小樽発、plums──せめぎ合う3つの凛とした“メロディ”

数多いるアーティストの中からOTOTOY編集部がライヴハウスやネットで出会い、ビビッときた、 これはもうオススメするしかない! というアーティストを取り上げるこのコーナー。 ぜひ読んで、聴いて、そしていつか世界が平穏を取り戻したらライヴを観にいってほしい。 そんな願いとともにお届けする、第9回。
第9回 : plums

今回紹介するのは小樽を拠点に活動するplums。シューゲイザーという言葉とともに紹介されることの多いバンドだが、より適切に表現すれば、きのこ帝国が耕した大地に育まれたバンドのひとつ、となるだろう。作詞作曲を担うギター・ヴォーカルの吉田涼花自身もインタヴュー内で、きのこ帝国の影響について語っている。
聴いてまず特徴的なのは吉田によるキャッチーな歌メロであり、そこには良い意味でのJ-POPさがある。その歌を支えるのが、縦横無尽に動きまわる細川のベースと印象的なフレーズ/音色をもつ佐藤のギターだ。ベースとギター、このふたつの“メロディ”がポップな歌メロに絡みつきそして時には襲いかかる。これこそがバンドとしてのplumsの醍醐味だろう。
2013年に高校の軽音楽部で3ピースバンドとして結成。後にギター佐藤が加入し、以来4ピース体制で活動を続ける。現在残るオリジナルメンバーは吉田のみだが、実は現サポートのドラムは“街中で奇跡的に再会した”オリジナルメンバーだという。ライヴでのそれぞれの佇まいも印象的な3人(4人)。
今回はそんな各メンバーの音楽的バックグラウンドや昨年12月にリリースされたファースト・ミニアルバム『paranoid』について存分に語ってもらった。前2作のEPと較べて飛躍的に表現の幅が拡がっている今作がどのようにして作られ、そしてリリース後に彼女たちは何を思うのか。ライヴでこそぜひ聴いてほしいplumsのサウンドにまたどこかの会場で会えるよう、心からの願いとともに、このインタヴューをお届けします。
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MAIL INTERVIEW : plums
Q. 音楽活動をはじめたきっかけを教えてください
吉田涼花 (Vo., Gt.) :
父親がもともとバンドマンで家にはつねに楽器がある状態で自然な流れでギターに出会い、父親に教わりながらコードを弾くようになりました。

佐藤達基 (Gt.) :
小学生のときに家で流れていたCSのランキング番組で偶然見たストレイテナーの“TRAIN”という曲のMVをみて「バンドってかっこいいな」と思い、中学に入ってから父親に初心者セットを買ってもらいました。音楽活動といえるかわかりませんが、そこからギターを弾きはじめました。

細川葵 (Ba., Cho.) :
母親がピアノ講師だったこともあり幼少期からピアノは弾いていました。高校2年の学祭で恋人のライヴをはじめて見に行ったとき、「ベースってなんてかっこいいんだ。いつか自分も弾けるようになりたい」と感動し、大学2年から軽音系サークルに入りベースをはじめ、バンド活動をするようになりました。

Q. 影響を受けたアーティストは?
吉田 : 一番大きいのはきのこ帝国です。感情を乗せやすいサウンドと歌詞の生々しさにはとても影響を受けています。
佐藤 : ギタリストという点では長岡亮介さんです。最低限の音しか鳴らさずに聴いた人の記憶にガッツリ爪痕を残せるのは本当に尊敬していますし、自分もジャンルは違えどそうなりたいと思っています。
細川 : はじめて好きになったベーシストはナガイケジョーさん(Scoobie Do)です。グルーヴィーなベースライン、演奏が大好きです。音楽としてはベースをはじめたころは相対性理論、東京事変、最近だとKIRINJI、空気公団、キセル、土岐麻子といった、おしゃれさ、繊細さ、緻密さがある音楽が好きで、自分でベースラインを考えるときも参考にしています。
Q. 自分にとって特に大切な1枚は?
吉田 : きのこ帝国の『ロンググッドバイ』
佐藤 : ペトロールズの『capture 419』
Q. メンバーの出会いとバンド結成の経緯は?
吉田 : はじめは高校の軽音楽部で、私(吉田)と男性ふたりのスリーピースでチャットモンチーなどのコピーをしていました。思い立って私が曲を作り、そこからオリジナルバンドとして活動していくことになり、活動中に出会い仲良くなった佐藤が加わりました。あるとき男性ふたりが脱退してサポートを迎えて活動をしていくなか、ライヴ活動を経て出会った細川が正式加入しました。そして軽音楽部時代のオリジナル・メンバーであるドラムの栗山との奇跡的な再会を経てサポートをお願いする形になり、現体制で活動しています。

