PawPaw(ぽーぽー)の音楽に初めて出会ったのはいつかと聞かれると、実はあまりよく覚えていない。たぶんTwitter経由でデモ音源のフリー・ダウンロードを見つけたり、動画を見たりしたのが最初だけれど、それがはっきりいつのことなのかはわからない。なんだかいつの間にか日常のBGMとして聴くようになっていた感覚がある。

デビュー・ミニ・アルバム『いつかの夢』を聴いてもらえればわかるが、この3人組が奏でる音楽はちょっと不思議だ。ポスト・ロックともフォーク・トロニカとも歌ものとも言い難く、プログレっぽいアレンジもあれば、コーラスやクラップの雰囲気にはチェンバー・ポップ的味わいもある。打ち込みのエレクトロニカ・サウンドがありつつも、基本は生音にこだわっている。耳をすませば、ガット・ギターとドラムは意外に激しいリズムを刻んでいたりするけど、一方で歌とピアノは穏やかなムードを保っていたりする不思議。歌声も絶妙な透明感がある。

そんな只ならぬ可能性を秘めたPawPawの3人。今回が初めてのインタビューということで、これまでの経歴、メンバーの性格、新作についてなどなど、幅広く話を聞いてみた。

インタビュー & 文 : 田山雄士

モミの透き通った歌声と、楽曲の美しさが相まる名盤

PawPaw / いつかの夢

【Track List】
1. いつかの夢 / 2. くまのベアロ / 3. 黒い森 / 4. te to te / 5. 騎士の詩 / 6. わすれもの

ライヴではシーケンサー類を一切使わず、生のサウンドにこだわりを見せながらも、打ち込みのごとく緻密でアグレッシヴなドラミングと、絶妙なヴォイシングを聴かせるガット・ギターの絡みで、エレクトロニカ的なアプローチを見せる不思議なサウンド。2011年3月に開催されたモナレーベル・オーディションで審査員特別賞を受賞!


ただ誰かに聞いてもらいたかった(ノグチ)

——PawPawはずっと気になってて、ちょこちょこ試聴させてもらってました。今回のデビュー・ミニ・アルバムの『いつかの夢』がリリースされるきっかけは、2011年の3月4日に行なわれたmona recordsのレーベル・オーディションだったんですよね?

ノグチマサト(以下、ノグチ) : そうですね。最初の話だとグランプリを受賞した方だけがリリースできるということだったんです。僕らは結局グランプリにはなれなかったんですが、審査員特別賞をいただけました。でも、審査員特別賞ってもともとはないもので、その場で急遽そういう計らいをしてもらったっていう。
モミ : 審査員は3人くらいいらっしゃいましたね。演奏したあとに、それぞれの方にコメントをいただいたりして。

——そこで特別賞をもらえて、すぐにリリースという運びになったんですか?

ノグチ : いや、すぐに決まったわけじゃないですね。そのあとで僕たちのことを気に入ってくれたmonaの方のプッシュがあって、リリースが決まりました。

——オーディションのあと、7月に出たmonaのオムニバス『モナレコードのおいしいおんがく~午後のパレード』にも参加してますね。

ノグチ : その間に震災が起こってしまったから、もろもろどうなるのかっていう漠然とした不安があった中でのやり取りでしたね。デビュー作にも入ってる「黒い森」の別ヴァージョンで参加してます。

——震災前の段階で、ミニ・アルバムの6曲はある程度形になってたんですか?

アベトモヒロ(以下、アベ) : 黒い森」「くまのベアロ」「騎士の詩」の3曲だけありましたね。
ノグチ : デモ音源はけっこう前からオフィシャル・サイトでフリー・ダウンロードできるようにしてました。

——「黒い森」の話だと、宮内優里さんによるリミックスも実現しましたね。

アベ : はい、5月のことですね。
ノグチ : もともと僕が優里さんの音楽をすごく好きで、「もしよかったら聴いてみてください」っていう感じで去年にデモ音源をお渡ししてたんです。それでしばらく経った頃に突然「PawPawさんのリミックスしました! 」って連絡をくださって、うれしかったですね。結果としては、震災後の絶妙なタイミングでした。

