安部コウセイ、前代未聞のセルフ・インタヴュー!?――HINTO、新作発売記念ついに最終回!!

写真 : 中島圭一郎
約2年ぶりのフル・アルバム『NERVOUS PARTY』発売記念の4週連続企画。毎回アルバムのなかから1曲ずつフル試聴でお届けするとともに、第1回〜第3回は安部コウセイがメンバーにインタヴューを行いました。そして最終回は… アルバムでも最後を飾る「ハートレスダンシング・ドゥ」のフル試聴に加えて、安部コウセイが安部光正に、そう、自分自身へのインタヴューを公開。あらためて振り返る『NERVOUS PARTY』の仕上がりや、SPARTA LOCALS時代から現在に至る歌い方の変化について。そして、その変化の源にある"ナーバス"なエピソードを、まさに写真の通りガチンコで暴きました。
ハートレスダンシング・ドゥ 邪魔すんな心臓――第4回フル試聴「ハートレスダンシング・ドゥ」開始
OTOTOYアプリ(iOSのみ)からも試聴が可能です。 OTOTOYアプリについてはコチラ
HINTO / NERVOUS PARTY
【配信価格】
alac / flac / wav(16bit/44.1kHz)、mp3 : 単曲 220円 / まとめ購入 2,000円
【Track List】
01. かなしみアップデイト / 02. アットホームダンサー / 03. アイノアト / 04. テーブル / 05. マジックタイム / 06. シーズナル / 07. エネミー / 08. ウォーターランド / 09. はんぶんゾンビ / 10. ハートレスダンシング・ドゥ
☆歌詞ブックレットがPDFで付いてきます。
第4回 : 安部コウセイ×安部光正
ホントのこと言ってるかどうかみたいなことにはナーバスかもしれんねえ
コウセイ : 私、安部コウセイがメンバーそれぞれにインタヴューをするという企画の最後はセルフ・インタヴューです。
光正 : よろしくお願いします。
コウセイ : よろしくー。
光正 : 今回インタヴューでみんなに聞いてるんですが、コウセイさんはナーバスなところはありますか?
コウセイ : 神経質なところってこと?
光正 : そうです。
コウセイ : ホントのこと言ってるかどうかみたいなことにはナーバスかもしれんねえ。
光正 : というと?
コウセイ : なんか人と話してて嘘っぽいこと言ってるなぁとか、それホントに興味あるのかなぁとか思うと追求したくなるか、もういいやこの人ってシャットアウトする(笑)。
光正 : なるほど。追求したくなる時とシャットアウトするときの差ってなんですか?
コウセイ : んん。追求したくなるのは、すでにその人と仲が良い場合か、この人と仲良くなりたいなー追求してみよーかなーて思った時。

光正 : でもそれって相手の人が大変じゃないですか?
コウセイ : なんで?
光正 : この人には中途半端なことはあんまり言えないな、と相手の人が緊張してしまいそうです。
コウセイ : ああ、あれよ? そんないつもいつもってわけじゃないよ? それに追求するっつってもそんな真面目な顔で「それ、ほんとに興味あってきいてます?」って言うわけじゃないし(笑)。
光正 : え? ああ違うんですか(笑)?
コウセイ : 違う違う(笑)。なんてニュアンス説明したらいいんやろ。えと、冗談っぽくえぐる感じかなぁ。いや、でもマネージャーには真顔で言うな。「今、愛想笑いしたよね?」とか(笑)。
光正 : 大変ですねマネージャーさん。気が休まる時がないじゃないですか。
コウセイ : 10年後には精神がムキムキになってるやろーね。
光正 : 愛ゆえに、ですね。
コウセイ : いや違う。憎たらしいだけ。
みんなでくだらない話したりしてリラックスした状態でブースに入っていって演奏する、みたいなことが白々しくなく自然に出来てると思う
光正 : わかりました(笑)。それではアルバムについて聞きたいのですが『NERVOUS PARTY』はどんな作品になりましたか?
