過去と未来のミスター・ポップ・アート――フレデリック、みはらこーじと行くアンディ・ウォーホル展
「アンディ・ウォーホルを見て思ったのが、作品数とかすごいじゃないですか。俺もたくさん作れてるけど、まだ世に出せてないんですよね。それがすごく悔しくもなります。俺ももっとおもしろいもの持ってるんだぞとかすごく考えてて。だから、アンディ・ウォーホルくらい創り続けますよ」
音楽性、そしてアートワークを含め、ユーモアかつシュールな世界観に触れればひとたび頭から離れなくなってしまう。強烈な個性を放つ神戸発の4人組バンド、フレデリック。彼らがついに本格始動、プロデューサーに柏原譲(Polaris/ex.FISHMANS)を迎えたミニ・アルバム『うちゅうにむちゅう』のリリースを記念して、Ba&Cho、そして作詞作曲、アートワークも手掛けるみはらこーじを連れ「アンディ・ウォーホル展 -永遠の15分-」に行ってきた。みはらの世界観はポップ・アートに通じるものがあるのではないかと思ったが、その後のインタヴューによって、ポップ・アートとしての"わかりやすさ"はあれど、彼らの目指すものはもっと強烈な、人を変えてしまうようなものだということ、そして最後に彼が放った言葉。アンディ・ウォーホルとはまたちがう、ミスター・ポップ・アートの誕生を予感させる新たな存在をぜひ目にかけておいてほしい。
インタヴュー : 飯田仁一郎
写真 : 有田昌弘
OTOTOY限定!! アルバム購入者特典音源は「ほねのふね」別アレンジ・ヴァージョン
フレデリック / うちゅうにむちゅう
【配信価格】
mp3、wavともに 単曲 200円(M1のみ100円) / アルバム購入 1,350円
【Track List】
01. パパマーチ / 02. SPAM生活 / 03. 秘密のお花畑 / 04. bunca bunca / 05. アウトサイドの海 / 06. ほねのふね / 07. ほねのふね(extended version)※アルバム購入者特典音源
期間限定アルバム購入者特典!!
2014年3月12日(水)〜3月31日(月)までにアルバムでご購入された方には、PC&スマホ用の壁紙がついてきます。(PC、スマホとも画像は同じです)
だからストレートなんです。歌詞、わかりやすくないですか?
――森美術館で行われている「アンディ・ウォーホル展 -永遠の15分-」を観てきたわけですが、どうでしたか?
俺が1番に感じたのは、懐かしい感じでした。たぶん、日頃から常にあったものなのかなって。
――日頃からあった?
既に模写されて出回っててるじゃないですか。生活のなかに入り込んでで、それが生活の一部になってる。
――なるほど。みはら(こーじ)くんが、アンディ・ウォーホルに共感する部分ってどこかな?
いまって情報量が多いじゃないですか。村上隆とかは、その尖った部分をポップ・アートで表現していて。で、ストレートなポップ・アートって何なんかなって思ったときに、アンディ・ウォーホルだって感じました。
そうですね。1番伝わりやすい、親しみやすい芸術感という側面も僕らのなかにあるかなって思いますね。
――フレデリックも親しみやすいもんね。僕は、フレデリックのポップ・アートな部分のひとつに、歌詞があるなって思っているんです。
俺は自分が素直に聴いてきたもの、感じてきたものをばっと出していると思っているんですよ。だからストレートなんです。歌詞、わかりやすくないですか?
――僕は、みはらくんの歌詞、わけわからんと思ってて...。
(笑)。
――この人の頭のなかは完全に飛んでるなって感じ(笑)。例えば、今回だと「秘密のお花畑」とかって、どんな世界を描きたかったんでしょう?
「秘密のお花畑」は、妄想感が強くて。アニメの幸せな描写で、お花畑が見える想像とかがあるじゃないですか。王子さまと一緒に歩いた道から花が広がっていくような(笑)。なんかああいうときの感覚で書いたんです。
俺はたまってバンドに人生を変えられたんです。その衝撃っていまでも心地いい
――妄想家だ!
はい。妄想して物をつくることがずっと好きなんです。小学校のころから、ずっとわけわからんマンガ連載してましたし。ひたすら迷路とか書くのも好きですしね(笑)。いまは、音楽だけでなく映画も撮りたいなって思っています。創ることに関しては、なんでもしたいタイプなんですよ。
――その妄想感が、僕がみはらくんと「アンディ・ウォーホル展」に行きたいと思った理由なんですよ。もうひとつ歌詞で訊きたかったのは、「bunca bunca」って何?(笑)
この曲はもう楽しむ感じなんです。NHKとかで流れてそうなイメージじゃないですか?
――これは造語なんですか?
自分で勝手に言葉を作るのが好きなんです。ロゴとかも、形とか並びとかを楽しむほうで、どういう意味なんやろってことよりも、雰囲気で好きになる。これなんかもそんなに深い意味はなくて、「bunca」は“カルチャー"の文化のことで、ローマ字にしたらスゲーかっこよかったんです。だからそのまま。
――曲は、どうやって作っているの?
