パワー・ポップを愛する者へ───Superfriendsのルーツと現在地が反映された新作ミニ・アルバム
2005年に結成されたSuperfriendsがOTOTOYに初登場! 彼らは15年以上のキャリアを持つバンドだが、流通作品は2018年のアルバムと本日リリースされたミニ・アルバム『Songs as Letters』のみ。だからこそ、今回のリリースには大きな意味があるのだろう。そんなファン待望の本作の魅力に探るべく、また敬愛するアーティストWeezerへの想いやSuperfriendsの強みなどバンドの根幹を知るため、リモート取材を行った。さらに、かねてより親交のあるバンド、ナードマグネットのメンバー全員から愛あるコメントも到着している。そちらも併せて楽しんでいただきたい。
Superfriendsが敬愛するWeezerの新作 / 過去作はこちらをチェック!
INTERVIEW : Superfriends
ここ日本でギター・ポップ/パワー・ポップに親しむ者にとって、Superfriendsというバンドは間違いなく特別な存在だ。2005年に京都で結成された彼らが過去にリリースした流通作品は、2018年に発表された1stアルバム『Superfriends』わずか1作のみ。にもかかわらず、同作の粋な引用に満ちた演奏とソング・ライティング、そしてキャッチーなメロディラインは今も多くの人々を魅了し続けており、新作を求める声は常に絶えなかった。
そして結成16年目にあたる今年、Superfriendsがついに新作ミニ・アルバム『Songs as Letters』をリリースする。メイン・ソングライターの塩原が敬愛するWeezerを全力でトリビュートした“1994”を含む今作は、パワー・ポップ好きの期待に満塁ホームランで応えてみせた会心の一枚。Turntable Filmsのメンバーも兼任するベーシスト谷のサウンド・プロデュースも冴え渡り、バンドの着実な進化がここに刻まれている。今回のインタヴューでは、そんな新作『Songs as Letters』の収録曲を本人たちが1曲ずつ解説。現在は群馬に拠点を置く塩原と前田、そして京都在住の谷と中継をつないで話を聞いた。
インタヴュー:渡辺裕也
完全に僕はRivers Cuomoのフォロワー
──まずは今作の先行トラックとしてリリースされた“1994”について聞かせてください。この曲にはWeezerへのオマージュがたくさん詰め込まれていますよね。恐らくこれはSuperfriendsというバンドの根幹に関わる曲なんだろうなと。
塩原 : そうですね。とはいえ、このバンドでWeezerが好きなのは僕だけなんですけど...(笑)。
──塩原さんにとって、Weezerとはどういう存在なのでしょうか?
塩原 : 好きになったきっかけは、友達から借りた『The Blue Album』と『Pinkerton』でした。それまでの僕は基本的にメタルしか聴いてなかったんですけど、そんな時にWeezerを初めて聴いて。最初は「速弾きじゃないけど、かっこいいな」くらいだったんですけど、だんだんメロディが頭から離れなくなって、気づいたらすっかり彼らの虜になってたんです。それこそ恋をするような感覚でしたね。で、そこから先はWeezerのファンによくある話なんですけど(笑)。
──その後の作風の変化に、なかなかピンとこないと(笑)。
塩原 : 『Green Album』は好きでした。でも、次の『Maladroit』を聴いたときに「あれ、おかしいな? 」となって、大学の頃に出た『Make Believe』をめちゃくちゃ期待しながら聴いたときに「やっぱりこれはなんか違うぞ」と...(笑)。
──初期2作を聴いたときのような感動が、その後の作品では味わえなかった?
