六畳人間 フリー・ダウンロード&インタビュー!
いつのことだったか、優れたアーティストは宇宙や超常現象に惹かれる人が多いという話を聞いたことがある。正直「だからどうなんだ」と思っていたのだが、まだ誰も聴いたことのない新しいサウンドを生み出すのが作り手のイマジネーションだと考えると、それもあながち間違いではないのかもしれない。
いまの日本の音楽シーンを見渡しても比べられるバンドがまったく見つからないという点において、この六畳人間というバンドはまさに孤高の存在感を放っている。通算5作目にして自主レーベルからのリリースとなる新作『2060』から聴こえてくるサウンドは、時に未来を想起させ、また時には太古の祝祭音楽を思わせる。どちらにせよ、それは我々が未だ触れたことのない時代を想像させる音だ。未知の世界への憧憬と飽くなき探求心が生んだ未来の音楽。これはくせになる。
インタビュー&文 : 渡辺裕也
六畳人間「ようせいさん」のフリー・ダウンロードはこちらから! (期間 : ~2011年8月11日)
★2060年にはどんな音が鳴っている? きっと六畳人間のような音!
六畳人間 / 2060 自主レーベル「GURUGURU RECORD」第1弾リリース作品となる3rdアルバム。力強くストレンジでサイケデリックに奏でられる音楽は、時代も空間も飛び越えてしまったかのような、未知の世界へと誘います。
【TRACK LIST】
01. 4次元ボーイ 02. ようせいさん / 03. サマーソング / 04. 0人間 / 05. にらめっこ / 06. クジャクの森 / 07. ぼくのうずまき / 08. すえっこの逆襲 / 09. 空白と手をつなごう
【特典】
デジタル・ブックレット
★六畳人間『2060』へコメントが届いています!
青いテレキャスターがチャーミング 僕は六畳人間大好き!
割礼 宍戸幸司
抜群のソングライティング能力!
ええ声! そして、なんちゅードラムの音…
古すぎる。俺、惚れてます。
Limited Express (has gone?) 飯田仁一郎
3ピースの明快さとハラハラの先で徐々にもたげるゾクゾクの抑揚感!
ツヤのある歌も、独特な湿度のあるリズムも、全部が全部、実に人間臭くてたまらなく好き。
ポップでいて腰の入ったナチュラルなドライヴは、説明不要!
力技だけじゃない、熟練されたウズウズにやられました。
moools 有泉充浩
自分で口にした時にいい感じの言葉を選んでる
――今回の新作は、本来であれば今年の2月に発売される予定だったそうですね。
タカオサトル(以下、タカオ) : 去年の今頃に録音を始めて7月末には録り終わっていたんですけど、諸事情でリリースが出来なくってしまって。そこでレーベルから原盤権を頂いた上で、こうやって自主で出すことになったんです。
――じゃあ、録った当時の熱はもうない?
タカオ : まったくないです(笑)。もう一年前の話ですからね。どういう感じだったかも今はあまり覚えてないんだけど、早く出して終わらないとすっきりしないんですよね。すでにスタジオでは次の段階に行こうとしてるから。
――じゃあ、今日ですっきりさせましょう(笑)。その前にまず、お二人が最初に洗礼を受けたバンドを教えて頂きたいのですが。
タカオ : ミスター・チルドレン(笑)。
――(笑)。ジョークでしょ?
タカオ : いやいや。中学校を卒業するくらいまでそれしか聴いてなかったです。それからミッシェル・ガン・エレファントとかを経由して、60年代のビート・ロックがかっこいいと思ってからはその辺りを聴くようになったり。あとはパンクですね。クラッシュとかピストルズ。
スギハラコウスケ(以下、スギハラ) : 僕はザ・イエロー・モンキーでした。
タカオ : 僕は京都の舞鶴っていう、音楽の文化も情報もなにもない田舎の出身なので、テレビで観たものをそのまま聴いてた程度なんです。
――じゃあ、当時はミスチルのどの辺りにグッときてたんでしょう?
