いまArtTheaterGuildに訪れている変化とは──自らのオリジナリティに向き合う新作『NO MARBLE』リリース
2012年に結成、都内を中心に活動をするオルタナ・ギター・ロック・バンド、ArtTheaterGuildが、前作に続きthe pillows(以下、ピロウズ)の山中さわおをプロデュースに迎えて2ndミニ・アルバム『NO MARBLE』をリリース。彼らが敬愛している山中にプロデュースされ、リリースした前作『HAUGA』のリリースから約1年。この期間に彼らは自らのオリジナリティの壁に直面したという。“ArtTheaterGuildが鳴らす音楽”に向き合った新作『NO MARBLE』について訊いたインタヴューをどうぞ。
山中さわお(the pillows)プロデュース第2弾の新作
INTERVIEW : ArtTheaterGuild
ArtTheaterGuildが2ndミニ・アルバム『NO MARBLE』をリリースした。
2018年に初の全国流通盤となる1stミニ・アルバム『HAUGA』で注目を集めたバンドがさらなるブラッシュアップを重ねて完成させた新作には、リード曲の“鉄紺と黄緑”をはじめ、〈伝えてみたい I want feel me!!〉と力強く歌う“Marbles”など、全6曲を収録。その楽曲からはどこか殻を破ろうとしている、新しい自分になろうとしているような主人公の姿が浮かび上がってもくる。前作に引き続き、プロデュースはメンバーの敬愛するピロウズの山中さわおが手がけた。
前作のインタヴューを行なった際はピロウズへの憧れを全面に出していた彼らだったが、あれから1年が経ち、今現在はまた新たな感情が芽生えてきているのだという。果たして、ArtTheaterGuildに訪れている変化とは? バンドの近況を伺いつつ、メンバー全員に話を聞いた。
インタヴュー&文 : 田山雄士
「どう見られたいのか」を考える時間がかなり多くなった
──前回のインタヴューから約1年ぶりなので、まずはバンドの近況などから聞かせてもらってもいいですか?
伊藤のぞみ(Vo&Gt) : 大きく変わったのは、サポート・ベースのハミーくん(ヒロ・ハミルトン / 東京パピーズ、からくりごっこ)が今回の『NO MARBLE』から制作にも携わってくれてることですね。
木村祐介(Gt&Cho) : 前作『HAUGA』をリリースしたとき、すでにライヴでは弾いてもらってましたけど、レコーディングにも参加してもらうようになって。
伊藤 : アレンジを組み立てるところからね。僕がどんなことをやりたいのかも汲み取ってくれるし、前作以降いい流れでここまで来てるんじゃないかなと思います。
──木村さんも東京パピーズのサポート・ギター(https://tokyopuppies.jimdo.com/priofile)をされてますよね。
木村 : そうですね。ArtTheaterGuild以外でのハミーの仕事ぶりも見てるんですけど、なんでもできるタイプというか。ロックンロールも得意だし、僕らの楽曲であるような動き回る感じのベースラインもパッて作れるんです。
伊藤 : 仕事できる感じだよね。優秀なベーシスト!
浅井萌(Dr) : 私はスタジオでみんなと合わせてみて「ちょっと違うな」ってところは修正しつつ、最初のフィーリングを土台にしながら作っていくんですけど、以前よりもやりやすくなった気がしますね。
伊藤 : 浅井さんは感覚が違うんですよ。頭を使って考えすぎるんじゃなくて身体が先に動くタイプなので、迷いがない(笑)。僕のわがままで「こうしてほしい」ってところは直してもらうんですけどね。祐介はアイデアを出すのももちろん早くて、そこからさらにいいものを考えようとしてくれるかな。
木村 : そうだね。
伊藤 : 僕が何をしたいかをいちばん考えてくれてると思うんで、出てくるフレーズだったりに愛情は感じますね。
──ライヴに関してはどうですか?
