インドネシアの男女混合ポップ・バンド、Brilliant at Breakfastが、2012年10月18日(木)に高円寺HIGHで来日公演を行います。それを記念して、メンバーにメール・インタビューを決行。彼らがどんな活動をしているのか、そしてインドネシアの音楽シーンについて、貴重なインタビューをお届けします。これを読んで、万全の体勢を整えてライヴに足を運んでみませんか?
Brilliant at Breakfast 来日記念公演
日時 : 2012年10月18日(木)@高円寺HIGH
開場 : 18:00 / 開演18:30
前売 : 2,500円 / 当日3,000円(各ドリンク別)
LIVE :
Brilliant at Breakfast(from Indonesia)
texas pandaa
Bertoia
4 bonjour's parties
HONEYDEW
高円寺HIGH HP
INTERVIEW : Eka Jayani Ayuningtyas(メインボーカル&ベース)
心震える音楽との出会いはいつも思わぬところからやってくるもの。ひょんなきっかけで『Being Verbose Is Easy, Being Verbose Ain’t Easy』というアルバムを耳にして以来、すっかり僕はこのBrilliant at Breakfastというバンドに夢中なのだ。しかも彼らがインドネシアの出身だということを知って、このバンドへの関心はさらに大きなものになった。いやはや、インドネシアってこんなにキュートでウィットに富んだギター・ポップをつくるバンドが生まれる国だったのか。
そんな彼らの初来日公演がなんと間近に迫っているということで、ここは盛り上がらないわけにはいかない。そこで今回は来日を待たず、バンドの中心人物で女性ヴォーカルのEka Jayani Ayuningtyasに、メールでいくつか質問を送ってみることにした。ギター・ポップという言葉に愛着を感じる方なら、思わず身を乗り出してしまうような答えがいくつも返ってきたので、ぜひとも目を通していただきたい。そして来たるべき10月18日の来日記念イヴェントに向けて、まずは一度『Being Verbose Is Easy, Being Verbose Ain’t Easy』を聴いて頂けたら幸いだ。
インタビュー&文 : 渡辺裕也
翻訳 : なで彦さん(texas pandaa)
>>デビュー・アルバム『Being Verbose Is Easy, Being Verbose Ain't Easy』をフリー・ダウンロード
Brilliant at Breakfastの成り立ちとインドネシアの音楽シーン
——まだ私はあなた達に関する情報をほとんど入手できていない状況なので、まずは基本的な情報から訊かせてください。Brilliant at Breakfastはどのような編成のバンドで、どういう経緯で結成に至ったのでしょうか。
Brilliant at Breakfastは一般的なバンドとは異なり、ライヴをやることを前提としない、いわば「ベッドルーム・バンド」として始動しました。特に決まったメンバーもおらず、リスナーには演奏者のことよりも、実際の楽曲や歌詞に耳を傾けてもらい、またそこからイメージするものを大切にしてもらいたいという思いから、外面的には小さな棒切れをメンバーに見立ててイラスト等で提示しているだけのグループでした。
そんなある日、友達から「ライヴをやらないか」というお誘いを受けたのです。ライヴなんて想定外のことだったので、驚くと同時に、とても感動しました。メンバーも定かではないバンドにライヴをオファーするなんて、相当の勇気と信頼がないとできないことですからね。
それから3週間以内に、親友の助力を得ながらライヴ用にメンバーを集めることができ、私の小さな部屋にメンバーを缶詰にして2週間みっちり曲の練習にいそしみました。このようにして初めてライヴを敢行したのが2008年11月。ライヴをやってみてとても良い感触があり、このままライヴ活動も続けたいと思い、今に至ります。もちろんライヴを行う上で、昔のような棒切れフィギュアを使った匿名性はある程度妥協せざるを得なかったのですが、やはり私たちは作品そのものを聴いて感じてもらいたいと思っていますので、未だにソーシャル・メディア・サイトなどでは名前をあまり表に出していませんし、当時のスティック・フィギュアもアートワークの随所に残したりしています。
メンバー・チェンジを何回か経た後、現在は下記構成で活動をしています。
写真左から、
Sutanto Syambas Effendi(通称Tanto / キーボード)
Eka Jayani Ayuningtyas(通称Eka 1 / メインボーカル&ベース)
Rayyan Bugri(ギター)
Ramii Risky Baidoo(ギター)
Eka Perdania Nurul Fitrie(通称Eka 2 / メロディカ&コーラス)
Muchammad Najib(通称Mamu / ドラム&パーカッション)
※Arkham Kurniadi(サポート・パーカッション)
——『Being Verbose Is Easy, Being Verbose Ain’t Easy』を聴かせていただきました。もし事前にあなたたちがインドネシアのバンドだと知っていなかったら、私はきっとこの作品は欧米の優れたインディ・ポップ・バンドのものだと思っていたことでしょう。あなたたちはどのような音楽から影響を受けて、こうした音楽性を身につけていったのでしょうか。
