変幻自在に優しくたゆたう新たなポップスーーハリネコによるフル・アルバムをハイレゾで!

即興演奏、ポップスなど、シーンを選ばず活動するSSW沙知の変幻自在なプロジェクト、ハリネコ。想像力を沸きたてる名前の通り、紡ぎ出される音たちは、ありとあらゆる要素がとてつもなく自由に混ざりあった、新しいポップス。 本作に参加するのは、mooolsやソロで活躍を続けるRyo Hamamoto(gt)、WUJA BIN BINの主宰者ケイタイモ(b)などあらゆるシーンで活躍する気鋭のアーティストばかり。24bit/48kHzのハイレゾ音源で、ミュージシャンたちによる繊細かつ、絶妙な音のせめぎ合いと、ハリネコにしか表現出来ないポップス観を味わっていただきたい。
ハリネコ / roOt.(24bit/48kHz)
【配信フォーマット / 価格】
wav / alac / flac : 単曲270円 まとめ購入1,944円
【Track List】
01. 砂の絵
02. 真藍の実
03. さくらのいつか
04. </s>
05. 汗とシーツ
06. is here
07. 空と風と水の彼方へ
08. ハロー、さよなら
09. Good-bye dawn.
>>収録曲「ハロー、さよなら」のフリー・ダウンロードはこちら(7月24日24:00まで)
INTERVIEW : 沙知(ハリネコ)
即興を取り入れた異形のアンサンブルとポップスとしての大衆性が見事に調和した初作『とうきょう』で、リスナーはもちろん多くの同業者たちにも大きな衝撃を与えたバンド、ハリネコ。そのハリネコがヴォーカル / キーボードの沙知によるソロ・プロジェクトとなり、初のフルアルバム『roOt.』を完成させた。これまでの編成に代わって本作に参加したのは、Ryo Hamamoto(moools)、ケイタイモ(WUJA BIN BIN)、蓮尾理之(385、THE JETZEJOHNSON、SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER)、とがしひろき(ロア、サンガツ)、佐藤研二(マルコシアスバンプ)といった、それぞれに異なる音楽的バックグラウンドをもつ凄腕のミュージシャンたち。沙知によるソング・ライティングはさらにその緻密さを極めており、ポップ・ソングとしてのフォルムを崩さないラインで美しいサウンド・デザインを描いている。そして、それを屈強なプレイヤーと共に展開していく様がとにかく楽しめる作品だ。新体制での初フルアルバムでありながら、ハリネコの奏でる音楽は『とうきょう』をさらに推し進めたものとしてここに収録されている。では、ここからはひとりの作家として新たなスタートを切った沙知に、そのタイトルに倣って彼女の音楽的ルーツをうかがいながら、このアルバムの全貌に迫ってみよう。
インタヴュー & 文 : 渡辺裕也
最低限のマナーを守りながらも崩していく
ーー前作『とうきょう』から今作にいたるまでのあいだに、どうやらハリネコの在り方は大きく変わったようですね。
沙知 : そうですね。ドラマーだった諏訪創が参加できなくなってしまったことをきっかけに、こうしたソロ・プロジェクトになって。でも、周囲の方々からはかなり前から「ハリネコでもなんでもいいから、ソロプロジェクトでやってみたら?」ともよく言われていて、この機会に新たなカタチで始めることになりました。とはいえ、こうして自分がひとりで前に出ていくのはすごく抵抗があったんですけど(笑)。
ーーそうなると、前作と今回ではアプローチがまったく変わってきそうですね。
沙知 : はい。今回はとがしひろき君(ドラム)やRyo Hamamotoさん(ギター)を加えたバンド全体でのボトムからの楽曲アレンジができたのが大きかったです。そうなると方法論も今までとは違うものになります。このバンド・サウンドの中で参加ミュージシャンの方々一人ひとりがより引き立つにはどうプロデュースしていけばいいか、考えました。そのために曲をつくってきた工程を逆算するような作業もありましたし。
ーーなるほど。しかし、メンバーは異なれど、やっぱり沙知さんの音楽にとって「即興」はものすごく重要な側面ですよね。

沙知 : 即興というか、そのときどきをパッケージしたいという気持ちが、私はものすごく強くて。最低限のマナーを守りながらも崩していく。音楽のそういう生モノっぽいところを常に意識しているんです。
