【BiSH】Episode81 アユニ・D「そこにいる全員が幸せな気持ちになれるライヴがしたい」
332日ぶりとなる有観客ワンマン・ライヴ〈REBOOT BiSH〉を2020年12月24日に開催するBiSH。ライヴに向けて清掃員への想いが日に日に高まっている彼女たち。オトトイでは、怒涛の日々を過ごすBiSHに12周目となるメンバー個別インタヴューを敢行。第5回は、PEDROとしての活動も並行して行うアユニ・Dに、これまでの活動を振り返りながらライヴへの想いを伺いました。
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INTERVIEW : アユニ・D
PEDROも合わせると2020年は4回以上もアユニ・Dへインタビューをしているが、そんな短期間でも彼女の言葉は、より明確に力強くなっている。もはや一人のアーティストとしての存在感が半端ない。その感じは「スーパーヒーローミュージック」で炸裂していると思っている。さぁ、遂に有観客ワンマン・ライヴも決定したBiSH。コロナに負けるな! BiSHは、我々のスーパーヒーローだ!!!
インタヴュー : 飯田 仁一郎
文 : 井上 沙織
写真 : 宇佐美 亮
それぞれ本当に強みが増したと思う
──有観客でのライヴが発表されましたね。12月24日、11ヶ月ぶりのワンマンです。
アユニ : 表向きの情報は最近解禁されたばかりですけど、私たちはコロナで音楽や文化が真っ先にシャットダウンされても止まるわけにはいかなくて、音楽は死なないし死なせてはいけないという気持ちでずっと動いていました。12月24日のタイトルも〈REBOOT BiSH〉、再起動という意味ですけど、BiSHとして表に出ていない時期も一人ひとり何かしらやっていて、誰一人止まってはいなかったと思うんですよね。
──アユニはPEDROのツアーがありましたけど、BiSHとしても止まっていなかった感じがありますか。
アユニ : ありますね。バラエティだったり、演技だったり、BiSH以外の音楽だったり、なんだかんだ言って目まぐるしい日々だった気がします。個別の仕事が増えて、それぞれやりたいことが明確に出来ていたんじゃないかな。この間深夜のバラエティ番組にハシヤスメが出ていて、すごく面白くて。ハシヤスメはBiSHになる前から芸能活動がしたかった人間だから、ちゃんと花が咲いているなというか。他のメンバーが活躍しているのを見ると改めて尊敬しますね。それぞれ本当に強みが増したと思います。それをライヴで見せられるのが楽しみですね。11ヶ月も有観客でのライヴをしなかったことなんてなかったので、どうなるのか想像できないです。
──でも無観客ではライヴをしていましたよね。8月の〈TOKYO BiSH SHiNE6〉はすごくよかったし、いろんな制限がある状況下で新曲をちゃんと披露する、その姿勢を見せ切ったというのがすごいなと感激しました。
アユニ : お客さんがいない客席で踊ったり暴れたり、客席にでっかいクレーンを置いて普段じゃできないカメラワークにしたり、面白かったです。がむしゃらにできたと思うんですけど、やっぱり寂しかったですね。リンリンは寂しくて泣いちゃいましたし。すごく楽しかったけど、スタッフさん含めBiSHチーム全員が寂しいという感情があったと思います。お客さんを入れてライヴがしたいとより思った日でした。
田渕ひさ子さんはスーパーヒーローだなって
──『LETTERS』についても話を聞かせてください。アユニにとってどんなアルバムになりましたか?
アユニ : もともとコロナがなければ作る予定のなかったアルバムなので、話を聞いたときは泣きそうになるほど嬉しかったです。コロナでライヴができなくなってから、目の前が真っ暗になる回数が多くなって。何もなくなってしまうのではないかとか、これからどうやって生きていけばいいんだろうとか、ふとした瞬間に思っちゃって。そんなときに、今できる限りのことをしたいと思っているのはBiSHもBiSHチームも皆一緒なんだっていうことを知れて、すごく嬉しかったんです。止まってはいけないというか、暗い世の中で私たちが沈んでいたら、私たちの音楽や私たちを好きでいてくれる人にも申し訳ないという思いがずっとあったので。
──「スーパーヒーローミュージック」では作詞を担当していますね。
アユニ : (田渕)ひさ子さんを想って書いた曲です。いままで音楽っていう存在が自分の中であやふやだったんですけど、その輪郭をはっきりさせてくれた人がひさ子さんで。自分の中のスーパーヒーローですね。あと、コロナだから書いたっていうわけではないんですよ。
──そうなんですか?
アユニ : 音楽を好きになって、音楽に救われて、私を救ってくれているのは「音楽=その音楽を作っている人間」だから、自分の視界を煌びやかにしてくれたひさ子さんはスーパーヒーローだなって。歌詞を書いたときはその想いが一番あふれていた時期で、それと世界がちょっとずつ暗くなっている時期がたまたま重なったんですよね。メンバー全員が歌詞を提出してその中から選ぶコンペ式だったんですけど、BiSHに入ってから一番「絶対に採用されたい!」と思って書いたので、割とすぐに渡辺さんから返信が来たのが嬉しかったです。
──アユニもそんなヒーローになりたいと思いますか?
アユニ : あわよくばヒーローになりたいですけど、私はヒーローになれる自信はないです。私はまだヒーロー側じゃなくて、ヒーローに憧れている翼のない青年側なので。だからこそ「スーパーヒーローミュージック」っていう曲が書けたと思います。もしこの曲で採用されなかったらこの歌詞は他の曲に使いまわそうって思っていたくらい捨てたくない言葉たちでした。
──「スーパーヒーローミュージック」のMVはどうやって撮ったんですか?
