トリプル・ギター体制となったNo Buses、“内向的”なサウンドになったセルフタイトル・アルバムの制作に迫る
新メンバー・和田晴貴(Gt.)の加入、さらにこれまでとは異なり作曲時からメンバーが参加したという経緯もあってかその音楽性が変化したNo Buses。自らのバンド名を冠したセカンド・アルバムは、スペイシーなキーボード、リヴァーヴィーなギターといったサウンドメイク、そしてタイトさを増したリズムなど、至る所にバンドの新たな変遷を感じさせる作品である。UKガレージ・ロックからの強い影響がみられた前作『Boys Loved Her』から約2年の月日を経て、彼らの制作プロセスになにがあったのか? インタヴューでは、近藤大彗(Gt, Vo)の影響源である音楽遍歴を辿りながら、「バンドで作るおもしろさ」を改めて感じられたという今回の制作について話してもらった。
INTERVIEW : No Buses
長きにわたったシティ・ポップのブーム、あるいはバンドという形態自体が勢いをなくしているともいわれた時期を経て、近年の国内インディ・シーンでは再びオーセンティックなギター・バンドが頭角を表しはじめている。そしていまその筆頭にあたるのが、No Busesだ。アークティック・モンキーズの楽曲をバンド名として拝借し、2016年に結成された彼らは、1stシングル“Tic”が早速ヒットを記録。その反応は日本を越えて海外へと飛び火し、彼らは早くして国際的に注目される存在となる。一方で当の本人たちはそうした状況に浮き足立つこともなく、リリースを重ねながらトリプル・ギター編成を生かしたバンド・サウンドを追求。昨年はラッパーのBIMとの共演も果たし、バンドの新境地を見せていた。
そんなNo Busesが、前作から1年9ヶ月ぶりとなる2枚目のスタジオ・アルバム『No Buses』を完成。今回はそのリリースにあてて、中心人物の近藤大彗に話を聞けることになった。Cwondo名義で打ち込み主体のソロ・プロジェクトを展開し、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の挿入歌“Crescent Morning”にヴォーカルとして参加するなど、最近はバンド以外でもその音楽的才能を発揮している近藤。今回の取材では、そんな近藤がリスナーとして辿ってきた変遷や、「ソロよりも内向的な音になる」という独自のバンド観に焦点をあてながら、彼らの堂々たるセルフ・タイトル作『No Buses』に迫ってみた。
インタヴュー : 渡辺裕也
写真 : 西村満
バンドの方が内向的な音になるような感覚がある
──No Busesの作品はしばしばインディ・ロック、あるいはガレージ・ロックと形容されますよね。一方でみなさんの音楽性からは、2000年代初頭のガレージ・ロックとの明確な違いも感じます。たとえばストロークスでいうと、『イズ・ディス・イット』よりも『カムダウン・マシン』あたりを連想するというか、その解釈が興味深くて。
近藤大彗(以降、近藤):確かに『カムダウン・マシン』はメンバー全員が好きなアルバムですね。それに、僕が音楽を聴き始めたのはだいたい2014年以降なので、『カムダウン・マシン』以前のストロークスに関してはぜんぶ後追いなんです。当時の僕はサブスクもやってなくて、小遣いで買えるCDをよくブックオフとかで探してたんですけど、それこそ有名バンドのそこまで人気がないアルバムとかって、けっこう安く買えたりするじゃないですか(笑)。当時はそういうCDをひたすら聴いてたのもあって、誰かと「あのバンドいいよね」みたいな話をしてても「あれ、なんかお互いの認識がズレてるな」みたいなことがよくありましたね。
──その頃はたとえばどんなCDを聴いてたんですか?
近藤:カサビアンとかも当時よく聴いてたんですけど、あの“クラブ・フット”が入ってるやつ(2004年リリースの1stアルバム『カサビアン』)を聴いたのは、ずっと後になってからですね。キラーズとかもそんな感じだったかな。わりと最近でたアルバムを先に聴いて、そこから過去作を辿っていくうちに「うわ、このバンドのファーストこんなによかったんだ!」みたいな(笑)。ただ、その分「ストロークスといえば、やっぱり1枚目!」みたいな固定観念もなく自分の好みを見つけていけたので、そこは良かったのかなと思ってます。当時こそ評価されなかった作品でも、ある程度の時間が経ったからこそわかるよさって、絶対あると思うので。
──ここ最近だと、近藤さんはどんな音楽に関心を向けていましたか?
近藤:新譜だと、Iceageがよかったです。あとはDry Cleaningとか、The Armedなんかも最近よく聴いてましたし、それこそBIMくんと一緒にやらせてもらったのもあって(BIM“Non Fiction feat. No Buses”)、最近は以前よりも意識的にヒップホップを聴くようになりました。やっぱり誰かと一緒に曲を作ったりすると、相手から影響されることってたくさんあるし、勿論それはバンド・メンバー同士でもいえることですね。
──近藤さんはバンドと並行して、Cwondo名義でエレクトロニックな楽曲もハイペースで発表されていますよね。ソロ作品とNo Busesをどちらも聴くと、近藤さんがジャンルを問わず様々な音楽に触れていることがわかります。
近藤:バンドではメンバー間で話し合いながら曲を作っていくので、おのずとみんなの共通意見が採用されていくんです。ギターにせよ、ドラムにせよ、僕らは音色を選ぶ時にいちばん意見をかわすし、それが作品のカラーにもなっていくというか。だから、バンドの音楽は各メンバーの要素が濃縮されたものになるし、ある意味バンドの方が内向的な音になるような感覚もあるんですよね。