伊藤 : 僕らのことを観に来てくれるお客さん、知ってくれてる人が増えたので、ライヴをはじめ、「どう見られたいのか」を考える時間がかなり多くなりましたね。やっぱり、理想とするかっこいい自分でありたいじゃないですか。「こんな曲を作って、こんなふうに演奏したい」っていうのをまだ恥ずかしがってる部分があるから、自分自身で「良くないな」と感じるものをもっと綿密に考えて、排除すべきところは排除して、出していきたい部分を出すのを心がけるようになりました。
木村 : 対バンの仕方も変わってきましたね。『HAUGA』を出す前とかはブッキングのライヴが多くて、ぜんぜん興味のないバンドとやることもあったんですけど、この1年はいっしょに音楽シーンを盛り上げていきたいと思えるような、僕らが好きなバンドと共演できてます。自分の出番も楽しみだし、対バン相手のステージも観たい。そういうイベントができてるのがうれしいんです。
浅井 : 自分たちで企画をやれるのは楽しいですよね。緊張で押し潰されそうなときもありますけど……(笑)。
伊藤 : 僕はあまり緊張しなくなったかもしれないです。「やるしかねえだろ!」みたいな気持ちなので、いまは。浅井さんはまだしてるの?
浅井 : ずーっとしてますよ!
木村 : あはは(笑)。浅井さんがすごく緊張してるから、俺らがしないのかもしれないよ?
浅井 : みんなの緊張を全部吸収しちゃってる!?
伊藤 : それはたしかにあるかもね(笑)。
「ピロウズといっしょではないよ」
──新作の『NO MARBLE』では、「どんなバンドでありたいのか」という部分が少なからず表現できてるんじゃないかなと思いました。
伊藤 : ありがとうございます! そうだとうれしいですね。楽曲の精度は前作と比べたら上がってると思いますし。「MARBLE」は「混ざりあう」という意味で、それにNOを付けて「混ざらない」という意味を持たせてみました。
──ジャケットのアートワークは「混ざらない」というイメージを反映したものですか?
伊藤 : そうですね。裏ジャケを見てもらうとわかりやすいんですけど、これはボルボックスっていう微生物なんですね。「混ざらない」で調べてた中、「意志がない生き物っぽいものってなんだろう?」というアイデアが浮かんで。ボルボックスって一定の規則性を持って細胞(緑色のつぶつぶ)を形成してて、この細胞は遺伝子的に重なることがないらしくて、そういうのがいいなと思ったんです。
──「混ざらない」の部分について、もう少し詳しく聴かせてください。
伊藤 : 「ピロウズといっしょではないよ」みたいな意味をそこに込めてるんです。「誰もが違う生き物」みたいな。最初の段階ではひらがな表記にしようとしてて、それもピロウズっぽくないタイトルにしたかったからなんですけど、僕が付ける曲タイトルはパッと見じゃ意味のわからないものが多いので、その感性が出てるほうがいいかなって。
──いろいろ意味を聞くと、のぞみさんらしいネーミングですね。
伊藤 : ことわざか何かの一節で、“NO MARBLE”の前後に文章が付くと「タマなし野郎」って意味になるらしいです。「なよっちい男」みたいな。それもいいなって思いました。自分に向けた皮肉っぽくて。
──ハッパをかけてる感じというか。「ピロウズとは違うんだよ」というのは、僕も今作を通して伝わってほしい部分ですね。ヴォーカルにしても歌詞にしても、タイトルの付け方ひとつ取っても、ArtTheaterGuildらしさは聴けば聴くほどわかると思うので。
伊藤 : ありがたいです。もちろん、ピロウズのことはめちゃくちゃ尊敬してますし、いまも変わらず大好きなんですけど、やっぱり気になってきたんですよ。
──そう言われることが。
