まさかのキャッシュレスな「後払い」方式──吉祥寺にオープン予定のライヴハウス「NEPO」とは一体!?
森大地(Temple of Kahn / ex.Aureole)が代表を務めるレーベル〈kilk records〉。ライヴハウス「ヒソミネ」やカフェ「bekkan」の運営、「神楽音」の立ち上げなど音楽制作以外でも新しい動きを常に続けて来たレーベルが新たに吉祥寺にライヴハウス「NEPO」をオープンします。従来のライブハウスとは違った新たなコンセプトを多く仕掛けているというこの場所からどんな音楽が生み出されて行くのでしょうか? 今回OTOTOYでは立ち上げに参加している森大地、白水悠(KAGERO / I love you Orchestra / chemicadrive代表)、河野岳人(LAGITAGIDA / SuiseiNoboAz)の3人による対談をお届けします。
「NEPO」オープンに向けて
「NEPO」では現在オープンに向け、クラウドファンディングがスタート。ライヴハウスの詳細やコンセプト、クラウドファンディングのリターンなどに関しても下記ページにて掲載されているのでぜひチェックしてみてはいかがだろうか?
開店後のオープニング・シリーズも3月21日(木・祝)のオープンから5月6日(月・祝)まで開催予定。こちらの詳細は後日発表予定とのことなのでお楽しみに! また、オープニング・スタッフと5月7日(火)以降に出演する一般バンドのブッキングも募集しているので気になる方は、下記の連絡先にメールを!
info[at]nepo.co.jp ([at]は@に変換してください)
INTERVIEW : 森大地 × 白水悠 × 河野岳人
吉祥寺駅公園口を出て、吉祥寺駅前の交差点を曲がり、井の頭公園を左手に見ながら吉祥寺通り沿いを下っていくこと、10数分。道路に面した建物の地下1階に、3月に新しくオープンする予定のライヴハウス「NEPO」の予定地があった。駅チカではないけれど、ライヴを観に行く期待感に胸を膨らませたり、ライヴを観た後の余韻に浸りながら歩くには、心地よい距離感な気がする。今回、この「NEPO」を立ち上げることになったのが、森大地(Temple of Kahn / ex.Aureole)、白水悠(KAGERO / I love you Orchestra / chemicadrive代表)、河野岳人(LAGITAGIDA / SuiseiNoboAz)の3人だ。森は以前から、ライヴハウス「神楽音」の立ち上げ、「ヒソミネ」やカフェラウンジ「bekkan」を運営していることで知られているが、白水、河野がライヴハウス運営に携わるのは、今回が初めて。ミュージシャンとして第一線で活動を続けており、十分なキャリアもある3人がなぜ今、ライヴハウスを立ち上げることになったのか? オープンに向けて日々準備に追われている3人にお集まりいただき、彼らがやりたいこととは何かを語ってもらった。
取材・文 : 岡本貴之
イラスト : kai kusaoke(yumegiwaTone/the stations)
「ドリーマーなのに現実的」な3人
──まず、そもそもの3人の関係から教えてもらえますか?
森大地(以下、森) : 白水君とは、AureoleとKAGEROが同じPA(エンジニアの大津友哉)だった繋がりから、KAGEROのイベントにAureoleで呼ばれたんです。そのときが初対面だったのかな?
