
いま最も注目すべきSSW青葉市子の3週連続新曲リリース企画。第2弾の音源「レースのむこう」をHQD(24bit/48kHzのWAV音源)とmp3で配信スタート! 第1弾の「パッチワーク」同様、今回も青葉市子自身によるイラスト入りの歌詞付きです。そして、これまで一切の媒体に露出することのなかった青葉市子本人への単独独占インタビューも実現。今週は、来週とあわせて2度にわたってお送りする、自らを語ったその初めてのロング・インタビューの前編を公開。ベールに包まれた驚異のSSWの真実に迫るべく彼女のルーツから読み解きます。
新曲第2弾「レースのむこう」HQDとmp3で配信スタート
青葉市子 / レースのむこう
第1弾の「パッチワーク」同様、自らが奏でるギター1本だけで、まるでオーケストラのような壮大な世界を構築。どこか懐かしさも覚えるヴォーカルには不思議な安心感が宿っている。その歌声は大貫妙子、松任谷由実といった偉大なる先駆者たちの系譜に連なるものだ。
【特典】
青葉市子本人による書き下ろしの手書きイラスト入り歌詞画像がついてきます。
新曲第1弾「パッチワーク」のフリー・ダウンロードも引き続き実施中!
>>「パッチワーク(HQD ver.)」のフリー・ダウンロードはこちら
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INTERVIEW
青葉市子の初となるインタビューを2回に分けてお届けする。
今回お届けする前半は、トイピアノで演奏を始めた幼少期からデビュー作『剃刀乙女』のリリースに至るまでの流れと、彼女の音楽的なルーツに焦点を当ててみた。青葉が徐々にアーティストとしての才気を発揮し始める過程を読み取ってもらえる内容になっていると思う。後半では、『剃刀乙女』についてより深く迫りつつ、現在の青葉がどんなモードになっているのかを主に語ってもらっている。是非、同時にリリースされる新曲と共に楽しんで頂きたい。
インタビュー & 文 : 渡辺裕也
たまたまそれがあったから
——フジ・ロック・フェスティバル(以下フジ・ロック)でのステージは、周囲からの反響も大きかったのではないでしょうか?
青葉市子(以下A) : 特にそういうことはなかったですね。私フジ・ロックのことを知らなかったんです。フェスとかイベントとか、そういうものを何も知らなくて、興味を持つようになったのも最近の話なんです。フジ・ロックに出ようと言って頂いた時も、それがどういう規模のものかまったく知らなくて、ホームページを見た時に初めて「これはとんでもないことなんだな」と気づきました。
——すごく楽しんで演奏されているように見えましたよ。
A : あそこまでお客さんにリラックスして聞いてもらえるような環境もあまりないですよね。普段演奏しているような場所だと、来てくださる方の目的が限られていますけど、フジ・ロックではあんなにたくさんの方が出演されていますし、お酒を飲んだりしながらみなさんが各々の楽しみ方をされていますから。自分の演奏を寝転がりながら聞いてもらったのは初めてだったので、面白かったですね(笑)。自分だけ椅子に座っているのが申し訳なかったです。
——デビュー作『剃刀乙女』について振り返っていただきたいのですが、制作に取りかかる前から作品に関する何かしらの構想はあったのですか?
A : あの作品にテーマのようなものはまったくなくて。そもそも作品として発表しようという意識で作った曲はあそこにはひとつも入っていないんです。アルバムには「ココロノセカイ」という曲が入っているんですけど、あれが私の初めて作った曲です。2008年の2月に、どうしても曲を作らなければいけない機会があったんです。私がよく行っていたお店の方から、そこで開かれているアコースティックのイベントに出ないかと誘われたんです。演奏する曲なんてないと言ったんですが、逆に作ればいいじゃないかと言われてしまって。その時に作ったのがあの曲です。
——それまでは人前で演奏したことはなかったんですか?
A : ないですね。高校生の時に部活で軽音部に入って、バンドをやったりはしていました。
——どんな曲を演奏していたんですか?
A : aikoとか東京事変とかでしたね。だからその時はエレキ・ギターを弾いていました。曲によってキーボードもドラムも、いろんな楽器をやってみて、バンドはあまり私には合わないと思いました。声を張れないので、他の楽器にかき消されちゃうんですよね。

——そのaikoとか東京事変とかっていうのは、青葉さん自身が好んで聞いていたような音楽なんですか?
A : そういうわけではありません。友人から「パートが足りないからやって」と言われて無理やりやらされていた感じでした(笑)。その当時の記憶があまりないんですけど、楽しんではいたと思います(笑)。その辺りから家に転がっていたガット・ギターも弾くようになりました。高校3年生の頃でしたね。それでこっちのほうが向いていると徐々に思うようになりました。
——家族にギターを演奏する方がいたんですね。
A : どうやら父がコレクションしていたもののようです。私もよくわからないのですが、父がギターを弾いているところは見たことがありません。なので、家族から影響を受けて手にとったというわけではなくて、私が家の中から発掘してきて、勝手に始めた感じですね。
——常に音楽が溢れているような家庭内だった、というわけでもないんですね。
A : そうですね。私が覚えているのは母がいろんな歌を口ずさんでいたことくらいですね。
——どんな歌を歌っていたのですか?