伊藤 : はい。祐介も似たような感じのスタートなんですけど、もともと「ピロウズになりたい!」くらいの気持ちでこのバンドははじまってるんです。『HAUGA』をリリースしたときも、なんだかんだでまだ「ピロウズに近づけたらいいな」って考えがありました。でも、それだけだと間違ってるんじゃないかなと思ってきたんですよね。続けていく上では。
木村 : かっこいい曲を作ろうとすると自然と滲み出ちゃうものはありますけど、『NO MARBLE』ではピロウズとはまた違う雰囲気が強くなったと思います。僕のギターで言うと、もっとリズムの取り方で広がりを出したくなってきたというか。いままでは左手の音階のことばかりが頭にあったんですが、右手のリズムと合わせてアレンジしていく意識に変わってきてるんですよ。
浅井 : ドラムは曲ごとにどういう音色だったら映えるかを考えて、スネアを変えてみたりしましたね。ただまあ、私はあまり前に出すぎず、曲のよさを立てられればいいのかなって。
伊藤 : そもそも個性的だからね、浅井さんのドラムって。スネアの拍が一瞬スッて裏に行くようなアレンジとか、あまり他の人がやらない魅力がある。派手なフレーズを作って楽曲を映えさせたり、小節の後ろでスネアをひたすら叩いてたりするドラマーが多い中、そうじゃない隠し味を入れるのが上手なんですよ。聴いてて無意識に伝わるみたいな違和感が出せるのは、祐介も得意で。
──そういうのは間違いなくバンドのオリジナリティのひとつですよね。
伊藤 : いい意味でちょっと気持ち悪い、「あれっ!?」って瞬間があって。それは音楽に詳しくない人でもわかると思います。「なんかヘンなんだよな」「でも、クセになるなあ」みたいな。
木村 : 俺らは尖り方の方向性がヘンなんだよ(笑)。
伊藤 : けど、それをちゃんと曲にいい形で出せるのは才能だと思うよ。尖ってても「は!?」「大したことねえな」ってやつはいますからね。
浅井 : ふふふ(笑)。
俺らの良さを引き出してくれる職人技だね
──1曲目の“Marbles”を再生した瞬間に思ったんですけど、音もすごく良くなりましたよね?
伊藤 : あっ、それが伝わったのはうれしいです。今回変わったのは、主にギターとヴォーカルの録りとマスタリングかな。前作は祐介の家で録ったギターをある程度きれいな音にしてもらってからミックスしてたので、音像が若干くぐもってましたよね。
木村 : “Stamen”はちゃんとしたスタジオで録ったけど、他の曲は2万円くらいのインターフェースを繋いで録って、それを加工してもらったからね。元のギターのデータがぜんぜん良くないのを、なんとか世に出せる形に整えていただいて。だから、ギターに関しては音の立体感や弦の分離感をもうちょっとこうしたいなっていう部分があったんです。今回はそこがクリアーになって、いい音でレコーディングできたのがよかったよね。
伊藤 : うん。ヴォーカルをまず全曲シングルで録れたのもよかったですね。前作はダブリングに逃げすぎてしまって、「逃げなきゃよかったな」っていう後悔が自分の中で実はあって。今回は要所でダブリングやコーラスを入れるやり方にして、歌詞もめちゃくちゃ聴きやすくなったと思います。さわおさんもプロデューサーとして、僕らの楽曲を良くしようといろいろ考えてくれて。
──たとえば、どんな部分ですか?
伊藤 : “Birthday”のバックでふわっと鳴ってる鍵盤の音とか、“zoo”の最後の〈Please looking〉のところで下がるコーラスとか、僕たちが思いつかない凝ったものを提示してくれて、いい隠し味になってます。
木村 : “zoo”のあのコーラスって、ピロウズっぽいというよりはArtTheaterGuildっぽい感じがするんだよね。
伊藤 : たしかにそうかも! 俺らの良さを引き出してくれる職人技だね。
──“Birthday”の間奏でシャカシャカ鳴ってるタンバリンも独特ですね。
浅井 : あれはタンバリンとハイハットのオープンを別録りで重ねてるんですよ。ギターソロを盛り上げる感じで入れたんですけど、うるさくなかったですか……?