コウセイ : ざっくりした質問やなぁ。それホントに聞きたいこと?
光正 : あ、追及だ(笑)。
コウセイ : (笑)。んーー自然なアルバムになったと思うな。
光正 : 具体的には?
コウセイ : 例えば、真君のギターひとつを聴いてもエフェクティブやし、ミックスもそんな「楽器のありのままの音を生かしてて」みたいなミックスじゃなくてけっこう極端なことやってたりするんやけど、トータルで聴いたときにスキッと澄んでる感じがあるとゆーか。無理してる感じがないとゆうか。
光正 : 確かに聴いてて嫌なうるささがないです。
コウセイ : そやろ。大人の自然さみたいなものがあるような気がする。オッサン臭いとはまた別の。
光正 : なぜその「大人の自然さ」のようなものが出たんですか?
コウセイ : 先ず音の話で言うと、少しマニアックになってしまうけど、ミックスで音量含め突っ込みすぎんようにしてマスタリングで出来る仕事を増やしたんよね。ミックスで完成! てとこまで持っていかないってことなんやけど。音楽やってない人、多分これ意味わからんよね?
光正 : わからないとおもいます。
コウセイ : ね。
光正 : なぜミックスのやり方を変えたんですか?
コウセイ : 話進めるんだ(笑)。以前からミックスで完結感がある状態でマスタリングやると音が息苦しい感じがするなぁと仄かに思っててさ。音がギュウギュウしてるというか。んで音の立体感をもっと出す為にどうすればいいのかをエンジニアの川面さんと色々話してる中で、試しにやってみようってことになったんやと思う。
光正 : なるほど。
コウセイ : んでもうひとつの理由が、自分含めてメンバー皆の心の余裕が音に出てるんじゃないかな。
光正 : 以前は余裕がなかったんですか?
コウセイ : 今に比べるともっとキリキリしてたかな。緊張したらしっぱなし、みたいな。
光正 : それは録音の時の話ですか?
コウセイ : いや録音の時だけじゃなくて、ライヴの前とかも。今は皆、それを良い緊張感に変える意識がある気がするな。
光正 : ほうほう。
コウセイ : 録音する前に、みんなでくだらない話したりしてリラックスした状態でブースに入っていって演奏する、みたいなことが白々しくなく自然に出来てると思う。
光正 : 大人ですね
コウセイ : 30半ばやからな(笑)。
スパルタ時代と比べてもかなり個人的な感情のようなものをいれてるね
光正 : では歌について聞かせてください。SPARTA LOCALSとHINTOで歌い方が変わったように感じるのですが何故ですか?
コウセイ : スパルタの時は個性をデフォルメしてた部分があるんだけど、HINTOではそういうデフォルメされた個性を1回捨ててみようとおもったんよね。
光正 : 意識的にああいう歌い方をしていたってことですか?
コウセイ : んー意識的だったのは歌を始めた最初のころだけかなぁ。自分の声がすごい退屈だなと思ってたから変な歌い方してやろうって思ったんよね。で歌い続けてたら無意識になっていって自分のクセになったって感じかな。
光正 : そのクセをなぜ捨ててみようと思ったんですか?
コウセイ : 新しいバンドを始める時に、自分の歌手としての本当の個性、武器ってなんだろうって考えてみたんよ。でも考えただけやったらわからんやったけん、とにかく素直に歌ってみようって思ったん。そうすれば勝手に自分に必要なものが残るだろうって思って。
光正 : でも、今まで培ってきたきた個性、クセを捨てることって怖くなかったですか?
コウセイ : 怖くはなかったな。それでなくなるような弱い個性はいらんなって気持ちが強かった。
光正 : 極端ですね(笑)。では『She See Sea』と今作『NERVOUS PARTY』では歌に対しての意識の変化はありましたか?
コウセイ : 『She See Sea』の時は感情をなるべく入れんで歌ってたけど『NERVOUS PARTY』は感情を入れて歌ってるね。いや、正確に言うと勝手に感情が入ったかな。
光正 : 勝手に感情が入った?
