ストレイテナー、マイス・パレード、小室哲哉等、総勢14組のクラムボン!? 結成20周年記念トリビュート・アルバムをハイレゾ配信&全曲解説
ストレイテナー、蓮沼執太フィル、salyu × salyu、レキシ、ハナレグミ、NONA REEVES、Buffalo Daughter、downy、GREAT3、TOKYO No.1 SOUL SET、HUSKING BEE、青葉市子、マイス・パレードがうたい、最後には小室哲哉があの「バイタルサイン」をリミックス。いやいやもう簡単に紹介していいレベルではないのでレビューに任せましょう。そのぐらいの豪華さです、クラムボン・トリビュート!
来年2015年に結成20周年を迎えるクラムボン。ひとつの節目に向けて、様々な企画が走り出しました。前MV映像作品集、愛蔵版バンドスコア、そしてこのトリビュート・アルバム『Why not Clammbon!?』。CDと並び、ハイレゾでもリリースです!! まだ自身の音源ではハイレゾで出していないアーティストも存在しているのでこれは貴重。配信のちょっと良いところは1曲からでも購入できるところ。あなたの気になるアーティストの楽曲だけのご購入でも構いません。それが、クラムボンへ、そしてハイレゾへの入り口へとなることを楽しみにしています。
そして! 来年初頭には9枚目のオリジナル・アルバムをリリースを予定しているクラムボン。ザ・20周年イヤーをお楽しみに。
Why not Clammbon!?~クラムボン・トリビュート
【配信形態】
【左】WAV / ALAC / FLAC(24bit/48kHz)
【右】WAV / ALAC / FLAC(16bit/44.1kHz)、mp3
【配信価格】(各税込)
【左】単曲 400円 / アルバム 3500円
【右】単曲 258円 / アルバム 2469円
【Track List】
01. Folklore / ストレイテナー
02. ある鼓動 / 蓮沼執太フィル
03. アホイ! / salyu × salyu
04. 大貧民(♠♣♥♦) / レキシ
05. 華香るある日 ~clommbon loves clammbon ver ~ / ハナレグミ
06. SUPER☆STAR / NONA REEVES
07. ロッククライミング ~Let's Roooooock Mix~ / Buffalo Daughter
08. 5716 / downy
09. 246 / GREAT3
10. はなれ ばなれ / TOKYO No.1 SOUL SET
11. 海の風景 / HUSKING BEE
12. 雨 / 青葉市子
13. ハレルヤ / Mice Parade(featuring Chancellor)
14. バイタルサイン~Tetsuya Komuro Remix~ / 小室哲哉
クラムボンの魅力を再検証するトリビュート・アルバム全曲解説
今年で結成から20周年を迎えたクラムボンのトリビュート・アルバム『Why not clammbon!?〜クラムボン・トリビュート』がリリースされた。何よりもまずは14組の参加アーティストをざっと確認してみてほしい。何せこれだけの顔ぶれが揃ったトリビュート作品なのだ。ここはもったいぶらず、さっそくアルバムの内容を1曲ずつ吟味していきたいと思う。
オープニングを飾るのは、ストレイテナー「Folklore」(オリジナルは5th『imagination』に収録)。オリジナルのミニマルな音づくりによる深遠なポストロック・サウンドが、ここではストレートなギター・ロックへと姿を変えている。あえてシンプルなアレンジに徹したことによって、メロディーラインの美しさに焦点をあてたこのカヴァーは、ホリエアツシの抑え気味なファルセット・ヴォイスが原曲の艶っぽさをうまく引き継いでいるのも印象的だ。
