“覚醒”後の集大成!?
“闇”が詰まったコッテルのミニ・アルバム
トリップホップやダークなエレクトロニカ、そしてハスキーな歌声を展開していた前作『トマト帽のベレー』から約2年、kötturは“コッテル”に名前を変え、そして“覚醒”を遂げた。突如として「中東サイバー萌え萌えファイター」を名乗り、はたまたカレー作りに熱中するなど、その言動は目を引かざるを得ない謎のエネルギーに満ちている。そんな彼女による、覚醒後初の新作ミニ・アルバムを配信! それに合わせて、なぜ覚醒に至ったのか迫るべく、彼女へのインタヴューを決行! 変化へのいきさつから自身の音楽的ルーツ、そして未来への展望など多いに語ってもらった。
本作で、トライバルなディスコ・チューンからグライムなどの多彩な音像、はたまた変幻自在な声音を披露した彼女。“覚醒”し、まぎれもない進化を遂げたコッテルに困惑し、そして歓喜せよ!!
覚醒後、初のミニ・アルバム
コッテル / チャンキーヒール
【販売価格】
ALAC / FLAC / WAV / AAC / mp3 : まとめ購入 972円 単曲 170円(税込み)
【Track List】
1. チャンキーヒール / 2. ワンダーランド(トライバルディスコバージョン) / 3. シャイなユー / 4. ポッピーパンツ / 5. らくにかいらく / 6. シャイニー☆ダーリン(以外はゴリラ)
INTERVIEW : コッテル
「kottur」時代の彼女はなんだかちょっと、とっつきにくいようなスピリチュアルでアーティスティックなムード満点の女性に見えた。2014年、“覚醒した”コッテルからは次々とおかしなニュースが発信されてきて、確かに見た目も音楽もガラリと変わった印象だ。でも人間ってそんなに急に変われるものなのだろうか。もともとコッテルってこういう人だったんじゃないだろうか? というか本人はどう思っているのだろうか。音楽を聴けば聴くほど謎が深まるコッテルの知られざる“黒い部分”に迫ります。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 雨宮透貴
本当調子こきすぎてたなと思って
——3月21日(土)におこなわれた〈コッテリアンカレーナイト〉は大盛況だったようですね。誰が優勝したんですか?
私です! ホント、私的には私祭りでした。最初はうまくいくか不安だったんですけど…(笑)。
——それはどこの段階で?
もう、一番最初くらい。提案されて、〈コッテリアンカレーナイト〉っていう響きも良いなと思ってはじめたんですけど、ブッキングとか全部自分でやらなきゃいけなくて。私、メール打つのとかもすごい苦手で(笑)。でも一回やろうと決めたからにはやろう、と思って。ただこれ人来るのかな? 本当にやって大丈夫かな? とか思ったりして超不安になってうつ病になりそうでした(笑)。
——そんなに追い詰められていたんですか(笑)。
でも一週間くらい前からすごい楽しみになってきて。当日はとりあえず私が楽しもうと思ってたら、めっちゃ人が来てくれて良かったです。またやりたいなと思います…。決まったらまた面倒臭くなりそうだけど(笑)。でも食べ物が絡んでいると活気がありますよね。やっぱり人間は食べることが好きなんだなと思いました。ライヴもやりつつ厨房に入ってカレーを作るのが無邪気に楽しかったですね。
——『チャンキーヒール』からも無邪気な感じは漂ってますよ。“覚醒した”コッテルさんに対する周囲の反応はいかがですか?
こっちの方が好きだなという人と、コッテルちゃん大丈夫? って心配してくれる人がいますね(笑)。「コッテルとち狂った」みたいな人もいて。『チャンキーヒール』も近い人にはすでに聴かせたんですけど、「今回のはすごく良かったけど、ぶっちゃけ「灼熱ファイターガール」のときは精神状態が心配だった」と言われて。でも、たぶんそう思っている人が多いんだろうなと思いました。ただなんにも考えてなかったから。
——「灼熱ファイターガール」を出したときはなんにも考えてなかったんですか?
