幸せな音楽人生を目指しながら、一歩ずつ前へ前へ──からあげ弁当の焼きそばが語る22歳のいま

ライヴハウスへ行くようになってから5、6年。決して長くない歴のなかでも「なんとなくノリ気がしない」なんて思ってしまう日が生意気ながらある。からあげ弁当のライヴをはじめて観に行った時はちょうどそんなモードが続いていた時期で、正直に告白するとこの日も100パーセントの気持ちを持っていたわけではなかった。でもからあげ弁当の3人が新代田FEVERのあのステージで演奏している姿を観たら、ライヴハウスに初めて行った日のこと思い出して知らないうちに泣いてしまっていたし、「ライヴハウスで気になっているバンドを観るってやっぱりいいな」と帰り道に何度も思った。からあげ弁当はそういう童心に返らせてくれるような青臭さがあるし、真正面から自分たちの音楽性をストレートにぶつけてくる潔さもある。〈VIVA LA ROCK 2024〉に出演したりと今年はさらに大躍進の年となる気がしているが、ひとまずリリースされた『最高更新』をじっくりと聴いてもらいたいと思う。(編)
3ピース編成最後のEP
INTERVIEW:からあげ弁当(焼きそば)

初のフル・アルバム『I am hungry』から半年も経たないうちに5曲入りのEP『最高更新』のリリースを発表し、さらにはリリースの数日前に3ピースから4ピースへの増員を発表するなど、からあげ弁当はハイペースにマイペースを貫いている。『最高更新』は4人で活動していくことを見据えたうえで3人で制作しているとのこと。なら4人になってから完成させればいいのではないかと思ってしまうが、彼らにはすぐさまリリースしたいという確固たる理由があった。今回ソングライターの焼きそば(Vo/Gt)を、からあげ弁当が初めての大型フェスに出演した2日後にキャッチ。フェスで得た刺激、『最高更新』の制作背景、4ピースへの思いなど、いまの彼が感じる率直な気持ちを語ってもらった。
取材・文:沖さやこ
写真:つぼいひろこ
「4ピースになるんやろな」という感覚がずっとあった
──焼きそばさんはあまりフェスに馴染みがなかったようですが、はじめてのフェスとなった〈VIVA LA ROCK 2024〉はいかがでしたか?
焼きそば(Vo/Gt):楽しかったですねえ……。野外の無料ステージやったんで、家族連れの人もおってほんまお祭りみたいでした。埼玉県好きになったっすね。ケータリングもめっちゃ豪華で、ハーゲンダッツしこたま食いました。俺ほんまフェスを知らなさすぎて。さいたまスーパーアリーナ入ったら大物アーティストがライヴしてて、そしたら向こうでもライヴがはじまって……とかすごい文化やなと思った。いま知れてよかったっすね。難しさもあり、楽しさもあり。
──確かにフェスは、ライヴハウスとはまったく環境が違いますから。
焼きそば:風も強かったし、昼飯食いながらちらっと見てくる人もおれば、前で熱狂してくれる人もおって。観てくれる人たちの空気を一気にドーンとステージまで持ってくるのは難しかったっすね。そういう意味でもまた出たいな、またビバラに呼んでもらえるよう頑張らなあかんなと思いました。
──4月に新メンバーの加入と4ピースバンドでの始動が発表されましたが、〈VIVA LA ROCK 2024〉はこれまでどおり3ピース編成でしたよね。
焼きそば:〈『最高更新』自主企画〉の最終日(2024年6月7日)までは3人で活動します。「4人になります」って発表してすぐ4人になったら、3人のからあげ弁当を応援してくれた人らに失礼やなと思って。
──なるほど。ずっと3人でステージに立っていたバンドのメンバー増員発表は、お客さんも驚いたでしょうし。
焼きそば:俺もちょろっと誰かから「メンバー増やすなら基本サポートからやけど」と言われたけど、お試し期間なんて生ぬるい! 入るんなら入る、入れへんやったら入れへん! って感じです(笑)。結構前から4ピース化は考えていたんですよね。4人になる覚悟も決まったし、どうせやったら正規メンバーのほうが話題にしてもらいやすいかなって。
──いつ頃から4ピースを視野に入れていましたか?
焼きそば:1年くらい前からかな。バンドをはじめてからは自分たちと同じ3ピースを聴くことが多かったんですけど、オルタナも好きなんで時間が経つにつれて4ピースやギター3人いるバンドとかも聴くようになったんです。yubioriとかANORAK!とかKOTORIとか、それこそ事務所の先輩のAge Factoryとか。英介さん(清水英介)と話させてもらったときにも音楽の幅が広がると言ってはったし、そういうなかで漠然と「からあげ弁当は4ピースになるんやろな」という感覚がずっとあったんですよ。
──先ほどおっしゃっていた「4人になる覚悟が決まった」というのは?
焼きそば:〈東京見放題2024〉でプッシュプルポットを観たときですね。ギター・ヴォーカルがギターを置いてお客さんのところに行って、足掴んでもらって柵の上に立ってたんですよ。それを見て「ギターがもうひとりおったら選択肢が増えてもっと自由になるんやな。めっちゃいいな」と思って、すぐにメンバーとスタッフさんに「4人にしよう」と言いました。こーたろー(Dr)は4ピースやピンヴォーカルのバンドばっかり聴いてきたタイプやから、すぐ「メンバー誰にする?」みたいな感じやったし、春貴(Ba)はそういう判断は俺に任してくれるんで。
──〈東京見放題2024〉は3月2日で、Ryu-no.(Gt)さん加入の発表が4月24日。たった2ヶ月弱でここまで決まるなんて、それにも驚きです。
焼きそば:Ryu-no.は、春貴がからあげ弁当のほかにもう1個やってるJAM LILLYというバンドのサポート・ギターなんですよ。春貴との関係性もあったから前向きに考えてくれて、実際にスタジオ入ってよかったんで、一緒にやろうかって感じでした。めっちゃいい人なんですよ。バンドはそこがいちばん大事ですよね。