続いては、蓮沼執太フィルによる「ある鼓動」(2011年リリースのシングル曲)。ホーン・セクションやスティールパンなどを加えた室内楽的な演奏と、それをバックにした蓮沼と木下美紗都の素朴な歌声がなんとも人懐っこい好カヴァーだ。この親しみやすいアレンジから、序盤は原曲の軽快なピアノ・ポップの世界観に忠実な印象を受けるのだが、そこはやはり蓮沼執太フィル。いちど演奏が終了したように見せかけながら、いきなり環ROYのラップに流れていく展開が痺れる。
salyu × salyuの「アホイ!」(2006年にリリースされたシングル「The New Song」のカップリング)は、オリジナルのメロディー・ラインを忠実に歌い上げつつも、エレクトロニクスとバウンシーなリズム・ワーク、そして多重ヴォーカルを駆使した緻密なアレンジが施されている。salyuの歌声もさることながら、小山田圭吾のアンビエントな音響処理は、クラムボンの楽曲と非常に相性がよい。
ここで作品の流れをさらりと切り替えるのが、レキシ「大貧民(♠♣♥♦)」(2nd『まちわび まちさび』収録)。落ち着いたテンポの洗練されたファンク・サウンドは、まさにレキシ。さすがにカヴァーということもあって、いつものような歌詞の遊びはなく、スタイリッシュな音づくりと歌唱には素直に聴き惚れてしまう。とはいえ、1か所だけ登場する〈歴史(レキシ)〉という言葉をしっかりと強い口調で歌っているところは、やはり可笑しい。
レキシから始まった黒っぽい流れは、そのままハナレグミの「華香るある日 ~clommbon loves clammbon ver ~」(インディー盤『くじらむぼん』収録)へと引き継がれる。これまた手練のバンド・アンサンブルによる隙間を感じさせるファンク・アレンジがじつに洒落だ。同時にこの演奏はジャズを素養としながらもポストロック的なサウンドにアプローチしていったクラムボンの楽曲を、ルーツ・ミュージック的な視点で捉え直したようにも聞こえる。なにかと共演する機会も多い両者なだけに、解釈の深さを感じさせるカヴァーだ。
さあ、お次はNONA REEVESによる「SUPER☆STAR」(8th『2010』収録)。ドライヴ中にカーステレオから流れてきたらバッチリはまりそうな、シンセサイザーを前面に出した煌びやかな80’sディスコ・サウンドは、まさにNONA REEVESの本領発揮といったところだ。このレキシからNONA REEVESにいたるまでの、クラムボンとほぼ同期にあたるアーティスト達が演出したファンキーな流れは、間違いなく本作中盤を彩る最初のハイライト。
ここからが後半。Buffalo Daughterによる「ロッククライミング ~Let's Roooooock Mix~」(4th『id』収録)は、逆再生を利用したロボ声とこまかい電子音によるサウンド・メイクが、作品のムードを緊張感あるものにさせている。原曲を完膚なきまでに解体したのちに再構築したことが伺えるところにも非常に興奮させられるし、これは間違いなくBuffalo Daughterにしかできない大胆なアプローチだ。
downyの「5716」(5th『imagination』収録)は、インダストリアルな音色をこまやかにレイヤーさせていく展開がじつに圧巻。灰色の情景をゆっくりと浮かび上がせるようなサウンドスケープは非常にdownyらしく、同時にクラムボンが『imagination』の時期に取り組んでいたポストロック的なアプローチと近い匂いも感じることができる。