塩原 : やっぱり最初に聴いたときの衝撃が大きすぎたんです。そういう意味では、Weezerってすごくかわいそうなバンドだと思う。良いのは最初だけだと言われたら、それこそ自分だったら本当に辛い気持ちになるだろうなって。だから、それは自分で作ろうと思ったんです。Weezerのファンとして自分が聴きたいものは、自分で作ろうと。要はWeezerになりたかったんです。このメガネからしてそうですね。完全に僕はRivers Cuomoのフォロワーですから(笑)。
──"1994"の歌詞は、好きな人に置いてけぼりにされていくときの気持ちを綴っているようにも読めます。つまり、これが塩原さんがWeezerというバンドにずっと感じてきたことなのでしょうか?
塩原 : そうですね。「Rivers、そうじゃないだろ」みたいなモヤモヤした気持ちがなかなか拭えなくて。でも、本人からすれば初期と同じような音楽ばかりやり続けるわけにはいかないんだろうなと思ったんです。その時々でやりたいことが変わるのって当然だし、そこに納得できてくると、僕自身がやりたい音楽もパワー・ポップ~スウェディッシュ・ポップ~ネオアコみたいな流れで徐々に変わっていって。ただ、ひとつの芯としてメロディにはずっとこだわってきたし、やっぱりそこはWeezerなんですよね。彼らが好きっていう気持ちだけは、ずっと変わらないので。
──なるほど。でも、そこまでWeezerに思い入れがあるのは塩原さんだけなんですね。
塩原 : そうなんです。特に前田さんはなんとも思ってないと思う(笑)。
──前田さんはアフリカ音楽が好きだという話をブログで読みました。
前田 : そうですね。ワールド・ミュージックは大好きだし、高校生の頃は山下達郎のバックで叩いていた青山純が本当に好きでした。彼の心の故郷がWeezerなら、私の心の故郷は青山純です。
塩原 : このバンドを組んだ頃、自分が好きなバンドのミックス・テープを作って、前田さんに「こういうバンドがやりたい」と伝えたことがあるんですけど、前田さんはそれをほぼ聴かずに捨てたらしいです(笑)。あと、前田さんは8ビートがあまり好きじゃないので。
──当初の「Weezerになる」という目標がだんだん難しくなってきましたね(笑)。
塩原 : 実際、僕が結成時からWeezerみたいなことをやろうとしてたら、前田さんは多分バンドを辞めてたと思います。僕の好きな音楽が増えていくなかで、前田さんとの共通言語がだんだん増えていって、そこから少しずつバンドになっていったような感じだったので。
──塩原さんが作る楽曲を、当初の前田さんはどう受け止めていたんですか?
前田 : うーん。パワー・ポップとかギター・ポップはそこまで好きじゃないんですけど、そのジャンルの中ではいい曲作ってるなと思ってました(笑)。
谷 : 「お前、まあまあやるなぁ。別に好きやないけど」みたいな感じか(笑)。
──谷さんとSuperfriendsはどこで繋がったんですか?
谷 : きっかけはTurntable FilmsとしてSuperfriendsと対バンしたときだったと思います。そのときに連絡先を交換したのが縁となって、ベースのサポートを頼まれたことがあって。そのときに塩原くんとWilcoの話で盛り上がって、それで今に至るって感じですね。
──意気投合したポイントはWilco?
谷 : それもあるし、さっき塩原くんが言ってた「メロディが好き」っていう話が、僕らの共通点としては大きいんやないかな。僕もメロディが良くてコンパクトな楽曲が好きだし、自分が誰かと一緒にバンドをやるときは「The Beatles的な何か」みたいな要素が共通点として重要かなと思ってて。で、Superfriendsはそこがわかりやすかったんですよね。最初に彼らの音源を聴いた時、すぐ塩原くんに連絡したのを覚えてます。「めちゃええやん! この音源」って。
塩原 : 懐かしいな。谷くんからその電話をもらって、それでまた会おうってことになったんだよね。
谷 : ただ、 メロディが良かったから彼らと一緒にやりたくなったのかっていうと、実はそうでもなかったような気もしてて。いま思うと、ハーモニーの感じにピンときてたような気もする。
塩原 : 実際、このバンドは谷くんが加わってから変わっていったこともたくさんあるからね。