——PawPawのこれまでの歩みはとても流れがいいですよね。オーディションで賞をもらって、優里さんのリミックスがあって、オムニバスに参加して、今デビュー盤をリリースっていうことだから。

ノグチ : 本当に慌ただしくて、僕の頭の中はなんとなく去年の12月くらいで停まってるんですよ。
アベ : バンドとしていろいろありましたね。レコーディングも同時進行だったし、ライヴもやってたし、あっという間に流れてきた感じです。

左からアベ、モミ、ノグチ

——モミさんは学校に行きながらですしね。

モミ : そうなんですよー。今年の4月からは1ヵ月が過ぎるのが早いですね。リリースもまだまだだと思ってたら、もう目の前だし。

——ちなみに、ミュージシャンとしての自覚はどのくらいありましたか? そもそもオーディションに出た理由は、全国流通の作品を世に出したいという強い気持ちがあったから?

ノグチ : オーディションに出たときにはそういった覚悟はなかったですね。僕が勝手に申し込んじゃったんですよ(笑)。Twitterで「期限がもうすぐです」みたいなのを見かけて、それもやっぱり「よかったら」って感じで何気なく送ってみただけだったんです。
モミ : まず最初は音源審査があって、そこから10組が選ばれたんだよね? そのあとに6組がライヴ形式のオーディションに進んだんです。

——音源審査って投票制のやつでしたっけ? Twitterで呼びかけてましたよね。

ノグチ : そうですそうです!
モミ : それが1年前くらいかな。

——結果的にはノグチさんの独断から事が進んでいったと。

ノグチ : そういうことになりますね。だから、プロのミュージシャンがどういうものかよくわからなかった。でも、曲を作るのはすごく好きで、いい曲ができてる気もしてました。めちゃくちゃ自信があったというわけでもないんですけど、ただ誰かに聴いてもらいたかったですね。
モミ : あまり表立って言えないだけで、なんとなくの自信はみんなあったよね(笑)。すごいことができてるのかもって。
アベ : 最近はライヴを観てくれた方の反応がわりとよくて、ノグチが今言ったことをだんだんと実現できてるんじゃないかな。

——今こういう状態になれてるのは、けっこういい感じだと思います。音源を出すことが決まってからは意識が変わってきてますか?

ノグチ : どうですか?
アベ : どうして急に振るの(笑)?
モミ : あはははは!
アベ : 周りの協力してくれる方々のおかげで、音源のほかにPVとかフライヤーとかも出来上がってきて、いろんなものが形になってくると、やっぱり実感は湧いてきますね。

——モミさんはどうですか?

モミ : 私は音楽だけにもっと集中するって決めたんです。今の世代では珍しいかと思うんですが、ありがたいことに親も賛成してくれて。「好きなことをやってほしい」って背中を押してくれました。やっぱり、いろんなタイミングがよかったんじゃないかな。バンドがいい状態になって、リリースが決まって、思わぬところで自信が生まれてきて。
ノグチ : うわっ、かっこいいこと言うなぁ(笑)。僕はどうだろう… 。結局はバランスが大事だと思ってるんですよね。音楽一本でガッツリやりすぎると自分は精神が崩壊しちゃいそうで。

——ノグチさんって、メンバーの中で1番繊細そうですもんね。

アベ : そう、かなり繊細だよねぇ。

——で、モミさんがたぶんまったく逆のタイプ。

モミ : ふふふふ。
アベ : そうだねぇ… 。そうだそうだ!

——アベさんが1番中立な気がします。

ノグチ : そうです、彼が真ん中の人。ま、今までのやり方が悪かったわけではないから、いかに高い意識でこれからの活動を続けていくかだと思います。

——そうですね。ライヴはたくさんやってほしいです。結成時の話もお聞きしたいんですけど、モミさんはオリジナル・メンバーじゃないんですよね?