ーーそういうことを意識するようになったのは、何かきっかけがあるんでしょうか。
沙知 : 私、3歳から18歳までピアノを習っていたんです。それでも小さい頃からコンクールとかにも出場していたんですけど、その評価のされ方が自分には合わないなと思っていたんです。小学校の頃からずっと「自由に弾かせてほしい」という気持ちが強かったと思うんです。あと決定的だったのが、中学生の頃に知り合いのおもしろいおじさんが、ジョン・コルトレーンとマイルス・デイヴィスのアルバムをごっそり家に持ってきたんですよ。それで「さっちゃん、これおもしろいから聴いてみな」って言われて(笑)。
ーーなるほど。フリー・ジャズの世界と出会ったんだ。
沙知 : そうなんです。もちろん最初はわけがわからなかったんですけど、なにかひっかかるところがその音楽にはたくさんあって、そこを理解したいと強く思ったんですよね。それで寝ても冷めてもそのことを考えては、そればかりを聴くようになったんです。同時にまわりで流行ってる音楽とか、オアシスとかクイーンみたいな学校でまわってきた洋楽のCDも聴くようになって。そのへんが自分のなかでレイアウトされていくんです。
ーーなるほど。そのままフリー・ジャズの世界ばかりにのめりこんだわけじゃないんですね。
沙知 : そうはなりませんでしたね。そもそも、私は楽器を演奏するのがあまり好きじゃなくて。というか、正直に言うと今でも楽器はあまり弾きたくない(笑)。とはいえ、自分が楽曲をつくるときはヴォーカルをメインに捉えたものが多い。でもコード感や譜割り、フリーキーな構成については、結局は自分で弾くのが手っ取り早いんですよね。で、それが紛れもないポップスというカタチを基盤にして出来ている。そういう感覚なんです。
ーー楽器の演奏があまり好きじゃないとは。それは少し意外かも。
沙知 : もっと本音をいうと、自分が得意なのは歌だと思っているんです。でも、そうなると弾き語りってやっぱり難しくて。本当は演奏か歌のどちらかに集中したいなと思っているんですけどね。
「これまで聞いたことのないものを作りたい」という欲求が強かった
ーー自分がやりたい音楽性は、10代の時点でなんとなく見えていたんですね。じゃあ、ハリネコというバンドは、そのコンセプトがあったうえで立ち上げたものなんですか。
沙知 : どうだったかな。以前、私には当時参加していたレコーディングやライヴのために東京と札幌を行き来していた時期があって。そのときに共通の知人からソロでライヴに誘われたことがあるんです。それで、ソロで出ようと思ってたら、そのときのレコーディング・メンバーから「サポートするよ」と言ってもらえて。それで主宰者からバンド名を聞かれたときにパッと思いついた名前が「ハリネコ」だったんです。当時と今ではかなり違いがありますけど(笑)

ーーその名前は何からインスピレーションを受けて思いついたんですか。
沙知 : 昔、札幌でヴァイオリンの女の子とふたりでユニットを組んでいたことがあったんですけど、そのユニットの名前として、友人の画家から提案されてた名前がハリネコだったんです。でも、その時は「ポップ過ぎる」という理由から採用にならなくて(笑)。当時から即興はすでによくやっていたんです。札幌に廃病院をアトリエと建築事務所と貸しスペースにして運営していた場所があって、そこでよく集まってインプロ・セッションみたいなことが行われていて。そこに通うのがすごく楽しかったんです。いまその場所はもうないんですけど。
ーーそれは恵まれた環境でしたね。
沙知 : そうですね。私はずっと「これまで聞いたことのないものを作りたい」という欲求が強かったし、だからこそインプロがあんなに楽しかったんだと思います。
ーーその考え方は間違いなく『roOt.』にも息づいていますよね。では、今回の作品に参加されたミュージシャンはどのようにして集っていったんでしょう。
沙知 : 前作『とうきょう』を聴いてくださった方のなかに「いつか機会があれば一緒に演奏させてほしい」と声をかけてくださった方がけっこういてくれたんです。そうやって自分と演奏したいと言って下さる人が多かったのは本当にありがたかったです。それで、その方々に恐る恐る声をかけたら、すごく良い反応をいただけて。
