俳優・木村達成が考える「歌を届ける」ということ──初のソロ・コンサートに込めた想いを語る
舞台のみならずドラマ・映画など幅広いジャンルで活躍中の俳優・木村達成。彼のデビュー10周年を記念して、2022年12月29日、30日の2日間にわたって行われた『木村達成 10周年コンサート -Alphabet Knee Attack-』の模様が2月18日よりWOWOWにて独占放送・配信される。木村が過去に出演したミュージカル作品のナンバーに加え、ディズニーアニメーション『ヘラクレス』の主題歌“Go the Distance”や優里の“ドライフラワー”など、さまざまな楽曲を披露した今回のコンサート。OTOTOYでは、その放送を前に木村達成にインタヴューを実施。放送の見どころや、セットリストに込めた想い、そして知られざる彼の音楽遍歴まで語ってもらいました。
ソロ・コンサート〈木村達成 10周年コンサート -Alphabet Knee Attack-〉
番組情報
〈木村達成 10周年コンサート -Alphabet Knee Attack-〉
放送日:2023年2月18日(土) 放送・配信〈WOWOW ライヴ〉〈WOWOWオンデマンド〉
出演:木村達成
ゲスト出演:加藤和樹(29日出演) / 柿澤勇人(30日出演)
MC:川久保拓司
収録日:2022年12月29日(火)、30日(水)
収録場所:東京 ヒューリックホール東京
番組URL:https://wowow.co.jp/release/006601
INTERVIEW : 木村達成
俳優・木村達成がデビュー10周年を記念して2022年12月29日(木)30日(金)の2日間にわたって開催した初のソロ・コンサート〈木村達成 10周年コンサート -Alphabet Knee Attack-〉が、WOWOW にて2月18日(土)に放送・配信される。その内容は、ミュージカル曲の他、沢田研二、尾崎紀世彦、大瀧詠一、チェッカーズ等、昭和歌謡曲・ポップスをフューチャーしたもので、俳優と素顔の両面からパーソナリティが伺えるものとなっている。舞台のみならず映画、ドラマへの出演と活動の幅を広げる木村にとっての音楽とは?また、コンサートのサブタイトル“Alphabet Knee Attack”とはなにか?
インタヴュー・文 : 岡本貴之
写真 : MANAMI
オーディエンスがいないと嫌なんです
──デビュー10周年、おめでとうございます。活動を振り返ってどんな思いを持ってらっしゃいますか?
木村達成(以下、木村):ありがたいことにここまで俳優として他に目移りせずに夢中になり続けられて、挫折もせずに走り続けられた自分を褒めたいなって思います。正直、5年目ぐらいまでは自分ひとりでやっているような感覚の方が強かったんです。でもやっぱり誰かがいて自分がいるんだっていうことを理解しはじめたのも、この10年のなかのすごく大きなポイントだったのかなと思います。もちろんひとりで戦わなきゃいけない瞬間もあるけど、 いろんな人に助けられたなと思う10年でしたね。
――「挫折せずに」とおっしゃいましたけども、10年の月日のなかには色々乗り越えなきゃいけないこともあったと思うんです。それでも後ろを向かずに前を向いてきた?