音楽だけでなく、アートに対する姿勢そのものの影響を、主にSarah、Creation、Labrador、Matadorなどのレーベルから輩出されているアーティストから強く受けています。Heavenly、Talulah Gosh、Belle and Sebastian、Television Personalities、Acid House Kingsなどなど、ほとんどがイギリスやスコットランド、スウェーデンのアーティストです。トゥイー・ポップ・バンドとしてはやはり60年代のガールズ・グループ、殊更自国インドネシアで60年代に活躍していたDara Puspitaを大変リスペクトしています。
音楽以外のもの、例えば詩(E.E.カミングス)だったり、演劇(オスカー・ワイルド / バーナード・ショー)、本(ルイス・キャロル)、そしてコミック本(スヌーピー / カルビンとホッブス)などからも多くの影響を受けています。
もちろん他のメンバーはそれぞれ自分が影響を受けてきたものがあり、とても幅広い音楽性を共有し合えています。
——実際に『Being Verbose Is Easy, Being Verbose Ain’t Easy』を聴くと、60年代のポップス、及び80年代のギター・ポップへの造詣の深さが伺えるのですが、この作品を形にするにあたって、なにか参考にした音楽があれば教えて頂けますか。
先述の影響を受けたアーティストからも私たちのサウンドは容易に想像していただけるかと思いますが、特に「この作品に近づけたい」というような基準でアルバムを制作していません。全曲共通しているのは、伝えたいメッセージやアイディアをなるべく分かりやすく、頭の中でイメージ化しやすいように工夫してみたところです。たとえば「Splashdown」という曲は、ナレーターが海辺で風や太陽を感じながら物思いに耽っているシチュエーションを描いた楽曲なので、レイドバックした、海辺のような雰囲気が出せるように工夫してみました。
——あなた達の音楽は単純に素晴らしいと感じただけでなく、インドネシアのポップ・シーンにあまり精通していない私にとってはとても驚くべき出会いでもありました。現在あなた達の周囲にはどんな音楽シーンが存在しているのでしょうか。あるいは、インドネシアにはあなたたちと共振するようなバンドが他にどのくらいいらっしゃるのでしょう。
ありがとうございます。とても嬉しいです! インドネシアはとても多様性に富む国で、歴史も古く、様々な面でポテンシャルがあると思います。その一方で、組織力だったり、マネージメント、マーケティングなどが私たちの弱点だったりします。この現状がそのままインドネシアの音楽シーンの縮図とも言えます。実際インドネシアには多くの優秀なインディーズ・バンドが存在するのですが、世界的にはまったく知られておらず、世界中の音楽ファンには良く「こんなに良いバンドがインドネシアにあるとは知らなかった! 」と驚かれています。
ジャカルタやバンドン、ジョグジャカルタ、スラバヤ、メダンなどの主要都市には多彩かつ独自の音楽シーンが展開されています。Brilliant at Breakfastが活動の拠点としているジョグジャカルタは、小さく、アーティスティックな空気に包まれた学生都市です。ジャカルタやバンドンと言った大都市から少し離れていることもあり、あまり知られていないのですが、アートスタイルやジャンルを超えた、とても結束力の強いシーンがあります。
近年では各都市から非常にクオリティーの高いインディーズ / オルタナティヴ・バンドが多く出てきていて、その中でも特にWhite Shoes and the Couples' Companyは日本の主要CDショップにも流通されている代表的なバンドの一つです。Bangkutaman、Pure Saturday、The Monophones、その他多くの優れたバンドがありますので、ぜひ機会があったら聴いてみて欲しいと思います。
——「Gundala Putra Petir」のミュージック・ヴィデオを拝見しました。アメコミ風のストーリー仕立てになっている映像がとても面白かったです。あのMVのアイディアはどのようなところから生まれたのでしょうか。
このビデオは「The Untitled Project」という放送分野の勉強をしている学生たちに作ってもらいました。クラスの課題でミュージック・ビデオの制作というのがあり、私たちの曲をピックアップしてくれたのです。私たちが曲の内容を説明し、うまく映像化してくれたと感じています。
「Gundala Putra Petir」という曲は、80〜90年代にかけて大流行したインドネシアの同名のコミック・シリーズに出てくるスーパーヒーローをモチーフにして作ったものです。映像を担当した学生たちはノスタルジックなコミック本の要素をビデオに取り入れ、このような演出になったのです。ビデオに登場するスーパーヒーローは、私たちのキーボード・プレイヤーが演じているのですよ。
Brilliant at Breakfastから見た日本の音楽シーン
——今回の来日公演は日本のTexas Pandaaがインドネシアで公演を行ったことが縁となって実現したものだと伺っています。Texas Pandaaのことをあなたたちは率直にどういうバンドとして捉えているのでしょうか。