白水悠(以下、白水) : そうですね。それが5年前くらい。LAGITAGIDAも同じくらいの時期に会っているんじゃないかな。
河野岳人(以下、河野) : 僕は、大地さんの名前はずっと知っていたんですけど、岡山でAureoleと対バンしたのが初対面でした。
森 : 東京のバンド同士、地方で対バンすると仲良くなることって、よくあるんですよ。そこで打ち上げで仲良くなって。KAGEROにしてもLAGITAGIDAにしても、1回会ってからは繋がりを持って、僕がヒソミネに呼んだり、高田馬場でやったイベントなんかはどちらのバンドも呼んだりしていたんです。そんな感じで親交が続いていて、河野君とは野球を観に入ったりね(笑)。
白水 : この2人、巨人ファンなんですよ。
河野 : 僕は半ば強制的に巨人ファンにさせられて。見たこともない選手のユニフォームを買いましたから(笑)。でも割とそういうところから入ると入れ込んじゃうというか。今は率先して野球観戦に誘っています。
白水 : でも僕が広島カープファンだから、そこがこのチーム最大の懸念点(笑)。
──(笑)。その3人が、ビジネスパートナーとしてライヴハウスを立ち上げることになったのはどういう経緯があったのでしょうか。
白水 : 森さんが神楽音をやっていた頃に、I love you Orchestra(ilyo)で毎月定期イベントをやってて。ちょうどその頃、違うところからライヴハウス事業の提案を受けていて。渋谷に物件を見つけて、それで最初、僕に音周りのこととか総合的な空間デザインをやってくれないかって依頼があったんです。でもその物件はサイズ的に無しになって、他の物件を探しているときに、たまたま森さんに定期イベントの件で電話したんです。そうしたら神楽音から離れる事になるって聞いて。だったら、今ライヴハウス事業の話が来ているから、一緒にやりません? っていう話をしたんです。だから最初は、別の資本で運営者が森さんっていう話から始まったんですよ。
森 : 僕は、神楽音をやめることになった時点で、もうライヴハウスはいいかなって思っていたんですけど、そんなタイミングで白水君から話が来て。新しいライヴハウスを立ち上げるっていうのは、神楽音から抜けるというネガティブなニュースをポジティブに変えてくれるかもしれないし、意外と良いかもなって。ただ最初はあくまで僕がサポートするくらいの話だったんですよね。
白水 : そう。ただ、僕だって何もわからないから、森さんが持っているノウハウでサポートしてもらおうっていう話で。そこからどんどん話を進めてく中で、これもう別の資本入れなくても僕と森さんでやっていけるんじゃない? って感じに変わったんです。
森 : その中で、店長ってすごく大事だと思っていて、誰が良いかなって考えたんですけど、その数か月前に河野君と飲んでいるときに、「河野君、将来どうすんの?」みたいな話をしたんですよ。
白水 : ははははは(笑)。
河野 : まあ、年齢的によくなりがちな話なんですけど(笑)。
森 : そのときに、これまでの河野君の生活パターンをガラッと変えて、好きなことをやる人生もいいんじゃないかっていう話をして。今回の話が出てきたときに、そのことを思い出したんですよ。河野君が来てくれるならすごく良いんじゃないかなって。それでチラッと話したらわりと乗ってくれて、18年勤めた会社を辞めて店長を引き受けてくれたんです。
河野 : 僕は、バンド活動と並行してずっとサラリーマンをやっていたんです。今まで、音楽が絡むことでメシを食うのって、演者として以外の発想が全くなかったんですよ。ただ、ふと会社の行く末も自分の行く末もなんとなく見えちゃったんですよ。「ああ、このままこんな感じで死んでいくんだろうな」って思った瞬間につまんなくなっちゃって。そんなタイミングで、プライベートで大地さんと話しているときに、今回の話を聞いたんです。大地さんって僕からすると不思議な人なんですよ。ライヴハウス関係の方って、結構疲れ切っている方が多い気がするというか、言い方は悪いですけど、ブラックな気がしていて。まあサラリーマンも大概なんですけど。でも、そんな中で1人だけ楽しそうに見えたし、ホワイトな気がしたんです(笑)。人間的に気も合うし、この人はどうやってこの業界をサバイブしているんだろうなって興味があって。この人なら、一緒にやってもいいなって思ったんです。
森 : 僕も、もともと河野君のことが好きだから遊んでいて色々話していたんだけど、白水君とちゃんと話したのはむしろこの話が出てきてからなんですよ。3人でやることを決めてから、みんなで飲みに行ったんですけど、白水君って一見するとロックスターみたいなところがあるけど……
白水 : いや、全然ないよ(笑)。
森 : でも話してみると、河野君も、白水君もちゃんとクレバーなんですよ。1つの議題に対して同じ目線と言語ですぐに伝わって、「だったらこれがいいんじゃないか」っていう意見が、2人のどちらからも出てきて、ちゃんとディスカッションになるという。それってこんなに気持ちの良いことなんだって、感動しているくらいで。それと、3人とも音楽をやっているんですけど、「ドリーマーなのに現実的」というか。現実をちゃんとわかって、冷静に俯瞰して考えることもできる2人なんですよ。
