偽りのない言葉 慎ましい歌声
このという歌い手の『』という作品に、僕は今あまりに強く胸を打たれてしまっていて、正直どう表現したらいいのかわからない。例えば彼女と似たフィーリングを持った歌い手の名前を横に並べて語るような野暮な(というより的外れな)事はしたくないし、だからと言って「これは最高だ! みんな聴いて」と鼻息荒くしてみるのもなんか違う気がする。さて、困ったな…。
松倉さんがこれまでどのような活動をしてきたのかをまったく知らなかったので、とりあえずこの作品をひたすら繰り返し聴きながら、彼女のブログを過去のものから一気に読んでみた。新しい友達が出来た事、故郷にいる家族の事、恋の事等が、素直で飾り気のない言葉で書かれていた。そして何よりも歌に対する強い想いが何度も綴られていた。そんな一言一言を胸に留めながら改めて彼女の声に耳を澄ましてみると、歌われている言葉とまったくギャップを感じていない事に気づいた。ありのままの気持ちを、ありのままの言葉に乗せて歌っている。悩みの種はいつまで経っても消えない。でも気になる人がいる。胸躍る音楽がある。さて、今夜の晩御飯はどうしようかな。そんな頼りない僕等の日常を、彼女の歌は祝福してくれているようだ。その歌に寄り添うように、ピアノやギターが、そのままの形で仲良く鳴っている。それを演奏しているのが、彼女とは年が倍も離れている人だなんて信じられない。渡辺勝さんは彼女の歌のどんなところに惹かれたのだろう。テレビをつけても、インターネットを開いても、ただ街を歩いている時でさえも、手垢に塗れた夢や愛や希望が押し売りされてくる。そんな中で彼らが奏でる慎ましい音楽はこんなにも輝いていて、僕を泣かせる。
とにかく今は彼女の歌を生で聴きに行きたい。もし本人とお話出来る機会があったら、どんな言葉をかけよう。まずは彼女のように素直な言葉で「あなたの音楽と出会えて幸せです」とだけ、伝えたいな。(text by 渡辺裕也)
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Profile
昭和55年、大阪府生まれ、熊本、愛知、山口、京都を6年周期で過ごす。
京都の大学でデザイン、映像、舞台芸術を学んでいたが、卒業制作の一人芝居で初めて歌を作り、音楽の道を行くことを決意。
2005年4月から東京・吉祥寺へ移り住み、同年9月より音楽活動を始めた。
2006年5月、渡辺勝(ピアノ、ギター)に出会い、相方にしてライブ活動を始める。
2007年5月、ファーストCD「星」を発売。
2007年10月、「赤色エレジー・マニア」(Run,Rabit,Run Records)に松倉如子(歌)渡辺勝(エレクトリック・ギター/足ぶみオルガン/横笛/太鼓/他)HONZI(ヴァイオリン)で参加。
現在、新作参加ミュージシャンである渋谷毅、村上律、渡辺勝、森俊也、永田利樹、等とライブ活動を展開中。
- 公式blog : http://ameblo.jp/yukiko-m/
LIVE SCHEDULE
- 6/30(火) 渡辺勝と松倉如子それぞれのレコード発売記念浜松ライブ! @浜松エスケリータ68
- 7/11(土) @盛岡すぺいん倶楽部
- 7/24(金) 渡辺勝と松倉如子それぞれのレコード発売記念浜松ライブ! @神戸James Blues Land
- 7/25(土) 渡辺勝と松倉如子それぞれのレコード発売記念浜松ライブ! @京都磔磔
- 7/27(月) 松倉如子レコード発売記念ワンマン・ライブ! @名古屋 KDハポン
- 7/30(木) 松倉如子レコード発売記念ワンマン・ライブ! @東京 吉祥寺スター・パインズ・カフェ
- 8/7(金) 渡辺勝と松倉如子それぞれのレコード発売記念別府ライブ! @別府 味の高麗房
- 8/8(土) 上海素麺工場プロデュース・ライブ! @福岡 上海素麺工場
- 8/9(日) @小倉 ギャラリー・ソープ
- 8/29(土) 渡辺勝と松倉如子それぞれのレコード発売記念札幌ライブ! @札幌 キコキコ商店
うたもの作品紹介
SAKANA 『BLIND MOON』
ポコペンさんの、ふくよかで深みあるボーカルが紡ぐ、ヨーロッパの短編映画のような世界には、聴くものの想像力をどこまでも掻き立ててゆく力があります。アメリカン・ルーツ・ミュージックとサラヴァ的なフレンチ・アヴァンギャルドが東京郊外で出会い生まれた、どこまでもオリジナルな日本語ポップ・ミュージックは、当時隆盛を誇っていた音響/ポスト・ロック/オルタナティブ畑の人たちからも広く支持をあつめつつ、そういう細かな括りをはなから越えて、あらゆる層の音楽ファンの胸に響いていったのでした。いま聴きかえしても、この音楽のなかには一色たりとも褪せる場所がありません。まだ聴いたことのない人にはぜひ手にとって欲しいと思います。
GREGORY AND THE HAWK 『Moenie and Kitchi』
ジョアンナ・ニューサムをよりポップに、より透明にしたかのようなオリジナリティ、デス・キャブ・フォー・キューティにも通じるキャッチーなメロディに、プロデューサーのアダム・ピアース=マイス・パレードのシューゲイズ・テイストを散りばめたキラキラ・サウンド! ! グレゴリー・アンド・ザ・ホークことメレディス・ゴドルー、ムーム等でおなじみのUKのファット・キャットから衝撃のデビュー! ! ウィスパー系女性ヴォーカル・ファン必聴!!
Joanna Newsom 『Ys』
ハープとボーカルのみで独自の世界を築きあげる驚異のユニークな女性シンガー・ソング・ライター、Joanna Newsomの新作「YS」。アレンジは、あの大御所V.D.パークス、録音がS.アルビニ、ミキシングがJ.オルークと、とてつもなく豪華なメンバー。このメンツを見るだけでもわくわくするような傑作!