4つの“個”が主張する『i!i!i!i!』──ニーハオ!!!!、ここにしかない〈コーラスパンク〉を高らかに叫ぶ最新作
“変則4人編成チアパンクバンド”ニーハオ!!!!、5枚目となるアルバム、その名も『i!i!i!i!』(アイアイアイアイ)をリリース! OTOTOYでは来週4月5日のリリースに先駆け、1週間先行&デジタル・ブックレット付きで配信がスタート。前作『FOUR!!!!』収録の“MATSURI-SHAKE”をスペインのポップ・シンガー、ROSALÍAがライヴ前のSEとして使用し、世界からも続々とラヴ・コールが届くなかでリリースされる今作。たっぷりと語ってもらったインタビューとともにお楽しみください!
OTOTOY1週間先行配信、デジタル・ブックレット(PDF)も!
INTERVIEW : ニーハオ!!!!
ドラム+サンプラーのRED ARIKO、フロアタムのBLUE YUKARI(Limited Express (has gone?))、ベースのYELLOW MIWAKO(Techmoris/ex.THE LET'S GO’s)、ギターのPURPLE KAORI(LisaloomeR)による変則4ピース“チアパンク”バンド、ニーハオ!!!!が3年ぶりとなるニュー・アルバム『i!i!i!i!』を4月5日にリリースする。さらに、リリース前日の4月4日には東京・下北沢THREEにて初のワンマン・ライヴを開催し、50曲を一挙に披露する予定だ。
OTOTOYではオリジナル・メンバーであるRED ARIKOとBLUE YUKARIにインタヴューを実施。ふたりの軽妙すぎる会話から、ニーハオ!!!!というバンドの現在、そしてその音楽の特殊性が垣間見えるはずだ。
インタヴュー : 須藤輝
写真 : Yukiko Ono
さすがに曲をパクったのは初めて
──5thアルバム『i!i!i!i!』ですが……。
RED ARIKO(以下、ARIKO) : タイトルが読めないと評判の。
BLUE YUKARI(以下、YUKARI) : 「アイアイアイアイ」と読みます。
──前作『FOUR!!!!』(2020年)と同様にしなやかで変幻自在でありつつ、それこそ先行配信された“So tough & So tough”じゃないですが、タフネスも備えているというか。
YUKARI : おかげで今、あるプロレス番組へのタイアップの提案が来てて。
ARIKO : “So tough & So tough”と、そのあと配信された“ANTI ANGER CONTROL”が、どちらも合いそうな感じがすると言ってくれて。たしかにどっちも強そうな曲ですよね。
──それ面白いですね。その2曲も含めて『i!i!i!i!』では、2016年に加入したベースのYELLOW MIWAKOさん、2018年に加入したギターのPURPLE KAORIさんを含めた4人で積み上げてきたものが、より音に出ているように感じます。
ARIKO : 今の体制になって、もう5年になりますか。
YUKARI : 前作はKAORIちゃんと一緒に作ってなかった曲もあったと思うけど、今回は全部今の4人で作ったことになるんかな。
──ニーハオ!!!!って、どうやって曲を作っているんですか?
ARIKO : よくあるのが、YUKARIさんから「なにがしたい?」とか「どんなんがいい?」って聞かれるパターンですね。ほんまに「晩ごはん、なに食べたい?」ぐらいの感じで、えらいざっくりから始まるんですけど。
YUKARI : たしかに毎回そうやね。
ARIKO : 「なに食べたい?」「中華かな」「辛い系? 甘い系?」「なんか、シャキッとしたやつ」「どういうこと?」「うーん、キャベツとか?」みたいな。
YUKARI : 「キャベツ」まで言ったら、まあまあ言うてるほう。そこからわたしが「こんな感じやったらARIKOは喜んでくれるかな?」って考えて。
ARIKO : なんか、ごめん。ありがとう。
YUKARI : わたしはいつも、ARIKOが機嫌よく、調子に乗ってくれるなにかを用意すれば、結果的にいい方向に転がると思ってるんです。だからだいたいアリちゃん(ARIKO)に聞くんやけど、どうせぼんやりした答えしか返ってこないのはわかってるから。「なんか、速いやつ」とか「スネアめっちゃ叩きたい」とか。
ARIKO : 「スネアめっちゃ叩きたい」は「キャベツとレタス使ったやつ」ぐらい具体的よね。
YUKARI : いや。
ARIKO : そうでもない? しかもキャベツとレタス使った料理ってなに?