Q. 自分以外のメンバーを紹介してください
吉田 :
佐藤 = 頼りない父親
細川 = しっかり者の酔っ払い
佐藤 :
吉田 = 酒イキリ
細川 = 酒メンヘラ
細川 :
吉田 = センスあふれるヤベえ女
佐藤 = 涼花(吉田)の保護者
Q. バンド名の由来は?
吉田 : 軽音楽部時代のバンドが「午後のアセロラレモン」という名前で周囲から“アセロラ”と呼ばれていました。もっとビッグになりたいという意味を込めて、アセロラよりもすこし実が大きいプラムを引用して「plums」となりました。
Q. バンドの音楽性を言葉であらわすとしたら?
“独自の視点から描く、日常に零れる「愛」のかたち。北の匂いを孕んだ、激情と揺らぎを行き来するシューゲイズ、ドリームポップサウンド。凛と立つ、澄んだ蒼白の歌声。――そのすべてを届ける、北海道は小樽よりplumsと申します。”
Q. 小樽のバンドシーンについて教えてください
佐藤 : そもそも今活動している小樽のバンドが少なく、さらにみんなやっているジャンルが違うので、その土地の特徴というものはあまりないのかもしれません。少し前に「札幌でライヴをするのも大事だけど、地方でたくさんライヴをやってそこで得たモノや好きになってくれた人達を小樽まで引っ張るのが今できることだ」とカメレオン7 (小樽のバンド)のヴォーカル武蔵さんが言っていたことを、この回答を考えているときに思い出しました。
Q. 吉田さんが曲を作りはじめたきっかけは?
吉田 : きっかけは、初期メンバーの男性ふたりは中学生のころから楽器を演奏していたので上手だったのですが、私は軽音楽部に入ってからギターを弾きはじめたので足を引っ張ることがたくさんあり、そのふたりに見捨てられないように「私にしかできないことをしなきゃ」という思いです。
Q. バンドとしての曲作りはどのようにしていますか?
吉田 : 私が弾き語りでメンバーに曲を渡して、すこしばかりの要望を伝えて、あとは自由に各々のパートを考えてもらい、それをスタジオであわせて形作っていく感じです。

Q. 『paranoid』の制作にあたってのテーマは?
吉田 : テーマには「被害妄想」的な意味が込められています。よくこの言葉は攻撃的な意味として使われるかと思いますが、私個人としては「自分の世界が確立している」という意味合いが強くて、格好良いと感じました。自分が見た景色、感じた思い、触れた感触など、すべて自分の目線で描いた世界観を感じ取ってもらえたら嬉しいです。
Q. 『paranoid』で核となっている曲は?
吉田 : リード曲でもある『白昼夢』は大きな存在だと思います。ひとりで居るけど相手の存在のおかげでふたり分の心強さを感じられたり、ふたりで居るのにまるでひとりぼっちなような、両極端の感情をこの曲に詰めています。自分の感情を揺さぶる存在とはとても大きなもので、その存在との時間を細部まで言葉に残したいという一心で書きました。
Q. 『paranoid』の曲作りでのこれまでとの違いは?
吉田 : 今までは負の感情が曲になることがほとんどだったのですが、“白昼夢”や“栞”など、今回は幸せな気持ちで曲を書くことができました。私にとって憎しみや悲しさは心に残りやすいのですが、嬉しかったことは自然と消化されてしまう気がして。このアルバムで幸せを形に残すことができて、とても嬉しいです。
Q. 『paranoid』の制作でのこれまでとの違いは?
細川 : 前作『あいまい - EP』はライヴで何回も繰り返しやっていた曲をそのまま収録した感じでしたが、『paranoid』はレコーディング直前にできた曲が多く、ライヴで披露せずにレコーディングに向かったこともありました。スタジオで一回合わせただけの曲もあります。イメージは共有しつついい意味で曲が固定されていなかったので、音作りもフレーズも偏見なく色々試して、純粋に良いと思ったテイクを採用しようという意識がありました。今までエフェクターを踏んでなかった箇所で試しに踏んでみたらこっちの方がいいじゃん!という風に、下準備はもちろんした上で、現場で試行錯誤することが多かったと思います。