とても光栄なことに、Texas Pandaaは昨年9月に、バンドンとジョグジャカルタの2都市でライヴ公演をしてくれました。そのツアーをきっかけに仲良くなったのですが、特にジョグジャカルタ公演の方は、私たちがメインで諸々セッティングを手伝わせてもらいました。
Texas Pandaaはいわゆる「正統派シューゲイザー・バンド」だと最初は思っていたのですが、地元のラジオ局「Outerbeat」でどんどん彼らの音楽がヘビーローテーションでかかるようになってから、キュートなドリーム・ポップの要素が見えてきて、さらに実際のライヴを観てみると、とても華やかかつ賑やかなサウンドで、ずっと驚きの連続でした。Texas Pandaaには少し80〜90年代の音楽シーンの雰囲気もあると感じていたのですが、彼らのインタビューで彼らがThe Sundaysの影響を受けていることを知り、なるほど、と思った記憶があります。
実際、彼らのライヴは大変クオリティーが高く、メンバーも全員とても優しくフレンドリーで、素晴らしいミュージックマンシップを持ち合わせたバンドだと思います。彼らと一緒に撮った写真一枚一枚から幸せが滲み出ていて、それが全てを物語っていると思います。
——また、あなたの国で日本の音楽シーンはどのように伝わっているのでしょうか。
日本のポップ・カルチャーはインドネシアで大変な人気で、コミック、アニメ、映画、ファッション、音楽、などあらゆる面で注目されています。音楽に限って言えば、いわゆる「J-pop / J-rock」と呼ばれるジャンルが最も人気があります。実際こちらには「J-Rock」という名前のL'Arc-en-Cielのカバーバンドがあるくらいです(笑)。でも本当の音楽好きはJ-pop / J-rockというジャンルにとどまらず、幅広く日本のバンドを聴いています。
——では、あなたたちの好きな日本のアーティストをいくつか教えていただきたいです。また、そのアーティストをあなたたちはどのようにして発見したのでしょうか。
ものすごくいっぱいあるので、困っちゃいますね! Texas Pandaaや4 bonjour's partiesをはじめ、この度共演するバンドたちはもちろん良く聴きますし、It Happens、ミツメ、Flipper's Guitar、Pizzicato Five、Kahimi Karieなどのアーティストも大好きです。インドネシアには日本の音楽を流すラジオ局が多く、また日本の音楽シーンを紹介するブログもたくさんあるので、主にそのようなところで情報を入手しています。ザ・コケッシーズと百蚊もバンド・メンバーに教えてもらって気に入っています。
Brilliant at Breakfastのメロディカ&ボーカル担当、Eka P.が先日ラジオ局で渋谷系の特別プログラムを編成し、彼女が大好きなFantastic Plastic Machine、Buffalo Daughter、嶺川貴子、Seagull Screaming Kiss Her Kiss Herなどのアーティストが放送されました。
——待望の日本公演が間近に迫っていますが、日本に来たらどんなことを楽しみにしてますか。
音楽を通して新しい友達ができ、多くのバンドと知り合いになって、一緒に乾杯できたらとても幸せなことだと思っています(笑)。みなさんと楽しい時間が過ごせたら、本当に嬉しいです! ぜひライヴを観にいらしてくださいね!
RECOMMEND
ミツメ / mitsume
70年代日本語ロックへの憧れや、90年代への郷愁、サイケ、オルタナ、ローファイ、ネオアコ、フォークなどがいびつに詰め込まれた本作は、DIY精神でアレンジや録音からアートワークに至るまで、全ての行程をメンバーと友人のエンジニアで敢行したもの。シンプルだからこそ映える珠玉のメロディーの数々は必聴。
4 bonjour's parties / okapi horn
01年より、宅録の閉鎖的なイメージを開放するというコンセプトのもと、 自由で良質な音楽を追求する音楽集団。D.I.Y.精神を貫くその独自のスタンスと、メンバー個々の課外活動が集大成され、音楽への愛情、好奇心、探究心、喜びが溢れまくった、まばゆいばかりの傑作2ndアルバム。
>>4 bonjour's partiesの特集ページはこちら
FLIPPER'S GUITAR / SINGLES
FLIPPER'S GUITARが発表したシングルとアルバム未収録の2曲を集めたコンピレーション盤。「恋とマシンガン」「ラヴ・トレイン」他、全12曲のまさにベスト盤にふさわしい1枚。
PROFILE
当初はライヴを行わない「ベッドルーム・バンド」として始動、友達のすすめで出演したライヴをきっかけに、ライヴ・バンドとして2008年11月にメンバーを集い再編成。インドネシアは活力漲る学生都市ジョグジャカルタを拠点に活動を展開し、シンガポールをはじめとするアジア各国への遠征も敢行。
自国ではTVやラジオ番組などへの出演も多く、ローリング・ストーン誌からは「インドネシアの新しい音楽シーン世代を牽引する、最も注目すべきバンドの一つ」との高評価を得、デビューアルバム「Being Verbose Isn't Easy」は「2011年 / 東南アジアにおけるベスト・インディーポップ・リリースTop 10アルバム」(SEA Indie誌)で第2位を獲得している。