HINTOと呼応する"堕落"の在り方——安部コウセイと伊東真一のユニット、故郷で収録した新作配信&インタヴュー
HINTOの安部コウセイ(Vo, Gt)と伊東真一(Gt)によるフォーク・ユニット、堕落モーションFOLK2が、前作『私音楽-2012春-』より3年ぶりとなる新作『私音楽-2015帰郷-』を発表した。本作ではレコーディングに安部と伊東の母校である福岡県田川市立中央中学校の体育館を使用するなど、スタジオ・レコーディングを一切行わずに全曲を収録。レコーディング、ミックスにHINTOも手がける川面晴友(taa studio)、マスタリングにゆらゆら帝国やOGRE YOU ASSHOLEを手がける中村宗一郎(ピースミュージック)を迎え、場の空気感も大事に作り上げられた5曲が収められた。その極私的な制作の背景、またHINTOの活動の一方で続ける堕落モーションFOLK2の必要性について安部、伊東のふたりに語ってもらった。
堕落モーションFOLK2 / 私音楽-2015帰郷-
【配信形態】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC、mp3
【配信価格】
単曲 250円 アルバム 1,200円
【Track List】
01. 静かな嵐 / 02. ブラッドシェア / 03. 春、林檎。 / 04. 東京節 / 05. 完璧な犬
INTERVIEW : 堕落モーションFOLK2
まさにこのタイトルが物語っているように、『私音楽-2015帰郷-』は極私的な視点から郷愁をつづったフォーク・ソング集だ。元スパルタローカルズ、現HINTOの安部コウセイと伊東真一によるアコースティック・ユニット、堕落モーションFOLK2。彼らは2作目となるこの音源集の制作にあたり、ふたりが生まれ育った福岡県田川市へと帰省し、5曲中3曲を地元の体育館と文化センターで録音したのだという。実際にその音源を聴いてみると、アコギの弦の軋みまでもが広い室内で反響するなかで、安部の〈田舎の自分に会いたくなった〉と歌う声が聴こえてくる。そして、もう2曲は新代田FEVERと渋谷La.mamaという、こちらも彼らにとっては非常に馴染み深い東京のライヴハウスでそれぞれ録音。上京してからもうずいぶん経つ東京への想いをしたためた言葉が、とてもリラックスした調子で歌われている。
どの楽曲もギターの弾き語りを土台にしたシンプルなアレンジだが、同時にその歌い口や背景にひろがるリヴァーブがリリックのストーリー性をさらに補完していくという、明確なコンセプトも感じさせる作品だ。あるいは、『私音楽-2015帰郷-』はHINTOのふたりが初めて自分たちのルーツに立ち返った作品なのかもしれない。今こうして作品に着手した経緯について、安部と伊東に話を訊いてみた。
インタヴュー&文 : 渡辺裕也
写真 : 雨宮透貴
僕らは幼馴染なんだし、せっかくなら故郷で録ろうと
——今回の作品は録音場所と楽曲の内容がリンクしていて、しっかりコンセプトを立ててから制作に臨んだことが伺えるんですが。
安部コウセイ(以下、安部) : そうですね。でも、録音する前から「静かな嵐」と「ブラッドシェア」はすでにライヴでもやってたんですよ。で、真くんとも「そろそろ音源つくらないとね。堕落はふたりだけだから、別にスタジオで録らなきゃいけないってわけでもないし」みたいな話になって、確かにそうだなと。とはいえ、思い入れが何もない場所で録るのもつまらないし、録音する場所になにかしらの意味合いはあった方がいいなと思って。だったら、僕らは幼馴染なんだし、せっかくなら故郷で録ろうと。でも、最初はなかなか場所の認可が降りなくて。
——特に中学校の体育館は難しそうですね。
安部 : そうなんですよ。最初はマネージャーから電話してもらったんですけど、許可してもらえなくて。でも、そこで諦めたくなかったから、福岡のテレビ局にいる知人にお願いして、そっちからアプローチしてもらったんです。
——おお、地元のテレビ関係者を巻き込んだんですか。
安部 : はい、巻き込みました(笑)。
——そもそも、どういう理由で中学校の体育館と文化センターを選んだんですか。
安部 : まず最初に浮かんだのが体育館だったんです。体育館って広いし、なんかおもしろい音が録れそうじゃないですか。
——残響がすごそうですよね。
安部 : そうそう。だから、すごくいいものが録れるかもしれないし、逆にぜんぜんダメかもしれない。そこがおもしろそうだなと思って。
伊東真一(以下、伊東) : でも、実際はイメージにかなり近い音で録れましたね。ただ、予想以上に寒かった(笑)。これ、12月末に録ったんですよ。
安部 : 録音中はもう、寒くて寒くてね(笑)。結果的にそれでいいテイクをひねり出したからよかったんですけど。で、とりあえず学校はうまく押さえられたから、あと1ヶ所どこかないかなと。それで思い当たった場所が、文化センターだったんです。子供のころ、たまに映画が上映される文化センターってあるじゃないですか。ドラえもんとか。そこはわりとあっさりOKしてくれて。
——つまり、何かしらの思い入れがある場所を選んだ結果、その2ヶ所になったということ?
