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男女混合4人組バンド・herpianoが、5年ぶりの新作『ourseason』をリリース。男女ヴォーカルが歌うメロディ、優しさも切なさも包むようなメロウな楽曲から、ルーツであるインディー・ロックを彷彿とさせる楽曲、日本語詞から英語詞まで、幅広くもメロディはより輝き、ドラマティックに描き出された全11曲。人の心に響く音楽がここに鳴っている。5年間の集大成、そしてこれからの始まりを告げる1枚となっています。メンバー・インタビューも掲載。
各方面から注目のherpiano。5年振りの新作をリリース
herpiano / ourseason
【配信価格】
単曲 150円 / アルバム 1,500円
【Track List】
1. エイプリルフール / 2. winter rider / 3. fishing summer / 4. 砂音 / 5. christmas tree / 6. 沢の散歩 / 7. endless happiness / 8. under the fireworks / 9. the new dawn / 10. 点と線 / 11. keep away
静岡にかっこよく筋が通ったバンドがいる。herpianoだ。マイペースながら、グッとくるメロディと演奏を奏でている。なんかアメリカみたいだ。地方地方でカッコいいバンドがその土地で良い音楽をならし、カッコいいアルバムを自分らのペースでリリースする。メチャメチャカッコいいぜ。herpianoの新しいアルバムは、叙情的な部分と躍動的な部分が絶妙なバランスで成り立っていて、何度聞いても清々しい気分です。静岡を東名高速で移動する際、あまりの静岡の横の長さに嫌気がきますが、このCD聞いていれば、無問題です。静岡にherpianoがいる。これって重要だぜ! ー角張渉(カクバリズム)
INTERVIEW : herpiano
どうも今年に入ってから、「5〜6年ぶりのニュー・アルバムが完成! 」みたいな話をいくつも耳にするようになった。バンドの制作ペースなんてそれぞれ異なって然るべきものだが、単純にリスナーの感覚からすれば、5年から6年という間隔は決して短くはない。しかし現在のインディ・バンドはそうした外からの視線よりも、まずはバンドという集合体を保っていくことに意識を置く傾向があるようにも思える。あるいは昨年の震災に影響されて、なにかしらの創作欲求を駆り立てられたバンドもきっと少なくはないだろう。どちらにしても、なにやら今年はしばらく表立った動きの見えかったバンドが動き出す流れにあるようだ。
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2007年にファースト・アルバム『herpiano』をリリースしているこの4人組もまた、今年に入ってから実に5年ぶりとなる新しいアルバムの制作に取り掛かっていた。彼らはここまでの期間をどのように過ごしてきたのだろう。
「私生活重視な4人組なので(笑)。メンバー各々が忙しかったら、その都度そのペースに合わせて練習とライヴを行ってきました。でも、この5年間はマイペースながらも、自分達らしい音楽、やりたい音楽がだんだんわかってきたような気がします」(吉田宏亮(Vo.G))。
そうしたマイペースなスタンスでもバンドを維持してこれたのは、本人達曰く「ほんわかしていて良くも悪くもぬるい感じ」(木村真理子(Vo.B))で、「平均的な地方都市。繁華街は飲み屋とカラオケで埋め尽くされている」(牧野俊太(Dr.))という、地元の静岡県を活動拠点としてきたことも大いに関わっているだろう。とはいえ、一時はやはりバンドに停滞感を感じることもあったようで、そうした状況が彼らを久々にレコーディングへと向かわせたようだ。
「去年の春頃だったかな。アルバムの冒頭4曲のデモをMTRで録音したら、すごく良い音で録れたんです。それまではマンネリもあって 「ひょっとしたらこのまま活動も少しずつなくなっていくかも」とは、みんな感じてたと思います。それがデモを録音したことで「お、俺達まだいけるかも! 」っていう感覚をはっきりと感じられたんです」(俊太)。
「いきなり新しいことはできないので、ありのままの演奏に、録音時しかできないような音をプラスアルファとして取り入れて臨みました」(吉田)。
スーパーチャンクなどのUSインディ・バンドを引き合いに出されることも多かった彼らだが、こうして久々に届いた新作『ourseason』を耳にすると、そうした音楽的バック・ボーンを十分に生かしつつ、彼らの日常に根差したような穏やかなトーンがより強まったようだ。作品全体を通して、歌唱と音色のひとつひとつがとてもクリアで清々しく、視界が一気に開けるような晴れやかさを感じる。
「とにかく耳が疲れずに、うしろでなんとなくかかっている雰囲気がいいなと思いました。生活に寄り添う感じですかね。そう聴こえてたらうれしいです」(木村)。「日常生活が自然に溶け込んでいくような音楽を演奏したいと思っていました。アルバム1枚を通して聴けるような音楽を目指していたのは確かです」(吉田)。
リリックを牧野洋平(Vo,G)、吉田、木村の3人がそれぞれ手がけているというのもこのバンドのユニークなところだろう。たとえばほとんどの曲が“きみ”に向けて歌われていることなどから伺えるのが、『ourseason』に収められた楽曲はどれもパーソナルな感情が起点となって描かれているということ。しかもそれを男女の混声で歌い紡いでいくところが、このバンドの音楽をよりドラマティックに演出していくようだ。
「各自が書いてきた歌詞については、あまり違和感を感じていません。むしろ「いいじゃん! 」って感じで。身近な人やものにしか気が向いてないのかしら? たくさんの人に訴えたいことがきっとないんだろうなと思います。個人的には妄想が歌詞になったりしていて」(木村真理子)。
「メンバー内で詞について話したりはします。自分が書いたものを振り返ると、比較的“幸せな気分”を歌っているみたいですね」(吉田)。
