Gi Gi Giraffe──軽やかに奏でられる宅録インディ / ブルース・ロックは誠実さから生まれる

数多いるアーティストの中からOTOTOY編集部がライヴハウスやネットで出会い、ビビッときた、 これはもうオススメするしかない! というアーティストを取り上げるこのコーナー。 読んで、聴いて、そして何か感じるものがあれば、できるならライブを観にいってほしい。損はさせません。 そんな絶対の確信とともにお届けする、第6回。
第6回 : Gi Gi Giraffe

今回紹介するバンドは、東京を中心に活動する、Gi Gi Giraffe。
「東京のライブハウスシーンには良質なインディロックが潜んでいる」ということは昨年のNo Busesやbetcover!!のアルバムを聴いてもわかることで、今回取り上げるGi Gi Giraffeも間違いなくそのうちの一組と言える。
1stアルバム『Gi Gi Giraffe』リリース時(2016年)には、MONO NO AWAREやドミコらと活動を共にしていた彼らが、ここ2年ほどの活動休止状態を経て今年1月に新EP『Home Made Works Ⅱ』をリリース。インディ・ポップ、インディ・ロック、ブルースをローファイなサウンドで再生産し、その上を動き回る掴みどころのないヴォーカルが浮遊感を生むという独自のスタイルを6曲で魅せる、EPのミニマムの良さを改めて感じるような作品だった。3月にはEPのリリース・パーティーも予定しており、今年からまた精力的な活動を続けていくであろうGi Gi Giraffeのブレインである山本にメール・インタビューを行った。
ジャンルのクロスオーバーが激しいいま、どんな音楽も誰かが表現しているという時代に「音楽を作ること」自体について考えながら作られた音は決して浮ついていない。自身のルーツととことん向き合いながらオリジナリティを模索する姿勢に、新たな音楽の誕生の予感を感じるのは私だけではないはず。音楽って最高だな、と毎日思ってしまうあなたに響く音がここにある。
1週間限定:3月4日まで『Home Made WorksⅡ』から2曲を無料配信中!
MAIL INTERVIEW : Yamaguchi (Gi Gi Giraffe)
Q. 音楽活動をはじめたきっかけを教えてください
自分が中学2年(2004年)のときに父親の影響でギターをはじめて、そのときに同時に古いMTRを譲り受けたのがきっかけです。音を録る作業という意味で、そのときから宅録には触れていましたね。学校をサボり、引きこもっていた中3の頃に親がスッと部屋においていったザ・ビートルズの『アビイ・ロード』を聞いた時に衝撃を受けて、“洋楽”を意識し始めたのだと思います。
曲作りがはじまったのはおそらく高校一年で、当時親のつてで簡易的なマンツーマンの英語教室のようなものに通っていました。僕が初めての自作曲を聞かせたのはその英語教室のオーストラリア人の先生で、彼も昔“The Promise”という80年代のニュー・ロマンティックというジャンルのバンドでベースを弾いていました。もし彼がその曲を仮にお世辞でも褒めていなければ僕の作曲活動はここまで続いてなかったと思います(笑)。
ちなみに初めての自作曲のタイトルは“Never Wanna Come Around”で、その先生が当時考えてくれたバンド名が“The Rocket Monkeys”だったと記憶してます。“Never Wanna Come Around”はThe Vinesの“Outtathaway”という曲を自分なりにパクったもので、ガレージロック的な曲ってAとCのパワーコードを使えば簡単にできるなと思って作りました(笑) 音楽理論とか、コードのマイナーやメジャーを気にしなくても良いんだって勇気をもらって。その曲に出会わなければ、楽曲制作はしていなかっただろうと思います。
Q. Gi Gi Giraffe結成から現在までの経歴を教えてください
実は“Gi Gi Giraffe”という名義は2012年から使ってたんですよね。その頃は青学ビートルズ訳詞研究会の先輩=現ドラムの上村くんとツーピースバンドをやっていました。日本語詞でオリジナルをやって、たまに高円寺UFO CLUBに出て。そのライヴ映像の撮影を同じくビートルズ訳詞研究会の後輩=現ベースの奥泉にお願いしたこともありました。彼はその内カナダにホームステイしにいっちゃうのですが、その間に僕が歌詞をもともとやりたかった英詞に改めて、ひっそりとSoundCloudに新曲をアップロードしてたんです。 それを現地で彼が知って聴いたところ、以前よりも気に入ってくれて。帰国してセッションを数回試して、すぐに3人で正式に結成したのが2015年だったと思います。
2012〜2015年の間にできたデモの数は約60曲にまで及んでいました。中でもSoundCloudにあげた音源は僕が一週間毎日作っていたもので、その内6曲はそのまま2015年の自主EP 『Home Made Works』に収録されています。それから2016年にやっと全国流通版『Gi Gi Giraffe』をリリースし、マイペースにライヴ活動しながらいまに至るような感じです。