変化していくことへの可能性を今はすごく感じています
ーー今回のアルバムは、それぞれ個性の強いプレイヤーが揃っていますよね。たとえば、ケイタイモさんは即興に対する姿勢においても、沙知さんとすごく通じ合いそうな気がしました。
沙知 : ケイタさんのインプロに関するセンスは、こっちが思わずにやっとしてしまうくらいに個性が溢れていますね。そのへんのおもしろさはライヴにも表れていると思う。「とうきょう」なんて、ケイタさんはもちろん、『roOt.』参加ミュージシャンの皆さん、本当にすごくおもしろい演奏をしてくれるので。
ーー沙知さんの楽曲ってすごく複雑なリズムや構成だったりするから、ミュージシャンのプレイ・アビリティはかなり高いものが求められますよね。
沙知 : たしかに、ある程度の技量がないと演奏できない楽曲は多いのかもしれない。もちろんそんなことはない楽曲もあるんですけどね。そこは私も気にしつつ、今回のメンバーをさがしていました。特にこの作品でやりたいと思っていたハリネコらしいロック色なバンド・サウンドを理解できるミュージシャンとなると、それなりにスキルが必要だなと。そして何より参加していただく以上はハリネコを楽しんでほしかったので。そこでこういうメンバーになったのは必然的なところがあった気もします。
ーーそのなかでもRyo Hamamotoさんの存在は気になりました。彼にはあまり即興音楽のイメージがなかったし、普段演奏されているのも、すごくアーシーなロックじゃないですか。
沙知 : Hamamotoさんに関してはまず、彼がシンガーソングライターであったことがとても大きかったと思います。Hamamotoさんとはソロで対バンしたのがお会いしたキッカケなんです。私、ソロでライヴをやるときはいつも、ライブ中に立候補を募って誰かにポテトチップスを食べてもらって、その食べる音と一緒にインプロをやってるんですけど。
ーーすごい試みですね(笑)。
沙知 : その日は、Hamamotoさんが食べてくれたんです。で、それがものすごくよかったんですよね。「わかってるな」って。駆け引きや意志疎通ができて、こちらの意図をしっかり汲んでくれる。しかもそれをお互いに楽しんでやれるっていう状況が生まれて。確かにHamamotoさんのライブからはインプロヴィゼーション性を強く感じはしませんが、ポテチで共演したときとても良かったのと、「あ、この人絶対いろんな音楽聴いてるし演奏できる人だな」ってすぐ分かりました(笑)
ーーポテチを食べるだけでセンスを伝えるRyo Hamamoto、かっこいいですね(笑)。
沙知 : (笑)。もちろんギターのセンスもそう。『Ryo Hamamoto & The Wetland』がホント素晴らしくて、あれは音飛びするくらい聴きましたね。Hamamotoさんはいつもギター1本で演奏しているけど、そのなかにはすごくいろんなアプローチがあるし、それがmooolsになると、またそれとは別の側面も見せてくれる。そういう振れ幅があるギタリストってなかなかいないから、そこがすごい魅力でした。それで実際にこうして一緒にやったら、やっぱりすごかった。私、Hamamotoさんには「おしゃれなやつがいいです」くらいしかオーダーしてなかったんですけど、苦しんでたところもあったけど(笑)、その狙いもわかってくれていました(笑)。作り手としての考え方をすごく大切にされている方なんですよね。誘ってよかったです。

ーー今回のアルバムではそのHamamotoさんの「汗とシーツ」をカヴァーされていますよね。
沙知 : 『Ryo Hamamoto & The Wetland』のなかでもいちばん聴き込んだのがあの曲だったんです。それで何回も聴いているうちに、「このコード、一体どうなってるんだろう。自分でも歌ってみたい!」っていう気持ちがどんどん沸いてきて。とはいえ勝手にやるわけにはいかないのでご本人に相談してみたら、「すごく光栄だ」と言ってもらえたんです。それで最初はライヴで演奏していたんですけど、ぜひ今回のアルバムでもやらせてほしいと思って。アレンジのディレクションはとがしひろき君がやってくれました。
