熊本発。3人のソングライターが織りなす透明感と強さ──Shiki

数多いるアーティストの中からOTOTOY編集部がライヴハウスやネットで出会い、ビビッときた、 これはもうオススメするしかない! というアーティストを取り上げるこのコーナー。 読んで、聴いて、そして何か感じるものがあれば、できるならライブを観にいってほしい。損はさせません。 そんな絶対の確信とともにお届けする、第5回。
第5回 : Shiki

今回紹介するのは熊本を拠点に活動するShiki。 バンドプロフィールで自らを〈女性ボーカルドラムレスバンド〉と紹介する。 メンバーは ギター、シンセサイザー、ヴォーカルのakari、 ギター、ヴォーカルのyusei maeda、 ベースのsugimotoの3人。 ライヴでもサポートのドラムスは入れず3人で演奏する。
以前にShikiも出演する巡音彩祭のイベントに行ったとき、たまたま会場で友人に出くわした。 彼はShikiを知らなかったのだが、それじゃあと一緒にShikiのライブを観た。 観終わって彼が一言、「さわやかですね。」
さわやかなサウンドに透明感のあるakariのヴォーカル。 それがShikiの最大の特徴と言ってよいだろう。 だが魅力はそれだけではない。 Shikiはメンバー3人全員が曲を作るのだが、明確に3つの色があるというわけではなく、それは連続した広がりとして機能している。 さっきまで透明で浮遊感にあふれていたakariのヴォーカルが、一点、力強さをみせる。 また別の曲では、ノイジーなギター・サウンドが襲いかかる。 実際に「KASUMI」のミュージック・ヴィデオはBIG MUFF (ファズ・ペダルの代名詞といってよいエフェクター)を踏むシーンからはじまる。 「BLUE WHALE」や「KASUMI」のアウトロを延々と演奏し続けるようなライブもぜひ観てみたい。 だってそれも最高に違いないから。
それでは、そんなShikiの成り立ちをメンバー3人に存分に語ってもらったメール・インタヴューをお届けします。
MAIL INTERVIEW : Shiki
Q. 音楽活動をはじめたきっかけを教えてください
akari (Vo., Gt., Syn.) :
小さい頃、父親の弾き語りに合わせてギターケースに乗って飛び跳ねながら踊っていた記憶があります(笑)。 ギターを弾きはじめられる環境はあったのですが、結局ギターを練習しはじめたのは中学卒業前でした。

