忘れらんねえよの「これまでと、これから」ーー無観客ライヴ&全力野球など音楽以外の企画を全力で振り返る
忘れらんねえよが、初のベスト・アルバム『忘れらんねえよのこれまでと、これから。』をリリース。デビュー5周年の記念盤であり、2015年秋に脱退したドラマー酒田耕慈との活動の軌跡を収めた本作には、バンドの代表曲やライヴの定番19曲に加え、酒田との別れを想起させる「別れの歌」、HONDA発電機50周年記念CMソング「バレーコードは握れない」を含む新曲3曲を収録。入門編としても、現在の彼らを知る意味でも、最適な1枚となっている。本作のリリースを記念して、OTOTOYと忘れらんねえよの「これまで」を振り返る。無観客ライヴや24時間Ustなど、どんな企画でも食らいついてきた我々の想いとともに、忘れらんねえよを振り返り、これからの未来を祝福する。絶対、聴いてくれ!!
忘れらんねえよ、初のベスト・アルバム
忘れらんねえよ / 忘れらんねえよのこれまでと、これから。
2016年2月24日(水)発売
【Track List】
1. 別れの歌
2. バレーコードは握れない
3. 世界であんたはいちばん綺麗だ
4. 犬にしてくれ
5. 寝てらんねえよ
6. バンドやろうぜ
7. ばかもののすべて
8. 愛の無能
9. 絶対ないとは言い切れない
10. ばかばっか
11. 体内ラブ~大腸と小腸の恋~(feat.玉屋2060%,MAX from Wienners)
12. この高鳴りをなんと呼ぶ
13. バンドワゴン
14. 中年かまってちゃん
15. 戦う時はひとりだ
16. 僕らパンクロックで生きていくんだ
17. 夜間飛行
18. 僕らチェンジザワールド
19. この街には君がいない
20. 北極星
21. CからはじまるABC
22. 忘れらんねえよ
※CDの購入はこちらから(本作品の配信はございません)
INTERVIEW : 柴田隆浩(忘れらんねえよ)
忘れらんねえよとOTOTOYは、これまで数々の名(迷)企画を世に送り出してきた。柴田隆浩(Vo.Gt)は、ときには誰もいない会場で虚空を見つめながら叫び、あるときは物言わぬオーディエンスにコール&レスポンスを促してきた。ライヴだけではない。不眠不休のまま運動会で汗を流した朝もあれば、真冬のグラウンドでピッチャーとしてマウンドに立ち続けた夜もあった。
今、それらのシーンひとつひとつを振り返り改めて思う。もしかして、迷惑だったのかしら? いや、そんなことはないはずだ。我々だって、無人の客席に向かって物販から声を張り上げ、ドミノ日本記録樹立を応援しながら写経のごとく6万字を綴り、頭を丸めることで成功祈願するなど、全身全霊を捧げてきたつもりだ。言うなれば、OTOTOYと忘れらんねえよは共犯関係なのだ。
というわけで、今回は忘れらんねえよのこれまでをつぶさに観察してきたライター岡本と編集部・西澤の2人態勢で柴田にインタヴューを行い、さまざまな企画を振り返りつつ、OTOTOYなりに『忘れらんねえよのこれまでと、これから。』を検証してみたいと思う。転機となった「この高鳴りをなんと呼ぶ」と新曲「別れの歌」の間にあるものが見えてくるはずだ。
インタヴュー・文 : 岡本貴之 & 西澤裕郎(OTOTOY編集部)
すべては無観客ライヴからはじまった…
ーー新曲が3曲ともすごくいいですね。特に「別れの歌」は手応えがあるんじゃないですか。
柴田隆浩(以下、柴田) : かなり手応えがありますね。ミックスを最初に聴いた瞬間に「うわ~ヤバい、超いいじゃん!」って。でもお客さんに聴かせる前は不安でした。絶対いいのはわかっているから、ちゃんとノイズなく伝わるかな? みたいな。
ーーその「ノイズ」というのは、これまでリスナーを楽しませるために色々やってきた企画と、「別れの歌」のようなストレートに突き刺さる歌のギャップというか。
柴田 : それはあると思います。今までやってきたことでバンドのイメージはついてると思うんですよね。全部やりたいと思ってやってきたので何の後悔もないんだけど、それが今回の楽曲のノイズになってたらすげえ嫌だなっていう不安ですね。でも今のところ理想的に届いている感じでよかったです。
西澤(OTOTOY編集部) : 僕はインタヴューに同行するたびに、1stの「忘れらんねえよ」みたいな曲を書いてほしいってことを、それとなく柴田さんに言っていたんですけど、ついつい「24時間、バンドやろうぜ。~バンド愛は地球を救う」とか「全力野球!! 全力ピッチャーで三振を取れ!」とか、過剰ともいえる企画に加担してしまって… そういう責任も多少は感じていまして(笑)。なので今回は、OTOTOYと一緒にやってきた企画を振り返りつつ、忘れらんねえよの歩みを検証していってみたいと思います。
柴田 : ははははは! なるほど、わかりました。
ーーOTOTOYと企画を始めたのは2012年のXmasに「メリー糞リスマス ユー糞リーム」と題して、ヒカリエから柴田さんが1人でUst生放送を実施したことに始まりますが、覚えてます?