タカオ : 今となってはもはやわかんないですよ(笑)。でも、なんかかっこよかったんだと思う。楽器を持つきっかけになったのはミッシェル・ガン・エレファントですけど、それも入ってくる情報がそれくらいしかなかったってだけで。それに元々が引きこもりがちの暗いタイプなので、自分から音楽を探し求めたりもしなくて、ミッシェルがやってたラジオ番組でかかってた曲をかっこいいと思って聴いてましたね。まあ、普通のリスナーだと思います。
――六畳人間の音楽は所謂ミッシェルのような疾走感のあるロックンロールというよりは、どちらかというとゆっくりと紡いでいくような印象が強いんですが、それはどのあたりからの影響があるのでしょうか?
タカオ : 多分はっぴいえんどなんじゃないかな。それも単純にかっこよかったってだけで、特にどう影響を受けたとかはないんですけど。まあ、聴いてるんでね。真似しようとは思ってないですけど。
――例えば、楽曲を作るにあたって、意図的にアイデアを他から引用したりすることはありますか?
タカオ : そういうことはなるべく考えないようにしないといけないですよね。最初の頃はそういうこともあったのかもしれないですけど。でも、少なくとも歌詞に関してはないかな。自分で口にした時にいい感じの言葉を選んでるから。
――いい感じというのは、発語感?
タカオ : そうですね。口にして頭の中で映像が浮かんだ時に気持ちいい言葉を選んでいます。歌っている時にそれがまた頭に浮かんで気分がよくなるっていうのもあるし。不快なことを考えながら演奏したくはないですから。自分が気持ち良くなるようなイメージになるものを昔からやっているような気はします。
――アルバム全体からキャプテン・ビーフハートの『トラウト・マスク・レプリカ』に近い雰囲気を感じました。あのアルバムってパッと聞くと混沌としているようで、実はのすごく緻密に整理された作品ですよね。『2060』にもそういった緻密さを感じたのですが、実際これは計算に沿って作られた作品なのでしょうか? それともレコーディング中に起こった偶発的な部分もあるのでしょうか?
タカオ : 作り方としては、僕がザックリ作ったものをスタジオでやって、それを(エンジニアの)中村宗一郎さんに聴いてもらって、アドバイスをもらって、まずベーシックを完成させました。そこからなにを乗せていくかっていう作業はその場で決めていく感じでした。サックスとか、コーラスとか、パーカッションの音ですね。
――思いついたものをその場でどんどん試していったと。
タカオ : 思いついたというより、思いつかさせられたというか(笑)。自分達の作ったものを音楽的によりよくなる方に持ちあげてもらったんです。
――具体的にどのような指摘を受けたのですか?
タカオ : 「順番がおかしい」とか。楽曲の構成から変わったものもありましたね。実際に言われたことを試してみると、確かにそっちの方がよいので。そこは中村さんが本当にすごいんです。聴かせるとすぐにどこが違うのかはっきり言ってくれるので、とにかく早い。
――中村さんの視点が加えられた上でこのサウンドが形成されていったんですね。ということは、レコーディングに入る前のイメージとはまた別の仕上がりになったのでは?
タカオ : そうですね。今回のアルバムで僕が一番やりたかったのは、とにかくドラムの音がかっこいいものを作りたいということで。というのも、最近ずっと聴いているものが、カンとか、それこそビーフハートだったんですけど、その辺の人達はドラムの音がとにかくかっこよくて。もうそれだけでいいんですよね。自分もそういうものが作りたかった。で、僕はそこにばかりのめり込んでいたせいで、普通の人が気にするような部分、それこそ構成とかそういうところへの注意が甘くなっていたので、そこを中村さんに指摘してもらったんです。
――いつ頃からそういった音への志向性が強くなったのですか?
タカオ : 前作のレコーディング前からその辺りを聴くようになって、その頃からですかね。
――タカオさんが徐々にそういった音響的な部分にのめり込んでいるのはスギハラさんも見ていて感じていたんでしょうか?
スギハラ : いや、わかんないです(笑)。やりたいことが変わってきてるのかなっていうのはなんとなくわかりますけど、わざわざそれを口に出したりはしないので。僕は出てきたものに対してリアクションを返すだけですね。他の音が変われば僕の出す音も変わるっていうだけです。結局根本でなにが変わったのかは、僕は知りません。それを聞いちゃうと面白くないし。
タカオ : それに「アルバムを作る」という考えに沿って曲を作ることはないもんね。曲が出揃った段階で考える事はありますけど、基本的には1曲1曲作っているので。
――非常に統一感のある仕上がりになっていると思いましたよ。
タカオ : まさにそこが中村さんの力ですね。
ど真ん中を言わずにど真ん中を想像させるのが面白い
――『2060』というタイトルですが、これは西暦で2060年と捉えて間違いないでしょうか。
タカオ : そうですね。近未来のイメージですね。
――なぜ2060年なのでしょう?
