmoeと、国内のオルタナティヴ〜パンク・シーンに欠かせない人物が集結。6人での活動開始から約1年半を経て、待望のフル・アルバムがドロップされた。
OTOTOYでは、本作の配信とともに、アルバムのリミックス音源を無料配信。リミックスを手がけたのはアヴァン・ヒップホップ・レーベル〈BLACK SMOKER Records〉内で初のバンド、skillkillsのスグルスキルことGuruConnect。メンバーも興奮の声をあげたというリミックス音源は、アルバムの入り口としてもサブテキストとしても有効なのは間違いないのでぜひゲットしていただくとして、GuruConnectを迎えての世代をまたいだ鼎談で本作の魅力を切り取った。
>>GuruConnectによるアルバム・リミックス音源をフリー・ダウンロード配信!!<<
期間 : 2015年9月9日(水)〜2015年9月15日(火)
Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her / ETERNAL ADOLESCENCE
【Track List】
01. Damn’ it I know what I am
02. No Talk
03. Wannabe
04. Kiss and Make Up
05. Beauty
06. Trash and No Star
07. Sugar me
08 Heaven to Hell
09. Fuckin’ Blue
10. Ah~ha~ha~ha~(Jesus Never Mind)
【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC / AAC / MP3
※ファイル形式について
【価格】
単曲 205円(税込) / アルバム 2,057円(税込)
鼎談 : 日暮愛葉×中尾憲太郎×GuruConnect
昨年、およそ12年ぶりに活動を再開したSeagull Screaming Kiss Her Kiss Herが、ついに新作を上梓する。現在のシーガルは中尾憲太郎をバンマスとした6人体制で、もちろんそれを牽引するのは日暮愛葉だ。シーガルの活動休止以降、彼女はソロ、そしてLOVES.やTHE GIRLとしていくつもの作品を発表してきたが、やはりというか当然というべきか、それらとシーガルはまったくの別モノ。不機嫌な歌声と、肌を刺すようなノイズ。この『ETERNAL ADOLESCENCE』(永遠の思秋期)というアルバム・タイトルが物語るように、シーガルをシーガルたらしめるものとは、日暮愛葉の初期衝動であり、それが今も彼女の中で燃え盛っていたことを本作は示している。
さて、そんなシーガルの復活作に早くも触発された男がいる。彼の名はGuruConnect。バンド「skillkills」のリーダー、スグルスキルとしても活動する彼は、日暮から渡された『ETERNAL ADOLESCENCE』を聴き、すぐさまリミックス音源の制作に取り掛かったという。そこで今回はシーガルとGuruConnectの知られざる関係性を紐解くべく、日暮と中尾、そしてGuruConnectの3者による鼎談を企画してみた。
インタヴュー&文 : 渡辺裕也
写真 : 大橋祐希
「音源をいただいたお礼に作ってみました」って(笑)
――このリミックス音源はGuruConnectさんが自主的に制作された作品なんだそうですね。
GuruConnect(スグルスキル) : はい。勝手につくりました(笑)。
日暮愛葉(以下、日暮) : 完成したアルバムの音源をスグルに送ったら、すぐにこのリミックスが返ってきたんですよ。「音源をいただいたお礼に作ってみました」って(笑)。それで聴いてみたら、これがもう、めちゃくちゃかっこよくて。すぐに「これ、最高なんだけど!」って伝えたら、「そんなに褒めてもらえるなら、もうちょっとがんばります」って、勝手にまたブラッシュアップしてくれて(笑)。
GuruConnect : だいたいヒマなんですよ、俺(笑)。だから、最近はプロレスばっかり観てたせいでサボりがちだったんですけど、1日に1曲はつくることにしてて。で、いつものようにビートを作っていたときに、ちょうどシーガルの音源が送られてきたんです。それでさっそく聴いてみたら、とにかく音がめちゃくちゃよくて。これは(リミックス用にサンプリングする音が)抜けるなと。