A : 覚えているのは、都道府県の歌くらいですね。私に覚えさせようとして、都道府県名をラップ調にして歌って聞かされていました(笑)。
——音楽に関心を持つようになったのはいつからなんですか?
A : 幼稚園の時だったと思います。セーラームーンの放送が始まる時間をいつもテレビの前で待ち構えていて、オープニングの曲が流れ始めると、それに合わせて家にあったトイ・ピアノを弾いていました。どの楽器も、私が演奏し始めた理由は、「たまたまそれがあったから」なんです。
——ピアノを習ったりはしなかったんですか?
A : 小学校の時に少しだけ習ったんですけど、すぐに辞めました。運指を間違えるとすぐに先生が怒ってくるから、自由に弾けなくて苦しかった。私は先生に指示されたような弾き方をしていなかったんですけど、それでもちゃんと弾けているんだからこれでいいと思ってたんです。そうしたらその先生も私の面倒をだんだん見てくれなくなって、他の子のレッスンばかりを見るようになったから、行っても意味がないと思って1ヶ月くらいで辞めました(笑)。
——(笑)。そのセーラームーンの曲以外では何かありますか?
A : 小さい頃からジブリのサウンドは大好きですね。小学校に入る頃には、親もずっとトイ・ピアノじゃかわいそうだと思ったみたいで、電子ピアノを買ってもらえました。それだとドラムの音も出せてリズムもつけられたので、そういうものを使ってジブリの曲やCMの曲とかを弾いては録音して遊んでいました。
音の出るものは何でも好きだった
——耳にした音楽を演奏することに小さい頃から馴染んでいたんですね。
A : そうですね。すぐに音を出したくなるんです。例えば山手線のホームで流れている音を聞いてきれいだなと思ったら、それを覚えて家に帰って弾くような遊びを今でもやっています。とりあえず音の出るものが何でも好きだったから、コップとかガラスを叩いてはいつも怒られていましたね(笑)。
——けっこうおてんばな子だったんですか?
A : うるさいと言われるのはそうやって音を出している時だけですね。学校も、音楽の授業だけは面白かった。実技でリコーダーの練習のときに、課題の曲とはまったく関係ない曲をピーヒャラ吹いては「今はそれじゃないでしょ」と注意されるような感じでしたね。
——ピアノとギター以外に力を入れていた楽器はあるんですか?
A : クラリネットを中学校の吹奏楽部でやっていました。そういえば小学校では合唱団にも入っていましたけど、もうすぐ卒業というところで辞めちゃいました。先生が一人の子ばかりをひいきしているのを見るのがいやだった。それで、中学校では合唱以外で音楽の部活に入ろうと思って吹奏楽部に入ったんです。最初はフルートがよかったんですけど、希望者が多かったので私はクラリネットをやることになったんです。今でも音を確認するときは、ピアノではなくて、ついクラリネットの手付きになります。楽しかったですね。ただ私は楽譜が読めなかったので、初見で演奏する時は、まず先輩達が吹いているのを聞いて耳で覚えてから演奏していました。バンドがあまり自分には向いてないと思った理由も、そこは関係ありますね。スコアとかを渡されても読めなかったし、曲をじっくり聞き込まなければいけなかったから。

——同世代の友達が聞くようなポップスにはあまり興味がなかった?
A : 薦められたものを借りて聞いてみたりはしましたけど、確かにあまり残っていませんね。
——主にどんな音楽に惹かれるんでしょうか?
A : 映画音楽とか。いわゆる歌ものの音楽にはあまりひっかかることがないですね。あとは... ジャンゴ・ラインハルトが好きです。ジプシー・ジャズですね。
——青葉さんが最初に作った曲だという「ココロノセカイ」とは、どのようなイメージで描かれたものなのでしょうか?
A : 普段の閉ざされた状況から逃げ出す場所。そこは行きたくてもなかなか辿り着けない場所なんですけど、そこに辿り着いた時に訪れる、安心した気持ちをイメージして言葉にしたものですね。
——確かに僕も青葉さんの言葉からは何か情景や場面を描写しているような印象を受けました。
A : 心の動きが普段の振れ幅を越える時がたまにあるんです。『剃刀乙女』に入っている曲達は、そのシーンを切り取ったものなんです。だから、曲は作ろうと思って作るものではなくて、例えばものすごく悲しいことがあったり、倒れるくらいに苦しいことがあったりした時に出てくるものなんです。
——曲を書くという行為がいつの間にか自分の意思を越えて行われるものになった?
A : そうですね。いったん書き出したら止まらなくなりました。
>>12/2(木)インタビュー後編公開予定。 更に、新曲第3弾の先行販売も開始します!
INFORMATION
2010/12/07(火)@青山EATS and MEETS Cay
青葉市子ワンマン・ライブ「空(から)より殻からの景色」
2010/12/16(木)@下北沢mona records
『ふるんナイト vol.10』
出演 : harmonic hammock / 青葉市子 / ひつじ / raccoon dog.
PROFILE
青葉市子(あおばいちこ)
1990年生まれる。
2007年 クラシック・ギターを弾き始め翌年から創作開始。
2008年9月 初ライヴ。
2010年1月 1stアルバム『剃刀乙女』リリース。
同年7月 FUJI ROCK FESTIVAL '10に出演。
現在は東京都内を中心に精力的にライヴ活動中。