
ceroが奏でる現代のアブストラクト・ミュージック
cero / world record 01 : ワールドレコード / 02 : 21世紀の日照りの都に雨が降る / 03 : 入曽 / 04 : あののか
05 : outdoors / 06 : ターミナル / 07 : exotic penguin steps(intro)
08 : exotic penguin night / 09 : 大停電の夜に / 10 : マクベス
11 : (I foung it) Back Beard / 12 : 小旅行
はっぴいえんどやティンパンアレーのアイデアと、ヒップ・ホップやスフィアン・スティーヴンス等のフリー・フォークのエッセンスを飲み込んだ、現代のインディ・ポップをceroが奏でる! ロックと ヒップ・ホップが絶妙に絡み合い、現代の音楽をまた違った視点で刺激する、ストレンジ・バンドのアルバム『WORLD RECORD』。必聴!
聴いて歩けば、街の景色もきっと楽しくなる
手軽にモノが買えて、情報は簡単に引っぱり出せる。いろいろな物事が豊かになった21世紀。何の苦労もない世の中に聞こえるけど、現実は意外とそうでもない。むしろシビアなことが多いと思う。氾濫する情報には振り回される危険性も高いし、便利さの中で失われるありがたみもたくさんある。
現代に生きる若者の多くは、それぞれがおそらく笑えないほどの切実な問題と日々対峙している。だけど、どこかに活路を求めて生きていかなければならない。ceroのファースト・アルバム『WORLD RECORD』を聴いて、ふいにそんなことを思った。そこには今の若者のやるせなさを代弁したような音が詰まっていたからだ。そのサウンドはただ怒りをぶちまけるといった短絡的なものではなく、「こんな時代でも上を向いて歩こうよ」とでも言わんばかりの寛容さとやさしさに満ちていて、本秀康によるジャケットがそれを的確に表わしている。
ceroは2004年結成の4人組。これまでにムーン・ライダーズの鈴木慶一プロデュースによるデモCD、各種コンピレーション、10インチなどをリリースしており、耳の早いリスナーの間ではすでに話題沸騰中のバンドだ。満を持して放つ初のアルバム『WORLD RECORD』は、若さゆえの振り切れっぷりが心地よく、バラエティに富んだ楽曲が揃った。
ロック、ヒップ・ホップ、ファンク、ソウルなど音楽性は幅広く、歌ものからラップ、インストまで、一聴すればその貪欲さが伝わる。特筆すべきはさまざまなエッセンスを取り入れつつも、スッキリとポップに聴かせる彼らのセンス。飄々としていながらひねりの利いた演奏、飛び交うアイディアの奔放さは口口口やSAKEROCKあたりを連想させ、哀愁や叙情性はゆーきゃんやあらかじめ決められた恋人たちへが発するものに近い。
ceroのサウンド感覚は、ハード・ディスクに記憶したこの十数年の音楽を、ボタンひとつでシャッフルして聴けるという今のリスナーならではのものだろう。だから、はっぴいえんどをはじめとする1970年前後のニュー・ロックを感じさせる向きもあれば、2010年代におけるアメリカのフリー・フォーク的な解釈もある。
先に書いたとおり、ceroの奏でるアブストラクト・ミュージックから伝わるのは現代都市の若者像。人生の荒波を懸命にあがき、時に深みにハマることもあるけれど、それでも希望を見出し、また恋愛もする。自分しだいで平凡にも劇的にもなる、誰にでもある日常が思い浮かんでくるのだ。例えば、チェロの響きが重くのしかかる現実の厳しさを感じられたり、軽快なラップに宿る反骨精神が、くじけそうな中でのギリギリの闘争心を思わせたりする。祝祭感にあふれたスティール・パンは、予期せぬ楽しい出来事かもしれない。そんな妄想を誘いつつも、日常につながる正しきインディ・ポップ。聴いて歩けば、街の景色もきっと楽しくなる。
(text by 田山雄士)

LIVE INFORMATION
cero タワー・レコード新宿店ミニ・ライブ決定! イベント特典あり!!
■2月13日(日)16時スタート
タワー・レコード新宿店 7Fイベント・スペース
ミニ・ライブ 【イベント特典あり】
■2月15日(火)
「箱庭良法」
代官山 晴れたら空に豆まいて
[LIVE]シャムキャッツ / Chanson Sigeru / cero / 昆虫キッズ
[DJ]DJ王家の紋章
■2月19日(土)
これレコードプレゼンツ「魔界への誘い3」
長野 ネオン・ホール
[LIVE]cero / 箱入り気分 / トーチ / ミタメカマキリ / スラム / 洞 [DJ]牧野森(PLANETS / CRAZY RHYTHMS) / 清水隆史(ネオン・ホール)
PROFILE
cero
Contemporary Exotica Rock Orchestra 略してcero(セロ)。2004年に高城、荒内、柳で結成。2006年ごろからジオラマシーンとして活動する 橋本が加入。様々な感情、情景を広く「エキゾチカ」と捉え、ポップ・ミュージックへと昇華させる。 昨年11月にカクバリズムより10インチ・レコードを初回限定で発売し、3日で完売! 待望の1stフル・アルバム『WORLD RECORD』を2011年1月26日にリリースする。 ライブ・ハウス界隈〜喫茶店&カフェ界隈〜クラブ&飲み屋界隈でゆるりだが、 明らかな盛り上がりを見せ始めている4人組である。
カクバリズムな人達
キセル / 凪
キセルが踏み出した新しい1歩。僕らの未来に必ず必要な1枚。待った甲斐ありました!溢れ出すメロディの素晴らしさと、朧げな雰囲気の中にひそむ静かな意志のある歌詞。キセルにしか出せない浮遊感。ファンタジックでアメージングな世界だけど、地に足をつけて生きる人の歌であり、僕らの未来を明るく照らす作品。キセルの音楽はやっぱり凄い。キセルが新たに始まっている。この世界には音楽が溢れているけど、キセルの音楽はやはり特別だ。すごいアルバム、出来ました。
イルリメ / イルリメ・ア・ゴーゴー
イルリメの通算5枚目となるフルアルバム。数々のライブで練り上げられた、キラー・チューンがずらり並ぶ、パーティー・アルバム!参加ゲストもYOUR SONG IS GOOD、ECD、二階堂和美、AMIDA、MOTHとかなり豪華!
SAKEROCK / ホニャララ
お待たせしました。これが日本の新しい音楽。SAKEROCK2 年振りのフル・アルバム!8月にリリースされた先行シングル「会社員と今の私」はオリコン・チャートで25位に入る快挙を達成!インディーでインストでこんなことが起きるなんてすごい! 今作も快晴の空のように痛快で、熟成された古酒のように芳醇な最高のサウンドが詰まっております。