柴田 : あー! やってた!「メリー糞リスマス ユー糞リーム」(笑)。懐かしいなあ。
ーーそして年明けの2013年1月30日に〈無観客ライヴ〉を代々木公園で開催したんですが、この日は「この高鳴りをなんと呼ぶ」の発売日でした。
柴田 : ああ、そうだったんだ!? 発売日に何やってんだ(笑)。なんで無観客をやったのかというと、やっぱり知ってもらいたかったんですよね。でもその頃は自分たちが作った音楽に無責任だったんですよ、よくも悪くも。何をしたらその楽曲のためになって、何をしたらその楽曲を傷つけるかということを考えてなくて。今やるとしたら楽曲の価値を損なわないプロモーションとか面白いことをしたいというか、そこらへんのさじ加減が出来てると思うんだけど、あの頃はそういう意識もないから、「面白いことだったら何でいいぜ!」みたいな感じで、もしかすると「この高鳴りをなんと呼ぶ」という曲の価値を少し損なっていたのかもしれないですね。でもそれはそれでハチャメチャで、俺たちらしさもある気がするけど。
無観客ライヴ 2013年1月30日@代々木公園野外ステージ
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ーー「この高鳴りをなんと呼ぶ」は今では代表曲の1つですが、当時のイメージとはギャップがありましたよね。曲が生まれたきっかけってなんだったんですか?
柴田 : これは、スカイツリーを見に行って「ああいいなあ」って思っていたらメロディが降ってきて。1stって3コードとかシンプルなコード進行で、所謂ブルーハーツ的なメロディが多かったと思うんですけど、そのとき降りてきたメロディは全然違ったんですよね。コードの数も多いし楽曲作りが全然違うなって。でも、あんまりいいと思わなかったんですよ(笑)。「佳曲だなこれは」って。でもスタッフとかの評判が良かったんで歌詞を書こうと思って。こういう歌詞になったのは、メロディに合う歌詞が1stの世界観じゃなかったんですよね。1stの書き方って、飲み会でしゃべってウケたような話を歌に乗っけるみたいなやり方だったんですけど、それ以外の普遍的に俺が思っていることを書こうと思ったんですよ。それで出来た曲がたまたまバンドの転機になったという。
ーーこの曲が生まれたからか、2ndアルバムは下ネタも抑え気味な作品になりましたよね。
柴田 : 暑苦しいですよね。それと、僕の人生の中でも相当苦しい時期の始まりというかね。
無観客シリーズは哲学的になっていく
ーー確かにこのあたりのライヴでは作品を生み出す苦しさをMCで言っていた気がします。そんな時期にOTOTOYとの企画で今度は〈無観客フェス〉を実施するわけですけど(笑)。シングル『僕らパンクロックで生きていくんだ』の発売日でした(2013年6月12日)。
柴田 : あのときは、とにかく自分の世界に入り込んで、これしかありえない! みたいになっていたというか。バンドの楽曲は、「この高鳴り~」みたいな下ネタのない、喜怒哀楽で言う怒とか哀とか焦燥感とか、そういうものじゃないといけないっていう思いで突っ走ってるし、一方で楽曲を伝える音楽以外の活動としては「とにかくバカらしくないといけない」って突き進んでいて。だから最初よりはどんどん音楽とそれを伝えるための方法が離れていっていたんだと思います。
無観客フェス 2013年6月13日@埼玉県所沢市、航空公園
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ーーこの日は未発表曲だった「バンドワゴン」を披露していますが、これまで自虐的なことを歌っていたバンドが、よりお客さんのことを意識しだした印象でした。
柴田 : 本気で好いてくれているお客さんがいるんだなっていうのを認識しだしたタイミングな気もしますね。そういう人たちに向かってとにかく熱いことを言いたかったりその人たちを鼓舞したいということは考えていたんじゃないかなあ。
