“生きててよかった!”──つるうちはな、『サルベージ』レコ発ワンマンで叫んだ人間賛歌
15歳からライヴ活動をはじめ、現在ではレーベル〈花とポップス〉の代表、音楽作家、そして主婦といったさまざまなフィールドで活躍するシンガー・ソングライター、つるうちはな。今年2019年は日本コロムビアよりメジャー・デビューをするなど、彼女にとって挑戦の年となった。10月23日、音楽活動20周年を目前にリリースされたメジャー・デビュー・アルバム『サルベージ』は、彼女の決して短くはないキャリアを総括しながらも、元気でポジティヴなパワーに満ちていて、聴く度にたっぷり勇気と元気がもらえる作品にしあがった。今回OTOTOYでは、12月15日(日) 新宿Marbleにて行われた本作のリリース記念ワンマン・ライヴの様子をお届け。全17曲をあっという間に駆け抜け、会場全てをハッピーな空気に包みこんだライヴの様子を、ライターの岡本貴之によるレポートで迫ります。
デビュー20周年を目前にリリースされたメジャー・デビュー作
LIVE REPORT : つるうちはな『サルベージ』リリース記念ワンマン
文 : 岡本貴之
写真 : 舞草香澄
2019年12月15日(日) 新宿Marbleにて、シンガー・ソングライターのつるうちはながメジャー・デビュー・アルバム『サルベージ』のリリース記念ワンマン・ライヴを行った。
音楽活動開始から20年目にしてのメジャー・デビューということで、音楽メディアに露出することの多かった2019年のつるうちはな。それにも増して、本人がSNSで発信する頻度、情報量の多さが、いかに『サルベージ』が自信作であるかを伺わせていた。この日のワンマン・ライヴでは、そのエネルギー、パッションがすべて注がれるのではないか。恐らく今年最高レベルのハイテンションでステージに立つであろう、つるうちの姿を想像すると、その飛び抜けた明るさを目の当たりにし、逆にこちらが暗くなるような気がして、ちょっと尻込みするような気持ちにもなりつつ会場に向かった。だがしかし。そんなこちらの屈折した感情をも、つるうちは全身全霊のライヴ・パフォーマンスで引き揚げてくれた。
バンド・メンバーに続いて両手を広げてステージに登場したつるうちがキーボードを弾きながら歌い出したのは「新次元ガール」。スケールの大きなサウンドの中を、つるうちの伸びやかな歌声が突き抜けて行く。続いて、艶やかなピアノから「おまじないを君に」へ。アルバムと同じオープニングだ。ボトムの太い演奏に負けない声量に圧倒される。時折腰を浮かせて観客を煽るつるうち。ステージ前は熱狂的なファンが声を上げ拳を上げている。
最初のMCでは、共にステージに立つ「無重力バンド」のメンバー、坪光成樹(Ba) 、konore(Gt)、角谷正史(Dr)を紹介。ビシッと締まった爆音ではじまったロック・チューン「タイムライン」で、一体感のあるバンド・サウンドを聴かせた。「アルバムで唯一変態的な曲をやります」との曲紹介から、「あの子の裸を見たくない」へ。先ほどのパンキッシュな演奏から一転、4ビート、シャッフルと展開していくプログレッシヴなバンド・アンサンブルが、変態的な(?)歌詞の世界観を忠実に表現していた。歌い終わると、この日新調したという衣装について「衣装、かわいくないですか? Nakanoまるが、ある日突然『はなさんはエプロンを衣装にしたらイイと思います!』って貸してくれたんです」と明かした上で、「「あの子の裸を見たくない」で裸エプロンだったらめっちゃおもしろいなと思ったんだけど(笑)」と笑わせた。曲の合間に楽しそうにしゃべるつるうちとお客さんの関係は、まるで自宅に招かれた友だちのようにも見える。そんなお客さんに対してつるうちは、「音楽、楽しいー! 来てくれてありがとう。いい顔しているよみんな。すごいね、奇跡だね」と笑顔を見せた。