「秘密のお花畑」はファンクっぽい曲を作りたかったんですよね。先に曲をつくって、後でさっきの妄想の歌詞をのっけたらおもしろかったんです。ファンクってがっちりした濃い音が多いじゃないですか? そういうのになんかちゃらけた、可愛らしい歌詞を付け足したときの違和感というか、その感じを出したかった。
――なるほど。
「パパマーチ」の後半は、今回プロデュースしてくれた柏原譲さん(Polaris/ex.FISHMANS)のアイデアなんです。もともと「SPAM生活」にあったイントロをそのまま入れてもらって。これ、作ってる途中に親父が部屋に入ってきてすげー茶化してきたんです。それでこの曲にはまだ名前がついてなかったから「親父が来たしなー」と思って、「パパマーチ」にしたんですよね。俺からしたらそんな由来なんですけど、メンバーがめっちゃ気に入ってくれて。それからずっとライヴでやっている曲です。
――「bunca bunca」は、音楽的背景でいうと?
ディアフーフが好きで、こういう曲がうちのバンドにもあったらと思って作りました。結構リズムをメインにした曲なんですけど、風景も付けたいじゃないですか。だからサビのところでゆったり感を出してみたんです。俺はモチーフが多くて、コレっぽいのとか考えて創るんです。
――でもフレデリックは、そういう音楽的背景が読み取りにくいバンドだと思う。
解釈は曖昧なんです。例えばリズムを完全に真似たりはしなくて、俺ならこうするなっていうのがあるんですよ。だから、結局俺なんですよね。
――やっぱり、みはらくんの妄想が相当影響してるよね(笑)。今回、柏原さんのプロデュースはどうでした?
もう発見がすごかった。普通の人とまったく違う考え方なんです。あの人自体、いいのかどうかわかってない部分もあると思うんです。でもそれを楽しんでる感じ。常に遊び心を忘れない大人っていうか。俺はフィッシュマンズが好きなのですごく信じて任せることができた。そして、出来上がった曲は、全部、新曲として収めれるなって思ったんです。
――インディー・ロックにダブ色を入れると、ニュアンスがけっこう変わってくるなって思いました。将来を見越して、柏原さんに頼んだのでしょうか? つまり、ダブ的な匂いの強いバンドになりたいとか。
そういうわけではなくて、1番は、自分たちの見えない部分を教えてもらおうと思って。あとスリル感ですかね(笑)。自分たちとほど遠い人が出てきたときに、どういうことが起きるのか? その崖っぷちに立ってやる感じがすごく好きでした。
シュールなものは、すごく一瞬で世界を変えてしまうじゃないですか
――これを作ってしまったら、次にみはらくん世代のバンドがよく鳴らしているような16ビートを貴重にしたサウンドにいくのはむずかしいなと思って。で、もうそこにはいかないのかな? って思ったときに、ザ・フレーミング・リップスを思い出したんですよ。あの遊び感。フレデリックには、あの挑戦的でアートでロックで、でも有名な、あんなバンドになってほしいなって思った。
実際、彼らのように色々壊していきたいです。そうすれば、すごくおもしろいことになる。音楽を変えてやろうって思ってますよ。俺はたまってバンドに人生を変えられたんです。そして、その衝撃っていまでも心地いいんです。そんな衝撃を色んな人に与えたいなって。
――フレデリックの核となる部分を言葉で表すと、なんて言葉になるんだろう?
シュール... シュールが1番ですね。俺らのなかでは、たまが音楽の原体験なんですよ。だから俺とけんじ(Vo,Gt)は、シュールな部分にしか目がいかない。だから歌詞とかも、どうしてもシュールなものを作りたくなってしまう。NHKの教育テレビの映像ってすごいシュールじゃないですか? ああいうものを作りたいんですよね。
――アンディ・ウォーホルはシュールの部類に入る?
入らないですね。あれはかっこいいです。ファッション・アートって言ったらいいんですかね。俺、大好きだけど。
――じゃあフレデリックで表現したいものとは、また違うんだ。
違いますね。
――たまやNHK教育テレビみたいな“シュール"と、アンディ・ウォーホルの“かっこいい"は、もう少し具体的に言うとどんな違いがあるんだろう?
アンディ・ウォーホルの“かっこいい"は、ファッション的なかっこよさっていうか、ストレートに出てくるものだと思うんですよ。シュールなものは、すごく一瞬で世界を変えてしまうじゃないですか。たまにやられたのは、その曲によって自分の作ってきた音楽の教科書をびりびりに破り捨てられたっていうか、一瞬で世界を変えられてしまったんです。
――たま以外でも例があったりします?
歌詞だったら谷山浩子さんですね。妄想が強すぎてとんでもない人です。「キャンディーヌ」って曲が印象に残ってて。7123年前の夜に巨人に出会ってどうたらこうたら... みたいな。完全にやばい(笑)。でも俺のなかですごく世界観が広がるんですよね。それが気持ちいい。
――フレデリックとしてシュールなものを作るっていうのは、メンバー間で共有されているんだ。
メンバーみんな、そういう人ですね。しょうもないことでずっと笑ってるんですよ。
今回がはじめましての5%で、残りの95%に期待しとけよって
――なるほど。みはらくんにとって絵はどうなんだろう。絵の表現と音楽の表現は一緒?