安部 : そのはずだったんですけど、じつはその体育館、もう建て替わっちゃってたんですよ。レコーディング前に真くんのお父さんからその情報を聞きつけて、それでGoogle Mapで見てみたら、どうやら違う建物になってるようだぞと。
——自分たちの知っている体育館ではなくなってると。
安部 : だから、結局なんの思い入れもないところで録音したんです(笑)。
僕と真くんはちょっと手を抜くと、すぐ真面目になっちゃうから(笑)。僕らは頑張らないと堕落できないんです
——それもそれで時間の流れを感じさせるエピソードですね(笑)。実際にそこで録音された楽曲には、かつてそこにいた当時のことを回想するような言葉が並んでいますよね。今こういうことを歌おうと思ったのは、どういう心境から?
安部 : 僕、地元に対するコンプレックスが昔からすごかったんですよ。20代のころは特にそれが強すぎて、それこそ地元の友達には会いたくないとか、「出身地が同じなんですよ」って声かけてくれる人に対しても、「だからなんだよ!」みたいな感じがあった(笑)。でも、そういう気持ちが年齢を重ねていくなかで徐々になくなっていって、むしろ最近は故郷に引っ張られてる感覚があるんですよね。そういう若いころになかった「故郷を大事にしたい」みたいな気持ちが芽生えたっていうのが、きっかけとしてはまず大きいと思います。
——故郷との付き合い方が変わってきたと。田川市ってどんな場所なんですか。
安部 : 今はそうでもないんですけど、当時の田川は炭鉱街の名残もあったのか、ものすごくガラが悪かったですね。過疎化も進んでたし、いわゆるヤンキー文化みたいなものも根強く残ってた。とはいえ、ジメジメ陰湿な感じではなく、お祭りノリの喧嘩っ早いカラッとした雰囲気の街で、僕はそこで常に緊張しながら毎日を過ごしてましたね。いつカツアゲされるかわからん、みたいな感じで。
伊東 : 僕の場合は小5まで北九州市にいたので、距離感がちょっと違うんです。田川に住んでたのは小6から高3までの間で、しかも高校は北九州に通ってたので、田川で濃密な時間を過ごしてたのは、実質3〜4年間くらい。だから、田川は青春の地って感じですね。
——良い思い出の場所?
伊東 : まあ、そこはやっぱりいろいろありますよね(笑)。それこそカツアゲとか、他校同士の喧嘩とか、そういう田舎ならではの出来事はよくあったので。
安部 : いやだよねぇ、そういうの(笑)。でも、こうして自分が歳をとってくと、自分の立ち位置も変わってくるんですよね。というのも、だんだん親のことを心配するようになっていくじゃないですか。そういう心情の変化とともに、故郷とのつながりがまた増えていった感じはする。
——それはHINTOの活動ともつながってるんじゃないですか。それこそコウセイさんの弟さんがメンバーに加わったし(安部光広 / ベース。2013年1月にHINTO加入)、最新作の『NERVOUS PARTY』でも、けっこうパーソナルなことが歌われてたから。
安部 : 確かにそれはありますね。堕落モーションFOLK2は、一応 HINTOの別プロジェクトとしてやってますけど、自分のなかではどちらも呼応し合ってるところがあって。ただ、堕落はあんまりちゃんとしたくないんですよ。そもそも「堕落」って名乗ってるくらいだから。
——ああ、このユニット名はそういうことなのか。
安部 : 音楽のよさって、そういう不真面目なところにもあると思うんです。でも、僕と真くんはちょっと手を抜くと、すぐ真面目になっちゃうから(笑)。僕らは頑張らないと堕落できないんです。それに、これは人にもよるとは思いますけど、真面目な感じが出すぎてるのって、あんまりよくないと思いません?