ーー3回目の無観客ライヴ〈ツレ伝 ZERO in 赤坂BLITZ ~ZEROなだけに観客もゼロ~〉(2014年3月19日)では、『あの娘のメルアド予想する』発売を発表して「下ネタを取り戻す」とMCしましたが、音楽とそれを伝える方法の差を縮めようという意識があったんでしょうか。
柴田 : 2ndの世界観が暑苦しい感じで、疲れてきたというか。同時期にTHEラブ人間がアツいMCをしていて、それにも影響も受けていたんですよ。だから、一生懸命だったけど演じるようにそういうことをやっていて。でも正直、これは嘘だなと思ったのと、お客さんからも「忘れらんねえよってこんなバンドだったっけ?」みたいな声もちらほらあったんですよね(笑)。「う~ん、確かに」って思うところもあって。プロモーションに音楽の方を寄せたというよりは、音楽表現の進むべき方向を見直した感じかな。
3回目の無観客ライヴ 2014年3月19日@赤坂BLITZ
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ーーサウンド面では、ライヴハウスでお客さんをより楽しませるダンス・チューンを導入したりしていました。
柴田 : そうっすね。それもね、2ndのときはひとつの方向にどんどん突っ走っていたから、全然違うところにいたというか。世の中に音楽を発信する上でBPMとかリズムって大事だから。「あ、俺ちょっとズレてるぞ」って気付き始めたんですよね。
西澤 : この時期、OTOTOYで「ツレ伝対談」と題して、Czecho No Republicの武井優心さんやTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也さん、グッドーモーニングアメリカのたなしんさんと対談していますけど、こうした同時代に出てきたバンドの曲を研究していましたよね。
ツレ伝対談
■第一弾 × Czecho No Republic
■第2弾 × THE ORAL CIGARETTES
■第3弾 × グッドモーニングアメリカ
柴田 : してましたね~。今思うと世の中が欲している音楽ってどういうものか知っておかないと、というのは当たり前だと思うんですけど、そのときから初めて他のバンドを聴くようになったんです(笑)。でもあんまり自然に聴けていなくて、研究しようという感覚で。狭くなった視野を戻したくて必死でリハビリしてたというか(笑)。バンドの状況としても、シーンから孤立したバンドみたいになっていたから、どうにかシーンの中に戻したいという気持ちがあって。例えば全然交流がなかったKEYTALKとこの時期に対バンしているっていうのはその表れというか、焦りと危機感がすごくあったからきつかったですね。
ーーKEYTALKと岡山でツーマンをやった翌日に赤坂BLITZで〈無観客ワンマン〉をやってますから、何かおかしいですよね(笑)。
柴田 : あ~そうだった! とにかくいろんなところを行ったり来たりして、「うわ~!!」ってなってるという(笑)。
西澤 : 企画をやっているスタッフ側も、迷走期というか哲学的になってましたからね。わざわざ安くないお金を払って赤坂BLITZを借りるんだから、ライヴ・ビューイングくらいやってもいいんじゃないか? って話になったんですけど、それを突き詰めていったら、会場も無観客にしましょうって話になり、〈無観客ライヴ・ビューイング〉が生まれ(笑)。関係者用に無観客インビテーションやパスを作ったりもしましたし、お客さんがいないのに物販をやったり、もはや気が狂ってましたよね…。
柴田 : はっきり言って迷走しているんですけど、みんな本気なんですよね。目が血走ってて(笑)。
24時間Ust、野球、ドミノ、と迷走期(?)へ