日暮 : このリミックスはもう、「THE・スグル」って感じだよね。スグルって、曲を聴いてると気が狂ったやつにしか思えないんだけど、実際に会うとすごく優しい人で、そのギャップがまたいいんだよね。音楽性と人格がちょっとズレてるというか(笑)。
GuruConnect : そんなつもりはないんですけどね。普通にいい曲をつくろうと思いながら、いつもがんばってるんですけど…。まあ、そんなことは置いといて、今のシーガルには蓮尾くん(蓮尾理之 / 385、bonanzas、ジェッジジョンソン)がいるんですよね。「メンバーにキーボードがいるんや?」ってことに、最初はちょっと驚いて。
――今のシーガルは、過去の音源もそのままライヴ上で再現できる編成になってますよね。
中尾憲太郎(以下、中尾) : そうなんです。もともとシーガルって3ピース・バンドなんですけど、そのころの音源を聴くと、じつはけっこう鍵盤が入ってる曲が多いんですよね。で、今までその音源を聴いてきた人は、もう随分と長いあいだ、シーガルのライヴを観てないわけじゃないですか。だから、そこには相当な脳内補正がかかっているだろうと。だから、その期待を裏切らないような演奏ができるようにしたかったんです。
――なるほど。
中尾 : ただ、あくまでもこれはライヴ上での再現力を考えたものであって。アルバムの制作に関しては、やっぱり愛葉さんのなかでシンプルにやってほしいなと。曲の芯になる部分を愛葉さんに出してもらったら、あとはそこに自分が肉付けしていくような感じというか。
日暮 : 憲太郎は私に「まず愛葉さんが自分のなかにある曲を、100パーセントの状態で表現してください。それさえ送ってもらえれば、そこからは俺も考えるんで」と言ってくれたんです。他人の意見とか、いま世の中にある音楽のことなんか気にせず、いつものように私が鼻歌でつくった曲をくださいって。
GuruConnect : 歌以外はそうですね。それこそ尺まで全部そのままやってもらってます。ただ、俺の場合は頭のなかも何もないんですけどね(笑)。ただひたすらパソコンでつくってるだけというか、行き当たりばったりなんで。
日暮 : そんなにテキトーじゃないでしょ(笑)。
GuruConnect : でも、「降りてくる」みたいなことはないですよ。まあ、パズルみたいな感じというか。
日暮 : 数学的に考えてるってこと?
GuruConnect : いや、ノリっすね。自分がノリでつくったものを無理やりメンバーにやらせてるというか(笑)。だから、みんなは大変そうです。
日暮 : 初期のシーガルもそんな感じだったよ。それこそ「ここのハイハットはオープンか、それともクローズか」ってとこまで、ぜんぶ私が指示してたから。あのころの私、本当に嫌な人だったと思う(笑)。
GuruConnect : でも、そういうところってすごく気になりますよね。自分からすれば、そこはハッキリしてるわけだし。
日暮 : そうなの! だから、当時はみんなにお願いしてたんです。「まずは私のやりたいようにやらせてみてほしい!」って。
愛葉さんの頭のなかで鳴ってる音を具体化していくのが、僕のやる作業
――つまり、他の制作方法を試していた時期もあるということですよね?
日暮 : そうですね。人のアイデアを求めていた時期もありました。
中尾 : それこそLOVES.はセッションで作ってましたもんね?
日暮 : うん。THE GIRLもすごく民主的なやり方でつくってた。でも、そうやっていろんなやり方を試してみた結果、やっぱり私は自分ひとりでつくることが好きみたいで。そう思えたら、こうしてまた再びシーガルを始めるってことに、ようやく合点がいったんです。今は私がやりたいことを憲太郎が理解してくれてるし、わからないときはわかるまで質問してくれるから。
中尾 : 説明を聞きながら「あぁ、多分いま愛葉さんはルーム・リヴァーブのことを言ってるんだな」とかね(笑)。そうやって愛葉さんの頭のなかで鳴ってる音を具体化していくのが、僕のやる作業なんです。それに僕らは音楽のルーツがわりと近いから、そのへんの情報がけっこう共有できてるんですよ。
――Skillkillsの場合はいかがですか。
中尾 : そこはもう、兄弟だもんね。
GuruConnect : まあ、そうですね(笑)。俺がテキトーに打ったドラムも、そのまま再現してもらってる感じなので。
――それこそ譜割りがズレてるようなところもそのまま?
