
「音楽だけが描ける景色」
いつから音楽に意味が求められるようになったのだろう。音楽は音楽、それだけでいいはずなのに。例えば「あなたは美しい」とメロディに乗せて歌ってみたところで、その「あなた」の美しさをすべて表現することはどうしても不可能だ。ただ、言葉とメロディが絡まり、溶け合った歌にはその本物すら超越するような美しさが宿ることもまた確かなのだ。そんな音楽との出会いがあるから、「他のどんなアートより音楽が一番素晴らしい!」なんて、言わなくていい事をつい僕は言ってしまうのだ。
今回紹介するハロスは、ヴォーカルとギターを担当する草階亮一をただ一人の正式メンバーとするロック・バンドだ。草階の地元である秋田県を拠点に置きながら、様々な地域に住む様々な人が関わる事で活動を続けている。主にピアノ、ベース、ドラムを従えての演奏が基本だが、時には弾き語りだったり、サックスやトロンボーンと二人でやってみたりと、演奏スタイルもかなり流動的だ。草階がこんなに自由な音楽活動を実現できているのもすべて、ハロスに関わる人間が彼の紡ぐ音楽に惹かれ、その活動に加わることに各々の喜びを見出しているからだろう。

ハロスの楽曲にはたくさんの「余地」が残されている。それは演奏者がそれぞれ持ち寄ったイメージを自由に表現するためのものでもあるし、我々聴き手に委ねられたものでもある。もちろんそれは、よくおバカなミュージシャンが言う「解釈は聴いた人に任せる」みたいな無責任なものとは違う。生活する中で受けたインスピレーションを音楽という形で表現し、聴き手に届ける。作り手に出来る事はそれまでだ。ハロスの音楽を聴いたあなたが、もし郷愁を感じたとしても、あるいは異世界の音楽に聴こえたとしても、どんな風景や季節を思い浮かべたとしても間違ってはいないし、そのどれもがハロスの音楽を形成する上でかけがえのないもののはずだ。それは優れた絵画や写真なんかにも言えることだろう。ただ僕にとってハロスの音楽は他のどんなアート・フォームの作品よりもそのイメージがダイレクトに感じられるのだ。
こういう音楽、それ以外の何物でもない音楽について正直僕は何も言いたくない。書けば書く程遠くなっていくような気がするからだ。だから今僕がこうやって書いた文章は蛇足以外の何でもない。でももしこの機会にまた新たにハロスの音楽と出会う人がいるのなら、それ以上に嬉しい事はない。今回recommuniから配信されるのは『coyote』、そして最新作『blue bird』の2作品。どちらも収録曲5曲、30分弱と非常にコンパクトだが、十分すぎる程に濃密だ。是非どちらも聴いてほしい。そしてあなたの住む町の近くにハロスがやってきたら、是非ライヴ会場にも足を向けて頂きたい。あなたがこの音楽に何かを見出したのなら、きっとハロスは温かく迎えてくれるはずだから。(text by 渡辺裕也)
halos (ハロス)
〈halos〉 光のもやみ、ノイズ。日本語では「暈」(うん)円形の光や後光などを指す。
草階亮一 : vocal & guitar
諸越俊玲 : drums & Percussions
宮崎悠 : acoustic/electric piano & organ
古関憲二 : bass

LIVE SCHEDULE
- 5/14 (木)Beat Happening ! Vol.160 @下北沢BASEMENT BAR
open18:30 / start19:00 adv.¥2,000 / door¥2,500 (drink別)
- 5/29 (金)@仙台enn
- 6/13 (土)@秋田Red House

RECOMMEND