常に4人で面白いと思えるところへ──ANORAK!、試行錯誤を繰り返した“ダンス・ミュージック”への挑戦
東京を拠点に活動する4人組バンド、ANORAK!。結成直後から敬愛する国内外のエモ、インディー・ロック、メロディック・パンクなどを体現するサウンドで注目を集め、2022年にリリースした初のアルバム『ANORAK!』は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が2018年に設立した新進気鋭のミュージシャンが発表したアルバムに贈られる作品賞〈APPLE VINEGAR -Music Award-〉で特別賞を獲得。海外アクトのサポートやジャンルやシーンに問われないイベントに多数出演し続け、先日の〈FUJI ROCK FESTIVAL'24〉のROOKIE A GO-GOでも熱いライヴを披露した彼ら。そんな彼らが待望のセカンド・アルバム『Self-actualization and the ignorance and hesitation towards it』をついにリリース。これまでのツインクルでメロディアスなギター・サウンドはもちろん健在ながら、打ち込みトラックとの同期やオートチューンの使用などダンス・ミュージックへのアプローチに挑んだ作品に仕上がった。今回OTOTOYではウェブ媒体では初となる彼らへのインタヴューを公開。結成から曲作りについて、そして大きく音楽性を変化させた今作はどのようにして完成したのかをたっぷりと訊いた。そして! リリース後に行われるアジア、アメリカ・ツアーで販売が予定されている今作のカセット版を、OTOTOY限定でハイレゾ音源とセットで期間限定販売中です。インタヴューと併せてこちらもぜひチェックを! (編集部)
海外ツアーで発売予定のカセットテープ+ハイレゾ音源のセットをOTOTOY限定販売!
価格
3,500円(送料込、税込)
商品内容
・アルバムのハイレゾ音源データ (32bit/96kHz)
・アルバムのカセットテープ
・歌詞PDF(ハイレゾ音源データに付属いたします)
販売URL
https://ototoy.jp/_/default/i/425
※販売受付期間 : 2024年8月17日 (土) 12:00 から 9月30日 (月) 23:59まで。
※お申し込みが販売予定数に達した時点で受付期間内であっても販売を終了いたします。
※音源データはご購入いただいた時点でダウンロード可能となります。
※カセットテープの発送は9月以降を予定しております。時期が決まり次第お知らせいたします。
※配送元は東京より、レターパックでお送りします。
※配送先は日本国内に限ります。
※ご購入にはOTOTOYの会員登録が必要です。ログイン後にご購入いただくようお願いいたします。
大きく飛躍を遂げた、待望のセカンド・アルバム!(歌詞PDFデータ付属)
INTERVIEW : ANORAK!
インタヴュー : 高木理太、高田敏弘
文 : 高木理太
撮影 : 西村満
僕の良い悪いの判断が揺らぐと全部が崩れる
──バンドにとってウェブ媒体でのインタヴューは初になるかと思うのですが、まずは結成の経緯を教えてもらってもいいですか?
Tomoho Maeda (以下、Tomoho) : 元々は地元の三重県でドラムとしてバンドをやっていたんですけど、自分で曲を作ってギター・ヴォーカルのバンドをやりたいと思っていて。そこから音楽の趣味が合う先輩に東京でバンドをやらないかと誘われて2018年の9月に上京、そこで組んだのがANORAK!の始まりです。
──そこからいまの体制になるまではどうなっていったんでしょうか?
Tomoho : 2020年頭に、Kotaroの地元にある、岡山県の津山市〈Tsuayma K2〉というライヴハウスで初ライヴをやって。そのときはKotaroと、最初のベースとの3ピースで出ました。そこからコロナが流行りはじめてライヴができなくなったんですよね。それから、夏ごろにライヴ活動が再開したタイミングで最初のベースが抜けて、くだらない1日と「Split」をリリースしたあたりで、ベースのMikuru (Yamamoto) とギターで高値君 (くだらない1日) が加わりました。2022年の冬に高値君が抜けて、Crystal Katoが入り、いまの体制にという感じです。
──ファースト・アルバムのレコーディング・メンバーは誰だったんですか?