オルゴールを聴いているような優しいアレンジとメロディが光る「apple in my eyes」では、子どものようにあどけない歌い方をするつるうち。アルバムの曲ごとの個性がくっきりと伝わってくる。特に、「tears for dear」「天国」「花」と続いたコーナーは印象的だった。アルバムの流れをそのままに、内省的な面を表現したこの3曲では、メロディの良さと歌詞に寄り添う巧みなアレンジを聴かせることで、つるうちのコンポーザーとしての実力を垣間見せた。「花」と「やさしい魔神」では、ゲスト・ギタリストとして、2曲のアレンジを手掛けたタカタタイスケが参加。2本のギターを中心としたサイケデリックな音像の中、三拍子の旋律が淡々と歌われ、精神世界に誘われる。一転してストレートなミディアム・チューン「やさしい魔神」に感じられたカタルシスは、その前まで演奏された楽曲との差異が生んだ緊張と緩和の賜物。多彩なソングライティングを存分に感じられるセクションとなっていた。
新宿Marbleとの企画ライヴ〈愛の反逆〉をやめたというつるうち。「メジャー・デビューするから、『よし、全員ぶっ殺してやる!』と思って“反逆”ってつけたんだけど、『あれ? 殺さなくてよくない? 誰とも戦う必要なくない?』って気付いちゃって(笑)」と、来年からは〈超平和〉と謳ったイベントを開催することにしたという。その第1弾が、2020年2月1日(土)にコザック前田を迎えて大阪で行う2マン・ライヴだ。
力強い「STEP」、手拍子を煽ってはじまったダンサブルな「パープルサンデー」と、ライヴはクライマックスへ。『サルベージ』の核を成す楽曲「宇宙の神秘女の子」では、豪快に叩き弾くピアノと髪を振り乱して歌うつるうちのパフォーマンスに鬼気迫るものがあった。「ぶっちぎって光」で文字通りぶっちぎる勢いで本編を終えた。
いったん袖に下がったものの、すかさずアンコールへ。「今日はしゃべらなくて大丈夫だなって思っちゃう。音楽と歌で全部言えてる」と語ると、「どうしてもひとりでやりたかった曲」として「ハレルヤ」を弾き語り。静かに、かろやかに〈生まれてきてよかったねと すべてのあなたに〉と歌われる人生賛歌に、お客さんはじっと聴き入っていた。
「なんかもう、なんにも怖くないな。だから反逆しなくてよくなったみたい。サルベージされたあとの世界をみんなに届けられるように、来年も頑張ります」との言葉に大きな拍手が贈られ、メンバーが再び加わった「あいゆうえにい」を歌い終わると、ここでバーカウンターにハイボールをオーダー。ステージ上からお客さんと一緒に乾杯すると、最後のMCへ。
「傍から見て幸せに見えても、自分の無価値さ、なにもかも全部逃げ出したいと思う夜がたくさんあるんです。だけど、そう思う自分をそろそろ許してあげたいなって思いました。だめなこともあるけど、『生き延びてれば偉い!』って自分を褒めてあげようと思ったんです。そうしたら、生きてるみんなのことももっと褒めてあげたいなって思ったし、『生きててくれて本当にありがとう』って思ってます。じゃあ、歌います」
最後に弾き語りで歌われたのは、この日に初披露となった新曲「さみしくってキラキラだ」。〈矛盾を愛せたらこの世界も悪くないかもね〉と肯定的なメッセージで、ライヴを締め括った。
『サルベージ』からの全曲を含む17曲、時間にして90分足らずというあっという間のライヴ。本編ラスト「ぶっちぎって光」で、「生きてて良かった!」と強調して叫んだ瞬間、アンコールの「ハレルヤ」と新曲に込められた思いをはじめとして、心からの人間賛歌が伝わってくる一夜だった。
〈つるうちはな『サルベージ』リリース記念ワンマン〉セットリスト
1. 新次元ガール
2. おまじないを君に
3. メロディー
4. タイムライン
5. あの子の裸を見たくない
6. apple in my eyes
7. tears for dear
8. 天国
9. 花
10. やさしい魔神
11. STEP
12. パープルサンデー
13. 宇宙の神秘女の子
14. ぶっちぎって光
EN1. ハレルヤ
EN2. あいゆうえにい
EN3. さみしくってキラキラだ(新曲)
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本作に関するインタヴューも掲載してます
つるうちはなが登場した過去の特集ページも要チェック
過去作もチェック!