──白水さんはどうして森さんと一緒にやろうと思ったんですか。
白水 : 同じアーティスト同士っていう軸が根本にありつつ、お互いレーベルも持っていて、でも森さんはライヴハウスとか飲食店をやっていて、しかも宮原っていう都心から離れたところでちゃんとまわしているっていう。相当クレバーな計算力と実行力を持ってる人。だってそんなの、夢とか理想を語ってる「だけ」の人には無理でしょう。ヒソミネにしろbekkanにしろ、それを場として発展させ続けてるってのは、ちゃんと方程式を考えて、それを実行する力があるからで。僕はまだ森さんの人柄をものすごく知っているわけではないけど、でもヒソミネでそれを5年半も実践してきた実績っていうのは、細かいところまで聞かなくてもわかるし。その上で今回の話が来たときに、森さんとだったら自分が表現する上で欲しい「場」が実現できるかなって思ったんだよね。
意識したテーマの一つは“公園で喋っている感”
──河野さんと白水さんはどんな関係だったんですか。
白水 : KAGEROとLAGITAGIDAで対バンしたときに、打ち上げで仲良くしてもらって、おすすめのエフェクターを教えてもらったくらいの感じ。お互いただの爆音ベーシストって認識しかなかったんだけど(笑)。でも3人で話したときに、想像以上の人だなって。森さんがこの人を選んできた理由が一発でわかった。
森 : 3人で飲んだときがすごく有意義で、ハコのコンセプトの大枠もそのときに話せたんです。
──では、コンセプトについて聞かせてください。
森 : まずヒソミネ、神楽音をやってきた中で、「もっと振り切りたい」っていう気持ちがあったんです。ヒソミネももともと振り切りたいっていうコンセプトで、プロジェクターを使ったり完全に分煙にするとか、黒い壁じゃなくて白い壁にするとか、立ち上げ当時としては色んな新しいことを詰め込んだつもりです。でも今回はそれをさらに押し進めたくて。本当の意味で全く新しいハコを作りたいという思いからスタートしました。具体的に例を挙げると、まずお会計を基本キャッシュレスにするということです。お客さんには入場時にQRコードのついたリストバンドを付けてもらって、飲み食いする時は「ピッ」てやって、最後にチケット代なども全部含んだお会計をするという。スーパー銭湯なんかでも、現金を持たずに最後にお会計するじゃないですか? あのシステムってすごく開放的で良いなと思っていて。それって滞在時間が短い飲食店だと成り立たないんですよね。でも、ライヴハウスは平均滞在時間が比較的長い場所なので、そのシステムは採用できると考えました。さらにモバイルを使ったセルフオーダー・システム。スマホからフードやドリンクを注文できるようにする形ですね。もちろん面倒くさいと文句を言うお客さんがいるであろうことは想定済みで、そこを恐れて思考停止にならず、そういうお客さんにこそ新しい楽しみ方を提示していきたいなって。
NEPOのキャッシュレスシステム
ハコに遊び心とか楽しさは絶対欲しいんですよね。あと屋外のような開放感。ヒソミネの近くにあるお店でいろいろ仲良くさせていただいている「おふろcafe utatane」や「おふろcafe bivouac」が、ハンモックがあったりしてまさにそうなんですよ。言うまでもなくフェスもそうですよね。フジロックとかだと、出演者に関係なく会場に行きたくなったりしますよね? でも、ライヴハウスって、本当に見たいバンドが出ない限りは行くことがないし、年齢的なこともあってか、ライヴハウスに行くっていう行為自体は、もはや僕はそんなに好きじゃないんですよ。ライヴハウスをやっていながらなんですけど(笑)。でも飲食店だったらもちろん行きたい店はあるわけで、理想はそんな自分のような人でも「あそこに行きたい」って思えるようなライヴハウスにすることです。そのために意識したテーマの一つが“公園で喋っている感”。飲食店だと席に通されてそこで飲食を楽しみますけど、どこか「食事をしている間だけその席を借りてる」って感覚がなんとなくありますよね? ここではそうでなく、公園に行って自分たちの陣地のような場所を作って、お弁当やジュースを持ってきてしゃべっているような時間を過ごしてもらいたいなって。お花見なんかでも、レジャーシートを敷いておくと「ここが自分たちの陣地」みたいな感じでまた楽しいじゃないですか? あの感覚はライヴハウスにまさに相性ピッタリだと思ったんですよね。仲間と来る時だけじゃなく1人で来る時にしてもそうで、自分のプライベートな空間で好きなときに好きなものを好きな場所で食べていいという自由さ。もっとかみ砕いて言うと飲食店だとフードコートなんかもそうですし、ライブだとそれこそフェスがそうですよね。フードを買ってきて、芝生に座ってゆったり食べる感じが最高に楽しいじゃないですか。ああいう空間を作りたいなって思ってます。