Q. 大きく影響を受けた1枚は何ですか
強いて言えば、The Black Keysの『The Big Come Up』でしょうか。初期はあんなローファイなことやってながら、今になってかなり売れてる?じゃないですか。まさに僕にとってバンドの道標って感じですね。"ブルースロック"みたいな渋い音楽やって食ってけるってのは夢があるって、GLIM SPANKYの亀本さんも言ってたような(笑)
Q. ライヴをするにあたって、理想とするアーティスト・バンドは誰ですか
昔からあまり変わらなくて、ジャック・ホワイトが理想です。大所帯のバンドが好きなんでしょうね。人数が多くてバンドのまとまりがあんまりない感じ?小綺麗にまとまってるバンドっていっぱいいるような気がするし。もしできるなら一度10人くらいでライヴしたいですね。
Q. 活動を続けて行く中でバンドの理想の姿に変化は生まれましたか?
作曲面でいうと、もっともっとベタでわかりやすいものを作りたくなってきました。たとえば、歌詞で「Yeah!」とか歌ったり(笑)。曲もバンドらしくどんどんシンプルな方向に向かいたいな、と。
具体的な特徴としては、ひとつのキーの上でラップのようなものを歌いつづけてるブルージー・ジャジーなサウンド。いわゆる“ラグモップ”という90年代のBeckやGラブっぽい音楽ですね。2000年代でいうとBig Stridesっていうバンドがかなり好きで、再結成して欲しいんですよね(絶対ないけど)。
知名度がもうちょっと上がって、ここが潮時かなと思ったときに英詞もやめますよ、きっと。TENDOUJIもそのうち日本語歌うんじゃないかな(笑)?
Q. 活動休止の間に音楽への姿勢など変化はありましたか?
実質的には活動休止というわけでもないんですよね。ただただ曲作りが進まなくて。極端ですけど、なんていうか“音楽をすること”自体がもう古いことなのかなって錯覚するようになってしまって、その強迫観念がある限りなかなかDTMに手が出なかったんです。音楽自体もYoutubeでしかチェックしなくなってしまいましたね。今は誰の影響を受けるでもなく、手探りで音源づくりに没頭するしかないです。
2020年は恐らく、ただただ遅れを取り戻すのに丸々費やしそうな気がします。
Q. ここ数年でよく聴いている音楽は何ですか
2000年代の古き良きロックンロール・リバイバル系のアルバムを聴き返したりします。2020年に聴くザ・フラテリスのファースト・アルバム(『Costello Music』)最高じゃないですか?(笑)仮に、いまあれと全く同じようなアルバムを作っても、あんまり受けないんだろうなってのも悲しいけど(泣)。
少なくとも作曲活動のモチベーションって今時のものをたくさん聴き漁るより、昔から自分を奮い立たせる曲を繰り返し聴くことで上がるというか。ここ数年曲作りが休止状態になってたのって、それが原因だと思うんですよね。情報過多なせいでSNSのTLに流れてくるいろんな音楽を5〜15秒くらい聴いてを繰り返してたら「あれ、なんか音楽ってつまんねぇなw」っていう錯覚に陥ってしまって。どんな種類の音楽も誰もが実現できるようになってきていて、実際自分が作りたい音楽ってないんですよね。2017〜19年あたりにそこに気がついたので、「自分の役割はもう終わったんだ」って無意識に自己暗示しはじめるようになって、曲作りがストップしちゃいました。だから制作期間はツイッターのアプリ消してます。

Q. ジャンルをクロスオーバーしつつもGi Gi Giraffeらしさを生んでいるものは何だと考えますか?
宅録がやはり大きいんだと思います。僕って、アコギ一本と歌だけで音楽作れないんですよね。歌モノって一生作れないんですよ、作りたくても。歌が上手ければ、ミスチルのコピバンでもやって終わってたかもな(笑)
わかる人にはわかると思うんですけど、エリオットスミスみたいなアーティストって、何かある一定の時間を置くとめちゃめちゃ聴きたくなるじゃないですか?ああいう感じを目指してて…… 大げさな言い方すると“Gi Gi Giraffe”っていう一つのジャンルを作りたんですよね。一目置かれたいというか。そういうアーティストって結構ソロの人が多くて、おまけに宅録家っぽい人が多い。
Gi Gi Giraffeたらしめてるものは、宅録とバンドという2つの顔を持っているところだと思います。
Q. 『HOME MADE WORKS Ⅱ』はどのような作品に仕上がりましたか?
とてもバランス良くできたと思います。『Home Made Works』(2015)や『Gi Gi Giraffe』(2016)と比べてもいちばん気に入ってますね。曲数が少ないといい作品になると思いました。
リード曲2つ“Life Up”、“Cynical Beat”ができたのって3~4年前なんですよね。“Angry Folks”は唯一去年作った曲だけど、メインのリフ自体は12年前にできたんですよ。もう曲作りの全盛期は終わったなアって(笑)。だから今後は上記で言ったようなシンプルな曲ばかりになると思います。
Q. リリースイベントに出演される他のバンドは日本のインディ・ロック・シーンにおいて、これからもっと重要な役割を担うであろうバンドばかりですが、共にシーンを盛り上げていくようなムードができているのでしょうか。また、どんなイベントになると思いますか?
どのバンドもかなり名を上げてますよね。シーンを盛り上げるムードはここから作っていくことになると思います。だから今回のリリパは結構大事になるんじゃないかと。いまはとにかくそれに向けたバンドの練習に励むしかなくて、当日がただただ待ち遠しいというしかないです。
Q. バンドとしての短期的、長期的目標をそれぞれ教えてください
短期的には、月ごとに少しづつサブスクで新曲を晒せたらと思います。 長期的には、もう少し名前を知ってもらって、ワンマン・ライヴでソールドアウトとかしてみたいです。
MUSIC VIDEO
PROFILE
Gi Gi Giraffe

2012年、Gt/Vo山本とDr上村のツーピースバンドとして結成。2015年から現体制での活動をスタートする。
2015年には1stEP『Home Made Works』、2016年には全国流通盤『Gi Gi Giraffe』をリリース。フジロック2016年度FUJI ROCKルーキー出場を果たす。
2017,18年の実質的な活動休止を経て2020年EP『Home Made Work Ⅱ』をリリース。
Twitter : https://twitter.com/gigigiraffeband?s=20
ホームページ : https://gigigiraffeband.tumblr.com/
リリース・イベント

3/22(日)
<Home Made Works Ⅱ リリースパーティ>
ADV 2,500円/DAY 3,000円
OP 18:00/ST 18:30
出演
w/No Buses
betcover!!
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