伊藤 : いや、おもしろい仕上がりになったと思うよ。
浅井 : ドラマーのboboさんがいつもハイハットの上にタンバリンを付けてるんですよ。それに憧れて、どこかで絶対にタンバリンを使いたいと思ってて(笑)。
伊藤 : 浅井さんがドラムにタンバリン付けたら、めちゃくちゃかわいらしくなるよ。
木村 : あははは(笑)。あと、ソロの裏にギュオンギュオン鳴ってるギターが入ってるんですけど、あれはさわおさんが弾いてくれました。
浅井 : “Peg-Leg Pistol”では、スネアをタオルでミュートして叩いてて、ドラムはだいぶ短い感じの音になってますね。
伊藤 : そうだね。祐介と僕が弾いてるギター・アレンジは間抜けな感じのかっこよさがあったりして、おもしろいバランスだと思います。
──ギターのアレンジで全体的に何か意識したことと言うと?
木村 : パワー・ポップにしやすい曲が多い中、そっちに行かないように意識してアレンジをしましたね。周りのバンドマンの間でもウィーザーは共通のキーワードにあるものの、ArtTheaterGuildはウィーザーよりもレディオヘッドのほうが似合うバンドな気がしてて。ちょうどこのミニ・アルバムを作ってるときに、レディオヘッドを引っぱり出してきてひさしぶりに聴いてたので、参考にしたところもありますね。特に“Marbles”なんかはパワー・ポップに行きやすい曲なんですけど、Aメロでは敢えてアルペジオでチョーキングを入れたりして、明るくて不気味な感じにしました。
ピロウズになりたかったけど、いまはそうじゃない
──“Marbles”の〈混ざらないから濁らない 触れないから砕けない〉とかはArtTheaterGuildというバンドのあり方、孤高の佇まいが伝わってくる感じがしました。
伊藤 : でも、あらためて歌詞を見返すと「俺、本当にこんなこと思ってる?」みたいな部分もあったりするんですよ。「曲を作ってる中で辻褄を合わせちゃったかな」とか、「意図してピロウズっぽい歌詞にしちゃったかもな」とか、“Marbles”を作ったときは僕の気持ちがいろいろ錯綜してて……。さっきの話にまた戻るんですけど、「あれっ!? 俺このままピロウズっぽいことしてて大丈夫か?」と自分の心境の変化が訪れたのが“Marbles”でしたね。
──そうだったんですね。“Marbles”では、気にかかってたその部分を解消できたんですか?
伊藤 : いや、敢えてそのままにしました。逆に、戒めとしてちゃんと残しておこうかなって。僕の中で葛藤があっただけで、サウンド自体は文句ないし、いい曲だと思いますから。
木村 : うん。のぞみの中でいろいろ思うところがあったってことなんだろうね。
伊藤 : そうそう。「この気持ちでやってたら、なりたい自分になれない」と思ったんだよね。
──のぞみさんの心境の変化、その過程が匂い立つミニ・アルバムでもありますよね。
伊藤 : そうですね。“Marbles”がアルバムで最後から2番目にできた曲で、自分の中の気持ちと向き合って考え抜いた末、ラストにできたのが“鉄紺と黄緑”なんです。
──聴いてても、より大切な想いを込めた曲なのかなと感じました。
伊藤 : はい。メロディはあって歌詞がない状態のまま、一度放っておいたりもした曲で。
浅井 : 途切れ途切れ作ってた感じですよね。
木村 : この曲はアレンジが完成するのに時間をかけたね、本当に。
伊藤 : もともとあったメロディに「ピロウズになりたかったけど、いまはそうじゃない」という気分がマッチするんじゃないかと思って、歌詞も長い時間をかけて書きました。はじめはラスサビ前くらいの〈無くしたくない 今日こそ〉で曲が終わってたのを、もう少し延ばしたんですよ。祐介は「スッて終わったほうがいいんじゃない?」って提案してくれてて、いったん納得しかけたんだけど、「それだと言いたいことが足りないから、やっぱり延ばしたい」って話して、Aメロの部分をひっくり返したような歌詞を付け加えたり。最後の歌詞〈言葉にはしないよ〉も、出てくるまで数ヵ月悩みましたね。