GuruConnect : そうですね。なるべくバンド用の曲は自分なりにメンバーを思いやりながら作ってるつもりなんですけど、それでも最初のころは「これ、物理的に無理。手が4本くらいは必要になる」とか言われちゃうこともけっこうあって(笑)。「無理か。それならしょうがないね…」と言いつつ、じつはちょっと譜に落ちてなかったり(笑)。
日暮 : その気持ち、めっちゃわかる(笑)。
中尾 : でも、サトシ(skillkillsのドラム。GuruConnectの弟)はそれをかなりやってる方だよ。あいつホントすごいと思うわ。
GuruConnect : そうですね。だから、バンドとソロでは曲の作り方がぜんぜん違うんです。それこそ今回のリミックスをつくるときだってそう。誰かが演奏することを考えなくてもいいわけだから(笑)
私、こんなにスグルのことを理解できるとは思わなかったよ(笑)。考え方が本当に近くてびっくり
――それと同じような意味で、今回の新作に収録されている「Beauty」はかなり強烈なアレンジですよね。あの曲に関しては、愛葉さんがひとりですべて演奏されてるそうですね。
日暮 : はい(笑)。あれはもともとCM用に頼まれて1フレーズだけ用意してた曲だったんですけど、「これ、案外シーガルでやってもいいかも」と思って。
――あの曲、ハープの音が延々とループしてるじゃないですか。あれ、かなりぶっ飛んだアレンジだと思うんですが。
中尾 : 僕もそう思ったし、そんな曲がいきなり送られてきたわけですから、もはや狂ってるとしか言いようがないですよ(笑)。でも、たしかにそういうところはスグルと似てるかもね。
日暮 : うん。それに私、なんかパソコンの使い方がスグルと似ている気がするんだよね。
GuruConnect : たしかに。俺、ソフトの使い方をなるべく覚えないようにしてるんですよ。ああいうのっていちど覚えちゃうと、つまらなくなっちゃうじゃないですか。
日暮 : そうそうそう(笑)。まあ、私の場合は本気で使い方がわかってないんだけど。
GuruConnect : 正直、俺は最近ちょっとわかってきちゃってます(笑)。さすがにもう100曲以上、おなじ機材で作ってますから。そろそろ違うソフトにしたいな。
中尾 : それでまたイチからやるんだ(笑)。スグルは本当にパソコンとセッションしているような感じだよね。
GuruConnect : そうですね。リミックスにしても、ネタが少ないときの方がけっこう出来ちゃうんですよ。今回のやつだってそう。パラデータをもらうよりも、完成版からなんとか音を抜いてくやり方だったからこそ頑張れたというか。まあ、俺が勝手にやってるだけなんですけどね(笑)。
日暮 : でも、その「勝手にやる」っていうのもわかるよ。私、締切があろうがなかろうが勝手に頑張るタイプなので。スグルもそうでしょ?
GuruConnect : そうですね(笑)。俺、6ヶ月連続でソロ・アルバムを出したんですけど、それが終わったあともなんか物足りなくて、その流れで今もずっと作っちゃってるんですよね。それに「俺、今日1日何もしてねえや」みたいなことになると、なんか罪悪感あるし(笑)。
日暮 : あはははは! 私、自分がこんなにスグルのことを理解できるとは思わなかったよ(笑)。考え方が本当に近くてびっくり。私も一旦つくろうと思ったら、だいたいはその場ですぐつくっちゃうんです。「今はちょっと忙しいから明日やろう」みたいなことが出来ない。
GuruConnect : わかります(笑)。
中尾 : それ、憧れるわー。僕は締め切りがないと出来ないタイプなので。いつも追い込まれてから「もうそろそろやべえぞ!」みたいなテンションで作業してますね(笑)。
日暮 : 私はそれが羨ましいよ。だって、自分が勝手に頑張ってるだけなんだもん。たとえばCM用に曲を頼まれたときなんかは、早く提出すれば喜んでもらえるけど、アルバム用の曲を急いで作っても、そこにみんなが合わせられるわけじゃないでしょ? で、そういう曲は自分のなかでどんどん古くなっちゃうから、レコーディングするころには飽きちゃって、結局また別の曲を作り直すことになっちゃうんです。同じ曲に何度も手を入れたくないっていうのもあるし。
シーガルとナンバーガールを聴いてた人がskillkillsをやってるって、相当いいよね
――つくった曲はファースト・インプレッションの状態からなるべく変えないということ?
日暮 : うん。そこには誰も手を入れちゃいけない気がする。だから、もし憲太郎が用意してくれたフレーズが違うと感じた場合は、そこははっきり「違う」と伝えます。でも、そう感じることって本当に少ないんですけどね。今回のアルバムでも1曲だけだったし。
中尾 : でも、その1曲が時間かかりましたよね。ちなみに「Sugar me」って曲なんですけど。
GuruConnect : あ、それベースから始まる曲ですよね。あのベースはリミックスに使いました(笑)。あれ、まさに憲太郎さん節って感じですよね。
中尾 : そうなんだよ。なんかあの曲だけ、シーガルっぽくないというか、男らしいストイックさがあるでしょ? シーガルでそういう演奏は避けてたんだけど。
日暮 : あれはシーガルのCrypt Cityヴァージョンだから(笑)。でも、私はスグルのリミックスだって、すごくシーガルっぽいと思ったよ。憲太郎はそう思わなかった?