コウセイ : 歌詞に対しての意識が変わったんよね。だけん歌が歌詞に引っ張られたんやと思うよ。

光正 : 『She See Sea』と比べて今作は歌詞の内容が個人的になっているような気がします。
コウセイ : そうだね。スパルタ時代と比べてもかなり個人的な感情のようなものをいれてるね。
光正 : はい、そう思います。それはなぜですか?
コウセイ : 俺の育った街は福岡の田川市てとこなんやけど。
光正 : 炭鉱の町ですね。
コウセイ : そう。
光正 : んで、福岡でライヴがあった時に実家に帰ったんです。
コウセイ : うむ。
光正 : 愛犬を愛でたり釣りをしたりして過ごしたんですが、近所にジュースを買いに行くときにふと懐かしい路地が目に入って、通ってみたんです。
コウセイ : うむ、懐かしいってどの位ぶり?
光正 : 下手したら15年以上通ってないですね。
コウセイ : かなりだね。
光正 : はい。んで行ってみたら想像以上にくらいまして。
コウセイ : くらう?
光正 : ショックのようなものですね。
コウセイ : それはどういう意味のショックなん?
光正 : なんてゆーか、今まで蓋がされてた脳の扉がパカっと開いて、そこに自分の原液のようなものがドクドク注がれた感じですね。
コウセイ : 色んな意味できもちわりーよ。
自分の原液、子供の時から変えられない感情、感覚をもとにして創作をするってことかもしれないです
光正 : (笑)。とにかく、なんなんだ! この感覚は! と思いまして、ほかの懐かしい場所にも行ってみたんです。
コウセイ : ほう。
光正 : そしたら、また脳の使ってなかった扉がパカッと開きまして、自分の原液が注がれるわけです。
コウセイ : 安部原液が。
光正 : そう。で、あああああああああと成すがままにされながら、やはり自分はこの感覚を表現すべきだ! と思ったんです。
コウセイ : この感覚?
光正 : んーと言葉で表現するのが難しいですが、自分の原液、子供の時から変えられない感情、感覚をもとにして創作をするってことかもしれないです。
コウセイ : その子供の時から変えられない感情ってなに?
光正 : 孤立感のようなものだと思います。周囲に馴染めない感じというか。
コウセイ : 暗いなぁ嫌だなぁ恐いなぁ。
光正 : すみません(笑)。
コウセイ : その孤立感みたいなのって先天的なもの? 後天的なもの?
光正 : 両方あるような気がしますね。父が幼少期の僕をみて「この人は寂しい人だなと思った」みたいなことを言ってたんです。
コウセイ : アイツうるせーこと言ってるね。
光正 : うん(笑)。若いときにそれを聞いたのでその時はうるせーよ! 酒飲んでないで働けよ! としか思わなかったんですが。今は少し意味がわかる気がしますね。
コウセイ : なるほど、大人になったんやな。
光正 : 30半ばですから(笑)。

コウセイ : デジャブや。そんならその孤立感、寂しさが今回のアルバムの歌詞に反映されとるってこと?
光正 : はい。でも寂しさだけじゃなくて、それに暖かい原風景の匂いがミックスされてると思います。
コウセイ : 随分アーティストっぽいこと言うね。
光正 : そしてそれが自分の持ち味なんじゃなかろーかと今は思ってますね。
コウセイ : そーなんや。じゃあさアンタ釣りばっかやりよーけど、なんで?
光正 : なんで? っておもしろいからですよ(笑)。それホントに聞きたいことですか?
コウセイ : いや、そんなに。
光正 : (笑)。まあ、おもしろいっていうのは当然として、さっきの話にもでた自分の原風景、原液の1つであることは間違いないですね。
コウセイ : へえ。いつから釣りやってんだっけ?