YUKARI : 「キャベツ」って言うこともあれば「中華」って言うこともあるけど、言い方が違うだけで別にどれもはっきりはしてない。
ARIKO : ほんま? でも、そしたらYUKARIさんがなんかくれるんです。
YUKARI : ミーちゃん(MIWAKO)とKAORIちゃんはなにを出してもお行儀よく食べて、食レポまでしてくれる感じなんです。お箸をつける前に、ちゃんと写真も撮ってね。だからふたりとも楽しみ方を知ってるんですけど、ARIKOは案外、わたしが調子に乗らしてあげるのが大事やなと思って。
ARIKO : あと「ここになんかつけて」とか言われることもめっちゃあるけど、今回はYUKARIさんがソングライター的にパキッと作ったやつが多くない? 特に“pajama party in ニーハオ!!!!”とか“UNDER MASK”は完成形に近かったんちゃう?
YUKARI : もう忘れたな。“pajama party”は「こんなにポップなメロディ作るんだ?」ってみんな言ってた気がするし、なぜかドラマチックで多幸感のある感じになったけど、どうやって作ったのかわたしが聞きたい。
ARIKO : たぶんコロナであんまり会われへんかったときに作ってた曲が多くて。わたしもみんなと会わへんと「アイデアバンク尽きた。もう終わりや、自分」みたいになってしまうんですけど、スタジオとかで会うたらアイデアがポンポン出てきたんですよ。
YUKARI : たしかに今回はアリちゃんはほとんど京都にいたままで、KAORIちゃんもお家の事情であまり外出できひんかったから、わたしとミーちゃんのふたりでスタジオ入ったりしてたな。だから完成形に近いとこまで持っていけた曲が多かったのかも。
──“pajama party”の歌詞、いいですね。〈徹底的に意味ない話で今夜は朝まで盛り上がろうぜ〉って。
YUKARI : 今の自分たちっぽさもあり、今までやったことない感じもあり。でも、なんでああいう歌詞にしようと思ったんかな? たぶんコード進行とかメロディがある程度できて、そんときに、やっぱりアリちゃんに「どんなこと歌うんがいい?」ってよく聞くんですけど、そこで「パジャマパーティーやりたない?」みたいに言われたんちゃうかな。
ARIKO : なんかすんません、ほんまに。
YUKARI : でも「え? パジャマってさ、着る?」ってなって。
ARIKO : もう、今のYUKARIさんの「パジャマ」の発音からおかしいもんな。普通は「パ」にアクセントつけるで。まあ、わたしも部屋着とパジャマの境目がないんですけど、ほんまは分けたい。なんか、肌触りのいいやつ着て寝たい。
YUKARI : だから「パジャマパーティー」という言葉は知ってるけど、具体的にはよくわからんまま歌詞ができたんですよ、たぶん。
──“pajama party”はミドルテンポのメロディアスな曲ですが、他方でハードコア・パンクもあればダンスもあり、アルバムの流れ的にも緩急がありますね。
YUKARI : それは、ARIKOに「次どんな曲やりたい?」って聞いたら「なんか楽しそうなやつ」とか……。
ARIKO : 「楽しそうなやつ」ってひどいな。
YUKARI : それに合わせて作るから、別に軸とかないんです。もともとニーハオ!!!!はやりたいことが明確にあって始めたバンドじゃないというのもあるし、リミエキ(Limited Express (has gone?))もわりとそうじゃないですか。
──カテゴライズしがたい音楽をやっている。