——シリアスな雰囲気を出すのって、簡単といえば簡単ですからね。気を抜いた状態で何かを表現することの方が、たしかに難しいのかもしれない。
安部 : それに、真面目すぎると大胆さが失われるじゃないですか。特に僕の場合、自己防衛みたいな気持ちが働いてくるんですよ。だから、せめて口では無責任に「いいよいいよ! なんでもOK」って言いたくなるんです。それでちょうどトントンになる感じがするというか。
——その自己防衛というのは、HINTOらしさや堕落らしさを守ろうとする意識ってこと?
安部 : そうそう。一旦何かできちゃうと、それを壊すのが怖くなるじゃないですか。今はそこから解放されたいっていう気持ちがけっこう強くて。で、HINTOと堕落をふたつやってると、お互いの活動をけっこう客観的に見れるんですよね。そうすると、たとえばHINTOではまだふわふわしてた感覚が、堕落ではかなりはっきりしてきたりする。で、それをまたHINTOに持ち込んでいくっていう。
伊東 : もっと単純に言うと、HINTOは曲作りに時間がかかるんですけど、堕落はとにかく早いんですよ。一旦制作に入ると、ほとんど行き詰まったりしない。今回こうして堕落の作品を録ることにしたのは、そういうスタンスで久しぶりに制作したくなったっていうのもあると思う。
安部 : そうだね。堕落のときは緊張してないというか、ちょっと語弊のある言い方だけど、あんまり頑張ろうとは思ってない(笑)。ただ普通に会話するみたいな感じでサクサク進んでいくんです。
——HINTOのときは?
安部 : やっぱりメインの活動というか、自分たちの屋号みたいなものだから、どこかに「失敗できない」みたいな気持ちはあるのかもしれないですね。でも、本当はそういう気持ちも邪魔だなと今は思ってて。「失敗したっていいじゃねえか!」って思えるようにしていきたいんですけどね。堕落だとそれが普通にやれるから。曲のアイデアもぽんぽん出てくる。
——こういうパーソナルな内容の楽曲って、たしかに初期のHINTOでは避けられてたような印象もあります。
安部 : うん、たしかに避けがちでしたね。というのも、初期のHINTOに関しては、むしろそういう個人的なことをまったく歌詞に入れないで書いたらどうなるかっていう、ちょっと実験的な気持ちもあったんですよ。自分の感情的なものを一旦なくしてみようと。で、それもそれでおもしろかったんです。要は感情に左右されないから、どんなシチュエーションでも歌えるんですよ。でも、今はその反動というか、個人的なブームが変わったのか、ここ最近はまた少しずつ自分の個人的なところにフォーカスが当たってきてる。それが今回の作品ではものすごく素直に表れたんじゃないかな。
ディレクションを一切してない状態で録音してみたら、真くんが珍しく褒めてくれるもんだから、「あぁ、そういうもんなのか」と
——歌録りの一部はコウセイさんのご実家で行ったそうですね。
安部 : はい。半分くらいは実家で録ってるんですけど、これが不思議なもんで、実家にいるときって何も考えないんですよ。つまり、思い出に浸ったりとか、かつての自分を思い出したりすることがない。むしろそういうことを考えるのって、東京にいるときなんですよね。実家にいると、昔を思い出すまでもないから。
——おのずとそこで生活していた当時の自分になると。
安部 : そういうことですね。すごく自然に歌えてた。しかも、今回録った歌は、真くんが「良い」と言ってくれてるんですよ。これ、極めて珍しいことなんです。彼は基本的に歌のことは何も言ってこないし、褒めもしないので。
伊東 : (笑)。
安部 : で、一方の俺はどうだったかというと、その良し悪しみたいなことすらまったく意識してなかった。要はディレクションを一切してない状態だったんですよね。逆に東京で録るときは「ピッチがずれた」とか「この歌い方はちょっと違う」とか、ちゃんと自分をコントロールしてるんですよ。でも、今回そういう視点を排除した状態で録音してみたら、真くんが珍しく褒めてくれるもんだから、「あぁ、そういうもんなのか」と。
伊東 : 僕自身もそんなに意識して歌を聴いてたわけじゃないですけどね。たしかに作為的なものがまったくなかったし、ものすごくフラットな感じに聴こえました。すごく自然に馴染んでくる歌だったというか。
——伊東さんも、そのナチュラルな歌声に寄り添ったギターに徹してますよね。いつもはもっとフレーズを動かす印象があるのですが。
伊東 : 僕自身も今回はそう感じています。単純にHINTOとはちがったアプローチでやろうと思った結果、おのずと歌に寄り添っていったというか。
安部 : そういえば、これは昨日ふと風呂場で思ったことなんですけど、過去の自分を思い返すと、どうやら俺はフォークな曲の方が自然にできるみたいなんですよね。何も考えずに弾けば、おのずとフォークっぽい土着感がでる。そもそも最初に自分で買った音楽、長渕剛さんの「とんぼ」でしたからね。
——ということは、HINTOでやってるような音楽はまた別ってこと?