タカオ : まあ、50年後くらいの感じかなと思って。で、作っている時からちょうど50年後にしようってことで2060にしたんですけど、去年に出せなかったから、ちょっと中途半端になっちゃったんですよね(笑)。
――六畳人間の曲には未来や宇宙を想起させるものがモチーフとして頻出しますよね。タカオさんがそのような未知のものに惹かれる根っこにはなにがあるのでしょう?
タカオ : さっきの話と一緒で、想像していてテンションが上がるものがそういうものだからですね。で、あんまり先のことはよくわからないけど、50年後くらいを考えると面白いかなっていう。なんとなくですけどね。今回は曲が出揃って録音が全部終わってからタイトルをつけたので。
――未来を想起させる言葉が並ぶ一方で、例えば「0人間」なんかを聴くと、現代に対する批判的な視点もここには含まれているのかなとも思ったんですが。
タカオ : おー。でも、そういうことはあんまり考えてませんね(笑)。詳しい意味づけが出てくると聴いててうっとおしくなっちゃうし。サウンドと言葉の世界観の関わりとかもあんまり考えてないので、その辺りについて聞かれても面白い話は出てこないですね(笑)。変に意味が深かったり、日記みたいなものはやりたくないっていうのはありますけど。
――曲にパーソナルなものが反映されるのは避けたい?
タカオ : いやいや。それは反映されるもんだと思ってますよ。でも、他の人の曲で論理的な口調で歌われたものを聴いていると、うっとおしく感じるというか。自分には合わない感じがありますね。
――いつ頃からそういうのが気になるようになったんですか? 例えば1枚目の『嘘の国』は、タイトルからしてすごく意味合いが強い印象を受けますが。
タカオ : 確かにそうですね。だから、前作辺りからなのかな。そういうのが特に気になるようになったのは。やりたいこととやりたくないことがちょっとずつ具体的になってきたような気はします。ただ、ちょっと上手く言えないですけど、具体的なものを説明したくないし、されたくないんですよね。ど真ん中を言わずにど真ん中を想像させるのが面白いというか。今の僕が作りたいのは、例えば実際のBPMは100なんだけど、BPM300と同じくらいのスピード感がある曲なんです。BPM300の体感を出そうとして300にするより、100くらいで300と同じくらいの体感速度を出す方が面白いと思って。それはこのアルバムを録り終えてから思った事でもあって。このアルバムを作ったいまならそういうことが出来そうな気がしているんです。で、歌詞においてもそういうことがやりたい。うまく説明できないけど。
スギハラ : 「お前が好きだ! 」っていう気持ちを、そのまま「お前が好きだ! 」とは言わずに、ちらちら見たり、花をプレゼントしたりして伝えるような感じでしょ?
タカオ : そう。ただ、今の僕がやりたいのは、ただイメージを投げて想像して下さいっていうことではなくて、その輪郭だけでど真ん中と同等のものを100パーセントぶつけたいんです。そういう方法論が必ずあると思っていて。このアルバムを作ってやっとなんとなくわかってきたというか。習作っぽい感じはやっとなくなりそうな気がしています。
――今までの作品はどれも習作という気持ちが強かったんですか?
タカオ : ずっとありました。僕がなぜこのアルバムでドラムの音を追求したかったかって、今までそれをやってこなかったからなんです。だからドラムがどういうものなのかっていうことを研究し尽くしたかったし、なんで僕はこんなにドラムが好きなのかをしっかり考えたかった。
――なぜ今までは出来なかったんでしょう?
タカオ : 歌と曲作りでいっぱいいっぱいだったからだと思います。あとはギターでなにができるかっていうことにも時間をかけた感じはあります。
――そうなるとドラマーに対する接し方も必然的に厳しくなりそうですね。
タカオ : 正直うんざりしていたでしょうね(笑)。僕はけっこう口で言っちゃう方なんで。ドラムの音なら何でもかっこいいってわけじゃなくて、かっこいいと思うドラムの音があるから好きなんですよ。そこを追求していくやり方が今回のアルバムでなんとなくわかったんです。
――では、今回の作品でドラムというテーマがあったように、これまでの作品にもひとつひとつ明確な課題があったんでしょうか?