モミ : はい。某SNSサイトでPawPawがメンバー募集をしてたのを見て、いきなり応募したんですよ(笑)。高校までの時期でピアノをやってたり吹奏楽部に在籍したりはしてたんですけど、バンドをやったことがなくて、大学でやりたいなと思ってました。そして、いざ大学に入ってみたら軽音サークルが1つもなくて… 。

——やりたかったのに?

モミ : そう! もう、どうしようって。私はピアノくらいしかできないから、キーボード募集のページに絞ってチェックしたんです。もう片っ端から載ってるバンドの曲を試聴したんですけど、全然ピンとくるのがなかった。でも、そんな中でPawPawだけがいいなって思えたんですよ。

——かっこイイ話ですね。

ノグチ : かっこいいですよねぇ。
アベ : それ、初めて聞いたよ(笑)。
モミ : バンドをやったことがなかったから、まさか入れてもらえるとは思わなかった(笑)。

——ダメもとで応募したみたいなことだったんですね。

ノグチ : 僕らの立場としては、バンドを続けたい気持ちがあってメンバーを募集してたのですが、バンドの経験がないことに対しては若干の不安は正直ありましたね。何回も「本当に大丈夫なの? 」っていう確認はして(笑)。でも、こうしてここまで来て、メインの立ち位置にいてくれてます。

——モミさんは今ヴォーカルを取ってますけど、当時は歌には自信がなかったんですか?

モミ : カラオケが好きなくらいで、バンドで歌う意識はまったくなかったですね。
ノグチ : 最初はコーラスとキーボード担当だったんですよ。

——声がなかなか独特ですよね。音大に行ってることも関係してると思うんですが、専攻は何ですか?

モミ : 音楽教育科というのを取ってて、いろいろ満遍なくやってます。ピアノや声楽、チェロを主に勉強してます。
ノグチ : チェロ弾けるんだよね~。バンドで使ってほしいなぁ。

——PawPawは歌とサウンドのバランスが面白いですよね。ベースレスで、歌ものでありつつ、演奏はアヴァンギャルドなところがあって。

ノグチ : 結果論なんですけどね。3人とも好きな音楽もバラバラですから。
モミ : バラバラだから成り立ってるのかもしれないね。

全ての曲で1つの話のように聞いてほしい(モミ)

——モミさんは椎名林檎さんやくるりが好きなんですよね。ノグチさんはフリー・フォークやチェンバー・ポップ、複雑なアレンジのものも好きな印象です。

ノグチ : そうですね。僕は比較的なんでも聴いてみる方だと思います。ToolやMars Voltaのような曲をバンドでやってたこともありますよ。
アベ : 僕はもともとインディ・パンクやメロコアが好きなんです。Hi-STANDARDとか、HUSKING BEEとか。
モミ : 私はとにかくバンドがやれればOKでした。バンドやって「いぇーい! 」みたいな(笑)。そしたら、こうなってました。

——「黒い森」なんかはわかりやすい例ですね。ノグチさんとアベさんがけっこうタイトなリズムで演奏してる一方で、モミさんの穏やかな歌があるのが不思議な感覚なんですよ。

ノグチ : あぁ、なるほど。僕、日本のインディ・シーンのエレクトロニカも好きで、ああいう音楽って作り込んだ音の世界観にふわっとしたヴォーカルが乗ってるじゃないですか。そのイメージで曲を作ってるのはありますね。で、そこに好みの違うアベのドラムやモミのヴォーカルが生で入ると、予測できない魅力がまた生まれるんだと思います。

——あまりないタイプのポップスだと感じます。しかし、忙しいのに加えてメンバー・チェンジまであったのに、よくバンドが止まらなかったですよね。

モミ : そうですねぇ。
ノグチ : すごく苦しかったですよ。でも、モミをフィーチャーした「黒い森」のデモを聴いてくれた人が、Twitterとかで「いい! 」って言ってるのを見てだいぶ救われましたね。「3人だけど、またライヴやってみるか」っていう気分になれました。

——モミさんが入ってからは、たぶんバンドがすごく変わったんじゃないかと思います。

アベ : うん、変わりましたね。
モミ : えぇ~!?
ノグチ : 本当にそうですね。僕とアベが仕込んだ音の中で、モミのキャラクターと声がぱあって広がって聴き手を掴んでくれればいいなって思います。

——ちなみに、『いつかの夢』というタイトルはモミさんが付けたんでしたっけ?