安部 : うん、ロックは頑張ってつくってる(笑)。HINTOの楽曲に関しては、わりと後天的な感覚でつくってるところもあるんじゃないかな。それこそ田舎にいたころの俺は、3タックの霜降りジーンズをバチバチに穿いてたわけですよ。しかも坊主頭で。それが都会に出たことによって、ちょっとはおしゃれに目覚めて(笑)、「これがかっこいい音楽か!」ってことに気づいてからやるようになったのが、ロックだったんだと思う。
——じゃあ、いま堕落でやってることは、コウセイさんの原点に近い音楽ってこと?
安部 : うん。そこで思い出したことがあるんですけど、僕らはスパルタローカルズを組む前に、1度ふたりで堕落みたいなことをやったことがあるんですよね。当時の僕らは、よく真くんの家でギターを弾いたりしながら、とにかく悶々としてたわけです。バンドを組むにもメンバーに誘えるような友達は他にいないし、何とかならないものかと。そこで一時、とりあえずふたりでやろうよみたいな話になって。それでたしかタイトル覚えてないんですけど、月のなんとかかんとか、みたいな曲をつくったんだっけな。
——それはどんな曲だったんですか。
安部 : どうだったっけな…。たしか始まりの歌詞が、〈今夜はとても風が強いから、家でゴロゴロしてたいね〉みたいな感じでした。
——それ、今回のアルバムで歌ってる内容と、そんなに遠くない気がしますね(笑)。
安部 : そうなんです(笑)。変わってないんですよ。しかもその頃、まだ10代でしたからね。
現実との折り合いのつかないところが、なにかを表現しようとする活力になっているとは思う
——では、堕落でこうしてコウセイさんの原点に近い音楽を鳴らしたことは、今後HINTOにどんな影響を及ぼしそうですか。
安部 : これは主に歌詞のことですけど、HINTOで次につくるアルバムは、すこしコンセプチュアルなものをぼんやりとイメージしてて。それは完全に今回のやつをつくった影響です。具体的にはどうなるのか、まだ全然わからないですけどね。
——なるほど。サウンド面についてはどうですか。
伊東 : 今回の音源をつくる上ですごく意識してたのが、フォーカスをぐっと絞るっていうことだったんですよ。そこは次のHINTOにも繋がるかもしれない。具体的に言うと、堕落の前作『私音楽-2012-』ではエレキ・ギターもちょっと使ってたんです。で、それはそれで悪くなかったんですけど、ちょっと印象がぼやけたというか、サウンド面でHINTOとの違いをもっと明確にしたいなと。で、今回は最初から「アコースティック楽器しか使わない」と決めてたんです。そういう縛りを設けたことが、今回はいい結果につながった感じがしてて。
——音作りの制約をつくることで、作品全体の音像に統一感を与えられたと。
伊東 : そうです。あと、レコーディング前にジョニ・ミッチェルの『クラウズ(邦題 : 青春の光と影)』をずっと聴いてたんですけど、それがほぼアコースティック・ギターと歌だけなんですよね。それがすごくいいなと。
安部 : 彼はいつだって新しいことを試そうとしていますからね。でも、これは自分が誰よりも彼のギターを聴いてきた人間として思うことなんですけど、彼のギターで「今のすげえな!」と思うときは、だいたいベーシックなことをやってるときなんですよ。そもそも彼はブルース好きで、その側面をちらっと見せるときがホントいい。これは僕、昔から豪語してるんですけどね。彼は奇妙奇天烈なギタリストとして評されてますけど、1番の旨味はそこじゃないんです。だから、みんなわかってねえなと(笑)
伊東 : (笑)。僕、こうやってバンドをやってく上でのモチヴェーションが、年々「ギターが好き」とか「音楽が好き」ってことだけに特化されていってる気がしてて。その思いだけが自分のなかで増してるんですよね。絶対に10年前よりも音楽のおもしろさを感じてるから。
安部 : 本当にずっとギター弾いてますからね、彼は。ホテルとかで10分くらい時間が空いたときも弾いてる。僕から見てても、彼はホント、ミュージシャンが天職だと思います。
——コウセイさんは?