タカオ : 最初の2枚はただ必死でしたね。3枚目くらいまでは、弾き語りにドラムとベースをつけたような感じでした。自分で言うのもおかしいですけど、これまで出してきたものは、曲としては好きなものばかりなんですよ。ただ、音楽的な意味で今の僕が惹かれるものは、過去の曲にはないんです。
――しかし、習作の時期を終えたことで、次作のハードルがグッと上がった感じがしますね。
タカオ : そうですね。でも、やれそうな気がします。妥協しなければ。「まあまあかっこいい」とか「よくまとまってる」みたいなものに「違う」と言えないとダメなんですよね。それは自分に対してもそうだし、一緒に演奏している人に対してもそうで。自分達はそこから別のところに行こうとしているわけだから、そこは厳しくやらないと。
音楽から覗く近未来の世界
宇宙人 / アメーバダンス、あこがれのネクタイ
タイトなグルーヴに透明感のあるギター。鋭利な音の隙間で独特の世界観を歌った歌詞が浮かび上がり、より独特な印象を残す宇宙人のシングルが配信開始! 相対性理論直系でありつつも、独特な空気感と正体不明なヴィジュアルが、今話題を呼んでいる。
OORUTAICHI / 2010.12.17 Live at GOODMAN(DSD+mp3 Ver.)
GOODMANで行われたOORUTAICHIのライヴ音源! 昨今の彼のライブは、あのデジタル・クンビアの奇才Dick El Demasiadoも驚かせるほど驚異的に素晴らしく、見ているもの達を宇宙へと誘う。是非そのライヴの一端を、広がりを体感できる高音質で堪能してみてください。
group_inou / HEART
2nd Album『_』収録の「HEART」を、エンジニアにmatsu & takeを迎え、繊細かつダイナミックに再構築! トレンディ・ドラマのようにきらびやかな世界と突き刺さる現実の両面を見事に描いた名曲がここに完成! imai、matsu & take、zatorによる渾身のリミックスも収録。全5曲、28分を越える大ボリューム! PVはイルカで話題沸騰中のTHERAPYに引き続き、AC部が制作! オリジナリティーを追求する両者のコラボレーションが再度炸裂する!!
LIVE SCHEDULE
3rd Album『2060』 レコ発ツアー
2011年8月6日(土) @pubulic space四次元
w / mimic#9 / amily / TENJI BROCK / Howling Setta(長崎)
2011年8月7日(日) @FUKUOKA SPIRAL FACTRY lectronics guitar+西風
w / FOLK ENOUGH / 魚座 / THE VOTTONS / ベベチオ / DELTAS / ANATAKIKOU / オワリカラ
2011年8月18日(木) @木屋町UrBANGUILD
w / and young... / ASAYAKE01
2011年8月26日(金) @東高円寺U.F.O. CLUB
w / and young... / ミタメカマキリ
PROFILE
六畳人間
タカオサトル(Gt/Vo)
スギハラコウスケ(Ba)
ヨシダシンヤ(Dr)
2001年9月、タカオサトルを中心に六畳人間結成。2004年1月、イトウヨシキ(Dr)加入。2005年10月、デビュー・ミニ・アルバム『嘘の国』をリトルモアレコードからリリース。10月21日発売の朝日新聞今月の10枚に『嘘の国』選出。2006年7月、FUJI ROCK FESTIVAL'06 ROOKIE A GO-GOに出演。11月、「第一回渋谷音楽祭」C.C.lemonホールにて谷村新司と共演。2007年1月、セカンド・ミニ・アルバム『夢の万祝』をアッパーデッキからリリース。9月、木曽鼓動07'に出演。10月、MAGA★ROCKS'07・MINAMI WHEEL'07に出演。2009年1月、セカンド・アルバム『インヤンツイステッド』選出。2010年11月、イトウヨシキ脱退、ヨシダシンヤ加入、現メンバーに。2011年8月、自主レーベルGURUGURU RECORDSより、サード・アルバム『2060』発売。