白水 : 3人共、開放的でゆったりできる場所が好きなんですよ。別にそれだけが正義なわけじゃなくて、ギュウギュウ詰めでタバコの煙が充満しているところが好きな人はそれでいいと思う。でも僕らは、正直そういう場がもうそんなに好きじゃないってだけで。僕ら3人好みの空間を創ることができたら、たぶん他にも好きな人がいるんじゃないかなってだけ。既存のライヴハウスを否定したいわけじゃないんです。そこはもう音楽創るのと同じことで。
河野 : 既存のライヴハウスには、当然それまでの歴史やノウハウで培われた良さがあるわけですよ。それが良いと思う人はそこでやった方が絶対良いと思うんです。
森 : kilkのHPにも「独創性にこだわる」って書いてあって、AureoleもKAGEROもLAGITAGIDAもそうなんですけど、僕は同じような音楽をやっていたら、自分がいる意味がないと思うタイプなんですよ。
河野・白水 : うん、うん。
森 : 僕が仲の良い人たちは、振り切っている人たちが多いんですけど、ライヴハウスはまだ振り切れる余地が大量に残ってるなって。さっき河野君が言ったように、既存の形態のライヴハウスはいっぱいあるので、それと同じだったら自分たちがやる意味がないんですよね。
白水 : 既存のものを作るんだったら、この3人でやる必要がないもん。
森 : そうそう。やるからには、常識を疑って今までにないものを創りたいです。さっきのコンセプト以外でも、例えばステージ周りでも一つ変わった仕掛けを考えてまして。複数台のカメラでいろいろな角度から演者を捉えて、それをステージの背後に設置した複数のディスプレイでリアルタイムに映そうかと思ってるんです。小さい規模のライヴハウスでやっているところはないはずです。肉眼で見えるから必要ないって理由でそもそも却下されてきたと思うんですが、実際それをイメージしてみると、狭いハコだろうがあの演出はテンション上がるなと思ったんです。ちなみにそのディスプレイは両端に置いて、ステージ背景のメインはヒソミネのような壁2面に投影するプロジェクター映像にする予定です。良いところは継承します。
──「NEPO」というネーミングはどこから出てきたんですか。
森 : これは、河野君が考えたんですけど、「OPEN」を逆にしたものなんです。
河野 : 閉鎖的な空間を開放的な空間にするという意味での「NEPO」、ヒソミネは「潜む音」だったんですけど、そのコンセプトをもう1歩踏み込ませる=ヒソミネの「音(ネ)」が歩き出すという意味での「音歩」、2つの意味合いで付けてます。
白水 : この地下1階と、地上1階の2つスペースは閉鎖的でしょ。この閉鎖的な空間2つを使って開放的なことをやるっていうのは、お手本がないから。めちゃめちゃ思考しないといけないんだけど、でもこの3人なら辿り着けるだろうなって。だから今、めちゃめちゃ思考してます。
──地下1階と、地上1階のスペースの2つを使うというのは?
森 : 1階が「GARAGE COFFEE」っていうカフェで、夕方までの営業なんですよ。地下1階はキッチンスペースを作る分にはちょっと狭いなって。
白水 : 今は同じ店舗で時間帯によって別の経営者に入れ替わる業態があるのは知っていたので、「1階って夜だけ借りられないですかね?」って言ったら、森さんは飲食店経営者の気持ちがわかるから「それいけると思う」って即行動して、貸してもらえることになったんです。
森 : 夜は看板を替えて、1階も地下1階も「NEPO」になります。1階は主に飲食で、フードコートみたいに自由に席に座ってもらえるスペースで、地下はカウンターと喫煙所だけ設置する予定ですけど、それ以外は全面フロアの予定です。
徹底的に振り切って前例のないことをゼロから
──ここまでは運営や、お客さん目線の話でしたけど、演者側の立場から見た「NEPO」についても教えてください。
森 : KAGEROもLAGITAGIDAも爆音バンドなので、少なくともちゃんと爆音対応はしようと思っています(笑)。あとは良い意味で今っぽいサウンドシステムにしようかと。
白水 : 音響は、音をストレスなく出せるっていうことが何より大事だから。あとは、瞬発的に面白いことを企画できるサイズ感なのが好きです。
河野 : うん、そうだよね。
森 : キャパは、120人くらいを想定していて、楽屋もあります。ヒソミネ、神楽音と違うのは、吉祥寺はライヴハウスがたくさんあるエリアなので、サーキット・イベントなんかに巻き込んでもらえたらなって。
──ライヴハウスにとって、「行きたい」って思ってもらうのも大事だと思いますけど、「出たい」と思ってもらうのも大事だと思うんですよ。
河野 : まさに仰る通りで、当たり前ですけどライヴハウスってどこも同じようなつくりなんですよ。でもそうじゃないハコに行ったときに、「なんだここおもしれーな」って思うし、それでいて音が良い、スタッフのクオリティも高い、酒と飯もうまい、となれば当然また「出たい」要素になる。そこはもう最低限のラインとしてクリアしたいですね。で、そういうところで自分で企画をやりたいなってなったときに、200とか300のキャパだと腰が重くなっちゃうと思うんですけど、さっき白水君が言ったように「NEPO」はパッと思いついたことを形にするときに、割とやりやすいサイズじゃないかと。スタンディングでもシッティングでも映えるフロアを模索してます。演者側が新しいことを提案することはあっても、ハコ側が演者側に提示することってなかなか難しいと思うんですよ。だから音響面、演出面、内装面、ブッキング面含めトータルでそれを提示していきたいですね。
