尖りまくりの4人の個性大爆発! 摩訶不思議音楽世界へようこそ──奇才ポップ集団、YAYYAYがここに誕生

奇才ポップ集団、YAYYAY(ヤイヤイ)が誕生です! このバンド、只者じゃあありません。sleepy.abなど数多くのアーティストのプロデュースも手がけるShizuka Kanata。現在はチリヌルヲワカとして活動中のユウ(ex.GO!GO!7188)。ASA-CHANG&巡礼としての活動のほか、森山直太朗、くるりなどのサポートも手がけるヴァイオリニスト、須原杏。そしてGen Peridots Quartetやヘクとパスカルのメンバーとしても活動し、Salyuや安藤裕子などのサポートも手がけるチェリスト、林田順平。クセだらけの4人組が織りなすファースト・アルバム『I'm Here』は奇想天外、摩訶不思議。さまざまな音楽要素が混ざり合い完成された独自のポップワールドをお見逃しなく!!
尖りまくりの4人の個性を堪能せよ!
INTERVIEW : YAYYAY

事件です。とてつもなく怪しげな新人バンドがデビューしました。「YAYYAY」と名乗るそのバンドの“首謀者”は〈Chameleon Label〉主宰、札幌を拠点にShizuka Kanata名義で活動する田中一志(Key&Prog&Mix)。旧知の仲であるユウ(Vo&Gt. / チリヌルヲワカ/ ex.GO!GO!7188)と、数々のアーティストのライヴ、レコーディングで活躍する2人の弦楽器プレイヤー、須原杏(Violin)、林田順平(Cello)を集結させ、このご時世の中、水面下で着々とレコーディングを進めていた模様。4人のミュージシャンが叡智を結集して創り上げたミニ・アルバム『I'm Here』は、美しくて、けっこう過激で、かなりヘン。めちゃくちゃ楽しい曲揃い。いったい何を企んでいるのか? メンバー全員、事情聴取してみた。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
一志さんが「バンドにしてみない?」って

──まず、4人の関係からお伺いしたいと思います。田中さんとユウさんは、以前から一緒に作品を作っていますよね?
ユウ(Vo.Gt) : はい、そうです。
田中一志(Shizuka Kanata / Key.Prog.Mix) : ユウちゃんがGO!GO!7188時代に作ったソロ・アルバム(『てんのみかく』)に、2曲アレンジとサウンドプロデュースで僕が参加させていただいて。それからの仲ですね。そのあと、僕のソロ・プロジェクト“Shizuka Kanata”で最初に出したアルバム(『Divine Hokkaido』)で、今度は僕の曲をユウちゃんに歌ってもらって。かれこれもう10何年のお付き合いです。
──須原(杏)さん、林田(順平)さんとはどういうきっかけで?
田中 : 僕がプロデュースをしているsleepy. abの成山(剛)と山内(憲介)の2人で「成山内」というユニットをやっていて。「成山内」が札幌でライヴをしたときに、杏ちゃんとJP(林田)が参加している「Gen Peridots Quartet」と対バンをしたんです。そのときに、ふたりがものすごく完成された弦のアンサンブルをしていて、それがあまりにもすばらしかったんですね。それ以降、ふたりにはいろんな仕事やプロジェクトで手伝ってもらうようになりました。それと、はじめて会ったときに渡した僕のアルバムにユウちゃんの歌った曲(“Happy Ending”)が入っていて、それを聴いた杏ちゃんから「自分のイベントでこの曲を使いたい」って連絡があって。結構ディープな曲だったんですけども(笑)。
須原杏(Violin) : あはははは(笑)。私が中学生の頃にGO!GO!7188が、とにかく流行っていて、「あのユウさんなんだ⁉」っていうのがぜんぜんつながらなかったです。
──そこからバンドになったのはどんなきっかけだったんですか。
田中 : 最初からバンドにしようと思ったわけじゃなくて。いま作ってる僕のアルバムの中でユウちゃんと一緒にやることになって、レコーディングをはじめたんです。最初にできたのは”Bitter&Sweet”なんですけど、最初の段階ですごく感触が良くて。もともと1曲か2曲のつもりだったのにどんどん曲を作っていって。ユウちゃんにも曲を書いてもらうようになって。
──やってみたら好感触だったと。
田中 : そう。もともと、GO!GO!7188時代のソロのときは、弦アレンジでお手伝いをさせてもらっていて。「ユウちゃんと弦」という結びつきはすごく自分的におもしろかったんです。それで「また弦を入れた曲をやりたいね」って、杏ちゃんとJPの話をしていたんですよ。

