オーガスタからの新たな才能を見逃すな! ──抜群のグルーヴを持つDedachiKenta、鮮烈デビュー
山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博などを輩出したオフィスオーガスタ。その新レーベル〈newborder recordings〉第1弾アーティストとして驚異の新人、DedachiKentaが1stアルバム『Rocket Science』をリリース! YouTubeへのカヴァー動画投稿が世界各国で話題を集めていたDedachiKenta。その抜群のグルーヴと澄み切ったその歌声はどのように完成されたのか。彼のルーツを掘り下げながら、明らかにしていく。
衝撃のデビュー作を見逃すな!
INTERVIEW : DedachiKenta
DedachiKentaは日本人でありながら、抜群のグルーヴを持つ特異なヴォーカリストである。現在はLA在住で、18歳まで千葉にある教会で育った。もはや、これだけでどんな人なのか興味が湧いてくる。今回リリースした1stアルバム『Rocket Science』は、彼のルーツやこれからの行く末を表現した1枚である。幼少期の話、音楽をはじめた経緯、事務所に所属するまでの流れ、渡米をしてからのこと、第三者から見た彼はどんな人間なのか。そんな数あるトピックを回収しながら、DedachiKentaというアーティストに迫った。
インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 大橋祐希
世界中から反応をもらえた
──FM802で中島ヒロトさんがDJを務める『THE NAKAJIMA HIROTO SHOW 802 RADIO MASTERS』を聴きましたけど、受け答えがすごく上手だなと思って。
DedachiKenta(以下、Dedachi) : いや、え、そうですか(笑)。まだまだですよ。
──その堂々としている佇まいの理由は、小さい頃から歌をやっていたことも関係しているのかなって。いわゆる“人馴れ”をしている。
Dedachi : あ、そうですね。たしかに“人馴れ”はしていると思うんですよ。小さい頃から教会に行って、毎週日曜日は50人くらいを前にギターで賛美歌を弾いていたし。それをずっと続けているので、いま自分が人前で話したり歌ったり出来ていることに繋がっているのかなと思います。
──お父さんが牧師をされているんですよね。
Dedachi : そうなんです。
──8人兄弟ということですけど、皆さん同じように音楽をやっているんですか。
Dedachi : はい、皆教会に通って。姉も妹も弟も音楽が好きで、ギター、ベース、キーボードいろいろ弾いて歌ったりしていますね。
──幼少期はクリスチャンが集まるインターナショナル・スクールへ通って。
Dedachi : 小学校から高校まで12年間通いました。父の勤めている教会に海外から宣教師の方たちが来て、自分たちの子供を通わせる学校をつくろう、ということで教会の敷地内に建てた学校なんです。
──へぇ!
Dedachi : 僕が勉強していた教科書は宣教師の方たちが全部アメリカから買ってきた、Home study(自宅学習)用のテキストブックを使っていて。理科から数学から国語から全部そうやって学びましたね。
──ギターはいつから弾くようになったんですか。
Dedachi : 小学6年生のときです。僕の先輩がギターを弾いていて、それを見てカッコイイなと思いました。音楽はすごく好きだったし、歌いながら楽器が弾けたら素敵だなと思ってはじめましたね。
──ギターを弾けるようになったあと、演奏しながら歌う“ワーシップリーダー”を務めていたそうで。この“ワーシップリーダー”という言葉、Dedachiさんのインタヴューを読んではじめて知りました。
Dedachi : そんなに聞かないですよね。ワーシップリーダーというのは、みんなが歌うのをガイドする人のことです。簡単に言えば、みんなの前でギターを弾きながら歌って、みんながそれについてくる。自分を見てもらうわけじゃなくて「一緒に賛美しようよ」とみんなを導くような役割ですね。
──それを生徒がやってたんですね。
Dedachi : そうです。楽器をやれる人が少なかったから「ギター弾けるなら、今度みんなの前で弾いて」という感じで、父にどんどんプッシュされて(笑)。そういう機会があったからこそ、僕も「もっと演奏を上手くなりたいな」と思って練習するようになりました。
──最初はコピーからはじまると思うんですけど、何の曲を弾いてましたか。
Dedachi : 弾き語りみたいな感じで練習したのは、エド・シーランの曲でしたね。彼も弾き語りじゃないですか。だからすごくカッコイイなと思って。その一方で日曜日は教会で演奏していたから、賛美歌も常に練習してました。
──ちなみに通っていた学校に、部活ってありました?