GREAT3による「246」(2nd『まちわび まちさび』収録)は、まさに現在進行形のGREAT3サウンドに引き寄せたようなアレンジがとにかく最高だ。アンビエントR&B的なふわふわとした音像は非常にモダンだし、そこから立ち上がってくる片寄明人の歌声がなんとも色っぽい。GREAT3の素晴らしき最新形がここでつかめるという意味でも、この曲は必聴だと思う。
そのGREAT3とシームレスにつながるような心地よいアンビエンスで幕を開けるTOKYO No.1 SOUL SET「はなれ ばなれ」(メジャー・デビュー曲。1st『JP』収録)は、スタイリッシュなダウンテンポに思わず酔わされる1曲だ。ラップを挟んだメランコリックなヒップホップに仕立てつつも、同時に原曲へのリスペクトを感じさせる完成度の高いアレンジは、さすがのひと言。
いよいよアルバムも終盤に入ってきた。かつてクラムボンがトリビュート盤に参加したこともあるHUSKING BEEは、「海の風景」(4th『id』収録)をカヴァー。ハスキンらしい情熱的なギター・ポップで一気に駆け抜けていくかと思いきや、後半のブレイクからいきなりアコースティックに切り替わるという急展開がやってきてびっくり。豪快でエモーショナルな歌唱とアンサンブルには思わず胸が熱くなった。
本作の参加アーティストでは彼女が最年少になるだろうか。青葉市子の「雨」(4th『id』収録)は、もちろん1本のガットギターと彼女の独唱によるもの。あくまでも歌詞の世界観にフォーカスした深遠なアシッド・フォークは、これ以上ないほどにシンプルでありながら、聴き終えたあとにはどの曲よりも深い余韻を残すだろう。息の漏れる音まで拾った臨場感たっぷりの録音にもゾクゾクさせられるし、やはりこの人の存在感は破格だと改めて感じた。
そしていよいよ真打ち登場。アダム・ピアース率いるマイス・パレードは、アダムが自ら共同プロデューサーとして参加した作品『id』から、「ハレルヤ」をチョイスしている。深いダブ処理を施してレゲエ・ナンバーへと変貌したこの曲は、原曲とはまた違ったアッパーな高揚感であふれており、エクスペリメンタルなアプローチに富んだ『id』の番外編としても楽しめるのが嬉しい。
さあ、いよいよフィナーレだ。アルバムの最後を飾るのは、なんとあの小室哲哉。しかも選曲はクラムボンのライヴでもこれまで何度もクライマックスを演出してきた「バイタルサイン」(6th『てん 、』収録)ということで、もうそれだけで注目せずにはいられないところだが、これが実際に聴いたら、もう、見事なまでの小室サウンド! トランス~EDMを踏襲したド派手な展開には、つい身体がのけぞってしまった。こういう超異色のトラックが最後にいきなりやってくるのも、トリビュート・アルバムの醍醐味だと思う。
駆け足で一気にアルバム全曲を見てきたが、いかがだろうか。ブラック・ミュージック的な要素を抽出する人もいれば、あるいはポストロック的なアプローチに注目してみたり、または歌詞やメロディーの世界観にグッと迫ってみたり。各参加アーティストが様々な角度からクラムボンの楽曲に迫ってみた結果、『Why not clammbon!?〜クラムボン・トリビュート』は、このバンドの音楽的な懐の深さを伝える作品になった。クラムボンの魅力を再検証する意味でも、このトリビュート盤はとても充実したものに仕上がっているし、ここはぜひ本作とオリジナル曲を聴き比べながら、クラムボンが歩んできた20年間の歩みに改めて触れていただきたいところだ。待ち焦がれていたクラムボン9作目のアルバムは、いよいよ2015年初頭にリリースが迫ってきている。(text by 渡辺裕也)
クラムボン過去作
OTOTOYがハイレゾをはじめるきっかけとなった作品!!
