曖昧だからこそ輝くバンド、YAJICO GIRL──オリジナリティを理解し、確立するまでの軌跡を辿る

いま、YAJICO GIRLが最高にかっこいい。そう確信するにふさわしいファースト・フル・アルバム『Indoor Newtown Collective』が完成した。この作品名は「広い意味での音楽集団でありたい」という想いが込められた、活動コンセプトでもある。たしかにYAJICO GIRLはギター・ロック・バンドと言い切れるわけでもなく、R&Bやアンビエント、ゴスペルなど幅広いジャンルを取り入れているクロスオーバーなバンドであり、音楽性に対しての明確な答えはない。しかし曖昧だからこそ、YAJICO GIRLはどこまでも変化するし、おもしろいのだ。フロントマンの四方颯人(Vo / Gt)と、収録曲“忘れさせて”の作曲を担当した、吉見和起(Gt)と武志綜真(Ba)を招き、バンドのスタンスについて語ってもらった。
既存12曲+新録6曲を収録した初のフル・アルバム!
INTERVIEW : YAJICO GIRL
YAJICO GIRLの記念すべきファースト・フル・アルバム『Indoor Newtown Collective』は、これまで彼らが歩んできた軌跡と現在地を示した1枚となっている。ロックバンド時代の“いえろう”から、R&Bやヒップホップ、ビートミュージックなどの影響から生まれた『インドア』。逆に、今度は分かりやすい楽曲を投下していった『アウトドア』があって、浮遊感のある『幽霊』に繋がり、最新作の“流浪” “休暇”など……。彼らがどのような想いで楽曲を生み出し、どのような変化を遂げてきたのか。これまでの点と点が繋がるような、まさに集大成の作品となった。
インタヴュー・文 : 真貝聡
YAJICO GIRLとはなにかを広い場所で共有するためのアルバム
──「ヤジラジ!」(※Apple Podcast、Spotifyで配信しているYAJICO GIRLのラジオ番組)めっちゃ聴いてます。
四方颯人(以下、四方)(Vo / Gt):うわぁ、嬉しい!
──ほぼ全話聴いたんじゃないですかね。
吉見和起(以下、吉見)(Gt):マジっすか、すみません!
四方:なんか謝っちゃうよな。いやいや、ありがとうございます。
吉見:自分らで言うのもアレですけど、だいぶコアな方だと思います(笑)。
──ふふふ。リリースのたびに楽曲の細かいお話もされていますし、バンドとしての立ち位置の話とかも出てくるので資料としてもおもしろくて。
四方:嬉しいなあ、ありがとうございます。
──四方さんがテレビ番組『じゃないとオードリー』を激推ししていた回もあって。
四方:確かに、あれは熱い回でしたね。
吉見:あれやんな? これまでオードリーのふたりは、カメラが回っていない状態だと完全にスイッチを切っていたけど、オフの時もオンのモードにしてみたら空気が良くなって、ふたりの考え方も変わるんですよね。その姿勢はYAJICO GIRLにも必要かもね、と話した記憶があります。
四方:オードリーのふたりも高校の同級生で、友達からはじまってコンビを結成した。そこはYAJICO GIRLと被っていて。
吉見:だからこそ、共感するところもあったよな。
──出会った頃の印象って覚えてます?
吉見:四方は良い感じの好青年だったんですけど、途中から赤髪のソフトモヒカンになって、ファンキーな人やなと思いましたね。で、武志は真面目で「勉強したいです!」みたいな。しかも、たまたま武志の周辺の座席がすごくてな? 外国語ペラペラな帰国子女がグワーといて。
武志綜真(以下、武志)(Ba):英語と中国語とフランス語を話す人がいて(笑)。
吉見:そんななかに囲まれていたから、より武志が真面目に見えましたね。
──そんな吉見さんは?
武志:吉見の印象は正直あんまりなくて。 四方は洋楽をいっぱい聴くんやなって感じでしたけど、吉見は……うーん。
吉見:最初はあんま喋ってなかったもな。
四方:最初の印象は薄いかも。
──そこで出会ったメンバーが同じ軽音学部に入り、バンドを組んで、今日まで一緒に活動する未来は予想してました?
一同:してなかったですね。
吉見:全くなかったですね。どうせ部活だけの関係やろなって。でも、気づいたらアレよアレよといまに至ります。
──今回リリースするファースト・フル・アルバム『Indoor Newtown Collective』は、これまでの集大成であり、いまのYAJICO GIRLを示した作品だと思うんですけど。1枚通して聴くと、改めて音楽性の幅が広いなと思って。
武志:2016年に〈未確認フェスティバル〉とか〈MASH FIGHT〉でグランプリを獲った時は、オーディションバンドとか、ギター・ロック系のバンドとか、10代ロックの人達という印象がありまして。それを変えたくて進んで行った結果、いまは「YAJICO GIRLはこういう音楽性のバンド」というひとつの見え方じゃなくなった気がします。
四方:例えば、ザ・シティポップみたいなイベントに呼んでいただけるのは、シティポップの一面があるからやろうし、いわゆるロックみたいなところでもやらせてもらうし。割といろんな側面があるバンドやなと思います。
吉見:それこそ『Indoor Newtown Collective』はアルバム名であり、僕らの活動コンセプトでもあるんですけど、それを作ろうとなったきっかけがいま話したことでもあって。武志が言ったようにロックバンドとか、もっと言えば空間系ロックバンドと括られると、それは違うなと思うんですよ。合ってはいるけど要素でしかない。じゃあ自分達でコンセプトを作っちゃおう、と言って『インドア』というアルバムを出すタイミングから『Indoor Newtown Collective』を掲げるようになったんですよね。
四方:YAJICO GIRLとはなにかを広い場所で共有するために、名刺代わりとなる作品が欲しくて、今回のアルバムを作ったのがありますね。