謎多きアーティスト・マハラージャン──2つの新作から浮かび上がる人物像とは?
会社員からアーティストへ。働きながら、休みさえあればずーっと音楽を作っていたというマハラージャンの新作がついに完成。彼の持ち前のよさを活かした前作から、さらにグレード・アップした今作は未解明な魅力が伝わるチャレンジングな作品となっている。デジタル限定の4枚目のEPとアナログ限定のメジャー・デビュー・アルバムを2週にわたり発表するというリリース形態、さらに『THE FIRST TAKE』などへの出演という数々のトピックからは、約5ヶ月前に実施した前回のインタヴューから、彼が大躍進をし続けていたことが伝わるだろう。そんな注目度が高まっているアーティスト・マハラージャンの新作を掘り下げていくと、マハラージャンというアーティストの過去や劣等感、音楽に対する姿勢、そして真髄など様々な要素が明らかとなった。
INTERVIEW : マハラージャン
進化を続けるマハラージャン、OTOTOYに再降臨。前作でもレコーディングに参加したハマ・オカモト、石若駿らとミュージシャン同士のスピリットを交信させたサウンドはますますグルーヴィーで臨場感たっぷりに。ひとりで作った打ち込み曲も含め、音づくりへの豊富なアイディアと探求心、ユーモラスかつシニカルな歌詞で紡がれた曲たちにより、ついにファースト・フル・アルバムが誕生した。NHK『シブヤノオト』での地上波初出演、2度に渡る『THE FIRST TAKE』への出演経験は、「音楽って神聖なものなんじゃないかな」と思うきっかけになったという。心に闇を抱えつつも音楽の魅力に憑りつかれ、いよいよ開眼した感がある、いまいちばんスピってるアーティスト・マハラージャン。7月某日、一粒万倍日に話を訊いた。
インタヴュー・文: 岡本貴之
写真:作永裕範
本当に毎日死ぬ気でやってました
──前作サードEP『セーラ☆ムン太郎』リリースの際にインタビューさせてもらいましたが、あれからわずか3ヶ月ぐらいの間で一気に知名度が上がってますよね。
マハラージャン : そうですよね。お会いしたのがついこの間ですもんね。
─その間、いかがでしたか。
マハラージャン : 本当に大変でした。4枚目のEP『僕のスピな人』の作詞作曲・アレンジをひとりでやっている最中、NHK『シブヤノオト』(2021年5月15日出演)に出させていただけることになって。まだ“セーラ☆ムン太郎”の歌詞を覚えてなかったですから(笑)。それと、制作しているときって体が歌うようにできていないというか、そっちの方向に持って行くのも大変でした。NHKの番組出演が終わって、また制作に戻ろうとしたら今度は『THE FIRST TAKE』の話までいただけたので、準備が大変でした。
──いまは制作や出演が落ち着いて、解放されている状態?
マハラージャン : 正直ちょっとそれはありますね。急にラスボスと戦わなきゃいけなくなった状態だったので。
──ラスボス(笑)。でもそのラスボスを倒した実感はあったんじゃないですか。
マハラージャン : 倒したのかどうかはわからないですけど(笑)、本当に良かったです。いちばん反響も大きかったですし、音楽的なところで言うと、音源で作ってる自分の頭のなかで描いているものとはまた違っていて。『THE FIRST TAKE』って音楽に対する情熱をぶつけて、それが焼き込まれる場だと思うんです。“セーラ☆ムン太郎”って、もともと全然そういうことと距離がある音楽なんですけど、それをそっちの方向に持って行ったらどうなるんだろうっていうことができたというか。(バンドの)みんなが素晴らしかったこともあってミラクルが起きました。
──本当に気合が入った歌でした。
マハラージャン : ありがとうございます。本当に毎日死ぬ気でやってましたから。
──歌詞も覚えないといけないし。
マハラージャン : (笑)。何日か練習しすぎて声も枯れてでなくなったりとかして。ひとつひとつ克服して良い状態に持って行った感じでした。
──『THE FIRST TAKE』のピアノ伴奏だけで歌ったバラード “eden”は、感動的でした。
マハラージャン : ありがとうございます。
──後半でちょっと詰まったところがまた『THE FIRST TAKE』らしいリアルさで。
マハラージャン : あれは“『THE FIRST TAKE』バージョン”ですね(笑)。すごくビジョンを描きながら歌った感じがあって。後半、なんか「白いものが見えた!」って思ったんですけど、白ホリ(真っ白な壁や背景の空間)なんですよね。スピリチュアル的ななにかが見えたと思ったんですけど、違いました。ただそれぐらい気持ちのこもった歌になったと思います。