2009年、OTOTOYの前身"レコミュニ"時代、高音質配信を検討していた我々とクラムボンより高音質で出したいという希望が合致し実現。24bit/48kHzのミックス・マスターをノン・マスタリングで配信。8ビートで刻まれるピアノが鼓動を高め、クラムボンとしては類を見ないほどアップテンポな曲に仕上がっている。
クラムボン他過去作
原田郁子 Works
原田郁子(クラムボン)と、タムくんの愛称でお馴染み、タイの人気漫画家ウィスット・ポンニミットによるコラボレーション・アルバム。かねてより競演を重ねてきた2人による今回のアルバムは、タイのタム宅で録音され、ピアノ、アコースティック・ギター、ドラムによるシンプルな演奏に、やわらかく響く歌声で構成されている。ライヴで数回披露された曲と書き下ろしの新曲ばかり。
原田郁子 / 「cocoon」サウンドトラック
マンガ家・今日マチ子の「cocoon」を原作に藤田貴大が主催する演劇団体「マームとジプシー」によって舞台化。舞台の音楽を手掛けたのはクラムボン、原田郁子。舞台のために書き下ろされた新曲「とぅ まぁ でぃ」をはじめ、ソロ曲「青い闇〜」や「風色夏恋」の新録、フィッシュマンズやbloodthirsty butchers、ニール・ヤングなどのカヴァー曲を含む、全32曲。
原田郁子+高木正勝 / TO NA RI (2.8MHz dsd + mp3)
レコーディング・スタジオでの一発録りをライブとして公開し、そこでDSD収録した音源を配信するイベント“Premium Studio Live”。その第2弾として、クラムボンの原田郁子と、映像作家としても活躍する高木正勝の2人を招いて行われた際の記録。天井高のあるスタジオに2台のグランド・ピアノ…… STEINWAYのフルコンサート・サイズとセミコンサート・サイズを設置。良質な響きの中で、原田と高木がそれぞれ自由にピアノを弾きながら、お互いの作品を変奏し合うようなセッションが繰り広げられる。原田の力強いボーカル、高木の繊細なボーカルそれぞれの魅力を存分に味わうことができるほか、飛び入りで参加したOLAibiを交えてのリズミックなパートも聴きもの。
ミト Works
田上トパーズ! オリジナル・サウンドトラック
NHK-BSプレミアムで全国放映された滋賀発の地域ドラマ「田上トパーズ!」(たなかみトパーズ)。大人気アニメ「けいおん!」のモデル地である滋賀県・豊郷を舞台としたガールズ・バンドの物語であり、”リアル「けいおん!」”とも呼ばれるこの物語の音楽を担当するのがクラムボンのベーシスト、ミト。アニメ好きのミトが作り上げた珠玉のサウンドトラックがが配信限定リリース。
mito / DAWNS
ソロ3部作を発表した前作からは、5年ぶりの新作。初となるmito名義の『DAWNS』は共同レコーディングに美濃隆章(toe)、マスタリングに砂原良徳、演奏他参加では柏倉隆史(toe)、徳澤青弦カルテット、コトリンゴ、Ametsub、agraph、haruka nakamura、Uyama Hiroto、益子樹(ROVO)、斉藤哲也(UooB)が参加。さらに、 作詞では盟友である磯部正文(ex HUSKING BEE)、細美武士(the HIATUS)、 中川翔子や平野綾などの作詞・楽曲提供で活躍中のmeg rock(メグロック)、 そして、対訳にパーソナリティのクリス智子が参加。
LIVE INFO
2014年12月14日(日)@下北沢440
出演 : 勝井祐二×U-zhaan×原田郁子
2014年12月25日(木)@中野サンプラザ
出演 : クラムボン、ハナレグミ、細野晴臣
2014年12月26日(金)@千駄木Bar Isshee
出演 : ミト、勝井祐二
PROFILE
クラムボン
福岡出身の原田郁子(Vo, Key)、東京出身のミト(Ba)、北海道出身の伊藤大助(Dr)が専門学校で出会い、1995年に結成。シングル『はなれ ばなれ』で、1999年にメジャー・デビュー。当初よりライヴやレコーディングなどにおいて様々なアーティストとのコラボレーションを重ね、楽曲提供、プロデュース、執筆活動など多岐に渡る活動を続けながら、バンドとして独自のスタンスを築き上げている。2011年4月には2枚のベスト・アルバムをリリース。来年で結成20周年を迎えるにあたり、2014年よりさまざまなアニバーサリー企画を予定している。第1弾に初のPV集、第2弾にメンバー監修のバンドスコアを発売。12月3日にトリビュートアルバム『Why not Clammbon!?~クラムボン・トリビュート』を発売し、2015年初頭には5年ぶりとなるオリジナル・アルバムをリリースする。