フロアを煌めかせるチル・ミュージック
初ライヴは2010年の1月。ほとんど無名だった京都発の6人組バンド、HOTEL MEXICOがインディ・リスナーの間でただならぬ盛り上がりを見せている。特に海外ウケのレベルが尋常ではない。FADERやDon't Die WonderingなどUS、UKのインディ・ブログで楽曲がポストされ、ついにはあのPitchforkでも紹介されるという痛快極まりない事態が起きているのだ。
そんな彼らが脚光を浴びる決定打となったのが、同年8月にリリースされたデビュー・アルバム『His Jewelled Letter Box』だ。発売当初は限定店舗での取り扱いだった本作が、異例の逆輸入フィーバーを受け、このたびデザインも新たに全国流通されることになった。リリース元は京都の気鋭レーベル、Second Royal Records。発売中のレーベル・コンピレーション『Second Royal Vol.6』にも彼らの新曲が収録されているので、合わせてチェックしてみてほしい。
HOTEL MEXICOのサウンドはきわめて洋楽的な響きがあり、チル・ウェイヴ、グローファイ、ビーチ・ポップといった文脈で語られることが多い。音を聴けばわかるが、実際に彼らはその周辺の音楽を好み、新たな音源を聴き漁ることに余念がない根っからのインディ・ロック好きなのだと思う。大きなムーヴメントがないわりにジャンルの細分化は進む現代の音楽シーンだが、自分たちの好みに合うものを柔軟に摂取し、サウンドに落とし込むセンスが並外れている彼らにとって、それはおそらく複雑でも窮屈でもない。メンバーのDJとしてのキャリアも活きているのだろう。シンプルで洗練されたグルーヴと豊かな抑揚を感じさせつつ、自然と踊れるアルバムに仕上がった。
「Its Twinkle」のトロピカルな桃源郷ループ、「Starling,Tiger,Fox」の甘美なヴォーカルと煌びやかなシンセ、「G.I.R.L」「2nd Floorのダンサブルでトリッキーなリズムなど、このアルバムでは彼らの才能の凄まじさが全編で伝わる。全曲がタイプの異なるものとなったのは、自分たちが楽しめる音を感覚的に鳴らした結果。とは言え、映画のワンシーンのような幻想的なジャケからもわかるとおり、好みや美意識ははっきりしているようだ。彼らのブログを覗くと、日本語に加えて英語でテキストが併記されており、海外進出にさらなる意欲があるのも窺える。いずれにしろ、驚異の躍進を続けるHOTEL MEXICOには今後も注目していきたい。(text by 田山雄士)
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PROFILE
石神/菊池/伊東/岩本/水島/小林による京都発6人組バンド。2010年1月DE DE MOUSEのフロント・アクトとして京都METROにて初ライブを敢行、2月にデビュー・シングル「3 SONGS E.P.」をカセット・リリースし即日完売。3月に京都GHOSTにて自主企画イベント「HOSTEL MEXICO」を開催、VHS+T-SHIRTSセットをリリース。また4月には雑誌SNOOZER付録CDに楽曲が収録、5月にはUK新人バンドThe xxの来日京都公演のフロント・アクトも務めるなど驚異の勢いで活動を展開中。