Dedachi : 部活がなかったんですよ。その分、時間がたくさんあったおかげで、YouTube配信をやることにしたんです。
──なるほど。それが14歳の時?
Dedachi : そうですね。
──チャンネル登録者は事務所に所属する前から1万人以上いましたよね。
Dedachi : 英語のカヴァーがほとんどだったこともあり、世界中から反応をいただきました。ブラジルや韓国、インドからもあったかなぁ。本当に世界中からいろんな人がコメントをもらえたのが、うれしかったしおもしろかったですね。YouTubeによって「こんなに世界って広いんだ」と実感して、オーディエンスって教会だけじゃなくて、もっともっと広げることができるんだと思いましたね。
──その後17歳で曲をつくるようになって、その直後にオーガスタ(Dedachiの所属事務所)から声がかかるんですよね。
Dedachi : そうですね…… あれは17歳の──。
マネージャー(以下、Mgr) : 17歳の夏でしたね。彼のYouTubeを見て、気になったのでライヴを観に行ったんです。その時はオリジナルが1曲くらいで、カヴァーを中心に歌っていて、1曲目は「ひまわりの約束」でした。
Dedachi : アハハハ、そうです。いま思えば超恥ずかしい(笑)。
──なんで恥ずかしいんですか?
Dedachi : 秦基博さんのマネージャーさんの前で秦さんの曲を歌っていたというのは、なんというか……。
──声をかけられたときのことは覚えてますか。
Dedachi : まずビックリしましたね。洋楽ばかり聴いてきたので邦楽に疎くて。日本人のアーティストでちゃんと曲を知っているのは、秦さんくらいだったんですよ。唯一、知っているアーティストのマネージャーさんが来てるというのはすごい縁を感じました。
黒人の友達からは「チョコレート・ラーメン」って言われました
──オーガスタ(現所属事務所)に入ってデビューを果たす前、将来の夢はどんなことを考えてました?
Dedachi : 音楽が好きなので、もっと専門的に勉強したいと思っていました。あとYouTubeをやっていたのは、映像も好きだったからなんです。大学進学を考えるときに、シネマを取るか音楽を取るかでちょっと迷っていました。いま、僕が通っている学校はシネマも強いんですよ。アメリカだとTOP50に入るくらい力を入れているので、ダブル・メジャー・カリキュラム(専攻を2つ選ぶこと)をしようかなと思ったんですけど、さすがにハード過ぎるなって(笑)。
──2018年8月にLAへ単身渡米されましたけど、事務所から声がかかっている状況でよく決断しましたね。普通は、夢を追うか学業に打ち込むかの2択になるじゃないですか。
Dedachi : それこそ契約も決まりかけていたので、アメリカへ行って本当に良いのかギリギリまで悩んでいたんです。だけどオーガスタも「応援するから向こうで勉強してきて大丈夫だよ」と言ってくれたので行くことにしました。
──いざアメリカに足を踏み入れて、どんなことを感じましたか。
Dedachi : 日本は先輩・後輩という上下関係がハッキリしてるじゃないですか。だけど僕はインターナショナル・スクールで育ったので、そういうのには馴染めない感じが昔からあって。だから日本に住んでいたときも、ほとんどが外国人の友達だったんです。それもあり、アメリカへ行って「自分のいるべき場所に来た」という感覚がありました。すごくIndependent(自主的)な国だから自分を一番Express(表現)できる場所に来たなという感じで。すごくFreedom(自由)を感じましたね。
──向こうでDedachiさんの歌を披露する機会はあるんですか。
Dedachi : 大学のクラスメイトに披露することはありますけど、外ではまだないです。
──クラスメイトからは、どんな評価をされます?
Dedachi : 黒人の友達からは「チョコレート・ラーメン」って言われました(笑)。
──フフ、どういう意味ですか?
