年月を経て2人が思う、変わったものと変わらないもの──おやすみホログラム、再録アルバム『1』をリリース
八月ちゃんとカナミルによるオルタナティブ・ユニット、おやすみホログラムが初期からの代表曲10曲を再録したアルバム『1』をリリース!! ONE OK ROCK等を手掛けるサウンド・プロデューサー・akkinを迎え、バンド・セットにて録音が行われた今作。OTOTOYではハイレゾ版が2週間独占、特製ブックレットPDF付きにて配信がスタートしております! 以前はOTOTOYにも度々登場、ライヴ・レコーディングなども行ってきましたが、ここ最近はご無沙汰…ということで久しぶりに彼女たちとプロデューサーであるオガワコウイチにインタヴューを敢行。今作の制作経緯から現在についてたっぷりと話を聞きました。
初期からの代表曲の数々をバンドで再録!
INTERVIEW : おやすみホログラム
USツアー、5枚目のアルバム、リミックス・アルバム、そして全国ワンマン・ツアーなど、着実に前に進み続けるおやすみホログラム。そんなおやホロという列車に置き去りにされかけていた僕にインタビューができるという幸運が舞い降りた。カナミルと八月ちゃんは変わらず魅力的だし、オガワさんは変わらず冷静でオルタナだった。インタビューが終わって一番に思ったことは、横浜BAY HALLに彼女たちを観に行こうってことだ。人が音楽を創る。こんな魅力的な人たちなら、置いていかれる訳にはいかないんだ。
インタヴュー : 飯田仁一郎
構成 : 水上健汰
編集 : 高木理太
写真 : 宇佐美亮
akkinさんは痒い所に手が届く鋭い感性も併せ持ったプロデューサー
──現おやすみホログラム(以下、おやホロ)・バンドのメンバーで再録したベスト・アルバム『1』をリリースしますが、ファースト・アルバム、セカンド・アルバムの曲を中心に構成されているのが特徴かなと思います。ベスト・アルバムを作るに至ったのはなぜ?
八月ちゃん : 個人的にはベストっていう言い方には抵抗があったんです。でも、今回収録されている曲はライヴでもよくやる曲だし、よく来てくれているお客さんにとってもなじみの深い曲も多いんじゃないかなと。今や、特に初期の音源を自分で聴くのは危なっかしくてドキドキしてしまうので、今まさに進んでいる途中ではあるけれど、ここでひとまずベストと銘打って新しく録りなおすというのもいいのかなと思って。これまで音源を出し過ぎていたので、何から聴けばいいかわからないっていう新しいお客さんにも「最初の1枚」として手に取ってもらえる作品の必要性を感じて作りました。
──なるほど。今回のこのアルバムの選曲は誰が?
八月ちゃん : 選曲で言うと、客観的な意見をもらいつつ、ライヴでよくやっている曲を、おやホロチームみんなで話し合って決めた感じです。
──今作では、プロデューサーにONE OK ROCK等を手掛けるakkinさんを迎えました。
オガワ : 今回のアルバムを作るにあたってプロデューサーを誰に頼むかという話になったところ、ディレクターの大塚さん(フジパシフィックミュージック)からの推薦でお願いすることになりました。おやホロは二人とも個性的な声質で、そこが魅力でもあるので、女性アーティストを多く手掛けていて、その上でグランジだったり、オルタナティヴ・ロックだったりに理解がある上、痒い所に手が届く鋭い感性も併せ持ったプロデューサーということから、まさに適任の人だということで。
──ちょっと意外でした。
オガワ : 確かに今でこそONE OK ROCK等のイメージが強いですが、実はakkinさんは、ハートバザールという超オルタナ・バンドでデビューしていて、グランジやオルタナにゆかりのある人なんですよ。それで、曲を聴いてくれた上で、「面白そうなアーティストだから」ということで今回一緒に創っていただくことになりました。
──akkinさんとはどうやって制作を進めていったのですか?
オガワ : 録り始める1ヶ月〜2週間前にakkinさんからリアレンジされた完成度の高いデモ案が送られてきて、それをみんなで聴いて「これは半端ない!!」とすぐになって、当日までに3回ほど現おやすみホログラムバンドメンバーでリハーサルをして、当日初めてakkinさんと対面して録り始めました。
──へぇ!そのデモを聴いた時には、どんな印象を受けましたか?
