
、、スイセイノボアズ、 … 忘れてしまったロックの初期衝動とあくまでも日本語にこだわる、2009年に燦然と輝く東京ロックスたち。ここ2年程で台頭してきた彼らは、相対性理論のように秘密めいてるわけでもなく、ダンス・ロック勢のように現代的でもないが、とにかくまっすぐに図太く突き進む。しかも、生きるすべをライブに求め、毎日毎日至る所で演奏している。だから当然みんな上手いし、パフォーマンス力は、15年以上のキャリアを持つ御大たちと肩を並べる。東京が盛り上がっているのは、現場レベルならば奴らのせいだってことを定義しておこう。70年代も90年代も一緒くたにYouTubeで聴いちゃった無法者達が、全国を荒らしにいく日は近いのだ!
中でも、2008年に結成されたは、はじまったばかりなのに、みんなみんな騒いでる。「ヤバい奴らがいる!」ってね。これは乗り遅れるわけにはいかないぞってことで、直撃インタビューを敢行。現在の東京で興っていることの一部分を切りとる重要な証言となった。
インタビュー&文(Limited Express(has gone?))

オワリカラ インタビュー
ー結成のいきさつを教えてください。
タカハシヒョウリ(以下T) : 10代の頃からバンドをやっていたけれど、それはもっぱら友達と。そのうちに、音楽的に満足できなくなった。だから2007年にバンドを解散してから1年間、ずっと一緒にやれるメンバーを探したんです。しかも一人がずばぬけて目立っているため、バンドが駄目になっているような、そんな人ばかりを集めてバンドにしたい。そう思って集めたメンバーが、ベースのツダフミヒコ君とドラムのカワノケンタ君。キーボードのカメダタク君は、キーボーディストをいろいろ紹介してもらった中でも、ずば抜けて良かったので、すぐ誘いました。個人個人がイーブンでぶつかれる理想のロック・バンドになったと思っています。
ー今のサウンドは、あなたが結成の時に思い描いていたものですか?
T : 4人が出す音ありきなので、最初にイメージしていたものからは変わってきています。けれど、フレーズやメロディーがOKかNGかの感覚的なものは、メンバー間で当初から一致していますね。だからセッションで曲を作っていくのですが、非常にやりやすいんです。
ー去年の3月に初ライブですね。結成から初ライブまでは順調でしたか?
T : やっぱり、はじめは苦戦しました。最初は、完璧なコミニケーションが取れなかったので、お互いを高めあうことができなかった。半年を過ぎた頃、メンバーの音を聴いて、自分のテンションがあがって、更にその音を聴いた別のメンバーのテンションもあがっていくようになった。そのころから、ライブを良いって言ってくれる人が増えたように思います。

ーあなた達の活動やサウンドは、同じく東京でとても勢いのあるスイセイノボアズと近い匂いを感じます。
T : 彼らは同じ大学の先輩なんです。ぱっと聴くとかなり違う部分もあるのですが、根本的なものが非常に似ていると思います。それは、彼らだけでなくや等、よく一緒にやっているバンドにも感じています。
ー確かに皆さんからは、新世代のサウンドを感じることができます。
T : でも、まだこの世代はどうだっ! て言える程成熟していないと思います。例えば「インディーズとメジャーの垣根がどう?」って話になった時「インディーズはなんとなくかっこいいけど、メジャーはなんとなくかっこ悪い」みたいな曖昧な意見しか持てていないんです。つまり、まだ何も知らない。でも、何も知らないからこその輝きが、僕等にはあると思う。思春期を迎えている感じでしょうか。今後、精神的に成熟して、そこで意見が食い違い分裂したりしながら、さらにシーンの色が出てくるんじゃないかな。
ー皆さんから感じる独特の匂いはなんなのでしょう?
T : ちょうど2000年くらいが高校生だった僕等の世代って、80年代や90年代を俯瞰できる世代なんじゃないかな。90年代って、今の日本のロックに与えた影響はとても強い。そのことは知識としてはあるけど、リアル・タイムではないので感覚として知らない。だから、全年代を同じようにとらえている。具体的な事例を挙げると、上の世代には当たり前のナンバー・ガールを、僕は聴いたことがないんです。既に彼らは、日本のロック史の一部だったんですね。
ーでは、あなたが影響を受けたバンドは?
T : 実は、ドアーズなんです。あと井上陽水やデビットボウイ、ソフト・マシーン。めちゃくちゃでしょ? 90年代をすっ飛ばすことができるのが、この世代の特徴なんです。というのも、僕が音楽を聴きだした頃には、YouTubeが既にあった。TVから流れてくるはやりの音楽が、全てじゃなかったんです。だから、J-popは全く聴いていない。YouTubeでドアーズやストーンズばかりを聴いていました。