ーーあのアレンジにはHamamotoさんも驚いたでしょうね。そういえば、彼は幼い時期をアメリカで過ごしたことが自分の音楽に大きな影響を与えていると以前おっしゃってて。やっぱり小さい頃に見た風景や環境って、音楽家にとっては大きいと思うし、それはハリネコの音楽においても言えるんじゃないかなと思ったんですが、いかがですか。
沙知 : それは当然、ものすごく大きいです。それにHamamotoさんの世界観も、ちょっと曇りというか、晴天じゃない感じがしませんか? 気温も20度以下というか。そういう景色が楽曲からは感じられる。それってすごく北海道と近いんですよ。その世界観が理解できるっていうところも、今回の制作ではいいスパイスになったのかもと思ってます。
ーー沙知さんの頭に浮かぶ情景をなんとなく共有できると。
沙知 : 私のなかにある感覚は、やっぱり北海道からきているんです。前作の「とうきょう」という曲にしたって、あれは東京のど真ん中育ちの感覚では書けない東京だと思うし。北海道という場所で得たものは、間違いなく私の音楽のフックになっていると思う。演奏するメンバーがその世界観を理解できたり想像してもらえるのが、ハリネコの音楽には結構大事だったりします。
ーーたしかにそれは作品を聴いていても感じられますね。
沙知 : ただ、その一方で私としては北海道にこだわるつもりもないですし(笑)、今は東京で得た感覚から楽曲をつくっているものが多いですね。北海道はルーツであって、今ハリネコでつくっている音楽は、東京にいるからこそつくれるものだと思ってます。このメンバーに出会えたのも、今ここにいるからですしね。ただ、楽曲の根底にあるものは自分が北海道でずっと見ていたもの。それは間違いないと思います。
ーーこの『roOt.』というタイトルにもそれは表れている?
沙知 : そうかもしれませんね。自分のルーツを辿って作られたアルバムっていう意味もあるし、そこからまた新たな道を進んでいきたいとも思っているので。それに、『roOt.』は間違いなく『とうきょう』がなかったら作れなかったアルバムです。
ーーなるほど。では、現時点でこの先のハリネコをどう進めていきたいと考えていますか。
沙知 : こうして『roOt.』をきっかけに新しいバンド・サウンドをつくることができたおかげで、次にやりたいことも今はぼやっと見えてます。でも、今のハリネコはバンドじゃないから、それとはまったく違う方向に向かってもいいなとも思ってて。これからも面白くなるなと(笑)。ハリネコがソロ・プロジェクトになったことで、変化していくことへの可能性を今はすごく感じています。『roOt.』はその1歩目になると思います。
LIVE INFORMATION
ハリネコ1st Full Album「roOt.」release ParTyYY!!
日時 : 2014年8月1日(金) / open18 : 30 start19 : 00
場所 : TSUTAYA O-NEST
出演 : ハリネコ / 大森靖子&THEピンクトカレフ / 白波多カミン+ハジメタル(ex.ミドリ) / 来来来チームにマモル(nhhmbase)と畠山(H mountains) / ウミネコカレー(food)
料金 : 前売2300円 当日2800円(+1drink)
ハリネコ ライヴ・メンバー : 沙知(vo.key) / Ryo Hamamoto(gt) / ケイタイモ(b) / 蓮尾理之(syn) / とがしひろき(ds)
チケット 【前売り予約】http://harineko.com/root_party/
e+ / ローソンチケット(Lコード74767)/O-NEST店頭
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ジム・オルーク、山本達久などがメンバーとして参加する“もう死んだ人達”との傑作4thアルバム。 繊細かつユーモラスでドラマティックなプログレッシブ・ポップスとなっている。
PROFILE
ハリネコ
札幌出身の SSW 沙知(vo.key)による変幻自在な音楽プロジェクト「ハリネコ」。
全作詞曲、編曲と、トータルプロデュースを行う。
参加メンバーはさまざま。ポップスを軸としながら、あらゆるジャンルにインプロビゼーションをも取り入れたアート・パフォーマンスのような景色観と独自の音楽世界を展開。
聴く人すべてが楽しく、ワクワクするような音楽を体現している。