八月ちゃん : 「オガワさんの曲がこんな風になるんだ」って思いました。特に初期の音源は、オガワさんが全部自分でアレンジしていたのもあり、オガワさんのこだわりが如実に出ていたと思うんですけど、その音源よりも分かりやすくなったんじゃないかなと思います。
カナミル : 私はファーストの音が好きなのでオガワさんの音も好きなんですけど、これはまた別次元の素晴らしさがあると思いました。こういう風に変わるのかと勉強になりました。
──オガワさんはどう思いましたか?
オガワ : 正直、めちゃくちゃ面白いなと思いました。僕が作ったファースト・アルバムって、歌もギターも上手なわけではないので、上手じゃないものを最終的に組み上げていって、オルタナティヴやグランジっぽいところでまとめたという作品だったんです。その時よりも歌も上手くなったし、今はそうじゃないことができるし、やるべきだと思ったのが、今回のこのアルバムを作る動機の一つでもあったんです。もともと僕はバンドをやっていたわけではないので、ギターを整理したり、コードのあて方を変えたり、リズムをタイトにしたりというところを改めてakkinさんがやってくれてなんかすごく腑に落ちた感じです。
──確かに、オガワさんの良さって、いい意味で整頓されていないところだと思います。
オガワ : akkinさんはそこらへんも汲み取ってくれて、そのエッセンスもちゃんと残してくれていたりします。なので、すごく面白いバランスの作品になったのではないかなと。
ライヴを積み重ねて、今なら自分たちの歌もバンドに負けない
──こうしてakkinさんと手を組んだり、前回の『5』のリミックス・アルバム『・・・・・』では、BO Ningenなどでも活動するIll Japoniaだったり、Night Tempoなどにリミックスしてもらったり、おやすみホログラムの活動がすごく多様化していると感じます。最近の活動で最も印象的だったことはなんですか?
カナミル : アメリカ・ツアーですね。初海外ということもあったんですけど、一本一本のライヴをはっきり覚えていて、日本にないお客さんの盛り上がり方があったり、西と東でノリ方が全然違ったり、いろいろすごく勉強になりました。個人的にはアメリカがめっちゃ好きだからうれしかったです。特に西海岸の方とかはラフな人が多くて、お酒持っていたら話してくれるし、「今はこういうのが流行っているよ」とかどんどん音楽の話をしてくれて。しかもそのどれもがお洒落で、そのあとアメリカの曲ばっかり聴くようになりました。
──どの街が気に入りましたか?
カナミル : ニューヨークですね。スパイダーマンがすごく好きで、スパイダーマンの映画に出てきた街を実際に見れて感動しました。あとツアーで1日だけ予定が空く日があったんですけど、その日に行ったディズニーランドはすごく楽しかったです。
──クラウドファウンディングで支援してもらったツアーで、ディズニーランドに行っちゃったんですか!?
八月ちゃん : でも、ちゃんとサポートしてくれたファンの方にも「ディズニーランドに行きたい」って言ってありますよ(笑)。
カナミル : そうです。私、今回のこのアメリカ・ツアーでヒーローになるっていう目標があったんです。ちゃんとクラウドファウンディングの目標にもそのことは書いて。
──なるほど、ちゃんと目標は達成できましたか?
カナミル : ディズニーランドに行ったら、ヒーローの乗り物がいっぱいありますし勉強になりました。MARVELがめっちゃ好きで、人生の勉強はMARVELでしているといっても過言ではないくらいです。かっこいいヒーローになってみんなを救いたいという気持ちで今はいっぱいです。
──(笑)。アメリカ・ツアー、八月ちゃんはどうだった?
八月ちゃん : 私の中でこのツアーはすごく印象深くて、東海岸編ではアメリカのLOVE SPREADと一緒にツアーを回る予定だったんですよ。でもLOVE SPREADと一緒に回る3日間の1日目が終わった後にメンバーのRYOTAさんが体調を崩してしまって、私たちはツアー終了後の帰国日にRYOTAさんが亡くなったことを知らされたんです。結局このツアーで一緒にライヴができたのも一度だけで、おやホロとLOVE SPREADで一緒に創ったコラボの曲があるんですけど、それも今このツアーで一度も披露できなくて…。それが凄く私にとってショッキングな出来事で「どれだけ曲は残るっていったって、もうあの瞬間は戻ってこないんだ」と思って、今こうして自分たちがライヴができている瞬間を一つ一つ大切にしていこうと思いました。そういう意味で意識が変わりました。もっと自分が強くならなければって。
──アメリカ・ツアーを経て、5枚目のフル・アルバム『5』、そして『・・・・・』があって、そこから今回の『1』と短い期間で3つのアルバムをリリース。これほどハイペースでリリースしているのには何か理由があるのでしょうか?