グライムっぽいのをやりたいなとは思っていたんですけど。『チャンキーヒール』に入っている曲の方が「灼熱ファイターガール」より先に作ってたんです。色々やるのが楽しくなっちゃって。ちょうど暖かくなってきてたし、明るくやろう! みたいになってきてたので(笑)。
——特に自分の中で意識的に変えたわけではない?
う~ん、あんまりこういうのをやろうということを昔から考えたことがないので…。でもわかんない、もしかして何かあったのかもしれない。でも忘れちゃいました、何があったのか(笑)。
——忘れちゃいましたか(笑)。でもはたから見たら全然違う人みたいになってますからね。
そうなんですけどね。ふざけたかったのかもしれない。カッコよくふざけたかったのかも、たぶん。でも忘れちゃいました(笑)。
——以前ライヴを拝見したときにはアンビエントな世界観を持ったエレクトロニカの人という感じで、ちょっと難解な感じも受けました。ただMCで「物販で売るCDを家に忘れてきてしまいました」というのを聞いて和んだんですけど。
ああ~、私ちょっとおっぱっぴー気味なんでちょっと直したいんですよ(笑)。
——おっぱっぴー気味(笑) 。今の方がどちらかというと自分らしさを出している感じですか?
う~ん、自分らしさってなんだかわからないんですけど、前は曲の作り方がどちらかというと、所謂マニアックな音楽にありがちなというか、「全部の曲がこういう世界観でここに木があって幻の滝があって~」みたいなものを曲にしましたって感じだったんですよ。今は、「こういうキャラの女の子がいたらヤバいな」とか「ウケるな」とかポップに風刺するという感覚で作ってて、あとは「日本人なんだから日本語でやろう」って思って。日本語の面白さとかシュールさを楽しんで作ってます。
——『トマト帽のベレー』のインタヴューの際には「不思議民族サイケデリック妖精ポップスみたいなものをやりたい」と言っていたんですけど、その感じは残しつつ今のスタイルになった感じでしょうか。
そこからちょっと妖精が抜けたかもしれないですね(笑)。前は本当に妖精になりたくてしょうがなかったけど、もうそんなこと言ってる歳でもないなと思って(笑)。
——(笑)。 結局年齢で変わってきたということですか?
いや、でもやっぱり1年くらいでも人間って考え方が変わるんだなって思います、最近。
——それは人間的に成長したということでしょうか。
そうなのかなあ… 反省してます、今までの自分を! 今までがあって自分があるとは思うんですけど、本当調子こきすぎてたなと思って。色々なめてたなと思って反省しているんで、成長していると思います(笑)。
上半身裸とかでやってました
——『トマト帽のベレー』収録の「Wonderland」が「ワンダーランド(トライバルディスコバージョン)」としてアレンジを変えて収録されているので、比較すると如実に成長というか変化がわかりますね。
これはライヴで前の曲もやろうという話をしていて、アレンジを変えた曲ですね。アレンジは森さん(森大地・kilk recordsオーナー / Aureole)に頼んだりしたものもあります。
——森さんはプロデューサー的な立場で関わっていたんですか?
アドバイスはして頂きましたけど、今回は本当にとりあえずやりたいことをやるというつもりで、ジャケとかも私が単独で直接イラストを書いてくれている新藤洋子さんとか写真家の83ちゃんに頼みました。デザインはラッパーのhimeshi君で、森さんは私がやりたいことを助けてくれている感じですね。
——ジャケットはインパクトありますね。
アジーリア・バンクスの感じと、『シン・シティ』みたいな感じにしたかったんですよ。私やっぱり黒い部分の方が多いのでちょっとそれを残したというか。
——黒い部分というのは闇の部分ということですか?
闇というかなんというか、ひねくれているんですよ私(笑)。でもそれはもうしょうがないなと思って。親がそういう風に育てたんで。それはありがたいと思っているんですけど、面白いんで。
——アーティストの方は少なからずひねくれた部分はあると思いますけど。今回のジャケにはそういう自分も出しているんですね。
そうですね。ダークって言っちゃうと暗い感じになっちゃうけど、そういうネガティヴな感じじゃなくて“黒い部分”みたいなところがあった方がカッコイイって何をするにしても思うから。
——コッテルさんのルーツをたどると、スージー・アンド・ザ・バンシーズとかディスティラーズといった名前を挙げていますし、パンク少女だったんじゃないかと。黒い部分ってもともとはそこから始まっているんじゃないですか?
