なんてワクワクする音を鳴らすクールな連中なんだろうーーミツメ、アルバム『ささやき』をリリース
東京都内を中心に活動する4人組バンド、ミツメが、3作目となるアルバム『ささやき』をリリース。前作『eye』を発売して以降、インドネシア・ツアーや、初のワンマン・ライヴを開催してきた彼ら。それを経て現在感じている気分を反映した新曲のみ全12曲を収録。シリアスさと不真面目さ、緊張感とユルさが交互に現れるサウンド、一聴してミツメとわかる独自性抜群の音像は唯一無二といっても過言ではない。前作までと同じく、メンバーとエンジニア田中章義の5人で制作された本作についてインタビューで迫った。2014年3月28日には恵⽐寿LIQUIDROOMでのワンマンも決まり、現在進行形で走るミツメに要注目だ。
待望の3rdアルバムが完成!!
ミツメ / ささやき
【配信形態 / 価格】
mp3 : 単曲 150円 / まとめ価格 1,800円
wav : 単曲 200円 / まとめ価格 2.000円
1. コース / 2. 停滞夜 / 3. クラーク / 4. paradise
5. 公園 / 6. いらだち / 7. ささやき / 8. テレポート
9. ボート / 10. ESC / 11. 3年 / 12. number
ミツメの過去作も絶賛配信中!!
INTERVIEW : ミツメ
2013年のミツメは何かと話題に事欠かなかった。初のワンマン公演、インドネシア・ツアー、そしてフジロックのルーキー・ステージへの出演。思い起こせば新しい音源のリリースはシングル『うつろ』だけだったのに、傍から見ているとミツメはこの一年で一気に次のステージへと駆け上がっていったようにも感じる。 そんな彼らから、ついに初のフル・レングス作品『ささやき』が届けられた。これまでもクリシェをうまく避けながら他の誰もつくったことのない音像をかたちにしてきた彼らだが、やはり今回のアルバムでもすさまじい音楽的な飛躍を見せている。そしてこの作品を引っ提げて、彼らはまだ訪れたことのない地域をツアーでまわり、ファイナルではなんと恵比須リキッド・ルームでのワンマン公演も決定しているという。都内のインディー・シーンではもはや完全に頭ひとつ抜けた感のある彼らが、全国区の人気バンドになる日もいよいよ近づいてきたのかもしれない。
インタビュー & 文 : 渡辺裕也
異物感がけっこう残せたね
ーーきっともう覚えてないと思うけど、『eye』をリリースするときのインタヴューで、川辺くんが「次のアルバムは全曲のトーンをもう少し近いものにしてみたい」みたいなことを言ってたんですよ。
川辺素(以下、川辺) : (笑)。
大竹雅生(以下、大竹) : 結果的に今回はそうなってないですね(笑)。
川辺 : たしかにそれも考えてはいたんですけどね。でも、それよりはやっぱり、1曲1曲を一生懸命につくっていくような感じでした。
ーーでも、今回はこれまでの2作と違って、タイトル・トラックがあるよね。ここも少し気になったんだけど。
川辺 : それもたまたまです(笑)。“ささやき”って単語は、何か特定のイメージがないじゃないですか。具体的に思い浮かぶものがあまりないというか、プラスでもなければマイナスでもないというか。だから、今回のタイトルも『eye』と同じような感じですね。
ーーじゃあ、制作のテーマとかも今回は特になかったのかな。
川辺 : 前作までもそうだったんですが、やっぱり今回も今までやってきたことをできるだけ避けながらやりたいとは思ってました。で、今回は曲が破綻することを恐れずにまとめていったような感じはあって。『eye』って、1曲1曲がわりとカチッとしてたというか、けっこう整合性がとれているアルバムだったと思うんですけど、今回はもうちょっとグシャッとさせたままというか。
ーー曲のフォルムをきれいに整えず、あえて無軌道にやってしまおうと。
須田洋次郎(以下、須田) : いつもレコーディングの前にデモをつくるんですけど、今回はそのデモで録れた変なかたちのものをそのまま残したらおもしろいんじゃないかな、とは思ってました。
ナカヤーン : デモの段階で入ったミスみたいな音やリズムも、そのままレコーディングしてみたり。
大竹 : だから、デモの段階までは今までとほとんど同じなんですけど、そのデモからちゃんとした録音に向かうところの作業がちょっと違うというか。普通に考えたら曲にぜんぜん合わなさそうなフレーズとか、曲を壊してしまいそうなアレンジをあえて入れてみるようなアプローチが今回は増えたかもしれません。『eye』はなんだかんだでちゃんとした音を最終的に目指したけど、今回は本当に流れるままだったというか。
ーーなるほど。リズム録りもそんな感じ?