木村 : スッて終わらせようとしたのは、最初は単純にAメロに戻るアレンジだったからだよね。それじゃおもしろくないなと思って。
伊藤 : あー、そうだったね。コードで言うと、この曲はFからはじまってA#に行く2コードでの進行なんですよ。で、シンプルに戻ろうとすると、爽やかでかわいらしい印象になっちゃうなと。長いこと考えて、最後はAを挟んで、A#からFに行く逆の展開にしたんです。そうするだけですごくシリアスになるのに気づいて、練り直した上でいまの形になりました。
──苦労して完成した大作なんですね。
伊藤 : それだけにすごく気に入ってますね。“鉄紺と黄緑”を作ったときの自分の心境は、僕がこれからバンドを続けていく上でいちばん大切なものになりそうです。「自分は誰なんだ?」みたいなことと向き合えた曲なので。
──なるほど。
伊藤 : 振り返ってみれば、僕は曲を作るときもライヴをするときも自分の後ろにさわおさんがいるような感覚があったんですよ。「自分だったらどうするか」と同じくらいの比重で、「山中さわおならどうするだろう」みたいな気持ちが強かった。でも、さわおさんって結局そういう真似事をしてこなかった人じゃないですか。自分らしさをずっと曲げずにやってきたから、30周年で横浜アリーナのステージに立てたんだと思うんです。
──そうですね。
伊藤 : 「だからこそ、僕はピロウズが好きなんだな」ということにあらためて気付いたんですよね。“鉄紺と黄緑”にはそんな想いも込められたと思います。さわおさんにお借りしてるオレンジのサイクロンに芥子の花のステッカーが貼ってあるんですけど、あの花びらの色を「鉄紺」、茎の部分を「黄緑」と表現してて。「芥子の花」だと直接的すぎるので、「あなたと私」みたいなイメージでタイトルは付けました。曲を聴く上で重要なのは「伊藤のぞみが何を考えて作ったか」じゃなくて、「あなたがこの歌詞を見て何を思ったか」「自分の過去と見比べてみて、この言葉をどう感じるか」ですから。
「結局、僕の中に自分らしさがあるのかもな」って
──いろいろ踏まえて聴くと、“鉄紺と黄緑”はなおさら味わい深い曲ですね。
伊藤 : あと、実はもともと“Birthday”をリード曲にしようとしてたんです。“鉄紺と黄緑”は大切な楽曲としてアルバムに入ってればいいかなっていう考え方で。でも、レコーディングをしてるときにさわおさんが「えっ!? なんでこれがリードじゃないの?」みたいに言ってくれたんですよね。何かのインタヴューで「自分たちらしい曲をMVにしたほうがいい」って話されてたのを読んだことがあったから、僕は最初“Birthday”を選んでたんですけど、「いや、名曲があるならそれをいちばんに聴かせるべきだよ」って。
木村 : そういえば、浅井さんは早い段階から「鉄紺」のことが好きって言ってなかったっけ?
浅井 : うん。“Birthday”がリード曲になりそうだったときも「あっ、「鉄紺」じゃないんだ……」って内心思ったりしてた(笑)。だから、さわおさんが「「鉄紺」をMVにしなよ」って言ってくれたときは「行け行け!」って。
木村 : 「さわおさん、もっと言え! もっと言え!」って?
伊藤 : あはははは(笑)。
浅井 : そうそう。歌詞もすごく好きだし、後半にかけて盛り上がっていく曲の展開も気に入ってますね。
──“鉄紺と黄緑”は本当に名曲だと思いますね。のぞみさんの声の良さがローからハイまで、冷たいところから熱いところまで伝わってくるし、ヴォーカルにしてもギターのアルペジオにしても、独自の哀愁が沁み出してる感じがあって。
木村 : イントロの部分はアコギを含め、ギターを3〜4本重ねてますね。ハミーのベースもいい感じだし、時間かかったけど、最初のイメージとはぜんぜん違う楽曲が出来上がってよかったです。
──ところで、さわおさんと作業してるときに、のぞみさんの葛藤をぶっちゃけて話したりはしたんですか?