安部 : 僕はぜんぜん(笑)。普通のお勤めよりは音楽の方がわずかに得意だったのかな、とは思いますけど、それでも「俺って、本当にミュージシャンなのかな」って思うことがあって。それよりはパフォーマーとか、そういう感覚に近いのかもしれない。
——パフォーマー?
安部 : たとえば、ライヴ中にギターが破損しちゃったときなんかに、僕はそこで「ギターをなんとかして音を出さなきゃ!」っていう考えにならないんですよ。それよりはその場の動きでなんとかしようっていう。つまり、あんまりギターに依存してない。
——それ、思いっきりフロントマン気質じゃないですか。
安部 : いやいや。でも、かたやザ・ミュージシャンみたいな人がいるわけで。だからこそ自分のそういう側面が加速していったところもあるんです。だって、やっぱり本気で好きな人には勝てないですから。一時はそこにもコンプレックスがあったので、「もっといろんな音楽を聴いて、どんどん引き出しを増やさなきゃ」とも思ってたんですけど、そこはやっぱり(伊東に)教えてもらうのが1番いいんですよね。それに、僕は同じことをずっとやってても飽きない人間だし、ギターを弾くときも、感情をバーっと放出する快感だけでOKというか。
——それ、メンバーのバランスとしてはバッチリですよね。
安部 : まあ、うまく手分けしてやる感じで(笑)。これ、ちょっと話がずれちゃいますけど、なんか最近、ミュージシャンも「ちゃんとしなきゃいけない」みたいな雰囲気がすごくあって。発言ひとつするにしても、あんまり変なことを言えない感じがあるじゃないですか。それが俺は今すごく息苦しいんですよね。
——自分たちにもそういう品行方正なものを求められてる感じがするってこと?
安部 : それが出来てたら、今ごろこんなことやってないってーの! 俺にそこを求めないでくれよと(笑)。その現実との折り合いのつかないところが、なにかを表現しようとする活力になっているとは思うんですけど。
——その活力は、地元にいた10代のころも今も変わらない?
安部 : どうだろう…。それこそ昔は怒ってましたからね。でも、はっきりと「俺はこれが言いたい!」みたいなことは、多分25歳くらいのころになくなってたと思う。言いたいことがなくなってからが戦いですから(笑)。
——衝動まかせではなくなってからが勝負だと。
安部 : そうそう。で、ついこの前にHINTOの新曲をひとつ書いたんですけど、その歌詞がけっこう自信作なんですよね。それはなんでかっていうと、自分のダメな部分をちゃんと言葉に出来てるからなんです。そして同時にちゃんといろんな人の身にも置き換えられるようになってる。それは間違いなく今回の作品『私音楽-2015帰郷-』をつくったことの成果だと思います。
関連作品
前作から2年、レギュラー・サポート・ベーシストの林束紗が腱鞘炎治療のため卒業後、安部コウセイの実弟で元SPARTA LOCALSの安部光広をベーシストに迎えてのセカンド・フル・アルバム。
【HINTO『NERVOUS PARTY』発売記念対談】
第1回 : 安部コウセイ×安部光広
第2回 : 安部コウセイ×菱谷“ビッツ"昌弘
第3回 : 安部コウセイ×伊東真一
第4回 : 安部コウセイ×安部コウセイ
LIVE INFORMATION
ワンマンツアー2015『漂流体育館』
2015年4月24日(金)@名古屋鑪ら場
2015年4月26日(日)@西長堀cafe Room
2015年4月29日(水・祝)@天神 照和
2015年5月5日(火・祝)@渋谷La.mama
2015年6月14日(日)@札幌レストランのや
2015年6月21日(日)@京都SOLE CAFE
PROFILE
堕落モーションFOLK2
HINTO安部コウセイ×伊東真一によるアコースティック・ユニット。ライヴではオリジナル曲はもちろん、カヴァー曲や、しばしばスパルタローカルズ時代の楽曲も披露する。