モミ : 最終的に私が出したタイトル案のこれになりました。最初は「好きに決めていいよ」って言われたんですけど、せっかくだからみんなが納得のいくものにしたいなって思って、各自3つずつ候補を挙げてもらったんですよ。それプラスでナガノチサトさんをはじめ、今回ジャケットやPVなどで協力していただいた方にも意見をもらって、このタイトルに決まりました。

——どんな意味合いがあるんですか?

モミ : 私たちの曲ってどれも空想的というか、現実味があるものではないじゃないですか。だから、アルバムを全部聴き終わったあとに「あ、こんな夢だったっけな」みたいな感覚が残る気がしたんです。もちろん「そう感じてもらえたらいいな」っていう思いも込めてます。すべての曲で1つの話のように聴いてほしいですね。
ノグチ : モミは歌詞を書いてないんですよ。今は基本的に僕が曲も歌詞も書いてますね。

——あ、そうだったんですね。でも、モミさんが書いたかのようにも聞こえて、いいハマリ具合だと思います。

ノグチ : モミがメインになってからは、彼女が歌うことを意識して作ってますしね。ただ、もともと歌詞を書くのは得意じゃなくて、恥ずかしかったりしますよ。むしろ、苦手意識の方が強いです。スッと書ける人間ではないので、今回はナガノさんの画を見て言葉を想像して、それをつなぎ合わせてみました。たとえば、「黒い森」はナガノさんが描いてくれたオオカミと森の画からインスピレーションをもらって、自由にストーリーを作ってみて。
アベ : 日常の中でフワっと生まれるんじゃなくて、「書くぞ! 」ってモードに入って歌詞は書いてるよね。

——アートワークも素敵ですし、PVもいいですよね。「わすれもの」のPVはどこか温かい気持ちになる映像でした。

ノグチ : 水色デザインさんのおかげです。もともとはインスタレーションとか空間デザインとかが専門の方なんですよ。以前、cokiyuさんとコラボされてて、僕が単純にファンだったんです(笑)。
モミ : PawPawはそういう音楽以外の要素も含めて面白いのかなって思います。メンバー募集のタイミングで初めて聴いたときから、バンドに対しての新鮮な気分はずっと続いてるんですよ。普段聴いたことのないジャンルのバンドに入れてよかったです。

——これからまだまだいろんなトライができそうですね。

ノグチ : ですね。来年はメロコアをやってるかもしれない(笑)。
アベ&モミ : それはないって!

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LIVE INFORMATION

PawPaw 1st Album『いつかの夢』Release Party
2011年12月3日(土)@下北沢mona-records
Live : cokiyu / 4 bonjour's parties / ナガノチサト / PawPaw
Open : 19:00 / START : 19:30
Entrance : 前売 : 2,500 / 当日 : 3,000(+1D)

PROFILE

PawPaw

モミ(Vo、Pf)
ノグチマサト(G)
アベトモヒロ(Dr)
モミ、ノグチマサト、アベトモヒロからなる3人編成のバンド。当初6名で構成していたがメンバー・チェンジを繰り返し2011年現在の構成となる。イラストレーターの「ナガノチサト」がアートワークを担当。少ない線で構成しながらも有機的な世界感がPawPawの音楽を押し広げる。ライヴではシーケンサー類を一切使わず、生のサウンドにこだわりを見せながらも打ち込みのごとく緻密でアグレッシヴなドラミングと絶妙なヴォイシングを聴かせるガットギターの絡みで、エレクトロニカ的なアプローチを見せる不思議なサウンド。宮内優里やcokiyuなど一線で活躍するアーティストからも注目を浴びる。2011年3月に開催されたモナレーベル・オーディションで審査員特別賞を受賞。今、話題沸騰中の宮内優里が定期的に配信している「ほんじつのおんがく」で楽曲が採用されたことでフォーク・トロニカのシーンを中心に人気が高まってきている3人組。

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インタヴュー

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