オガワ : リリースのペースに特に理由があったわけではなく、『5』は打ち込みの曲が中心のアルバムで、前回のツアーもそれに合わせてDJセットで回っていたんですけど、それと同時に今までやってきたバンド・セットを整理したいという気持ちもあったんですよね。今までライヴでやってきた曲たちを、しっかりライヴで見せるものとして整えて、ちゃんとした音で出したい。その第一弾としての『1』でもあるので、僕としては制作がかぶってはいましたが、矢継ぎ早なリリースだという気持ちはないですね。
──今、バンド・セットというのはおやホロにとってどういう位置づけになってきているんですか?
八月ちゃん : はじめはオルタナ、グランジ的な曲が中心で、それに合わせてバンド・セットをしばらくやり、打ち込みの曲が増えてくれば、それに合わせてDJセットをたくさんしてという感じで、最近までDJセットが多かったんです。そうしてライヴを積み重ねていく中で、「またバンド・サウンドを録り直せば、あの時よりも強度が上がっているんじゃないか」というのが気持ちがあって。
オガワ : 今回またバンド・セットに取り組むことが、もっと上に行くために必要なことかなと思ったんですよね。例えばダンス・ミュージックをVJで魅せるというのも1つの方法だと思うんですけど、それだけじゃなくて、バンド・セットでもしっかり見せるというのも我々にとっての強い武器になればなと思っているんです。
──なるほど。
オガワ : おやホロは二人が歌っていればもうおやホロではあるので、そこにDJセットがあったり、アコースティックがあったり、バンドがあったり、それぞれを見せていければなという気持ちです。作品ごとで分けちゃってもいいのかなっていう気持ちもあります。
──お二人としては、DJセット、アコースティック、バンド・セットと、それぞれどんな違いがあるのでしょうか?
八月ちゃん : DJセットとバンド・セットだと意識が違ったりしますね。バンド・セットでは特にやり始めた最初の方、バンドのメンバーさんが演奏してくれて、そこに自分たちの歌がついてくるという感じで、演奏に歌が負けちゃっていたんですよ。だから当時は、何とか負けないように必死でした。でも、ライヴを積み重ねて、今ならバンドにも負けないかなと思います。でも、もっと良くなるとも思っています。DJセットは初期からやっている形態なので、そこまでの抵抗はなくて、アコースティックになると、歌が結構前に出るので、他と比べて自分の課題がみつかる形態だなとは思っています。
カナミル : 自分の中では、アコースティックとかDJセットとかバンド・セットとか全部別れていて、自分の中でもノリとかをはっきり分けてて、それぞれを違う人として演じているくらい意識が違いますね。
進歩もありつつ、オガワ節もしっかり感じることができる作品
──改めて今回のこのアルバムは自分たちにとってどんなものになりましたか?
八月ちゃん : 先日、「slow dancer」のMVがアルバムに先駆けて公開されたんですけど、音楽活動をしていく中で、曲が何かを背負いこむことってあると思うんですよ。それは例えば、ライヴの想い出だったりなんですけど、「slow dancer」はまさにその何かを背負っている曲だと思っていて。
──その背負っているものとは具体的にどんなものなのでしょうか?
八月ちゃん : やっぱりライヴでもかなりの回数を重ねてて、楽しかったことも悲しかったこともあったんですけど、そんな中でもこの曲は自分に希望をずっと見せてくれる曲なんですよね。そんな曲を今回また録りなおして今の形として残せることがすごくよかったことなのかなって。
──とても生々しいMVと感じました。
オガワ : スタジオで演奏しているっていう、実は今までおやホロではなかったMVです。川口潤さんもとても楽しんで創ってくれたみたいです。
八月ちゃん : スタジオで映像を録り終わった後、すぐに監督の川口さんから編集されたものが送られてきました。一気に編集してくれたみたいで、川口さんもイメージがわきやすかったのかなって。
──カナミルさんは、このアルバムはどんなものになったと思いますか?