ーメンバー皆が、そうだったのでしょうか?
T : それはわかりません。でも、このバンドで皆がやろうと思ったことは、ピンク・フロイド、ソフト・マシーン、ドアーズ、そして日本語を、全部味方につけて新しいサウンドを創れないかってこと。
ーあなたたちは、誰に向けて曲を創っているのですか?
T : 音楽を創る時に、この曲はこういう人に踊って欲しいとか、このシーンに受けるとかの具体的なリスナー像は考えません。大事なのは、さっきの感覚の部分。でもただ一つあるとすれば、10代のリスナーだった自分に聴かせたいし、10代の自分を裏切らないような音楽を創りたいんです。
ー裏切るって?
T : 誠実さがないことです。あらゆることは、怪しいじゃないですか? 音楽ぐらいは、怪しくなく、有無を言わせない説得力があって、グッと人の心を掴むものであって欲しい。10代の頃って音楽を必要としてるんです。僕等は、もちろん同世代も上の世代も巻き込みたいんですけど、一番音楽を必要としている世代に「だせぇな」って思われたくない。「かっこいいな」「僕もバンドやりたい」って思われるサウンドがしたいんです。
ーあなたは、どのような10代を過ごしたのですか?
T : もっぱら本やCDを集めまくって、部屋にこもって宅録する、そんな10代でした。ライフ・スタイルも含め、やっぱり音楽が僕に与えた影響は大きかったんですよね。

ーあなたのような10代が求める音楽とは、どのようなものでしょうか?