須田 : ドラムも、そのデモに入ってるパチパチ打ち込んだフレーズがおもしろかったので、それをそのまま残そうとしたりはしました。デモには指のもつれかなんかで事故的に並んだフレーズがけっこう入ってるんですけど、それが繰り返して聴いているとけっこう馴染んでくるんですよね。で、その変なフレーズを生のドラムでも再現してみたらどうかなと思って。それで録ったものを聴くのがすごく楽しかった。
川辺 : デモの段階でハチャメチャだなと思ってたものが、実際にレコーディングして再現しみてもハチャメチャな感じになって、それがおもしろかったよね。
大竹 : 異物感がけっこう残せたね。
ーーじゃあ、このアルバムの方向性を決めた曲をひとつだけ挙げるのは難しい?
川辺 : 最初にできた曲は「コース」だっけ? その頃は、「今回のアルバムはぐしゃっとした音像になったらおもしろいかな」と個人的には思ってたんです。でも、そうしているうちに「停滞夜」とかができていって、意図せずしてああいうアレンジになったから、それならわざわざ歪んだ音像で統一しようとしなくていいかなと。
ーーうん。だからなのかはわからないけど、今回のアルバムってこれまで以上に特定の影響源が見つかりづらい感じがして。
川辺 : あ、それがない感じでやれたらいいなとは、僕もちょっと思ってたんです。たとえば『eye』のときは、チルウェイヴ的だとか、そういうのが結果的にあったと思うんですけど、今回はさすがにそこからはもう外れただろうと(笑)。
「今回はハプニングを残そう」みたいな空気がバンドにあった
ーー俺、発売前に「停滞夜」のMVが公開された段階で、今回のアルバムはけっこう黒っぽい感じになるのかなと予想してたんですよ。でも、1曲目の「コース」でいきなりその予想が覆されちゃって(笑)。
川辺 : (笑)。「コース」は元がけっこうシンプルな構成の曲だったんですけど、そのデモをみんなに渡したら、そこにマッチョなギターが入ってきて(笑)。
ーーそうそう。今回のアルバムにはけっこうパワフルなフレーズがあるんだよね。あれがすごく意外だったんだけど。
大竹 : 『eye』にはそういうバカっぽさというか、本当に頭の悪い感じがあまりなかった気がしたので(笑)。間抜けな感じというか。
ーー「ささやき」のリフも、かなりダイナミックだよね。
ナカヤーン : あれは突き抜けてますね(笑)。僕がいちばん好きなのはあれかな。
川辺 : 俺は「paradise」がいちばんかな。いや、やっぱり「ささやき」かも。あれはどのパートも変なので(笑)。
大竹 : あれ、なんか異様な高揚感があるんですよね(笑)。で、これは別に狙ってたわけじゃないけど、もしかすると今回はああいう無駄な明るさというか、テキトーさがちょっと欲しかったのかもしれません。『eye』ってわりとセンチメンタルというか、内側に向かっていくような感じもあったから、今回はもう少し陽の部分を出そうとしたのかもなって。それに、たぶんこの先にああいう曲はもう作らないだろうなっていう感じもあるし。
ーーたしかにあのリフは雅生くんの音楽的な好みとはまったく違う感じがするね。
大竹 : むしろ、ああいうのはまったく聴かないですね(笑)。
ーーじゃあ、雅生くんの趣向性は今回どんなところに表れたと思う?