白水 : あと、一番大事なのは、しっかり「NEPOのお客さん」が付くようにする事。ライブをすると、結局自分が呼んだお客さんしかいないっていうときもどうしても多いじゃないですか。そうなってくると場所なんて正直スタジオでもどこでも良くなっちゃうわけで。「NEPO」でライヴをすることで新しいお客さんに出会える、来てくれたお客さんにも違う日のアーティストやイベントに関心を持てるロジックを思考してます。結局演者側として一番嬉しいのは、よくわからないけどお客さんがいるって状態でしょ。今までKAGEROやilyoでアジアやアメリカのそのロジックを体感してきたので、それをそのままやるんじゃなくて、日本の文化に合うように落とし込めるよう、思考してます。
河野 : アーティストに箔をつけてあげられるというか、「NEPOに出てんだ? あそこいいよね」って言ってもらえるような。我々3人はアーティストとしても活動しているわけで、ヘタなことできないんですよ。「あいつがやってる「NEPO」だろ?」っていう話に絶対になるので。
白水 : それはもう、めちゃめちゃプレッシャー(笑)。サウンド1つにしても。
森 : ハコのブランド力でいうと、代官山UNITとかWWWとかってすごくブランド力がついてると思うんですけど、小さいキャパでもそれを実現したいなって思ってます。
──では、改めて「NEPO」立ち上げに際して、それぞれメッセージをお願いします。
白水 : 3人共最前線でやってるアーティストだし、みんなその意識はすごく強くて。僕が自分のレーベルを創ったのも、アーティストとして自由になるためにそれが必要だっただけで。それは「NEPO」も同じで。その上で「僕らがライヴハウス創ったらこうなるよ」っていう、自分の中の表現の1つのチャネルです。そして何より僕達3人のセンスを好いてくれる人達の居場所が生まれることにめちゃくちゃワクワクしているし、それにもしかしたらこの場所が海外との架け橋にもなれるかもしれない。場所を持つってことは可能性がありすぎて思考の日々です。今までの事が色々と帰結するといいですね。あとは僕は吉祥寺の人間だから、この街で今までお世話になった人達やライヴハウスにもちゃんと筋を通したいので。この街と共に、仲良くやっていきたいですね。
河野 : 僕は単純に「また行ってみたい」「また出たい」っていうライヴハウスがあっても良いんじゃないかと思っていて。それには、既存のライヴハウスと同じようなことをやっていては意味がない。大変ですけど、徹底的に振り切って前例のないことをゼロからもがきながら創っていきたいなって思います。それがこの業界で素人同然の自分が店長をやる意味でもあるのかなと。そこで新しいものが生まれて、みんなが自由に何かをやるきっかけの場になったら面白いなと思います。
森 : 僕はkilk recordsで8年やってきて、変わらずに言っているんですけど、今回の「NEPO」についても「ミュージシャンがやってる」ということがポイントで。自分の職業は音楽家っていうことは変わらないんですけど、ただ夢見がちな音楽家じゃなくて、ちゃんと現実的に面白いことをやるっていう。そういうことを冷静にキチンと考えられる2人だから一緒にやろうと思ったんです。今日の話にも出てきたように、今回のメインテーマは「振り切っている」ということで。「この3人がやったから、本当に根本から新しいものができた」って思えるようなハコを実現したいです。それと、クラウドファンディングをやろうと思っています。良いハコを実現するには、どうしてもクラウドファンディングの力が必要なんですよね。リターンの内容はこのインタビューが公開される頃までに確定する予定で、今はまだ決まっていないんですが、支援してくれた方々が「ここは自分が創ったんだぞ」って胸を張って言えるようなハコにしたいですし、出演した人や働いてる人にも誇りを持ってもらえるようなライヴハウスにしたいですね。
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ヒソミネに集まる音楽とは? (2013年4月公開)
https://ototoy.jp/feature/20130408
いい音楽とおいしい料理をつなぐ、埼玉県大宮の地元密着型カフェ「bekkan」(2016年3月公開)
http://ototoy.jp/feature/2016032601
神楽坂に誕生した「神楽音(カグラネ) / KGR(n)」の全貌に迫る(2017年5月公開)
https://ototoy.jp/feature/2017051703
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