──林田さんは、ユウさんの音楽を聴いたことはあったんですか。
林田順平(Cello) : バンドの活動は知っていたんですけど、ユウさんのことはちゃんと知らなかったです。だから、最初は“一志さんが連れてきた謎のカッコイイ歌手”というイメージで。
須原 : 私はカラオケに行けばみんなGO!GO!7188を歌っていた世代だったのでまさか一志さんを介してユウさんと出会うとは思わなかったですし、まわりまわって、いまのユウさんとご一緒できるというのがうれしくてワクワクしました。
──YAYYAYというバンド名は4人で文字通りヤイヤイ盛り上がってレコーディングしていたらこうなったという感じですか。
林田 : いや、そんなことないよね(笑)?
ユウ : バンド名はめっちゃ悩みました。なんとなく、命名は女子チームに委ねられたんですよ。私はインスピレーションで、バンド名にはオリエンタルなイメージがあったんです。アジアっぽいけど日本じゃなくて中国っぽい、パンダの名前みたいな感じ、「トントン」とか繰り返す名前が良いと思っていろいろ挙げたんです。その中で「YAYYAY」に決まりました。
──みなさんそれぞれ活躍されている中で、バンドとして作品を作ろうと思ったポイントってどこにあったんでしょうか。
林田 : 最初はまさかバンドになるとは思ってなくて。やっていくなかで一志さんが「バンドにしてみない?」って言ってくれたこともあって、ぜんぜんいいっすよっていう感じでした。
──それだけ楽しんで音楽ができる4人だった?
林田 : そうですね。ユウさんに最初に会ったときもすごくヘンな人っていうか……。
ユウ : ははははは!
林田 : すごく良い意味でね? 素敵だなって思いました。
──ヘンな4人が集まったという自覚がある?
林田 : う〜ん、いや、自分なんかはぜんぜんヘンだと思ってないので。
須原 : 自分だけ棚に上げてる(笑)。
──事前に田中さんにいただいたコメントに「杏ちゃんとJPはクラシック畑出身なのですが、めちゃくちゃアホでパンクで最高です」とあるんですが。
一同 : (爆笑)。
林田 : なんですか、悪口ですか?
田中 : そうそう(笑)。いや、やっぱりそこは音的なところですよね。僕はこれまでも割と弦の人たちと一緒にやる機会があって。そういうときにこっちが思うことをこちら側の用語や形容詞で伝えようとしても伝わらなくて、すごくクラシカルな用語でちゃんと説明しないといけないみたいなことがあったんです。でも、このふたりだとすごくいい加減に音を渡して「はい、やって」って言っても、ポンっと「おおっすげえ!」ってものが返ってくるんです。それがもう、うれしくてしょうがなくて。こちらのやりたいことをすごく理解して音にしてくれるという意味で、このふたりはいままで出会えなかったタイプのプレイヤーですね。
ユウちゃんは、もともとヘンですから(笑)。最初に会ったときに、北海道の僕の自宅スタジオでレコーディングしたんですけど、何を食べたいか聞いたら、真っ先に「バイキング!」って言ったのに、いざ行ったらカレーをちょっとだけ食べてもうおしまい(笑)。そういうぶっとんだところが大好きで。それは音にも表れていて、曲について「こうしてほしい」っていうことが、いわゆる常識から外れていることが多くて。それを言われた通りにやってみると、めちゃくちゃカッコイイことが結構あったんです。その天才的な部分というのは、ものすごく昔からハマってますね。
レトロな感覚と今の感覚をどう混ぜるか

──バンド結成のきっかけになった”Bitter&Sweet”はすごく美しいメロディで、すばらしい曲ですね。
田中 : ありがとうございます。うれしいです。その次に出来たのがリード曲の“ダイバダッダ”で、2曲ほぼ同時にできたんです。僕はわりとレトロな感覚と今の感覚をどう混ぜるかという意識が強いので、”Bitter&Sweet”はちょっとオールドミュージックの雰囲気を入れたんですけど、そこにピッタリハマってしまうヴォーカルはあまり好きじゃなくて。これにユウちゃんの歌が入ったらどれだけおもしろいんだろうという発想で、あえてこういう形で作りました。“ダイバダッダ”は、ちょっとレトロな感覚も残しつつ、もっとディープな曲という発想から。ただ、ユウちゃんの曲の解釈、詞の解釈がこの2曲ではかなり違うことが、最終的な出来上がりの違いになっているかもしれないです。
須原 : “ダイバダッタ”の歌詞についてみんなですごく盛り上がったんですよ。サビの〈タラッタラッタッタ〜〉っていうところが良い意味で、「これはなんだろう!?」みたいな(笑)。それと、ハモっているのをレコーディングで聴いていたら、「あ、すごい! だんだんユウさんになっていく!」って思いました。なんか、変わったラインですよね?
ユウ : ああ〜、それはよく言われますね。
田中 : “ダイバダッタ”のサビの、下の主旋律は僕が書いたんですけど、上の声部のハーモニーのラインはユウちゃんが勝手に作ったんです。それがものすごく独特のラインでかっこいいんですよね、本当に。
──推し曲になっている “愛する人を間違えた”はタイトルにグッと引き寄せられますけど、どうやってできた曲ですか。
ユウ : 歌謡曲ぽいメロディで、かなり“私節”が出まくってると思うんですけど(笑)。もともと構想はあったんですけど、チリヌルヲワカでやるつもりがない曲だったんです。私がよく言われる「歌謡曲っぽい」感じと、田中さんが持っている「洋楽っぽい感じ」と打ち込みが混ざったらどうなるのか、その融合がおもしろくなりそうだなって思いました。
田中 : 全曲そうなんですけど、この4人が一緒にやる上で、弦が重要なファクターなんです。たとえば“愛する人を間違えた”でいうと、歌謡曲っぽい弦アレンジにするのは作りやすいんですけど、それはやりたくなかったんですよね。それをこのふたりの弦でどういう風に表に出すかを考えたときに、クラシックだけでなく、クラブ系やロック、現代音楽など、すべてのジャンルに通じるレンジが広いふたりのアクが強い弦を入れたいと思って作りました。