大竹 : そうだなぁ。僕、元々売りモノにするつもりじゃなかった宅録の音源を復刻したレコードとかが好きで。たとえば去年に聴いてたものだと、70年代頃の女の子が宅録した音源とか、そういうもの。そういう雑なつくりのデモをちゃんとした形に整理していくと、そのなかで失われていくものがけっこうあるのかもしれないなって。そんなことはちょっと考えていたかもしれません。特にそれをミツメに持ち込もうとしていたわけではないんですけどね。
須田 : でも、「コース」ができたあとにみんなと別れて電車で帰ってるとき、僕はけっこう心配でしたね。
一同 : (笑)。
須田 : 「これ、本気じゃないよね」って(笑)。あれだけを聴くと、本気っぽく聴こえてしまったので。「まさか、こういうアルバムにはならないよな」って。
ーーうん、俺もあの「ジャカジャーン!」には面食らった(笑)。
須田 : でも、それから曲ができていくなかで、なんとなくその意図もわかってきたので。「停滞夜」とか「テレポート」みたいな、「コース」とはまったく違う方向性の曲ができていくうちに、「なるほど。今回は振れ幅がすごくひろいんだな」と(笑)。
ーーナカヤーンはどうだった?
ナカヤーン : 僕は、ぜんぜんそういう心配はなかったです。笑える曲もあるし、超楽しいなと思ってました。「停滞夜」「paradise」「ESC」あたりは、リズム寄りでやたらとクールな曲だし、「number」ができたときなんか、「今までの曲とぜんぜん違う!」って、めちゃくちゃテンションあがって。今回は1曲ができるたびに「すごい」の連続だったから、絶対にいいアルバムになると思ってましたね。僕自身、ぐちゃぐちゃで方向性がなかなか見えないようなアルバムが好きだったりするし。
ーーナカヤーンはソロのリリースも決まってるしね。
ナカヤーン : そうですね。それもミツメの曲がどんどんできていくのに触発されたところはあったので。
ーーじゃあ、川辺くんが曲の原型をバンドに持ち込む段階ではどうだったんだろう。
川辺 : アルバムの制作が始まった頃は、ブートレグみたいなものがおもしろいな、とは個人的に思ってました。これまではみんなに曲をもっていく段階で、ある程度の歌詞を決めてたんですけど、今までよりラフな状態で聞いてもらったりしてました。さらに今回は一部分が呻き声みたいな状態のままでスタジオ・ワークに入ったりもして。そうしたら、「今回はハプニングを残そう」みたいな空気がバンドにあったから、その呻き声を踏まえて歌詞を乗せてみたり。レコーディングでオケを録ってから歌詞を書き換えることもありました。そういうことって、今まではなかったんですよね。
ーーそうやってやり方を変えたことで、リリックの仕上がりにはどんな変化があった?
川辺 : たとえば『eye』だったら、「Fly me to the mars」の一行目なんかがそうかなと思ってるんですけど、歌詞のなかにパンチラインみたいな部分があったと思うんです。でも、今回は作業が進んでいく中でそういうのがないものをやってみたいなと思って。一行だけだと普通の言葉が並んでいるだけに感じるけど、全体で見るとなにかがあるというか。あと、5曲くらいの歌詞を並行して書いたりもしてたから、それでごちゃごちゃになってる部分もあったりして。そういうのは、自分で作りながらおもしろいなと思ってました。
ーーなるほど。そう言われると、「うつろ」(2013年7月にリリースされた12インチ・シングル『うつろ』の表題曲)はパンチラインあるね。
川辺 : そうですね。今回は『うつろ』的な感じじゃなくて、歌詞全体で見ると、「あ、これはあのときにふっと思ったことだな」みたいに感じられるようにしたかったというか。それに、一行だけだと印象が薄かったりする方が、バンド全体の音で聴けるんじゃないかなと思ったりして。これまでも過度にひっぱられるような言葉はなるべく使わないようにしてたけど、今回はそこをさらに付き進めてみた感じはあります。
今レコーディング自体がホント好きなんですよ
ーーじゃあ、今回のリリックには主に川辺くんのどういう気分が表れた感じがする?
川辺 : 今回は、より些細な感じですね(笑)。苦悩というには大げさな、なんとなく「悩んでるなー」みたいな感じというか。これは最近思ったことなんですけど、僕、規則正しい生活をするようになったんです。で、もしかするとそこにちょっとした息苦しさを感じているのかもしれないなって、自分が書いたものを見たときに思って。
ーーその息苦しさっていうのは、日々のルーティーンとかに対するもの?