Dedachi : 「日本人なのに黒人みたいなグルーヴがあるからKenta最高だよ!」と言われて、それがうれしかったですね。チョコレート・ラーメンって聞くと、最初はからかわれている気がしたんですけど、実は褒めてくれてて。
──たしかに日本人だけど英語の発音はネイティヴだし、ゴスペルっぽい歌い方も混じっている。J—POPよりはブラックミュージック色が濃いから、すごく特異なヴォーカルですよね。
Dedachi : 僕の歌は「J-POPに聴こえないね」と言われますね。KOSENさんというサウンド・プロデューサーと一緒につくることも多いんですけど、彼は時々J-POPサウンドを入れるんですよ。それが良いなと思ってて。自分はそういう要素を持っていないから、KOSENさんがサウンドに日本人要素を注入してくれて、かつ僕の持っている黒人のグルーヴもある。そういう珍しいバランスの音楽を自分はつくっているんじゃないかなって思います。
──いまもLAに在住されてますけど、音楽活動においてプラスになっていることはありますか。
Dedachi : 学校でも音楽を専攻しているので、授業で学んだことも活かせている気がします。いろんな名曲を分析して「こういうジャンルの曲をつくるには、こういう要素が必要で」ということも教わるので自分が作曲をするときも、どうすれば目指している音になるのかをより具体的に考えられるようになりました。
──ちなみに今回リリースする『Rocket Science』は日本でレコーディングしたんですか?
Dedachi : 12曲中10曲は日本でレコーディングしました。残りの2曲はLAで録って、マスタリングをして。こうやって出来た曲を並べてみると、本当にいろんな要素の入ったアルバムになったなと思います。
──個人的には10曲目の“20”が飛び抜けて好きでした。
Dedachi : あ、そうですか! これはね、アメリカのプロデューサーとアメリカのソングライターの人とCo-Write(共作)した曲なんですよ。だから他とは違う楽曲かなと思います。シンプルな音なんだけどメロディが綺麗で、僕もとても気に入ってます。
──ちなみにDedachiさんがラジオ出演したときに「“Life Line”はアルバムの軸です」と話してましたけど、改めてこの曲に込めた想いを聞かせてもらえますか。
Dedachi : 自分の気持ちをストレートに伝える曲をつくりたいと思ったんです。「人生」のことを扱っているからテーマが大きいじゃないですか。
──これまでの人生を振り返りつつ、これから先の人生も見つめるというか。
Dedachi : そうなんです。まず自分の出発点をちゃんとみんなとシェアしてから、と思って“Life Line”をつくりました。このアルバムは“This is how I feel”もそうですけど、自分のルーツや生き方とか、そういうのも歌の中に入れたんです。このアルバムを聴いてくれた人には、僕がこういう人間なんだってもっとわかってもらえると思います。
熱い人ではあるけど、それが過剰に熱くならないところが良いなと思います
──あと“Ambiguous”も毛色の違う曲ですよね。
Dedachi : これはKOSENさんと一緒に音楽をつくるようになって最初の頃にできた曲なんですけど──。
Mgr : あの…… せっかくKOSENさんがいるんで。
Dedachi : (背後に座っていたKOSENに気づいて)アレっ!!
──インタヴューの途中からKOSENさんが部屋に入ってきたことに、Dedachiさんだけ気づいてなかったですよね。
Dedachi : いつ来たんですか?
KOSEN : 一度部屋に入って、コーヒーを取りに廊下へ出て、また座り直したからね。さっきから2、3回くらい出入りしてたよ。
Dedachi : What's!?
