“日本の奇祭”
僕が目する限り、この国で最高のライヴ・バンドは他でもない、モールスだ。それは今に始まった事ではなくて、彼らのステージを初めて観た時からずっとそう思っている。アイデアに溢れたフレーズを次々と繰り出す寡黙なベーシスト。常に穏やかな表情で的確なビートを刻みながら、コーラス・ワークも務めるドラマー。そして時に繊細に響き、時に凶暴に唸るギターを掻き鳴らしながら、少年のような声で歌うヴォーカリスト。発せられるメロディと言葉はいつの間にか耳を通過し、体内に沈殿していった。彼らを知ってから、僕は生半可なライヴでは満足出来なくなってしまった。
そんなモールスが主催するイヴェント『モールスまつり』はその名の通り、祭だ。毎回ほぼ欠かさず行っているのだけれど、いつも楽しくて仕方がない。来場者に配られるしおりはつい全部集めたくなる程面白いし、入場したらまず名物のモールス焼きは食べておきたい(残念ながらこれはもうやらないみたいです)。日常から切り離された異空間でありながら、ただ気の置けない仲間が全員集まった時の飲み会みたいな親密な雰囲気も感じられる、不思議な場所。まさに“奇祭”。
しかし、なんで『モールスまつり』だけがこんなに特別なんだろう。そもそもバンドが自分達でイヴェントを立ち上げる事自体はまったく珍しい事ではない。むしろある程度の集客力とキャリアがあれば、どんなバンドもそういった催しを開くのだけれど、大概はただ横の繋がりがあるバンドを集めただけで、観に来たお客さんにとっては通常のライヴと何も変わらなかったりする。そんな中で『モールスまつり』が際立つのは、きっとメンバーの三人が音楽から得た喜びや興奮を、集まった人達全員とシェアしたいという気持ちであのイヴェントに臨んでいるからだろう。音楽を演奏するのは楽しい。気の合うメンバーがいるともっと楽しい。でも、それをたくさんの人達と分かち合えたらもっともっと楽しい。ミュージシャンってつい自分達の活動や日常に追われてそんな当たり前の事を忘れがちだけれど、彼らはそれを見失うことなく、『モールスまつり』という形で実践し続けている。モールスの演奏中、既に出番を終えた共演者達が舞台袖からビール片手に彼らのステージを笑顔で観ている姿を見ると、何か象徴的だなぁと思う。自己完結した音楽ばかりが溢れ、食っていくためには自分の誠実さも売り物にしなければならないような今の世の中で、彼らの活動が示唆するものは少なからずあると思う。
さて、そんな『モールスまつり』も20回の大台を超え、先月の第21回を皮切りになんと3ヶ月連続で開催されます! でも今回は特別な演出も催しもなし。すべてガチンコの3マン・ライヴ(しおりはもちろん配布されます) ! だって、行った人には言わずもがなだけど、先月は渋さ知らズとネハンベースだったんだよ! ? 締めはもちろんモールス! もうそれだけで宴だ! 祭だ ! !
前回行けなかった方。大丈夫、まだ2回あります。今月はグループ・イノウとアナログフィッシュ、来月はオウガ・ユー・アスホールとにせんねんもんだい! この豪華な事この上ないメンツ。どちらもまた最高の夜になるでしょう。
そして、そのモールスからなんと先月の『モールスまつり』のライヴ音源が届きました! しかもフリーで2曲! さすがモールス、太っ腹! もう迷う必要ないね。6月14日と7月10日は、モールスと共に宴に興じましょう! (text by 渡辺裕也)
第21回モールスまつりのライヴ音源を6/14まで無料でプレゼント!
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→ 「花食う犬」のダウンロードはこちら
またまた配信限定Live Albumのプロモーション番組を作っちゃいました !
VOL.2 ものまねにチャレンジ編
VOL.1 森の動物達と一緒に暮らすための会話講座〜入門編〜
第22回モールスまつりがあります
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mooolsです
1997年、酒井泰明、内野正登に有泉充浩が加わり、活動開始。以降下北沢、渋谷周辺の都内ライブ・ハウスを中心に精力的なライブ活動を展開。モデスト・マウス、フォーク・インプロージョン、ディアフーフ、プラス/マイナス、ヴァーサス、、fOUL、友部正人、あぶらだこ、など国内外、メジャー/インディ、ジャンルを問わず幅広いライン・ナップとの共演を果たす。2002年より自主企画「モールスまつり」を立ち上げ、キャルヴィン・ジョンソン、ザ・マイクロフォンズ、ラヴ・アズ・ラフター、リトル・ウィングス、ザ・マジック・マジシャンズ、ブラッドサースティ・ブッチャーズ、スパルタローカルズ、キセル、、ビヨンズなど、国内外の様々なアーティストをゲストに迎えている。酒井、有泉はインストゥルメンタル・グループ、カバディ・カバディ・カバディ・カバディ、内野はtoddle、Swarm’s Armのメンバーとしても活動しており、有泉はレーベル(セヴン・イー・ピー)を2002年に立ち上げ共同主宰している。
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moools 酒井泰明のちょっといいとこ見てみたい vol. 1