ーーそして2014年10月3日~4日にかけて〈24時間、バンドやろうぜ。~愛はバンドを救う〉が行われました。
柴田 : プロモーションもありつつ、プラスそれは絶対面白い表現じゃないといけない、という。24時間Ustというのも、これはめちゃめちゃ面白いでしょって感じでやりましたね。でも懐かしいですよね、すでに。
〈24時間、バンドやろうぜ。~愛はバンドを救う〉2014年10月3日~4日
>>当日の24時間耐久生レポートはこちら
ーーこのときエンディングで歌った「バンドやろうぜ」は感動的でしたよ、本当に。
柴田 : だから楽曲はずっといいんですよ。作っている曲はバンド結成以来ずっといいんだけど、その伝え方を模索していたような気がします。2ndのときも素晴らしいものを作っていたと思うし、「夜間飛行」や「バンドワゴン」が本当に好きだって泣いてくれるお客さんがいるんですよね。だから俺の精神状態と、作られる楽曲は関係ないというか。俺、今回ベスト・アルバムで昔の曲を聴くのがすげえ怖かったんですけど、通しで聴いてみたら最高じゃんって思ったんですよね。昔の楽曲もすごくいいなって。
ーーその楽曲を届けるための企画で、2015年2月には『ばかもののすべて』の発売に合わせて〈全力中年野球編〉を行いましたけど、いよいよ音楽と関係なくなりました。
西澤 : これが1番、何をやっているかわからなかったですね(笑)。神宮の野球練習場まで借りて元プロ野球選手をコーチとして招集して練習したり、極寒の野外球場を借り切って、VAP(レコード会社)の社員さんたちとともに守備についたり。
柴田 : 本当にもう、まったく関係ない(笑)。でも俺、すごく練習してたんですよ! だからやりきった充実感はありましたけどね、感動的だったし… ただ、音楽とまったく関係ない。「全力中年」があって「全力ドミノ」があって、ドミノをやって初めて、音楽と関係ないことはプラスにならないということに気が付いたんですよね。でもやり切らなかったらわからなかったんじゃないかな。
西澤 : それを我々も一緒に体感していますから。24時間Ustもそうだし、ドミノのときも6万字レポを書いたり(岡本)、丸坊主にしたり(西澤)とか(笑)。
全力中年 第4弾全力ドミノ挑戦編 8日間カンヅメで6万個並べて日本記録達成
>>6万字レポートはこちらから
柴田 : ははははは! あれは面白かった!
ーーでも、まわりも本気でやってますからね。その時々の熱量がハンパじゃないんですよね。
柴田 : そうそう、だから全然後悔していないんですよ。タイムスリップしても俺はたぶん同じことをやると思う。でも現実を見たというか、ドミノで日本記録を作ってもアルバムの売上だったりライヴ動員が上がらなかったんですよね。でも下がりもしなかった。ただ、チーム全体がみんなで一生懸命やってたから、お客さんは「ズレてんな~」って思ってたかもしれないけど、「でもこいつら一生懸命やってんな、支えといてやるか」みたいに思ってくれてたのもあったのかもしれない。
そして、「別れの歌」の完成へ
ーーそれは、いつも出す曲がいいからですよ。でも、常に曲はいいんだけどやっぱり「別れの歌」のような曲を求めていた人もいると思うんです。
西澤 : 僕は一時期のBPMが速い4つ打ちの曲とかもいいけど、こういう曲を聴きたかったんです。なんか偉そうですけど(笑)。
柴田 : ありがとうございます。でも、結局それも現実を見たからなんです。4つ打ちをやって劇的に支持してくれるお客さんが増えたかというと、正直何も変わらなかったんですよね。じゃあ何を信じるかっていったら自分しかないじゃないですか? だから今は自分の中から出てくるものとか価値観を追求してみようという感覚ですね。
ーーそれは、とことん振り切った3rdアルバム『犬にしてくれ』が出た後に、ひと際メロディアスで共感を呼ぶ「犬にしてくれ」がライヴで大合唱になったときに答えが出ていたような気がしませんか?