確かにゆっくりとしたペースではあったかもしれないが、この5年間の日常はひとつの無駄もなくバンドの放つ音に還元された。その最良の成果が『ourseason』だ。
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では、現在のherpianoにとって、音楽とは日常のどのあたりに位置付けられたものなんだろう。たとえば、あくまでも音楽を生活の中心と考えているのか。あるいはもっとラフな感覚で楽しむものか。するとひとりひとりが力を込めて答えを返してくれた。きっとこのバンドの親密なアンサンブルは、彼らが気の置けない仲間同士だからこそ実現出来る賜物なのだろう。「生活がある上での音楽です。でも絶対に無くちゃ困るもの」(木村)。「そこまでストイックに活動しているわけではありませんが、バンドのみに関して言えば“ラフな感覚で楽しむもの”とはまた違うものだと思っています。10年間このメンバーで続けてきた意地もあるし、リリースするからには、より多くの人に届いて欲しい気持ちも当然あります」(俊太)。
「平日は働いて、休日は家族と暮らすというのが生活の中心ですが、そういう生活の中で音楽をやるからこそ、なんかこう人間くさいというか、4人メンバーならではの独特な空気が生まれてくるのではないかと思います。音楽が日常生活の大切な一部となっているのは確かです。頭で鳴っている音をバンドで演奏できたときや、曲ができたときには、何にも変えがたいうれしさ、気持ちよさがあります」(宏亮)。
「いつかロック・スターになりたいという気持ちが物心付いた時からありました。“アリーナ”“ミリオンセラー”“グルーピー”“自家用ジェット”という言葉には過剰に反応してしまいます。僕にとっての音楽活動とは自分の存在理由です。音楽でしか自分を出せないし、ギターでしか自分を表現出来ない。そんな自分が嫌いかって聞かれたら、そうでもない。だから今日も4人は街で歌っています。自分たちの歌にだけは嘘をつきたくないんです。嬉しいことも悲しいことも全部4人で分け合いたいから」(洋平)。
インタビュー&文 : 渡辺裕也
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lostage / ECHOES
前作「CONTEXT」に続き、自主レーベル「THROAT RECORDS」からリリースされるフル・アルバム。4人編成時代のアルバム『DRAMA』と、3人編成になってからの作品『LOSTAGE』の丁度中間を縫い合わせたような、バンドの現在までの集大成といってもいいLOSTAGEらしいアルバム。
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3年ぶりのアルバムとなる『オレ達は日本で生きてる』は、ゲスト・ギタリスト・EKDとセッション「日本で生きている」から始まり、長く付き合った恋人との別れを淡々と歌い上げる「愛って何よ」、しがない30代バンドマンの日常を綴った「ダーティーサーティー」、日本人が背負う不安を風刺するような歌詞がタイムリーなメッセージ・ソングとして響く「飛び出せニッポン」などを収録。
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4枚目にして、ベースに戸川琢磨を迎えて初となるフル・アルバム『Outta Here』が遂に完成した。本作において、バンドはかねてからの念願だった海外レコーディングを敢行。マスタリングも同じくニューヨークの「マスターディスク」にて行われ、そのトップ・エンジニアであるScott Hull氏が担当。2度のグラミー受賞歴を持つ氏の手腕は、CBMDの音楽に一層鮮やかな輪郭を与えている。
>>>COMEBACK MY DAUGHTERSの特集はこちら
LIVE INFORMATION
herpiano presents「amoeba spin vol.13」~ourseason release live~
2012年10月27日(土)@静岡 騒弦
open : 18:00 / start : 18:30
w / DIEGO / ノダフルタ(アドバルーン) / 山川 / キキミミズ
further platonics presents「IZU YOUNG 7」
2012年11月04日(日)@静岡 伊豆の国市大仁 かわいい女の子スタジオの庭(仮)
open : 10:30
w / curve / midnight / parade / hue / stereo type / blue friend
herpiano presents『amoeba spin vol.14』~ourseason release live~
2012年11月18日(日)@新代田FEVER
open : 17:30 / start : 18:00
ADV : 2000yen(+1d) / DOOR : 2,500yen(+1d)
w / LOSTAGE / DIEGO / アドバルーン
PROFILE
herpiano
牧野洋平(Vo.Gt)
吉田宏亮(Vo.Gt)
木村真理子(Vo.Ba)
牧野俊太(Dr.)
2002年に結成、静岡県を拠点に活動中の男女混合4人組バンド。2003年に4曲入りのCD-R、2005年には2曲入りのテープを発表。全国diskunionを中心に、INDIEROCK/EMO好きの間で話題となり地方バンドとしては異例のロングセールスを記録する。2007年にはFINE TUNING!より1stアルバム「herpiano」を発売。活動はマイペースながらも、各方面のバンドから評価は高く、キセル、N'夙川BOYS、COMEBACK MY DAUGHTERS、LOSTAGE、BEYONDS、Discharming Man、bed、TACOBONDS等と様々なバンドとの対バンを経験、Less Than TV主催「METEO NIGHT」へも出演している。