中尾 : 俺はぜんぜんそう思わなかったな(笑)。「これはめちゃくちゃスグルだなー」って。
日暮 : でも、初期のシーガルもああいう混沌とした感じだったよ。それこそ、プロデューサーという名のもとにひたすらお菓子を食べまくる中原昌也がいたりさ(笑)。あのころはそういうおもしろい大人たちがまわりにたくさんいて、私たちの曲を料理してくれて。スグルのリミックスを聴いたら、ちょっとそのころの感じを思い出したんだよね。
――一方で、そのスグルさんはシーガルから影響を受けてきた世代でもあるわけで。
日暮 : うん。それってホントすごいことですよね。
GuruConnect : それこそ俺たちは若いころにシーガルやナンバーガールを聴いて「バンドやりたい!」と思ったわけじゃないですか。今回のアルバムにも、やっぱりそう思わせるものがあるんですよね。これを聴いてバンドを始める若い人たちが、きっとまた出てくるような気がします。
中尾 : それでskillkillsみたいなバンドを始めるやつがいたらおもしろいよね(笑)。
GuruConnect : まあ、俺らの音楽を聴いて「バンドやりたい!」と思う人はあんまりいないでしょうけど(笑)。それに、俺の場合はすべてにおいて浅く広くやりすぎてるので。「影響を受けたバンドをひとつあげろ」って言われても、自分ではよくわからないんですよね。
日暮 : わかるわー。私もすごく表層的な聴き方なんですよ… って、こんなことミュージシャンが言うべきじゃないんだけど(笑)。
GuruConnect : あんまり大きな声じゃ言えないけど、僕もそうです(笑)。
日暮 : でも、シーガルとナンバーガールを聴いてた人がskillkillsをやってるって、相当いいよね(笑)。skillkillsって他に似たバンドがいないし、相性が合う対バンとかもいなさそうな感じがして(笑)。
GuruConnect : あははは(笑)。たしかに〈BLACK SMOKER Records〉のイヴェント以外はぜんぶアウェイですね。でも、逆に言えばそれはどんな組み合わせのライヴでもアリってことなんで。
日暮 : そうそう。そういうはみ出ちゃってるバンドがシーガルを聴いてたっていうのは、素直に嬉しいな。というか、私とスグル、ホント似てるよ。今度は2人で呑みに行こうか(笑)。
LIVE INFORMATION
ETERNAL ADOLESCENCE TOUR
2015年10月21日(水)@渋谷CLUB QUATTRO
GUEST : Buffalo Daughter
2015年10月23日(金)@梅田CLUB QUATTRO
GUEST : Buffalo Daughter
PROFILE
Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her
Vocal and Guitar : 日暮愛葉
Bass and Chorus : 中尾憲太郎(crypt city / YounGSounds)
Drums : おかもとなおこ (つばき / DQS / THE GIRL)
Guitar : 一ノ瀬雄太 (快速東京)
Keyboard : 蓮尾理之(385 / bonanzas / THE JETZEJOHNSON)
Chorus : moe (Miila and the geeks / Twee Grrrls Club)
1992年にトリオ・バンドとして始動。オリジナリティー溢れるの楽曲とクールなライヴ・アクトで脚光を浴びる。数々のシングル、アルバムをリリース、コンピレーションにも多数参加。イギリス名門レーベル〈Cherry Red Records〉からもベスト盤をリリース。全米ツアー6回、台湾ツアーなど海外でも人気に。その後2002年に活動休止。2014年1月1日から新生シーガルとして中尾憲太郎をバンマスに迎え現在のメンバーに。
>>Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her Official HP
skillkills
スグルスキル(Ba)、リズムキルス(Dr)、マナブスギル(Vo,Gt)、ヒカルレンズ(Key)。2011年1月に突如として現れ、完全にネクスト・レベルのビートを軸に凄まじき世界観を叩きだす4人組。アヴァン・ヒップホップ・レーベル〈BLACK SMOKER〉が誇る黒い突然変異体。2011年12月24日に1stアルバム『skillkills』を、2012年12月26日に2ndアルバム『BLACK MUTANT』を発表。そして古巣であるBLACKSMOKERを離れた後、自身のレーベル〈ILLGENIC RECORDS〉を立ち上げ、2014年1月22日に3rdアルバム『ILLGENIC』をリリース。全国で精力的に活動中。