カナミル : ジャケットもファースト・アルバムと似せていて、結構懐かしいなと思うんですけど、「この4年間でだいぶ変わったんだな」という気持ちと同時に「変わっていないところは変わっていないな」とも思うんですよ。私はファーストの頃から「drifter」が好きなんですけど、今回のアルバムで進歩はしていてもオガワさんのオガワ節的なところもしっかり感じることができて、ちゃんと守るべきものは守りつつ、いい感じに生まれ変われているのかなと思います。
──なるほど。そんな中で、逆に変わったところはどんなところ?
オガワ : そうですね。やっぱりファースト・アルバムでは、かなりインディー・ロックというのを意識的にやっていたんですが、今はもう少しメジャー寄りというか、いろんな人に聴かれるフォーマットになってきているかなと。二人ともそれを理解してくれているので、それが悪い形ではなくて、歌も活きつつ演奏もちょうど合ういい匙加減になっているという気はすごくします。
──今回行われるリリース・ツアーのファイナルが自身最大規模の横浜BAY HALLですが、どんな気持ちで望みますか?
カナミル : 私は純粋に出身である神奈川県でワンマン・ライヴができることが嬉しいです。
八月ちゃん : ツアーでいろいろなところを回りますが、とりあえず11月30日を含めて全力でやろうと思います。
オガワ : みんなで話していたことなんですけど、今回ベストを出したタイミングで横浜BAY HALLという大きな壁に挑むことで、一度一区切りして、ポジティヴな意味で、また次のステップに進めるようなライヴにできればなと思います。なので、ゲストの方にも出演していただいて、集大成のようなライヴにできればと思います。
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過去作はこちらにて配信中!
OTOTOY独占ライヴ音源も!
LIVE SCHEDULE
LAST ONE STANDING TOUR
2019年11月4日(月・祝)@大阪 北堀江club vijon w/???
2019年11月10日(日)@栃木 宇都宮HELLO DOLLY w/???
2019年11月15日(金)@宮城 仙台BIRD LAND w/???
2019年11月17日 (日)@北海道 札幌KLUB COUNTER ACTION w/???
2019年11月22日(金)@愛知 Live House HUCK FINN w/???
2019年11月24日(日)@福岡 UTERO w/???
LAST DANCE
2019年11月30日@横浜BAY HALL
開場 : 17:45 開演:18:30
出演 : おやすみホログラム(ワンマン)
Special Guest:アヒト・イナザワ(NUMBERGIRL / VOLA & THE ORIENTAL MACHINE) / LOVE SPREAD / ??? / ???
詳細やその他のライヴなどはこちらをご確認ください
PROFILE
おやすみホログラム
八月ちゃんとカナミルによるオルタナティブユニット=おやすみホログラム。全楽曲の作詞・作曲を手がけるオガワコウイチのプロデュースにより 2014年9月より現体制にて活動開始、2015年9月に1st AL『おやすみホログラム』を発表、新宿LOFTにて行われた初ワンマンをソールド・アウトにて成功に収める。2016年4月には2nd AL『2』を発表、6月には2回目となるワンマンを渋谷TSUTAYA O-WESTにて開催しソールド・アウト、破竹の快進撃を開始し間髪なく 同年11月には3rd AL『...』を立て続けにリリース、恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンを成功に収める。2017年にはセルフカヴァーアルバムや 2枚同時発売のEP『15』、『17』をリリース。そして2018年、1年半ぶりとなる待望の4枚目のフルアルバム『4』を完成させ、二度目となる恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンを成功に収めた。11月には国外限定音源『27』を引っ提げ初となるUSツアーを決行、大成功にて完遂した。2019年5月にBloc PartyのギタリストRussell Lissackをゲストに迎えた5枚目のフルアルバム『5』をリリース、6月には初となる全国ワンマンツアーがスタート、8月10日、渋谷WWWXにてツアーファイナルワンマンを開催、大盛況にて終了する。9月18日にはONE OK ROCK等を手掛けるサウンド・プロデューサー akkinプロデュースによるバンド再録BEST ALBUM『1』をリリース予定。11月よりリリースツアー”LAST ONE STANDING TOUR”がスタート、さらには11月30日にはキャリア史上最大規模の横浜Bay Hallでのワンマンが決定している。
Official HP : http://oysm-hologram.com/
Twitter : https://twitter.com/oysm_hologram