そうですね、もともとはというか今でもずっと好きです。優しい音楽も好きだけど、怒ってたりひねくれてたりするのがしっくりくるというか、ずっとそういうのが好きです。
——『チャンキーヒール』にはギターの音が入っている曲もありますけど…。
あ、これは生音じゃなくてサンプラーなんですよ。「シャイなユー」はシタールの音源ですね。ギターは最近全然弾いてないです、弾けますけど。
——昔はギター・ヴォーカルでパンクっぽいのをやってたんですか?
バンドはやってなかったんですけどライヴは1人でやってました、高校生のときとかは。エレキのときもあったしアコギのときもありました。
——へえ~、弾き語りライヴをやってたんですね。その頃はどんな曲を歌ってたんですか?
カヴァーというかコピーです。1人で「イエー!」って。文化祭とかは先輩とかとヤー・ヤー・ヤーズとかやってました。あとは1人でカフェみたいなところとかでもやってましたね。
——カフェで怒りをぶつけてたんですか。
怒りをぶつけてたかどうかはわからないですけど(笑)、楽しかったんで。なんか上半身裸とかでやってました。
——えぇっ上半身裸で!?
あ、間違えた(笑)。いや、裸ではないですけどビキニみたいなのを着て、エロいとかじゃなくて、それがカッコイイと思っていて。上半身ビキニで下はジーパンで、「イエーイ!」ってやってました。ガレージ・パンクみたいな曲をいっぱい作って。
——じゃあ最初はギターで曲作りをしていたんですね。それがDTMに変わったきっかけは?
DTMってなんですか? ってくらいにマジで出来なすぎるし、意味わかんない感じだったんで、最初は2人でユニットをやって、私がギターで曲を作って、こうしてほしいああしてほしいって言ってトラックを作ってもらってたんですよ。その後色々あった結果、私も噂のDTMを自分でやってみよう、みたいな感じになって。あははははは!(突如笑い出す)
——いや、別にそんなにおかしい話じゃないですけど(笑)。今は色んなトラックが作れてますよね。トラックのカッコ良さもありますけど、以前カヴァーした井上陽水の「コーヒールンバ」を聴いても思ったんですが、歌が上手いですよね。
歌上手いです(笑)!
——歌には自信がありそうですね。
あります!
——ヴォーカリストとしての自覚的になったというか、歌を聴かせたいという気持ちは以前よりも大きいですか?
そうですね。なんか、元通りになったと思っているんですよ、歌に関しては。昔はもっと「イエーイ」って感じで超歌ってたのに、色々あって抑えるようになっちゃってたんですけど。今になって「イエーイ」が戻ってきて良かったなと。
——気分がビキニとジーパン時代に戻った?
そうです(笑)。
妖精じゃなくなったから(笑)
——歌はお客さんからも褒められたりしますか?
う~ん、今の感じになってから前より上手くなった気がします、自分でも。
——前はウィスパー・ヴォイスでやらなきゃいけないような感じでしたよね。
そうですね、無理してウィスパー・ヴォイスにしてたなと思って。そうすると下手くそになるなと思いました。大きな声を出した方が楽なのに、頑張ってがんばって、ウィスパー・ヴォイスにしてたなと気付きました。
——今回はヴォーカリストとしての実力が発揮されている作品だと思います。だから「なんか面白そう」と思って聴いた人が「あ、歌上手いじゃん」ってなると思うんですよ。それが『z』との大きな違いのひとつじゃないかなと。
ああ~、そうかもしれないです。
——1曲目の「チャンキーヒール」は洗練されたポップス感もあって、オリエンタルな曲調とはまた全然違いますね。
この曲は昔のディスコっぽい感じのところにいるというか、気持ちはオザケンで作ったんです。そういうものをやりたいと思ったら全然違う感じの曲が出来てしまいました。まあでもなんでも良いか、と(笑)。
——なんでも良かったんですか(笑)。
なんでも良いというか、色々なんでもやりたすぎて「このアーティストって聴いたら一発でわかる」という音がないのかなって最近思ったんですけど。
——コッテルといえばこういう感じという音のイメージがないのでは、ということですか?