Tomoho : 高値君がまだいたので、Kato以外のメンバーと高値君ですね。アルバムが完パケしてから、レコ発やツアーがはじまったころにKatoが参加しました。高値君が抜けることが決まってから次の週にはライヴがあったんですけど。MikuruとKotaroと俺の3人で会議してたときに、当時Haikiに在籍してたKatoがチューニングが一緒なことに気付いて、翌日の夜すぐ電話しました。そしたらKatoが「いけるよ」っていってくれたので、音源とギターの動画を送って1週間で覚えてもらいました。全然違和感なく、手癖も近かったです。変則チューニングが一緒で運指のこととかで盛り上がって (笑)。最終的に面白いから入りたいって話をしてくれたので、加入してもらいました。
Crystal Kato (以下、Kato) : 入る前にもANORAK!を見たことがあったんですけど、そのときは「なんか粗いな」という印象でした。僕が入れば良くなる確信がありましたね。当時は音楽的な芯があるのがTomohoくらいだったと思ったんです。平たくいえば演奏が下手でしたね。でもいまは皆すごく上手くなっていて、僕もなにもいえない状態になりました (笑)。
──曲作りはどうやって進めてるんですか?
Tomoho : ファーストのときはGarageBandで全部作って、スタジオでそれをコピーするやりかたでした。80%作ってセッションして持ち帰って、僕が家で完成させることもあったんですけど。今回のアルバムは基本僕が全部作っていて、デモの段階でKatoに聴かせて、感想をもらってからそれを参考にしたり、しなかったりしてました。それと今回はGarageBandに加えて、Ableton Liveで打ち込みとかシンセベースとか電子音を入れてるので、そこの変化はありましたね。
──なるほど、バンド全体で曲を固めていくのではなく、トラックメイカー的な手法で曲作りをしてるんですね。Tomohoさんが持ってきた曲に対して、他のメンバーの皆さんはもっとこうしたら良くなるのにみたいな自分のエゴを出したくはならないですか?
Mikuru Yamamoto (以下、Mikuru) : 全くないです。Tomoho君がやりたいことをやってほしいですね。
Kotaro Nakamura (以下、Kotaro) : 信頼があるうえでやっているし、僕らが出す提案よりもデモがいいので、あんまりその必要はないですね。
Tomoho : Katoからはデモ通りにやりたくない気持ちが伝わってくるけどね。
Kato : 基本的には忠実じゃない?
Tomoho : 「ここのメロはこっちのほうがいいよ」とか結構言ってくるよ (笑)。でも全部僕のなかで完成しちゃってるので、受け入れる余地がないんですよね。僕の良い悪いの判断が揺らぐと全部が崩れるので、その時点で変えるのは絶対に有り得ないです。僕のセンスでやらないと意味がないので。そういう面で、ANORAK!はソロに近いですね。
──そういう手法はバンドだと珍しい気もするんですけど、どうなんでしょう?
Tomoho : HUSKING BEEの平林さんがやっている別バンドのThe Firewood Projectも、平林さんがDAWで作ったほぼ完成系のデモを元にしてやっているみたいで。程度の違いはあれど、割とそういうバンドは最近多いのかなと思います。
Kato : その分こっちは練習とかバンドの動きを考えるほうにリソースを割けるので、丁度いいですね。
──「ANORAK!はソロに近い」という言葉もありましたが、それでも “バンド” として活動する面白さってどこにありますか?
Tomoho : トラックメイカーみたいなソロで活動するっていうありかたをそもそも知らなくて。あくまで「バンドをやりたい」から始まっていて、もう形態として染み付いちゃってるんです。曲をバンドに持っていくと、デモから合わせる段階でプレイヤーの力量が求められるし、そこにそれぞれの個性が出るのが楽しいと思いますね。
──曲を作るときにメンバーの癖とかは意識しますか?
Tomoho : 意識はするんですけど、苦手ですね。出来上がってから無茶振りしてることに気付いたり。曲を作ってるときは曲のことしか考えてないというか、曲として完成するまでは自分の世界で作ってるので。メンバーがどう演奏するかは、スタジオに入ってから別の頭で考えてます。
──メンバーの皆さん的に、無茶振りされたなと思うときはありますか?
Mikuru : 今回のアルバムの曲をはじめ、新曲はどんどん難しくなってきてます。簡単な曲よりは弾き甲斐もあって楽しいですけれど。
Kotaro : 自分も無茶振りは結構あるので、めちゃめちゃドラムの個人練入りますね。新しいアルバムだとジャングル・ビートっぽい曲とか、自分の手癖にないものもあるので。
Tomoho : さっきあまりメンバーのことは考えてないって言いましたけれど、Mikuruはベースを始めてから3年くらいしか経っていないので、ギリギリ弾けないくらいの難しさにはしてます (笑)。