柴田 : そうですね。『あの娘のメルアド予想する』でリハビリを始めて、『犬にしてくれ』からは投球練習して紅白戦を始めたみたいな(笑)。そのときの投球フォームは、人真似じゃなくて、まだぎこちないけど自分が1番気持ちよく投げられるフォームで投げられてたんだと思う。それで合唱が起きたり、明らかに応援してくれる人が増えてきて自信が出来たんですよね。
ーー自信を持って作られた新曲が聴けたことで、今後の忘れらんねえよの作品が楽しみになりました。それは別に、次が勝負とかそういうことじゃなくて。
柴田 : でしょ!? 俺も普通に楽しみですもん。
西澤 : その楽しみを共有しつつ、今後もOTOTOYは忘れらんねえよを応援していきたいと思います。
柴田 : ありがとうございます! 本当に最高の新曲が出来たんで。
ーーたくさんの人に聴いてもらいたいですよね。
西澤 : でもね、実は今回、OTOTOYからの配信はないんですよ(笑)!
柴田 : なんだそれ!! じゃあ、みなさんお店でCDを買ってください(笑)。
忘れらんねえよへのラヴレター
拝啓 柴田隆浩さま 梅津拓也さま
初のベスト・アルバム『忘れらんねえよのこれまでと、これから。』発売おめでとうございます。リリース前のこの時期、普段以上にフル稼働しているお2人の姿や周囲のスタッフさんの姿が目に浮かびます。バンドにとってベスト・アルバムとは? レコード会社や事務所にとってベスト・アルバムとは? それは僕にはわかりません。ただ、僕がいちファンとして感じているのは、このベスト・アルバムで忘れらんねえよが成人を迎えたような、そんな気持ちです。
1st『忘れらんねえよ』では、チンコとウンコしか言わないガキんちょの小学生が、2nd『空を見上げても空しかねえよ』では部活に青春を燃やすニキビ顔の中学生が、3rd『犬にしてくれ』では反抗期を迎えてグレた高校生が、そのときどきの表情を曲として見せながら、卒業して行きました。その途中には、出会いも別れも、嬉しいことも悲しいことも、一般人の我々からは想像もつかないほどたくさんの出来事があったと思います。そして今、晴れてベスト・アルバムのリリースという成人式を迎えた2人の姿はとても凛々しく、清々しく、逞しく、ロックバンド「忘れらんねえよ」として確かにそこにあります。
恋や、友だちや、嫉妬や、お金や、人生としか言いようのないさまざまな事柄や感情を、そのつど歌に込めて叫んできた柴田さん。体調のアクシデントと戦いながらもステージでは最高のロック・ベーシストとしてのパフォーマンスを魅せてきた梅津さん。残念ながら脱退してしまったものの、酒田さんの存在感も確かにこのベスト・アルバムに刻み込まれています。数えきれないくらい原稿を書いてきて初めてバンド名に触れますが、「忘れらんねえよ」とは良く言ったもので、アルバムに収録された曲たちはいつでも脳内再生できるくらい、忘れられないメロディとして常に僕の心の中にあります。どうか、この先も日本一バカバカしくてかっこいいバンド・忘れらんねえよとして、最高の楽曲たちで僕らを、いや僕を楽しませてください。
『忘れらんねえよのこれまでと、これから。』を、影ながら近所の子どもたちの成長を見守ってきた無職のおっさんのような気持ちで聴きながら。― 岡本貴之(フリーライター)
拝啓 柴田隆浩さま 梅津拓也さま
忘れらんねえよと出会って約3年間、たくさんの思い出があります。なかでも「全力ドミノ挑戦編 8日間カンヅメで6万個並べて日本記録達成」は忘れられないイベントです。個人的にやってしまった悪事に対する反省の意を示すために、僕はUst中継中に坊主になりました。その姿をみたニコ生ユーザーたちからは「あばれる君www」というコメントが数多くつきました。後日放送された総集編では、柴田さんによる発言により坊主の理由が判明し、「こいつは最低だ」という文字が画面上を駆け巡りました。正直、めちゃめちゃ凹みました。全部自分が悪いんですけど、叩かれることの辛さを身にしみて感じた瞬間でした。