光正 : 10歳くらいですね。あのう、僕の子供時代はまあまあ暗かったんです。
コウセイ : 知ってるよ。でも説明して。
光正 : 簡単に言うと、家で父親が酒を飲んで暴れまくってたんです。
コウセイ : うざかったなぁ。
光正 : プラス父は重度の分裂病、今で言うと統合失調症になるのかな? だったので妄想が酷くて、さらに宗教にはまっていたので、僕と弟を正座させて自分が神であることを延々と説く、みたな日常でした。
コウセイ : 地獄だったな、思い出したら腹が立ってきた。少し話し逸れるけど当時、親父のことどう思ってた?
光正 : んー。かわいそうな人だなって思ってましたね。寝るときに、お父さんを助けて下さいって祈ったこともありましたよ。
コウセイ : マジか!! 俺は体がでかくなったらこいつぶっ殺してやる! って思ってたわ。腹立つ!
光正 : 抑えてください(笑)。
コウセイ : クソヤロウが…。
光正 : (笑)。話し戻しますよ? そういう家が大変だった時期に釣りを始めてるので、現実逃避する為の手段でもありましたね。
コウセイ : でも逃避するの難しかったよね。現実が強烈すぎて。
光正 : うん。釣りすることはめちゃくちゃ楽しくてワクワクするのにサブリミナル的に母ちゃん大丈夫かなぁ、嫌だなぁ家帰るの、みたいな気持ちが差し込まれるみたいな感じでしたね。
コウセイ : 楽しさの中にある寂しさやん。
光正 : ナーバスパーティ…。
コウセイ : この流れでアルバム名をだすんじゃない!! とてつもなく暗いアルバムにみえるでしょうが!!
光正 : 大丈夫ですよ。ナーバスな人だなぁ。
HINTO『NERVOUS PARTY』発売記念企画
第1回 : 安部コウセイ×安部光広
第2回 : 安部コウセイ×菱谷"ビッツ"昌弘
第3回 : 安部コウセイ×伊東真一
第3.5回 : HINTO『NERVOUS PARTY』発売記念Ustream アーカイヴ
LIVE INFORMATION
堕落モーションFOLK2 対人企画[私達音楽旅行]
堕落モーションFOLK2 : 安部コウセイ×伊東真一によるアコースティック・ユニット
2014年8月1日(金)@大阪ロフトプラスワンウエスト
出演 : 堕落モーションFOLK2 / 五味岳久&五味拓人(from LOSTAGE)
2014年8月6日(水)@渋谷La.mama
出演 : 堕落モーションFOLK2 / 佐々木健太郎(アナログフィッシュ)
PARTY! DANCE!SUMMER!×60
2014年8月9日(土)@仙台NeoBrotherZ
出演 : HINTO / tobaccojuice / ワンダフルボーイズ
『NERVOUS PARTY』インストアライヴ
2014年8月12日(火)@TOWER RECORDS渋谷店 B1F「CUTUP STUDIO」
開演 : 19:30(20:30終演予定)
千葉LOOK presents 大感謝祭リターンズ~真夏の2man
2014年8月20日(水)@千葉LOOK
出演 : HINTO / andymori
Re:mix 2014
2014年8月23日(土)@名古屋DIAMOND HALL & APOLLO BASE
『NERVOUS PARTY』 release ONE-MAN TOUR「清楚なふりしてアメージング」
2014年9月13日(土)@大阪Live House Pangea
2014年9月15日(月祝)@福岡The Voodoo Lounge
2014年9月21日(日)@池下Club Upset
2014年9月23日(火祝)@渋谷Club Quattro
PROFILE
HINTO

左から菱谷"ビッツ"昌弘(Drums)、安部コウセイ(Vocal/Guitar)、伊東真一(Guitar) 、安部光広(Bass)
2010年元SPARTA LOCALSの安部コウセイを中心に結成。
2012年12月30日の渋谷CLUB QUATTROのライヴを最後にレギュラー・サポート・ベーシストの林束紗が腱鞘炎治療の為卒業。
2013年1月に安部コウセイの実弟で元SPARTA LOCALSの安部光広を迎え現体制に。
2014年7月23日に2年振りとなる2ndフル・アルバム『NERVOUS PARTY』をリリースする。