yusei maeda (Vo., Gt.) :
大学でフットサルサークルがなかったので、なんとなく軽音楽部に入ったのがきっかけです。

sugimoto (Ba.) :
サッカーをケガでやめてことがきっかけです。 同時期にやめた友人がギターを買ったので、弦が少ないという理由でベースを買いました。

Q. 影響を受けたアーティストは?
akari : YUIが初めて好きになったアーティストでした。 小学生の頃から繰り返しずっと聴いては無意識に真似しては歌っていたので、今の声質の基盤になっているのは彼女だと思います。
yusei : 宇多田ヒカルやMr.children、RIP SLYMEなどをよく聞いていました。ギターサウンドは、凛として時雨のTKにとても影響を受けていて、よくコピーなどもやっていました。
sugimoto : Shikiの雰囲気とは違うとよく言われるのですが、ELLEGARDENが一番好きなバンドです。 メロディがポップで聴きやすいのと、(表面上だけであれば)コピーしやすいところが魅力だと思います。 コードワーク等、実はShikiの曲で影響を受けていることが多数あります。
Q. 自分で曲を作りはじめたきっかけは?
akari : 中学生の頃、作詞作曲したいという思いが出てきて、当時使用していたガラケーのメールの下書きに詞を書き溜めていました。 (下書き件数が増えだんだんと残り容量も少なくなり、下書きの古い順から消去されるのを知らずに書き溜めていった詞は全て消えました。)
yusei : 全く覚えていません(笑)。
sugimoto : 大学入学とともに「コピーバンドとかダサいからオリジナルやろうぜ!」と組んだものの、曲を作れる人間がいなかったため仕方なく。
Q. 自分以外のメンバーを紹介してください
akari : 前田さん(yusei maeda)にはじめて会ったのは高校生の頃です。 卒業した先輩に誘われて行ったライブで前田さんを見かけました。 その2〜3年後に再会しましたが、まさか一緒のバンドを組むとは思いませんでした。 初めて同じスタジオに入った時は、お友達になれるかなと不安でしたが、今の印象はギターと歌が上手な、ツボが浅いお兄さんですね。 でもギターと歌の上手さだけでなく、彼が作詞作曲する楽曲はどれも良く、色々な面で尊敬しています。 あと動物が大好きな前田さんなので、可愛い写真や動画があれば送ってあげてください。
yusei : 杉本(sugimoto)とは元々別のバンドでよく対バンしていて、いい曲作るな~と思って見ていました。 バンドを組んだ今はかなり強情な性格だなと思う事がありますが(笑)、それが逆に僕やakariとマッチしていていいバランスが取れていると感じています。 それとShikiの映像やデザインは概ね杉本がやっていて、デザインができない他二人にとってはとても有難い存在だと思っています。 酔って川に落ちる等アホさも満点なので愛してやってもらえたら嬉しいです。
sugimoto : 多分、ステージに立って歌っているakariと機材車で移動中のakariは別の人なんだと思います。
Q. それぞれの出会いとバンド結成の経緯は?
sugimoto : Shiki結成の前に私がOVERALLというバンドをやっていて、yusei maedaの前のバンドとよく対バンしていました。 その頃からなので、maeda氏とは5年(?)くらいの付き合いになります。
sugimoto : akariとは、akariが留学前の高校卒業ライブでOVERALLの曲をコピーしてくれた縁で、SNSだけ繋がっていました。 akariの留学中にツイッターがきっかけで、僕がバックトラック、akariが歌詞と歌メロをつけた「BLUE WHALE」という曲を共作することになりました。 その後akariが帰国したタイミングで、yusei maedaも入れて3人でスタジオに入って遊んで、なんとなく結成、という形になりました。
(編集部: sugimotoさんとakariさんの共作のきっかけとなったツイートがこちらです!)
Q. 最初は「歌詞を」と言っていた共作で、歌メロもakariさんが作ることになった経緯は?
akari : 最初は歌詞だけ作る予定だったのですが、偶然ぴったりはまったフレーズを見つけたときに、 続きもこのフレーズを作ったときと同じ感覚で完成させたい! と思い、歌メロもつくっていいですか? と聞いた記憶があります。 初めての共作は思入れのある経験になりましたし、 その後Shikiを結成し、楽曲は杉本さん、歌詞と歌メロを私が担当する楽曲も増えました。 ひとりで作詞作曲をしない分、完成した楽曲に自分とは違う表情があるみたいでとても面白いです。
Q. バンドの音楽性を言葉であらわすとしたら?
sugimoto : 決して「盛り上がる系」ではなく、誰かの日常、ベッドルームの中で特別な音楽になりうるものだと思っています。

Q. 3人全員が曲を作られるのですが、バンドとしての曲作りはどのようにされていますか?
akari : それぞれ自分の部屋でDTMソフトを使い作曲をしています。 ある程度曲が完成したらデータ共有し、そこから担当している楽器や歌をそれぞれ録ってデータで送ります。 一人が作詞作曲まで完成させるときもあれば、作曲、作詞と歌メロの担当を分けて完成させるときもあります。 最終的にはミックスを担当してくれる前田さんにデータ共有し、その後作品が完成します。
Q. 他のメンバーが作る曲についてどう思いますか?
akari : 杉本さんの作る曲はとにかくサウンドが幅広い。 ギターロックの「KASUMI」から、私がポエトリーリーディングに挑戦した「Awaku, Aoi feat.野崎りこん」。 次はどんな曲を作ってくるのか楽しみだなといつも思っています。 杉本さんが作曲を、歌のメロディラインと歌詞を私が担当する際、以前私が弾き語りで作ったフレーズがキーを変えずにそのままピッタリはまったりとシンクロ率が高く、彼の作る音楽には結成当初から音楽的運命を感じています。
yusei : akariはとても丁寧に作曲をしているという印象が強いです。 編曲やアレンジなどを引き継いで行う際に曲のプロジェクトを共有してもらうんですが、とてもシンプルなトラック数でまとまっていて、無駄な音がなく、効率よくトラックを組んでるなと感じます。 音の選び方についても他二人のメンバーにない特殊な感性を持っているので、アレンジがとても楽しいです。
sugimoto : yusei maedaの曲は、いつも謎だなーと思います。 どこからこんなにクオリティが高くかつ遊び心がある曲を作ってくるのか。 maeda氏の前のバンドはギターロック的な要素が強かったのですが、今はシティポップ的なというか、語彙力のない私から言わせると、おしゃれな曲を作ってくるなー、という印象です。
Q. そんな3人が集まってShikiとして楽曲を制作するとき、なにを一番大切にしていますか?
sugimoto : Shikiとしてという考えとは逆に、他のメンバーの事を意識せず、それぞれが自分らしいセンスを出していく事が重要だと思っています。 1人では作り得ない音が作れるのはとても楽しいです。
Q. これまでの音楽活動で一番嬉しかった反響は?
akari : 嬉しかった反響は本当にたくさんあるのですが、特に印象に残っているのは、学生の子が(自身の)初めてのライブハウスでShikiを見てくれて、「CDで聴くのとライブで聴くのは全然違う、音の圧が心臓まで届くようでまだドキドキしている」と言ってくれたことです。 私自身も初めてライブハウスに行って演奏を聴いたときに同じようなことを思ったので、その子の初めてのきっかけになれたことがとても嬉しかったです。