伊藤 : いや、言ってないですね。ただ、ぜんぜん関係ない場面の休憩中とかに、今後の曲作りについて少しだけ話す時間があったんですよ。そのときに「ピロウズになりたいわけじゃない」なんてまったく伝えてないのに、さわおさんが「のぞみくんは自分の手癖やこれまでやってきたことに頼りすぎだから、このままだとたぶんいつか限界が来るよ」みたいなアドバイスをしてくれたんです。「なんでもいいから、自分が好きと感じたものをいろいろ試したほうがいい。新しい扉を開いたほうがいい」「正直、のぞみくんが何をしてもキミらしくなるから、それを信じてやればいいよ」って言ってくれて。「この何気ない会話で泣いたらマズい!」と思ってなんとか耐えたんですけど、自分が悩んでたこととガッチリ当てはまってて驚きましたね。
──リード曲の話もそうですけど、本当に見透かされてるような。
伊藤 : さわおさんはそんなに深い意味で言ったんじゃないとしても、僕はけっこう救われちゃいましたね。楽曲をリリースするまでの不安みたいなものがグッと消えた感じがしました。「結局、僕の中に自分らしさがあるのかもな」って。作ってるときの気持ちに波はあったけど、聴いてくれる人たちに渡せる楽曲はちゃんとArtTheaterGuildらしいものになったんだといまは思います。
──前作以上にいい作品になりましたね。
伊藤 : 「こういうアルバムにしよう」みたいなコンセプトがなくても、このメンバーでアレンジしていくと自分が想像してない曲になったりするんですよね。“zoo”は祐介と浅井さんに出会うずっと前、バンドをはじめて最初に作った曲なんですけど、すごくブラッシュアップしてもらえて、めっちゃ新鮮に聴けたり。僕1人じゃこんな感じにはできないので。
木村 : 今回の制作を通して、またバンドが成長できたんじゃないかなって。もちろん、『NO MARBLE』は自信作です!
浅井 : 考えすぎずに自然体でやれば、自分たちらしさはもっと出せるのかなとも思いますね。
──いまのメンバーになって4年くらいですか。
伊藤 : ですね。余談ですけど、祐介とはじめて会ったのが4年前の10月17日なんですよ。ピロウズの横浜アリーナ(バンド結成30周年を記念したライヴ)と同じ日で、『HAUGA』をリリースしたのもたまたま同じ日だったっていう。今年の夏になんとなく昔のやり取りを見返してたら気付いて。すごい偶然で驚きました(笑)。
編集 : 鈴木雄希
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LIVE SCHEDULE
『NO MARBLE』発売記念 ミニ・ライヴ&サイン会
2019年11月23日(土)@代官山蔦屋書店
※予約者優先入場
君と私と音楽と 〜never forget〜
2019年12月10日(火)@下北沢CLUB Que
出演 : ArtTheaterGuild / シュリスペイロフ / ザ・ジラフス(O.A)
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
『NO MARBLE』発売記念 ミニ・ライヴ&サイン会
2019年12月14日(土)@タワーレコード町田店
※入場、観覧フリー
【詳しいライヴ情報はこちら】
http://arttheaterguild.jp/schedule/
PROFILE
ArtTheaterGuild
伊藤のぞみ(Vo / G)木村祐介(G / Cho)浅井萌(Dr)からなる都内を中心に活動をするオルタナ・ギター・ロック・バンド。
2012年、伊藤のぞみと伊藤の地元の友人を中心に栃木にて結成。
2016年に1st EP『4AM MELLOW DIVERS』をthe pillows山中さわお氏が再リミックスしザ ワザワと『4AM MELLOW DIVERS=新装版=』が完成。
翌年の2nd EP『Farafra』の完成とともに念願だったthe pillowsライヴのオープニング・アクトを完遂!!
2018年10月にthe pillows山中さわお氏のプロデュースの1stミニ・アルバム『HAUGA』(ホウガ)を初の全国流通盤としてリリース!
2019年11月20日、the pillows山中さわお氏プロデュース第2弾の2ndミニ・アルバム『NO MARBLE』発売!!
ゆるくまったり力強く、今日もふんばるぜアートシアターギルド!
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