新→古
LIVE SCHEDULE
つるうちはな×まきちゃんぐ「はなのたねまき〜鈴のね2019〜」
2019年12月20日(金)@名古屋 SUNSETBLUE
2019年12月21日(土)@岡山 城下公会堂
2019年12月22日(日)@大阪 歌う魚
それでも道は続いていくvol.5
2020年1月7日(火)@恵比寿天窓switch
出演 : つるうちはな / 飯田舞 / 松岡里果
ほぼ花ポ! あけぼのランチ会
2020年1月26日(日)@新宿マーブル
出演 : つるうちはな / Nakanoまる / The Broken TV
つるうちはな企画「超平和」その1
2020年2月1日(土)@大阪LIVE Bar 酔夏男~よかにせ~
出演 : つるうちはな / コザック前田
つるうちはな×宇佐蔵べに企画「宇宙の神秘女の子」その1
2020年2月9日(日)@新宿マーブル
出演 : つるうちはな / 宇佐蔵べに(avandoned) ゲスト : 出雲にっき(avandoned)
【ライヴ情報詳細はこちらから】
https://tsuruuchihana.hanatopops.com/pages/375567/page_201603181406
PROFILE
つるうちはな
1983年7月9日生まれ、東京&香港育ち、蟹座のO型。
"存在そのものが愛"と表現される、爆発的エネルギーを放つシンガー・ソングライター。
2006年にミニ・アルバム『メロディー』で全国デビューを果たし、以後、フル・アルバム『つるうちはな』ミニ・アルバム『DAY GIRL』シングル「あたしバカ」「あいゆうえにい」をリリース。
2011年には〈出れんの?!サマソニ?!〉より、異例の敗者復活枠から〈SUMMER SONIC2011〉に出演を果たす。
また、自身の活動に加え、各方面での楽曲制作(ATSUGI×最上もが「柄、じゃない?」「してみタイッ!」、カルビー堅あげポテト×ゆうこす「カタアゲ女子の幸福論」、森永乳業ピノ ストロベリームーン×里咲りさ「シンクロニシティ」、振袖の「オンディーヌ」TVCM、avandoned、 etc)・トータルプロデュース(Nakanoまる etc)・鍵盤サポート(シュノーケル、瞳みのる(ザ・タイガース)、etc)・CM歌唱(「家サイト」、丸永製菓「白くま」、京都銀行、haletto(ハレット)etc)など、幅広い音楽シーンにて活動中。特に楽曲提供に於いては、女性ならではの切り口と「切な可愛い」歌詞とメロディに定評がある。
2016年、“タフな乙女のアパートメント”をキャッチコピーに音楽レーベル〈花とポップス〉を立ちあげ、自身がプロデュースを手がける女性ミュージシャンたちと共に、新作『あいゆうえにい』を全国発売。8月〜11月にかけて〈花とポップス〉に10代〜30代の幅広い女性アーティストが多数参加&4ヶ月連続全国発売(計10タイトル)を果たし、11月にはつるうちはな4年ぶりとなるフル・アルバム『LOVE』をリリース。2018年2月に最新シングル「ぶっちぎって光」を発売。
2019年、満を持しての日本コロムビアよりメジャー・デビュー決定。デビューに先駆けて、2019年5月22日に“おまじないを君に”を配信リリース。2019年10月23日、メジャー・デビュー・アルバム『サルベージ』発売決定!
【つるうちはな 公式HP】
https://tsuruuchihana.hanatopops.com/
【つるうちはな ツイッター】
https://twitter.com/HanaTsuruuchi