──この曲の弦で弾いてるメインフレーズって、ガロの“学生街の喫茶店”っぽいですよね。
田中 : じつはそれ、僕も作ってて思ってたんですよ。まさか出てくるとは思わなかった(笑)。
林田 : たしかにイントロのところとかそうだ。
──歌詞に出てくる主人公が青春時代を思い出してて、オマージュで表現してるのかなと思いました(笑)。それをド迫力な弦の演奏で聴かせているのがおもしろいなって。
田中 : ガロ好きだったんだよなあ。自然に出ちゃった感じですね(笑)。
須原 : いまはじめてこの曲ができたいきさつを聴きましたけど、よくここまで歌謡曲っぽさを捨てきれたなって(笑)。弦は、普段絶対使わないようなグリスの感じを結構入れたりしていて、もっともっといびつになるように、ニュアンスを試行錯誤しながら録りました。いろいろな要素が詰まった弦になっています。
4人をつなぐキーワードは「パンク」

──もう1つの推し曲、“I'm Here”のバイオリン、チェロは普通の演奏をしていない感じですね。
林田 : この曲の弦は基本的にはピチカート(弦をはじく奏法)ですね。この曲もわりとヘンテコですよね。
田中 : もともとサンプルを並べてヴォーカルは叫んでいる感じの打ち込みパンクみたいなものを想定して作っていて。そのサンプルの粒みたいなものを弦でやったらどうなるんだろうなって、好きにやってもらいました。この曲は最初、僕がメロディを作って自分で歌ってたんですよ。それをユウちゃんに「好きにメロディを変えちゃって」って渡したら、めちゃくちゃポップなメロディを書いてきてくれたんです。バックトラックだけ聴くとマニアックだと思うんですけど、それに対してユウちゃんの歌とポップなメロディが乗って、詞もわかりやすくなって。その混ざりぐらいがすごく良いので、これは推し曲としてみなさんに聴いてほしいと思ってます。
──これはなんで英語の歌詞なんですか?
ユウ : 英語の詞なんて書いたことないんですけど、挑戦したいなと思って直感で書きました。デモを聴いたときに、自分の中で、「こんな感じの世界観」っていう情景だけが浮かんでいて。それを再現して出来上がった感じです。このまま日本語で歌ったら世界観が拙すぎると思って(笑)。その拙い世界観をあえて英語で歌うのが逆にパンクでカッコイイ気がしたんです。
──じつは“パンク”というのが、4人をつないでいるキーワード?
ユウ : はい、それは感じますね。

──“I'm Here”って、最後にパンクスみたいな男性が日本語で荒ぶってますよね。
田中 : よく聴いてるなあ(笑)。あれは僕です。言わされました。
ユウ : サビの歌詞が、〈I got it! I got it!〉っていう歌詞なので、それを日本語で田中さんがインスピレーションでやったらああなったんです。田中さんの声もほしかったんですよね(笑)。
──“OJO”と“OHO”はインストでバンド名義になっていますが、どうやって作ったんですか。
田中 : 歌ものの曲は基本的に僕とユウちゃんが書いた曲をJPと杏ちゃんに弾いてもらったんですけど、この2人はクリエティヴな才能もすばらしい人たちなので、ふたりが自由にやったものに対して僕が後から音を加えるみたいな、逆の作り方もほしいと思ったんです。それでユウちゃんを加えて3人で好きにセッションしてもらったものがこの2曲のベースになってるんですよ。そこに僕の音を加えて、さらに杏ちゃんがいろいろ作り込んで出来上がった曲です。
林田 : 弦を同時に2人で弾いているとグチャっとしちゃうから、なかなかむずかしいんですけど、「あとは一志さんおもしろくしてください」っていう感じでとりあえずやってみたんですよ。そこに杏ちゃんも音を加えてくれて、結果的におもしろいものになったと思います。
須原 : あんまりコンセプトを決めずに、とりあえず音を出して録ってみようっていうスタートだったんです。もともと、間にインストを入れたいというのは、田中さんとユウさんが言ってくれていて。
ユウ : とにかくみんなと即興で作ったものを入れたいというのがありました。
──2曲のタイトルの意味するところとは?
ユウ : 「左右対称」です(笑)。顔みたいになってるんですよ。
須原 : 見た目と形から入るっていう。
林田 : マジで意味はないもんね、これ(笑)。
「普通の人でした」って言われるのが一番悲しい(笑)