T : ドアみたいなものを常に求めている。外に出れば世界は広がるけれど、聴くことでもそうなりたい。例えばソニック・ユースが好きで、彼らが推薦するバンドに出会うとか。彼らのファッションやライフ・スタイルに影響されるとか。もっとたくさん、出会えるドアを増やしたいんです。
ー30歳になっても、10代に向けて歌うのですか?
T : そうしようと思っています。年齢を重ねると、色んなことを切り捨てなくちゃいけない。そうした時に、10代の自分の判断を物差しにしようと思います。50歳で音楽をやっていて同世代の人が評価してくれても、10代の人にかっこ悪いって思われたら駄目。世代を凌駕できないといけないと思うんですよ。
ーあなた達が開催するイベントには、ジャックスの早川義夫さんが出演しますね。驚きました。
T : まず早川さんありきだったんです。今の僕等のシーンと、だいぶ上の世代である早川さん達が、ものすごくリンクしているような気がするんです。早川さん達が始めたサウンドが、何十年も繋がり生まれたのがであったり僕等であったりする。イベントに来た10代や20代前半の人達に、早川さんを聴いてもらって、僕等と似た手触りや近しいものを感じもらいたい。そして、ジャックスまでを聴いてもらえたらと思うんです。
ー自身も新宿のライブ・ハウスmotionで働いておられますね。盛り上がっていると盛んに言われている東京のインディー・シーンに対しては、どのように考えていますか?
T : 皆が言う程盛り上がっているとは思わないです。もしくは、いつの時も盛り上がっていたんじゃないでしょうか。今は、たまたま共有できる音楽を鳴らす人たちに活気があるというだけ。東京にいる共有できる何10バンドのことをシーンと呼んでくれるなら、そのシーンがもっと開けていけば更に盛り上がっていくと思う。サウンドの近さよりも、世代とかアティチュードでの近しい部分があるから。そんな雑多なシーンだからこそ、もっと色んなものを取り入れて、広がっていくことも出来るはずなんです。
ーでは、今新宿のmotionでは何が興っていますか?
T : 僕がいうのもなんですが (笑)、もの凄く盛り上がっていると思います。バンドを商品として扱わない。それが支持されたされたので、人が集まってきているんだと思います。ライブ・ハウスが商売なのは理解しているし、売り上げを出すことを一番と考えるべきなのかもしれないけれど、そのことに馴れちゃって当然と考える風潮が強くなっていた。でも、まず音楽が好きでライブ・ハウスをやってて、その上でお金を儲けようって考えなくちゃいけないと思う。売り上げを出す結果は一緒だけれど、過程が違う。音楽を第一に考えている人たちがmotionにはいるし、東京のライブ・ハウスにもそう言う人が増えてきた。もちろん、もっともっと増えて欲しいとも思っています。
このインタビューはVOICE WAVEで聞ける!
recommuniと夢中になれる放送局 ボイス・ウェーブが協力してお送りするマンスリー企画が始まりました。オススメのアーティストのインタビューは、recommuniで読めて、VOICE WAVEで聞くことができます。
VOICE WAVEでインタビューを聞くにはこちら → http://www.voice-wave.jp/recommuni/index.html
VOICE WAVEは、テキストと音声で構成された新しいメディアです。コンセプトはただひとつ「何でも面白がろう! 」。 テレビや雑誌では紹介されなくても知る人ぞ知る創造性溢れた人や物や行為をピック・アップしていきます。きっと新しい「楽しい! 」を見つけられると思います。番組はランダムに増殖・変化・進化していきます。
ホームページ : http://www.voice-wave.jp/
Profile
「爆死したジャズ・メンのようなリズム隊、機材の砦に住むジミー・スミス、
ジム・モリソンの墓を暴く唄うたいが在籍するサイケデリック・ロック。
最先端の暴力をふるいます。都市生活の味方です。
カメダタク、カワノケンタ、タカハシヒョウリ、ツダフミヒコら日本産の健全な平均年齢20代前半の若者による。
主に都内で精力的に活動中。
2009年4月、ライブ活動開始。年間60本。2008年5月、自主制作音源『2008 DEMO CD1ST』をリリース。自主制作、ほぼ無宣伝でディスク・ユニオン・インデーズ・チャートに約二か月連続でチャートインし、最高位4位まで上がる。2008年度年間チャートの7位も記録。
2008年11月、六曲入りデ自主制作2ndデモ発売。ディスク・ユニオン・インディーズ・チャートにちょくちょくチャートインし、最大3位まで上昇。
2009年5月9日、3rdデモを発売。16日にはレコ初企画も控える。
過去に遠藤ミチロウ(ex.スターリン)、増子信二(DMBQ)、日暮愛葉andLOVES、WATCHMAN(Coalter of the deepers, ex MELTBANANA)、ワッツーシゾンビ、田端満(レニングラード・ブルース・マシーン,zenigeva,ex BOREDOMS)などの濃厚なる先人と共演。」

LIVE SCHEDULE
- 5/16(土) OWARIKARA presents! ! ! ! 『ある朝目覚めたら、デビッドボウイになっていた』@秋葉原CLUB GOODMAN
open/start 18:00/18:30
adv/door 2000/2300
Lコード:75451]

最新の東京オルタナティブ・サウンドを紹介!!!
マヒルノ 『辺境のサーカス』
2000年代→2010年代のはざまに突如現れた「狂気」!悪夢か白昼夢か、とてつもなく巨大な世界観が君を飲み込む。すべてが衝撃的なマヒルノのデビュー作。
SuiseiNoboAz 『SuiseiNoboAz2』
東京オルタナティブ・シーンを牽引するスイセイノボアズ。ミクスチャー的な手法を取り入れていようと、ピクシーズ直系のノイジーギターを炸裂させようと、スイセイノボアズにも単純なレッテル張りは不要で不毛である。この原石がいったいどこまでの大物なのか、まだまだ見えない。
YOMOYA 『YOURS OURS』
2003年より活動する4人組。エレクトロニカ、ポスト・ロック、オルタナ、USインディー、フォークなどを消化した、高次元の音楽性と人懐っこさが同居したサウンド、電飾を施したステージで繰り広げる激しさと繊細さが交錯するライヴ・パフォーマンス、そしてなにより文学性や叙情性を感じさせるメロディー、日本人の心の琴線に触れる声を武器に、アラブ・ストラップの前座を務める傍ら、ドン・マツオのバック・バンドを務めるなど、邦楽洋楽の垣根を軽々と飛び越える稀有なバンドとして、存在感を示し続ける彼らの、待望の初公式音源にして、日本語ロックの新たなる金字塔。