アユニ : あれはスクランブル交差点のセットで。映画ではよく使われているみたいなんですけど、MVでははじめてだったみたいです。
──そんなところがあるんですか。「LETTERS」は本当の渋谷ですよね?
アユニ : そうです。スクランブルスクエアから渋谷の景色を撮りました。「スーパーヒーローミュージック」も「LETTERS」も雨が降る予定じゃなかったんですけど、どちらも雨が降ってみんなびしょ濡れになって。それがエモさの演出になっていたり、よくできていますよね。
──「STORY OF DUTY」MVロケ地の軍艦島はどうでしたか。
アユニ : 面白かったです!私、廃墟とか非現実的な空間がすごく好きで憧れを持っていて。そういう場所に一日中居られたのが幸せでした。あれ全部CGみたいですよね。ビルは本物で、島全部が廃墟みたいな感じなんですよ。
──毎回膨大な時間をかけてMVを作るから、それぞれに思い入れもありますよね。
アユニ : 本当に全部貴重な体験だなと思います。アー写撮影とかもそうですし、それこそライヴとかもそうですけど、BiSHにならなかったら経験していなかったことなので、どれだけ大変なことでもやり終えたら糧になるんだなっていうのを実感していますね。
自分が生きていることと、みんなが生きていることが確認し合える時間になったら
──半年前に取材したときはずっと家でギターを弾いていると言っていましたが、半年経って生活はどう変わりましたか。
アユニ : 半年前はいきなり全てが止まってシャットダウンされちゃったから、この世の全員が不安になって、気持ちも曖昧なまま手探りな状態で過ごしていたと思うんです。そのときは仕事も空白の時間ができたので、制作や自分のやりたいことに時間をかけたりできていたんですよね。だけど出す予定のなかったアルバムを作ったり、ライヴをやる方法を考えたりして時間が経つにつれて、徐々にいろんなやり方が見えてきて。気づかないうちに新しいほうへどんどん動き出していった気がします。そこから自由気ままに生活する時間もなくなっていって、怒涛の日々が戻ってきた感じがありましたね。
──怒涛の日々が戻ってきたことはアユニにとって幸せなことですか?緊急事態宣言が明けてアイナにインタヴューをしたとき、「正直、私は仕事が一旦ストップしてよかったんです。このままだったらしんどかったです」と話していたのが印象的で。
アユニ : それはめちゃくちゃあります。ただ、忙しくて辛いこともあると思うんですけど、何もなくなるのも辛いので、何もない人生より何かある人生の方が幸せですね。明日がどうなるのかは分からないけど、徐々にライヴや音楽ができるようになってきたのは嬉しいです。
──12月24日の〈REBOOT BiSH〉への期待は膨らんでいますか。
アユニ : はい。いままでほぼ毎日のようにライヴをしていたので、ライヴは日常生活にあるものというか、衣食住と同じくらい生活に溶け込んでいたものだったんです。だけどライヴが一切できなくなって、当たり前だと思っていたものがなくなってその大切さに気づいて。ライヴは非日常で、すごく特別なものなんだっていうことを痛いほど感じましたね。
──どんなライヴにしたいですか?
アユニ : 声が出せなかったり、マスクの着用が必須だったり、会場に入れる人数も絞られてくると思うんですけど、久しぶりに同じ場所で同じ音楽、そして同じ瞬間を共有できる日なので、そこにいる全員が幸せな気持ちになれるライヴがしたいですね。感動させたいとか感動したいとかいまはどうでもよくて、毎日みんないろんなことがある中で生活していて、些細なことでも大きなことでも、嬉しいことも嫌なこともあったと思うんです。その全てをぶつけあえる日だったらいいなと思いますね。やっぱりライヴをすると嫌なことも全部忘れてすごく気持ちよくて、「ライヴってこんなに楽しいんだ、やめられないな!」って思うんです。ライヴをやった後にしかその感覚は感じられないし、それくらい私にとってライヴは生きていることを実感できるものなので、自分が生きていることと、みんなが生きていることが確認し合える時間になったらいいなと思います。
編集 : 西田 健
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LiVE iNFORMATiON
■ REBOOT BiSH
日時 : 2020年12月24日(木) 開場18:00 / 開演19:00
会場 : 国立代々木競技場 第一体育館
詳しくはこちら
PROFILE
アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・D からなる“楽器を持たないパンクバンド” BiSH。
2015年3月に結成。5月にインディーズデビュー。2016年5月avex traxよりメジャーデビュー。
以降、「オーケストラ」「プロミスザスター」「My landscape」「stereo future」等リリースを重ね、横浜アリーナや幕張メッ セ展示場等でワンマンを開催し、ロックフェスにも多数出演。
2019年7月3日に、メジャー3rdアルバム「CARROTS and STiCKS」をリリース。
9月23日には、初の首都圏以外での アリーナ公演となったワンマンライブ “And yet BiSH moves.”を大阪城ホールにて実施、即日SOLD OUT。
2020年4月13日より、TVアニメ「キングダム」オープニングテーマに起用された新曲「TOMORROW」を配信。
7月8日には、BiSHとして初となるベストアルバム「FOR LiVE -BiSH BEST-」を発売することを発表。
加えて、7月22日には、メジャー3.5th AL「LETTERS」をリリース。