──5月にリリースした『最高更新』は、3人で制作したものですよね?
焼きそば:そうです。でも4人になることが決定した状態で曲を作ったので、3人用に作るべきなのか、4人用のリード・ギターが入ることを念頭に置いた状態で作ればいいのかがちょっと難しくて。でも「4ピースの感じを敢えて3人でする」という俺のもともと持っていた譲れないものを掲げつつも、4人のこともちょこっと考えつつみたいな制作でした。
──確かにいままでのからあげ弁当の楽曲はスリーピースでしっかり成立したアレンジでしたが、『最高更新』はもうちょっと音が欲しいなと思う曲はありました。
焼きそば:やっぱり「4人になる」っていうのが頭のなかにあったんですよね。たとえば"ディーンエイジャー"なら、いままでなら頭サビの後にあんなに長いイントロを入れたりはしないんですよ。でも4人になるなら、ここでイントロとリード・ギター欲しいじゃないですか。でも3人で録ってるからただのコード弾きになる。それもあってそう感じてくれはったのかなと思います。
──フル・アルバム『I am hungry』を出して半年も経たないうちに新曲5曲入りの作品が出ることにも驚いていたんですが、まさか4ピースになることが決まった後に3人で4ピースを見据えた音源を作るなんて。先ほどから驚かされてばかりです。
焼きそば:俺らあんまそういうのわかってないんです(笑)。とにかく早よ『最高更新』の5曲を出したかったんですよ。どれもライヴでやりたい、ライヴに必要な音楽なんです。
──だとすれば、バンドにとってはじめてのフェスに出る前までには出しておきたいですよね。
焼きそば:応援してくれてる人にもライヴで観る前までに曲が馴染んでほしいし、デカいフェスで初めてからあげ弁当を観る人に「このバンドかっこいい」と思わせたくて。別に昔の曲に納得いってへんわけではないけど、からあげ弁当のライヴをたまたま観た人も巻き込める曲が必要やなと思ったんです。ちゃんと『I am hungry』から1歩先に行けたかな、いまの俺らが納得できる5曲やなという意味で『最高更新』って感じですね。