どちらも違和感を楽しんでるところはあります。ジャケット等で、自分らしくない、フレデリックっぽくないイラストを描いちゃうんですけど、音楽と合わさってずれが出たときのおもしろさが好きなんです。ジャケットって曲のイメージを作ると思うんですけど、曲を作っている立場でイメージしたものとは別のイメージのジャケットもありなんじゃないかなって提案するのがおもしろい。
――ずれをおもしろく感じるんだ。
そうですね。アンディ・ウォーホル展を観て思ったのが、ずれているんだけど、ちゃんと観る人に合わせてる、世の中に合わせていたんです。俺らも今回のアルバムを創っていくなかで、自分が良いと思っているものと、メイン・カルチャーで鳴っているものが少し違っていることがわかって。でもそのずれが、どんどん楽しくなって、気持ちよくメイン・カルチャーに合わせるようにもなったんです。
――じゃあ、みんなが求めてるものと、みはらくんが持ってるものがずれているってことは理解してるわけだね。
そうですね。音楽とジャケットのずれも自分のなかだけなんだけど、それがおもしろい。
――ジャケットだけでなく、みはらくんが創るアートワークは?
これは結構遊んでますね。俺もほしいし、みんなもほしいと思うものを描いてますね。すごい自分の好きなものだけをやって自己満足だけになったら俺は死んでしまうのかなっていうくらい、誰かとのやりとりと共に生きている感じがしてます。正確には、色んな人との出会いで、そう思うようになったかな。
――みはらくんにとって、絵や音楽ってどんなもの。
――楽しいを突き詰めるとどうなるんだろう?
楽しいを突き詰めて、さらにそれを楽しめるかはメンバーによると思うんですよね。新しいアイデアが出てくるのが、バンドでやってておもしろいところなので。今回の「うちゅうにむちゅう」には意味があって、宇宙って5%のことしかわかってなくて95%は未知らしいんですよ。俺らも今回がはじめましての5%で、残りの95%に期待しとけよっていう意味で付けました。音源も今回の曲を選ぶのに20~30曲、プラス新曲があって死ぬほど悩んだし。
――すごい! 楽しみです。最後に、みはらくんにとって、アートってなんでしょう。
普段から自分の生活のなかにあったものですね。小学校のころから「創る」っていう意識があって。それを見ておもしろがってもらえたり、褒められることも好きで。だから息してるような感じですかね。自分の身にそういうものがないと落ち着かないです。アンディ・ウォーホルを見て思ったのが、作品数とかすごいじゃないですか。俺もたくさん作れてるけど、まだ世に出せてないんですよね。それがすごく悔しくもなります。俺ももっとおもしろいもの持ってるんだぞとかすごく考えてて。だから、アンディ・ウォーホルくらい創り続けますよ。
フレデリックの過去音源はこちら
2013年に7インチ・アナログ盤のリリースとともに配信もスタートした『SPAM生活/プロレスごっこのフラフープ』。なかでも新作『うちゅうにむちゅう』では新録で収録された「SPAM生活」を、以前のアレンジで聴くことができる。長くライヴの定番として披露されてきた2曲なだけに、"これまでのフレデリック"として押さえておきたい1枚!!
【特集ページ】
神戸発の4人組バンド、フレデリック。ライヴ定番曲をアナログ盤&配信で限定リリース!!
LIVE INFO
LIVE GOW!! Vol.3
2014年3月18日(火)@福岡BEAT STATION
HighApps Vol.18 SPECIAL!!
2014年3月21日(金)@新木場STUDIO COAST
フレデリック presents UMIMOYASU Vol.7
2014年4月4日(金)@梅田シャングリラ
フレデリック presents UMIMOYASU Vol.8
2014年4月5日(土)@渋谷チェルシーホテル
共鳴振動
2014年4月18日(金)@仙台MACANA
COMIN'KOBE14
2014年4月29日(火)神戸3会場同時開催
ミソデリックナイト
2014年4月30日(水)@池下CLUB UPSET
Niigata Rainbow ROCK Market
2014年5月4日(日)新潟市内7会場同時開催
MJ ROCK Vol.3
2014年5月5日(月)@長野CLUB JUNK BOX
IMPACT! VI
2014年5月24日(土)@札幌CUBE GARDEN
PROFILE
フレデリック
ミハラケンジ(Vo,Gt)、みはらこーじ(Ba,Cho)、赤頭隆児(Gt)、kaz.(Dr)
双子の兄弟を中心として結成された神戸出身の4ピース・バンド。そのユーモアと幅広い音楽的背景から生みだされる、"忘れさせてくれない楽曲群"とアッパーなライヴ・パフォーマンスに中毒者が続出中。こいつを一度聴けば、フレデリックがあなたの耳に住み着きにやって来る。
>>フレデリック Official HP
>>Facebook
>>Twitter