川辺 : そうですね。ちょっと困惑してるんだなって(笑)。
ーーでも、その「悩んでるなー」みたいな感じって、一種のエモーショナルな状態ではあるでしょ? そこに気恥ずかしさを感じたりはしないのかな。
川辺 : ああ、そこはもうちょっと経つとあるかもしれないですね。たしかに『mitsume』や『eye』を聴くと、「今とはちょっと違うなー」とは思います。でも、今はこのアルバムを作ってから日が浅い分、まだその感じを引きずってる部分があるのでまだ感じてません。『mitsume』はやっぱり「君、青いねー」みたいな感じがする(笑)。『eye』の場合は、もしかするとこの頃は環境の変化がちょっとつらかったのかもしれないなって思ったり。
ーーでも、総じてどの作品にもそのときどきの苦しさが表れてるんだね。
川辺 : いや、もちろん苦しさだけじゃないですよ(笑)。あとは、自分のなかでの細かいルールの変化もあるので、「このときはこういうふうに文章を終えるのが好きだったんだな」とか、そういうマイナー・チェンジはたくさん見つかりますね。
ーーで、『ささやき』の悩んでいる感じは、今のところわりとタイムリーなんだ。
川辺 : そうですね。でも、今回みたいな行き当たりばったりなやり方は、次はやらなくていいかな(笑)。次はまたそれとは違った感じでやっていきたいです。
大竹 : でも、その「次はこういうことがやりたいな」みたいなのって、毎回アルバムがリリースされる頃にちらほらと浮かんでくるんですよ。で、いざ制作が始まるとそれとは違うことを思いついたりしちゃうから。
ーーミツメはいつもそうだよね。みんな興味の移り変わるスピードが速いから、こうしてアルバムがリリースされる頃には、もう他のところに関心がいってる感じがする。その温度差はインタヴューするたびに感じるよ(笑)。
大竹 : 本当にタイムリーなのは録ってるときなので(笑)。しかも、レコーディング中の3日間でも、言ってることがコロコロ変わってるし。
川辺 : 録音している最中は、すごく盛り上がることもあるんだけどね。「うわ、これかっこいいな!」って。
大竹 : でも、それもミックスのときになると、「そこ、もうちょっと下げていいよ」みたいな(笑)。
ーーでも、そこはこのバンドの強みでもあると思う。
須田 : そうですね。盛り上がっても、次の日に「ちょっとやり過ぎたね」みたいに流せるのは、アルバムをつくることにおいては悪いことじゃないと思う。
ーー自分たちの作ったものに酔い過ぎないし、興奮しすぎてないよね。もしそういう瞬間があったとしても、ものすごく刹那的というか。
川辺 : (笑)。でも、僕はまだ「せっかくここまでやったんだからさ! この録音したやつ残そうよ!」みたいなところがある方だとは思います。でも、たしかにみんなは本当にないよね(笑)。
ーーそうなるとなおさらアルバムのコンセプトとかは立てづらくなるよね。
川辺 : よっぽどの太い幹みたいなものがあれば、もしかするとそういうこともできるかもしれないですけどね。ただコンセプトを緻密に作り上げるよりも僕らは、今レコーディング自体がホント好きなんですよ。作品をつくることも、僕らはレコーディングの延長だと思ってるから。だからこうなるし、それを1年に1回はやっていきたいんですよね。
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LIVE INFORMATION
2014年2月22日(土)@長野 松本 MOLEHALL
2014年2月23日(日)@愛知 鶴舞 KDハポン
2014年3月1日(土)@宮城 仙台 SHAFT
2014年3月8日(土)@福岡 天神 VOODOO LOUNGE
2014年3月16日(日)@北海道 札幌 SOUND CREW
2014年3月21日(金)@岡山 岡⼭ YEBISU YA PRO
2014年3月23日(日)@大阪 梅⽥ Shangri-La
2014年3月28日(金)@東京 恵⽐寿 LIQUIDROOM One Man Show
PROFILE
ミツメ
2009年 東京で結成。4人組のバンド。
2010年 ライヴ活動を開始。
2011年8月 1stアルバム『mitsume』発売。
2012年1月 カセット・シングル『fly me to the mars!!!』発売。
2012年7月『fly me to the mars』を7インチレコードで発売。
2012年9月 2ndアルバム『eye』発売。
2013年4月 渋谷O-nestにて単独公演"one-man show"を開催。
2013年5月『mitsume』『eye』のLPを同時発売。
2013年7月 シングル『うつろ』を発売。
2014年2月 3rdアルバム『ささやき』を発売。
現在都内を中心に活動中。