忘れらんねえよは、そんな炎上スレスレの企画をやってきたバンドでもあると思います。とはいえ、誰かを傷つけるとかそういうことではなくて、無観客ライヴだったり、24時間Ustだったり、全力野球だったり、「一体どこに向かってるんだ、音楽やれよ」ということを言わずにいられない企画をやってきたと思います。ただ、イベントの企画段階から参加している僕ですら、なにをしているのかわからなくなるときが多々ありました。特に、レコード会社VapのA&R知念さんと24時間Ustの台本を1週間ほとんど寝ずに作っていたときは、忘れらんねえよに出会わなければよかったと思ったほどでした。でも、Ustが終わって「バンドやろうぜ」を大合唱したときに、忘れらんねえよを応援してきてよかったと心から思いました。まあ、別日に設けた打ち上げに、メンバーが1人も来なかったときは、俺たちの関係はこれきりと思ったんですけどね(笑)。
僕は「忘れらんねえよ」という楽曲は、希代の名曲だと思っています。だから、一時期、BPM172以上で、ズチズチというリズムを取り入れることに必死だった柴田さんのことは応援してましたが、「忘れらんねえよ」みたいにキャッチーで強靭なメロディでグルーヴを生み出すような曲を作ってほしいと思っていました。そして、このたび「別れの歌」という名曲が生まれ、本当に感動しています。一緒に辛い企画を走ってきた自負があるので、酒田さんの脱退に関しても、自分ごとのように気持ちが揺さぶられました。精神的にも物理的にも辛い時期があったと思います。でもそれが、忘れらんねえよにおいての名曲に昇華されたというのは、バンドをまっとうしているということじゃないかと思うのです。
柴田さん、ぜひ飲みにいきましょう。梅津さん、ランチいきましょう。俺はあんまり感情を表に出さないのでわからないかもしれないけど、忘れらんねえよのこと、めっちゃめちゃ好きなんですよ。
西澤裕郎(OTOTOYディレクター)
忘れらんねえよの配信作品はこちら
LIVE SCHEDULE
忘れらんねえよ主催ツレ伝ツアー2016
2016年2月21日(日)@札幌ベッシーホール SOLD OUT
2016年2月28日(日)@浜松窓枠 SOLD OUT
2016年3月5日(土)@岡山IMAGE ツレ : KING BROTHERS
2016年3月27日(日)@東京TSUTAYA O-EAST SOLD OUT
BEA×Zepp Fukuoka presents FX2016 Zepp Fukuoka Final Stage
2016年3月19日(土)@Zepp Fukuoka
HAPPY JACK 2016
2016年3月20日(日)@熊本B.9V1・V2・V3、Django、ぺいあのPLUS’
AIR Presents LIVE SHUFFLE! 2016
2016年3月21日(月・振)@長崎 DRUM Be-7
セックスマシーン presents 『明日への活力!』 ~ガチンコ2マン60分~
2016年4月15日(金)@神戸太陽と虎
BLUE ENCOUNT presents TOUR2016 THANKS〜チケットとっとってっていっとったのになんでとっとらんかったとっていっとっと〜
2016年4月23日(土)@鹿児島SR HALL
BLUE ENCOUNT presents TOUR2016 THANKS〜チケットとっとってっていっとったのになんでとっとらんかったとっていっとっと〜
2016年4月24日(日)@宮崎SR BOX
ARABAKI ROCK FEST.16
2016年4月29日(金)・30日(土)@みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
※出演日未定
PROFILE
忘れらんねえよ
ここじゃないけど、今なんだ。
僕たちは、この胸の高鳴りを信じる。
柴田隆浩(ボーカル、ギター)
梅津拓也(ベース)
[サポートドラム]
マシータ(ex-BEAT CRUSADERS / ex-NATSUMEN) / タイチ(爆弾ジョニー)