そうそう。けっこうみんなわかるじゃないですか。一発聴いただけで「あ、これ〇〇だ」みたいなものが。そういうのがないなって。でもまあいっか、と思った。
——覚醒後のイメージはオリエンタルなトラックにラップが乗ってる感じじゃないでしょうか。
基本的にはそれですね、はい。
——でも今作にはいろいろ楽曲があるし、覚醒後の引き出しから全部出ているような印象です。
今のところ全部出したかもしれないです。だから早く引き出しに入れないとヤバい(笑)。本当にカスくらいしか残ってない(笑)。とりあえず私のこの1年間を全部入れました。
——「らくにかいらく」は迫力ある感じで最後の「シャイニー☆ダーリン(以外はゴリラ)」の軽さとの対比が面白いですね。
最後にそれが入っている感じがなめてる感じで面白いなと自分でも思います。
——今後、覚醒前と後の作品は織り交ぜてやっていくんですか?
いやあ~、それなんですけど、織り交ぜるというか私1人しかいないから織り交ざるしかないというか。色々考えたんですけど、こうしていったら良いとかこうやって見せたら良いとか、考える才能がほんっとに無くて私。人に言われたんですけど、見たところビジネス・センスがまったくないからって…。
——まったくない(笑)。
どこに向けてとか考えても無駄だから、自分のやりたいことをやって、それについてきてくれる人がいたらその人たちのために全力でやれば良いと言われて。ああ、なるほど、それは良い考え方だなと思って。だからこれからもやりたいことをやっていきます。みんながいないと私、本当になにもできないんで(笑)。地味に自分のためだけに作ってるだけになっちゃう。
——こうしてリリースするとなると、曲を作るときにも聴く人の姿を想像したりしませんか?
しますします、最近はめっちゃしますね。前は全然考えなかったんですけど。ライヴは特に考えます。ライヴは前よりは慣れたんですけど、まだ全然ダメだと思うのでがんばりたいです。
——ライヴも以前とは変わらざるを得ないというか。
そうなんですよ、本当戦いって感じですよね。前はステージに機材があって、弾いて歌って、出来てる風にしてたんですけど(笑)。今はそういう武装みたいなものが何もないから、本当に戦いだなって。自分の弱い部分とかビビりな部分とか守っている部分とかを越えないといけないなと。そうしないと見ている人も楽しくないだろうなと思うので。
——確かにそうですね。最後に改めて、“覚醒”という言葉をコッテルさんご自身はどう捉えているんですか?
“覚醒”って言っちゃって良いのかなって思いましたけど、確かに目覚めたのかもしれないですね。空想とか妄想とかじゃなくて、全部出しちゃうっていうことに気付いたことが覚醒なのかな。
——妖精じゃなくなったから?
そう、妖精じゃなくなったから(笑)。
コッテル、覚醒後の作品はこちら!
コッテルが覚醒した第1弾シングル
>>ん? コッテル!!??☆??!! (OTOTOY特集ページ)
コッテルが覚醒した第2弾シングル
>>コッテリアンカレーを食べてみた。 (OTOTOY特集ページ)
コッテルって何者!?!?!?
コッテル
24才の女性SSW、千代によるソロ・プロジェクト。2007年、16歳の時に2人組のユニットとしてコッテルを結成。2010年、omotesando records (OMOTES)よりミニ・アルバム『nukonomad』発売。2011年、千代のソロ・ユニットになる。2013年、kilk recordsより1stアルバム『トマト帽のベレー』発売。2014年に覚醒。これまでのElectronica〜Ambient〜Neo-Psychedelic〜Chill Outミュージックな世界観から一転、「中東サイバー萌え萌えファイター」として活動を開始。日々真の女ファイター目指して修行中。 >>コッテル Official HP