木村:いっぱい後ろを向きましたし、逃げ出してやりたいとも思ったことも、もちろん何度もありました。そんなことがあっても、やっぱりかけがえのない10年だったというか。おもしろさ満載の10年でした。
――10年目にして、昨年はじめてのコンサートがありました。どのような心境でどんな準備をして臨んだのでしょうか。
木村:コンサートの企画がはじまったときは、自分がステージ上にひとりでバンドをバックに歌ってる姿があまり想像できなかったんです。「本当にやるの?」っていう気持ちは強かったし、コンサートをやることに結構抵抗はあって。自分は別にアーティストでもないし、 歌っていったら、舞台上でその役のなかで歌ったりとか、あとはお酒を飲みながらスナックで歌うぐらいだったので(笑)。お客様からお金をいただいて、自分がそれ以上のものを繰り出すっていうことができるのかなって考えたときに、できないなっていう気持ちの方が強かったんです。でも、いざバンドと一緒に合わせたときに「あ、これはおもしろいものになるんじゃないかな」っていう実感がやっと湧いてきたというか。何事も挑戦だし、10年目にして、最後にそういう挑戦が待ってるっていうのが、ドラマチックでいいなと思いました。
――俳優として大きなステージに立ってきたわけじゃないですか?コンサートのステージっていうのはまた全然違うものですか。
木村:そうですね。決まったセリフもないですし、そういうテンションでやらなきゃいけないこともないし、全部自分次第だから、まあなるようにはなるかなとは思いながらやってました。あまり枠にはまってない、自分のフレキシブルな考えでいろんなもの繰り出せる瞬間ではあったので。発音する音でもそうですけど、一言一句が挑戦でした。
――自分次第という意味だと、セットリストもご自分で決めたんですか?
木村:セットリストは、自分と、スタッフさん、WOWOWの方々とか、いろんな方に入ってもらいながら決めました。
――昭和歌謡曲、ポップスを多く歌っているのが印象的だったんですけども、元々そういう音楽がお好きで、普段から聴いたり歌ったりしているのでしょうか。
木村:はい、スナックで歌ったりとか。
――スナックで?
木村:そうです。僕はもう、全部スナックで構成されてるので(笑)。
――カラオケルームに行ったりではなくて。
木村:カラオケルームじゃなくて、スナックです。やっぱり誰かが聴いている、オーディエンスがいないと嫌なんです。自分の好きな曲をただ歌うっていうのも好きじゃない。だから、ひとりカラオケとか絶対できないです。
――じゃあ、今回のコンサートはスナックを拡張したような気分だったわけですか。
木村:まあ、そうですね(笑)。普段だとスナックって大体歌っても5曲くらいなんですよ。それが10数曲、1時間半ぐらい自分がオンステージできてるっていうのはすごく痺れましたよね。ヒーローになれる瞬間がそんなにあったというのは興奮しました。
――歌ってみて、「あ、この曲結構反響あるな」とか、特にご自分のなかで印象に残った曲ってどんな曲でしたか。
木村:僕的には “カブトムシ“(aiko)かな。あれはお客さんが聴いてる顔を見ていちばん印象に残ってますね。全体的に前半が結構激しい曲だらけだったので、一気に緩急をつけてガガッと変えたのがイメージ的にはすごく頭のなかに残ってます。
――エンディング曲は2日間で違いましたが、そこはコンサートをどう結ぼうと思って決めたんですか。
木村:初日は“また逢う日まで“(尾崎紀世彦)がいいなと思って。年末だったし、また会うときは楽しく会えたらいいなっていう意味も込めて歌いました。2日目に関しては(尾崎豊“15の夜“)、年末に全部ストレスを解消するというか(笑)。「大人に負けないぞ」という気持ちを込めて、挑戦的な曲にしました。
――ミュージカルナンバーのコーナーについても訊かせてください。特にご自分のなかで、キャリアのなかでのターニングポイントだったりとか、思い入れのある曲を挙げてもらえますか。
木村:“映画みたいに“(ミュージカル『四月は君の嘘』より)は、唯一自分が歌ったことのある曲だったんですけど、これは世界初演で、ブロードウェイチームも協力してもらって日本で幕を開ける作品だったんです。その分、本当に頑張らなきゃっていう奮起したミュージカルだったんですけど、すごく思い出があったのでこの曲はぜひ歌いたいと思ってセットリストのなかに入れてもらいました。あと、ターニングポイントという意味で言うと、“こんな夜が俺は好き“(ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』より)です。作品のなかで自分は歌っていないんですけど、ミュージカルでド真ん中で歌う厳しさとか、「全力で走りきるのでついてきてください、お願いします」っていうようなスタンスを覚えはじめた作品ではありました。