YUKARI : そうそう。ジャンルとしてハードコアとかパンクって感じではない。だからニーハオ!!!!も「これをやりたい」と思ったことがあんまりなくて、ただ「次、なにをやったら面白いかな?」っていうだけ。もちろん曲を並べたときのバランスは考えますけどね。例えば“HAKA”は、ライヴで1曲目にやれる曲を作ろうと思って作ったな。
ARIKO : うんうん。
──“HAKA”はMIWAKOさんのベースもヤバいです。
YUKARI : あ、それはミーちゃんが聞いたらきっと喜びます。ミーちゃんは、ぼんやりしてるのにぼんやりしてないというか、めっちゃ空気を読めるんですよ。それは誰かの顔色を伺うみたいな意味じゃなくて、ライヴでも「そう、そこ!」っていう、みんなが1番気持ちいいタイミングで入ってきてくれる。そういうタイミングを測る天性の才能があって、だからイントロがベースの曲をやると、自分的にもアガるかな。ちなみに、“Don’t Obsess”のイントロのフレーズはミーちゃんが作ってきてくれたんですよ。で、YUKARIが「続きは?」って聞いたら「ない」って言うから、「じゃあ、わたしが作ってくるか」みたいな。
──“HAKA”と同様に、“ANTI ANGER CONTROL”もハードコア・パンク色の濃い曲ですが、これはARIKOさんの「速いやつ」というリクエストから?
ARIKO : これはね……YUKARIさんどうぞ。
YUKARI : バラしてしまいますかね。これは、もともとリミエキの曲なんです(笑)。
ARIKO : だから特になんもないです。あ、でもちょっと変えたか。ちょっとちゃうわ、めっちゃ変えたよな。
YUKARI : ギターのリフとかベースラインはリミエキのふたり(飯田仁一郎と谷ぐち順)が作ってるからな。歌詞はわたしが書いてて、自分でも「ANTI ANGER CONTROL」という言葉が気に入ってたからボツにしたくなかったんですよ。リミエキには、最後の詰めが甘くて曲になりきる前に消えていくパターンがたまにあって、これもその1つなんですけど、スタジオで録音したテイクも残ってたから「ニーハオ!!!!でやろうか」って。
ARIKO : もんちゃん(もんでんやすのり)のドラムなんかよう叩かれへんから、そこはまるっと変えたよな。
YUKARI : もちろん展開も変わってはいるけれども、たぶん今までのニーハオ!!!!とは違う感じになったんじゃ……そりゃそうやわな、自分で作ってないもんな(笑)。リミエキのメンバーも全員この曲のことを忘れてたから、わたしが作ったことにしました。
──前回のインタヴューで、KAORIさんにハードコアっぽい曲を弾かせたいというお話があったので、それも影響しているのかと思ったのですが。
YUKARI : それもあるけど、KAORIちゃんはなんでも器用に弾けるから、たぶん当初は飯田のギターをコピーしてくれたんじゃないかな。でも「スタジオテイクは音がぐちゃぐちゃで、コードがよくわかんないんだけど」って言うてたから「じゃあ、好きに弾いていいよ」って。だからギターソロとかも全部お任せですね。
ARIKO : 「いい感じで」つってね。
YUKARI : さすがに曲をパクったのは初めてやけど、結果的にニーハオ!!!!でやるほうがよかったですね。
ARIKO : 飯田さんも「ニーハオ!!!!がやったほうがいいね」って、ピッて親指立てて言ってはった。
YUKARI : これをリミエキでやると、言い方は悪いけどちょっとダサめのハードコア・ナンバーみたいになってしまったと思うんですよ。だけどニーハオ!!!!ならストレートにやっても、楽器の編成上、まんまストレートにはならへんから、それが功を奏したな。またリミエキから曲もらおうか。
ARIKO : もらおう。ほんでニーハオ!!!!からもあげよう。