
Ringo Deathstarr / Colour Trip
21世紀ニューゲイズ界のデススターにしてノイズ・ポップの申し子・Ringo Deathstarrの、待望のデビュー・アルバムが到着! My Bloody Valentine、Jesus And Mary Chainチルドレンと呼び声高い、卓越した方法論によって生まれた圧倒的な音像、そして高揚と甘美が戯れるメロディ。日本盤ボーナス・トラック3曲収録!
4/27 Ringo Deathstarr JAPAN TOUR 2011@新代田FEVER
2月に発売されたファースト・フル・アルバム『Colour Trip』が好調なセールスを記録。屈託のない轟音を鳴らし、シューゲイザー・リバイバル勢では頭一つ抜け出した感のあるRingo Deathstarrが、東日本大震災の影響も何のそのといった気概で来日を果たしてくれた。そして、対バンのcruyff in the bedroomのオープニングでは、Ringo Deathstarrのエリオット・フレーザーをヴォーカルに、当初来日共演が予定されていたThe Primitivesの「Crash」をカヴァー! なんとも胸の熱くなるサプライズだ。
会場の新代田FEVERは超満員! 男性率の高さ(バンドの紅一点であるアレックス・ゲーリング前はすごいことに)にはやや苦笑もしたが、彼らの日本での熱狂ぶりを肌で感じられたことが何より嬉しかった。聞けば、翌日の大阪公演もソールド・アウトとのこと。物販も大盛況で、“シューゲイズモンスター”とプリントされたお手製のキュートなTシャツもCDもきれいに売り切れていた。
メンバーが登場すると、温かい拍手がステージを包んだ。オープニングの「Tambourine Girl」から気持ちよさそうにギターを掻き鳴らして歌うエリオット。メンバーが1人抜けて3ピースになったRingo Deathstarrだが、のっけから心配無用の逞しさがあった。そのまま「Imagine Hearts」へと雪崩れ込み、今度はアレックスが歌う。浮遊感たっぷりのサウンドの中で、黒アミのドレスを身に纏ったスレンダーな彼女がハンド・クラップする。この時点ですっかり夢見心地な気分。間髪入れずに、アレックスをフィーチャーした「Two Girls」へと続き、フロアはぐんぐんヒート・アップしていく。

男女ヴォーカルの甘い掛け合いと抜群にポップなメロディで駆け抜ける「So High」は俄然素晴らしく、この曲がバンドの新機軸であることがあらためて確認できた。さらに同曲で気付いたのがドラマーであるダニエルのパワフルかつ安定したプレイ。このバンドはどうしてもフロント2人に目が行きがちだが、ライヴを観て彼の存在感の大きさに唸らされた。
「肉ガヌイテアルノハドレデスカ? 」などと、時折愛らしいカタコトの日本語でシュールなMCを入れるエリオットは、ビールを飲みながら終始ゴキゲンな様子で演奏。エリオットのアグレッシヴなギター・プレイにアレックスも御満悦だ。震災後に熱い決意表明をしたFEVERで、はるばる来日したアーティストがこうしていつもどおりのライヴを行なえている。大盛況のフロアにいながら、そんなことにしみじみと感謝したりも。
攻撃的なノイズ・ギターから柔らかで丸みのある轟音まで、エリオットの変幻自在のエフェクト操作も好調。個人的には中盤の「Swirly」「Kaleidoscope」あたりがグっときた。エリオットの適度にくぐもった歌声に、耳当たりのいい轟音ギターが寄り添う瞬間はまさに恍惚ものだ。「Kaleidoscope」ではPV同様、アレックスもギターをプレイ。ツイン・ギターで紡がれる甘く切ないメロディに、気持ちよく身体を揺らされる。
ライヴで新鮮だったのはパフォーマンスが想像以上にパンキッシュなこと。My Bloody ValentineやJesus And Mary Chainが引き合いに出され、シューゲイザーが代名詞となっているRingo Deathstarrだが、演奏からはパンク、グランジ、ハードコアの影響も十分に伝わってきた。歌詞にRamonesが登場する「You Don't Listen」はもちろん、終盤にカラフルな照明の中で披露された疾走感あふれる「Starrsha」もよくよく聴けば、いい意味で泥臭さがある。シューゲイザーが主軸にありながら、ギター・ポップ、パンク、グランジなどもカラフルにまぶしたインディ・ロック。『Colour Trip』で見せたそんな持ち味を、彼らはライヴでも遺憾なく発揮していた。

本編ラストの「Every Time I Leave You」では、途中でNew Orderの「Temptation」を織り交ぜ、最後はギターをフロアに預けてダイヴするなど、エリオットのやんちゃなキャラクターは場内を大いに沸かせた。アンコールの「Weekend Dudes」は、まるでNirvanaのようなぶっちぎりのテンション。マイクをくわえて激しくシャウトするエリオット。そこにアレックスの凛としたコーラスが重なり、盛り上がりは最高潮に。間奏ではエリオットとダニエル・コーボーンがパート・チェンジ。エリオットは煽情的なドラム・プレイまで披露してのけた。
ヴォーカルが若干聞こえにくいことを含め、演奏には粗っぽさもあるけれど、そのぶん可能性が感じられるステージだった。彼らはまだまだこれから大きく成長すると思う。男女のツイン・ヴォーカル、サウンドのバリエーション、そして衝動的な感性が噛み合ったとき、Ringo Deathstarrはモンスター・バンドと言われる存在になるはずだ。(text by 田山雄士)
【SET LIST】
1. Tambourine Girl
2. Imagine Hearts
3. Two Girls
4. Down On You
5. So High
6. In Love
7. Swirly
8. Kaleidoscope
9. Summertime
10. You Don't Listen
11. Chloe
12. Sweet Girl
13. Starrsha
14. Your Town
15. Every Time I Leave You
(ENCORE)
16. Weekend Dudes
Ringo Deathstarr JAPAN TOUR 2011
開催日 : 2011年4月27日(水)
会場 : 新代田FEVER
LIVE : Ringo Deathstarr(from US) / cruyff in the bedroom
DJ : Robin(club AC30)