LIVE REPORT : FUJI ROCK FESTIVAL '13
燃えカスのようになりながら、この原稿を書いています。今年もフジロックフェスティバルの3日間はあっという間に過ぎ去っていきました。手元に残った一枚のタイムテーブル表。期間中に何度も見返してすっかりヨレヨレになったこの紙は、もう僕の行動を導いてくれないんだね。切ない。
そんなわけですっかりおセンチな気分になってしまっている僕です。つまりは2013年のフジロックも最高に楽しかったってことです。それにしても、今年はよく雨が降りましたねえ。初日は夕方からヘッドライナーの出演する時間帯にかけて。2日目は日中。3日目も短時間でしたがドバっと降ってました。キャンプ組のなかにはテントが浸水しちゃったという声もちらほら。きっと大変な思いをされたことでしょう。ちなみに僕もひとりでキャンプしてたんですが、幸い大きな被害もなく過ごすことができました。となりのテントの人達がとても親切で助かった。フジロッカーは優しいですね。ハンマー貸してくれてありがとう。
3日間晴れっ放しだった昨年から一転、天候に関してはなかなか過酷な状況が続いた今年のフジロック。とはいえ、実際のフジロックってこれが普通なんですよね。昨年の天候は例外中の例外で、苗場の山上はまず雨が降るもんだと思ってた方がいいんです。そこで豪雨の時間帯をどう凌ぎ、どう楽しむか。というか、後になってからも心に残るフジのライヴって、けっこう大雨のなかで観たやつが多かったりするんですよ。やけくそになって踊りながら観たRocket from the Crypt、かっこよかったなあ。Tame Imparaの演奏中に轟いた雷鳴もかなりサイケでした。
そんな調子で、豪雨が降り注ぐ時間帯はもちろん過酷でしたが、同時に雨で気温が下がってくれたおかげで、3日間とても涼しかった。ステージ間の移動中で混雑につかまることも今年はあまりなかったので、どんな状況でもなるべくたくさんのライヴを観て回りたい自分としては、今年はとても過ごしやすかったな。
あ、そういえば今年はフジロックで初めてライヴ・ストリーミングが行われたんだ。中継されたNINE INCH NAILSのライヴは、まさにその凄まじい豪雨の最中で敢行されていたわけですが、そこはぜひご覧になった方の感想を聞いてみたいところ。いまや日本中に音楽フェスが乱立するようになりましたが、そういえば海外のように中継をやる大型フェスって意外とありませんでしたね。日本のフェスのオリジネイターであるフジロックがそれを試みたのは、やっぱり今年の大きなトピックだったと思います。来年以降にこれがどうつながっていくのか、今から楽しみですね。
さて、ライヴについて少しだけ振り返ります。今年は開催前にたくさんの出演者を紹介したのもあって、とにかくたくさん見てまわるように努めました。個人的に見たいアーティストの時間帯が被った場合は、旬なインディ・ロックよりも、なかなか見れる機会のないルーツ音楽やブラック・ミュージック系を優先しちゃいがちなんですが、そんな中でもやっぱりHAIMは鮮烈な印象が残ってます。演奏力は高いし、ステージングも情熱的だし、なんかレッド・ツェッペリンみたいだった。HAIMの3人はMumford & Sonsのライヴに飛び入りで参加するという嬉しいサプライズも起こしてくれましたね。
The xxやVampire Weekendといった、00年代中盤~後半にブレイクしたバンドは、もはや貫禄ただようアクトに成長を遂げていました。近年は長いキャリアを築いたベテランがヘッドライナーを飾るケースも増えているけど、彼らの盛況ぶりを目の当たりにすると、このへんのアクトがグリーンでトリを飾る日もけっこう近そうだなあ、とも思ったり。
ヒップホップやR&Bでは、新しい時代の音をたくさん堪能できました。個人的な目玉のひとつだったRHYEが期待以上に素晴らしかった。ぱっと聴くと女性のような声の主、マイク・ミロシュが実際に見たら超ハンサムで思わず嫉妬。6人体制のアンサンブルも完璧でした。Kendrick Lamarのときはお客さんのキャップ率が高かったなあ。Bjorkの裏というかなり不利な時間帯だったけど、とにかくプチャヘンザさせまくってて最高でした。そういや、Flying Lotusもがんがんラップしてたのは驚いた。映像と同期したステージングも見ごたえたっぷりでした。深夜のDeath Gripsは、ヤバいもの観てしまった感がすごいです。
今年もオレンジコートでアフリカ音楽をたっぷり楽しんできましたが、その中でもMark Ernestus Presents Jeri-Jeriが忘れられない。複数の打楽器による複雑なポリリズムから、ちょっと今までに触れたことのないグルーヴを感じました。伝統楽器ンゴニを手にした西アフリカのバンド=Bassekou Kouyate & Ngoni baを見ていても思ったけど、やっぱりこのへんのミニマルなアフリカ系音楽が欧米のミュージシャンに与えている影響って大きいんだろうな。最後にWilko Johnson。本編ラストの「She Does It Right」からアンコール「Bye Bye Johnny」という流れで、さすがに泣きました。彼はこのままリタイヤせずにツアーを続けていくそうですが、バイバイなんてしたくないよ、ウィルコ!
こうして今は冷房の効いた明るい部屋でこの原稿を書いていたりするわけですが、フジロックの3日間を経たあとだと、こういう日常の便利な状況がどうやって成り立っているのかも改めて考えるようになってたりするんですよね。この気持ちを忘れず、今から来年のフジロックを楽しみに待ちたいところです。ではまた! フジロックフェスティバル ’14まで、たぶんあと350日くらい!(text by 渡辺裕也)
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FUJI ROCK FESTIVAL '13
【期間】2013年 7月26日 (金) 27日 (土) 28日 (日)
【会場】新潟県 湯沢町 苗場スキー場
【時間】9:00開場 11:00開演 23:00終演予定
【出演】国内外約200アーティスト
【主催】SMASH Corporation
【企画・制作】SMASH / HOT STUFF PROMOTION / DOOBIE,Inc.
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