Q. アルバム『Season +2』はどんな作品?
sugimoto : おもちゃ箱みたいな作品だと思います。いろんなものが詰まっていて、一つ一つのジャンルは違っていても、ドキドキさせてくれる作品になっています。
Q. 自主制作だった1stアルバム『Season』を全国流通盤『Season +2』としてリリースした経緯を教えてください
sugimoto : 自主制作盤を2018年12月に出したときのレコ発イベントに、巡音彩祭の社長が見に来てくださいました。 イベント終了後その場で声をかけてくださって、その後わざわざ熊本に来てくださったり、福岡で話をした後、 「この人なら信頼できるし、楽しいことができそう」と思い、全国流通盤『Season +2』としてリリースすることができました。 『Season +2』ではマスタリング・エンジニアにkensei ogata氏を迎え、音もかなり広がりが増えました。 ぜひ聴いてもらいたいです!
Q. 目下のバンドとしての夢を教えてください
yusei : 大きいフェスなどに出て、もっと広く認知されたいと思っています。 近い目標だと、(開催は未定ですが)ワンマンライブに挑戦し成功させたいです。
Q. 1年後のあなたたちはどうなっているでしょうか?
yusei : 次の1年が終わる時どうなっているか全く想像ができませんが、2019年を振り返ると1年間とは思えないほどの濃ゆい1年間を過ごしました。 次の1年は更に飛躍できる年になると確信しています。
Q. 最後に、1年後のあなたたちへメッセージを
「健康、思いやり、いつまでも学び続ける姿勢を忘れずに。」
(Some photos courtesy of Keita SENOH)
MUSIC VIDEO
LIVE SCHEDULE
2020年2月1日(土) @ 福岡天神 Early Believers
『 n b i r 』 -Motor Pool Side 1st EP“L.A.K.E” release tour 栞をはさんで-
2020年2月8日(土) @ 周南 rise
『ヘラジカ誕生祭』
2020年2月20日(木) @ 熊本 Django
『クレナズム 2nd mini album release tour “in your fragrance”』
2020年2月21日(金) @ 鹿児島 SR hall
『今宵君と』
2020年2月24日(月・祝) @ 水戸 club SONIC mito
『FLASHBACK』
2020年3月14日(土) @ 熊本 サーキット・イベント
『HAPPY JACK 2020』
2020年4月4日(土) @ 渋谷 サーキット・イベント
『SYNCHRONICITY2020 - 15th Anniversary!! -』
(詳細はアーティストHP、twitter等で)
PROFILE
Shiki

sugimoto (Ba.) / akari (Vo., Gt., Syn.) / yusei maeda (Vo., Gt.)
熊本発。女性ボーカルドラムレスバンド。 それぞれがバンドや弾き語りで活動している3人が集まり2017年に結成。 DTMソフトを中心としたエレクトロニカ、シューゲイズ、シティポップ、ヒップホップなど様々なジャンルを取り入れた宅録同期音源と 生の楽器とを組み合わせながら、熊本を拠点にライブ活動を行なっている。 明るいような、どこか暗いような、不思議な魅力を持つ旋律に透明感のある歌声が合わさり、 独特な世界観が作り上げられている。
Official Site : https://www.shiki-kumamoto.com/
Twitter : https://twitter.com/shiki_kumamoto
Instagram : https://www.instagram.com/kumamoto.shiki/
Shikiの作品