──GO!GO!7188を聴いていた須原さんから見て、今回のユウさんが書く世界観にどんなことを感じましたか。
須原 : はじめて聴いたときに思ったより、もっとヘンだなって思いました(笑)。
ユウ : 思ってたよりもヘン(笑)。
須原 : 昔は、ストレートでガーッと来る感じだったんですけど、いまは歌い方とかすごく細かいというか。たぶん無意識に小さいところでいろんなニュアンスをつけるということもしてるんですよね。今回一緒にレコーディングをして「ああ、こういうのがユウさんの歌いまわしを作っているんだな」って、私も勉強になったんです。自分の感覚の中で、ユウさんのニュアンスが前とぜんぜん違います。いまの方がもっと複雑でもうちょっとヘンですね。

──ユウさんも、このバンドをやったことで発見したことなどがありましたか。
ユウ : 自分の世界観は変わらないんですけど、自分は結構長い間活動していて、経験も積んでだいぶ変化もしてるけど、変わらない部分も根底にあって。こうやって新しく一緒にやってくれた人たちが、結果的に「ユウさんはヘン」っていう感想を言ってくれるのはうれしいなって。なんか、「普通の人でした」って言われるのが一番悲しい(笑)。
一同 : ははははは(笑)。
ユウ : ずっとやってきた結果、私はいま「ヘン」っていうところに納まってるのは光栄だと思います。
──田中さんからすると、ご自分のまわりのミュージシャンをつないでバンドとして作品を作り上げるのって、感慨深いものがあるのではないでしょうか。
田中 : 本当、その通りです。自分の音楽歴は長いんですけど、わりと裏方というか、そのアーティストさんに合わせたアレンジとか、他のプロデューサーの方向性の中でのお仕事というのもたくさんあったんです。そういうときは根本的には自分の音楽ではないから、やりたいことをやり切れていたわけではなかったんですよね。いまになって、本当にやりたいことは多少なりともやれるようになって、いざやろうと思ったときに、やりたいことを理解してくれるメンバーを集めてバンドを作るなんてことは、年齢的にも普通はありえないと思うんです。だけど、いろんなつながりの中で、こんなに歳も違うのに、僕がやりたいと思ってることを一緒にやってくれる相手が見つかって、しかもそれをそのままじゃなくて、思いっきり膨らませてくれるメンバーが集まったということ自体が、ものすごく幸せだなと思ってます。すばらしいメンバーですよね。
編集 : 鈴木雄希
『I'm Here』のご購入はこちらから
YAYYAY以外の活動もチェック!
PROFILE
YAYYAY (ヤイヤイ)

ユウ、須原杏、林田順平、Shizuka Kanataによる奇才ポップ集団。
メンバーは唯一無二の魅力を放つ歌・ギター=ユウ(チリヌルヲワカ、ex.GO!GO!7188)、超絶スキルかつ美エモなバイオリン=須原杏(ASA-CHANG&巡礼、Gen Peridots Quartet、TRIOLA)、クラブ系サブベース的グルーブのチェロ=林田順平(Gen Peridots Quartet,ヘクとパスカル)、変態的ハイセンスな音を生み出す最狂サウンドメイカー・キーボード・ミックス=Shizuka Kanata (sleepy.abなどのプロデューサー)それぞれの分野で活躍する4人が惹かれ合い結成。
弦楽・エレクトリック・パンク・歌謡曲・レトロ…… など、さまざまな要素が入り混じり、キッチュでエキセントリック、摩訶不思議な世界観と思わせながら、エッジ―なバックトラックと流麗なストリングスが織りなすポップワールドをご堪能あれ!
■chameleon label 公式HP
http://www.chameleon-label.com/
■チリヌルヲワカ(ユウ) 公式ツイッター
https://twitter.com/wowaka_official
■須原杏 公式ツイッター
https://twitter.com/apriponz
■林田順平 公式ツイッター
https://twitter.com/jp_hayashida
■Shizuka Kanata 公式ツイッター
https://twitter.com/kztanaka