KOSEN : アハハハハ。
Mgr : 彼も世界に向けて自分の音楽を発信していて “Colorful Mannings”という名義でアーティスト活動もしている人なんです。LAの大学を出ているという共通点もあったので合うんじゃないかなって。昨年5月に紹介するまではKentaのオリジナルもまだ少なかったんですけど、その中から“This is how I feel”をピックアップしたのも彼で、この曲のデモを録ることからはじめてみたいと言われて作業がスタートしました。
KOSEN : “Ambiguous”はKentaくんとつくった初期の曲ですね。「いままでのKentaくんになかったグルーヴの曲を試してみようか」と話して。去年の夏に英詞のデモが出来上がっていたんだけど、今年になってKentaくんからブリッジのアイデアが出てきて完成したよね。
Dedachi : “This is how I feel”も最初ブリッジはなかったけど、KOSENさんからの提案があってつけるようになって。そもそも僕の曲はブリッジが抜けていますよね。
KOSEN : アハハハ。というか俺がブリッジを好きなのかもしれない。すごい日本人的な発想だけど(笑)。“Ambigous”は、オーガスタのスタジオでいろんな歌い方を試してもらったんですよ。そしたら、Kentaくんがふと出したハーモニーが自分にはない賛美歌のようなゴスペルの雰囲気があって。
Dedachi : そうなんだ。自分だと自然だから気付かないですね。
KOSEN : それが美しかったんだよ。
──KOSENさんとの出会いは創作意欲の面でも大きかったんですね。
Dedachi : そうですね。KOSENさんは、まだ知らないジャンルの音楽も教えてくれた感じですね。
──KOSENさんから見て、Dedachiさんはどんな人ですか。
KOSEN : 僕が思うに、良い意味で楽天家ですね。あとは音楽に限らずものづくりが好きなんだと思います。絵を描いたり、映像を撮ってみたりとか。
Dedachi : ああ、そうですね。
KOSEN : あと、アーティストの中にはこだわりが強いがために“こだわり過ぎちゃう人”がいるんです。で、こだわった割には次の日になったら「アレ?」と思うことがあったりして。だけどKentaくんは早い段階から、そこの整理がついている。熱い人ではあるけど、それが過剰に熱くならないところが良いなと思います。
──クレバーな面があると。
KOSEN : ちゃんと自分の中でゴールが決まっているからこそ、楽曲に対してのアプローチが冷静に判断できるのかなと思います。一緒に作業してても、意見がぶつかることはなかったですね。
Dedachi : たしかに、やりたいことがあったらガーッと行くんですけど、Mind set(考え方)的にはいろんな人と一緒にやっていることに意味があると思うので、相手の意見を聞く姿勢は忘れないようにしてます。しかもKOSENさんは素敵なアイデアをたくさん持っているし、音楽的にも超カッコイイので。
KOSEN : 褒め合いみたいになってるね(笑)。
──最後はDedachiさんとKOSENさんに、アルバム制作中で特に印象に残っている1曲を聞かせていただきたいと思います。
Dedachi : 1曲は難しいですけど…… “More than enough”かな。アルバム制作の最後にLAへ行って録ったんです。ストリングスとドラムとギターを生で録音して。Justin Moshkevichという数々の映画音楽を手掛けてきたエンジニアさんもすばらしくて、アルバムを締めくくるのに相応しい壮大なスケールの歌になりました。実は今年の3月にJ-WAVE主催の〈TOKYO GUITAR JAMBOREE〉に出させてもらう機会があって、大きいホール(両国国技館)をイメージして書いたんです。いろいろとアイデアが浮かんできて、ソング・ライティングをするのが楽しかったですね。
KOSEN : 僕が印象深いのはやっぱり“This is how I feel”ですね。Kentaくんのデモ音源をいただいて、はじめて聴いたときから輝いていたんですよ。そういう意味でも、個人的に思い出深い曲です。
──ありがとうございます。気づけばKOSENさんにもお話が聞けて。
Dedachi : アハハハハ。環境も大きく変わり、自分の音楽観もすごい勢いで広がった1年だったので、KOSENさんに言われて思い出すこともたくさんありましたね。参加してくれてありがとうございました(笑)。
編集 : 鈴木雄希、鎭目悠太
『Rocket Science』のご購入はこちらから
過去作もチェック!
LIVE SCHEDULE
DedachiKenta presents “Rocket Science”Launch Party
2020年1月7(火)@Veats Shibuya
時間 : OPEN 17:30 / START 18:30
出演 : DedachiKenta
Guest Act:さかいゆう / FAITH
Guest Musician : Kan Sano
2020年1月8日(水)@大阪 梅田Shangri-La
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
出演 : DedachiKenta
Guest Musician : Kan Sano
【詳しいライヴ情報はこちら】
http://www.office-augusta.com/dedachikenta/live.html
PROFILE
DedachiKenta
ロサンゼルス在住、19歳のシンガー・ソングライター。幼少期よりアコースティック・ギターをはじめ様々な楽器を嗜む。 14歳からYouTubeを使って自身の動画を配信。撮影も自らが手掛ける一方、その清廉な歌声は瞬く間に世界中の多くの音楽ファンの心を癒し、虜にした。オフィスオーガスタの新生レーベル〈newborder recordings〉より第1弾アーティストとしてデビューが決定。R&B、フォーク、ゴスペルなどのフレーバーを併せ持つメロウでポップなソングライティング・センスにも注目が集まる。
【公式HP】
http://www.office-augusta.com/dedachikenta/
【公式ツイッター】
https://twitter.com/dedachikenta