Q. 『paranoid』の制作を通じてバンドとして成長した点は?
吉田 : 表現の幅が広がったこと。それは曲作りにおいてもサウンド的な意味合いでも。いままではバーッと轟音を鳴らしたり少ないコードで曲を作っていましたが、自然とメリハリがつけられるようになったのかなと思います。例えば“白昼夢”で感情に合わせて強弱を工夫したり、展開に合わせてコードが増えたり、“今朝”みたいに音数を極端に減らしてみたり。plumsというバンドは何でもできるぞ! と自分自身で思えるようになったのは成長のひとつかなと。
あと変化という意味からすると、制作に携わってくれる人が増えた! スタッフはじめ、レコーディングやミックス、撮影など、今までの活動を経て、協力してくれる人が集まって、本当にまわりの人に恵まれたバンドだなと感じました。感謝しかないです。
Q. 札幌、東京とリリースツアーをして印象に残ったこと、思いを新たにしたことは?
吉田 : plumsを見にきてくれる人が自分の想像以上に居てくれたこと。遠征のアナウンスをしてからも反響があってとても嬉しかったです。上手い言葉が見つかりませんが、もう自己満足の域を越えたのだと実感しました。自分たちがやりたいからやるというのはもちろんのこと、そこだけではなく、待っていてくれる人たちを思うと奮起します。ちゃらんぽらんなままじゃ駄目だなと。これからも頑張り続けるので、引き続き応援よろしくお願いします!

Q. これまでの音楽活動で一番嬉しかった反響は?
吉田 : 「北海道にこんな怪物がいたなんて!」と言ってくださったことがとても嬉しかったです。
佐藤 : YouTubeでもサブスクでも偶然でも、plumsの音楽を知ったという旨のSNSの投稿を見るとすごくありがたいなぁと思います。あと、もうバンドをやっていない学生時代の友達や後輩が聴いてくれたりしてるのは結構グッとくるものがあります。
細川 : 東京遠征での話ですが、たまたまライヴを見てくださった方がplumsよかったからと次の日のライヴにも来てくださったり、また間をあけて遠征に行った際も見に来てくださったり、リピーターの方が結構いて本当にいいと思ってもらえてるんだなと実感して嬉しくなりました。遠い土地の方にもサブスク等を通してSNSで反響があったりするのも嬉しいです。
Q. 目下のバンドとしての夢を教えてください
吉田 : 色々な地域でライヴをしたいです。サーキット・イベントだったり。 plumsの音楽がたくさんの人に聴いてもらえることが今の幸せなので、とにかく広まって欲しい! です。 そのためにもたくさん良い曲を産んで、アプローチしていけたらなと思います。

Q. 『paranoid』をご自身の言葉で紹介してください
吉田 : 自分の世界の中で迷子になっても、自分の世界をうまく持てず何かに縋(すが)ってしまっても、すべて許されすべて愛しく感じられる作品だと思っています。 リスナーの方々が自分をもっと好きになれるように、これからの互いの生活に心地良い風が吹きますように。
佐藤 : レコーディングでは、はじめて曲によってギターやアンプを替えたりしてみたので音の違いも楽しんでほしいです。
細川 : 進化した吉田が書いた曲は今まで出した音源の曲とまた違ったものになっていて、その違いをぜひ一聴してほしいです。そしてその曲達をメンバーみんなで最高の状態にもっていけたと思います。今もたまに通勤時に聴くのですが「すごくいいアルバムだな…?!」と自分でも驚いてしまいます。
Q. 1年後のあなたたちはどうなっているでしょうか?
吉田 : 最高になってる。
佐藤 : 超最高になってるかもネ!
細川 : もちろん最高でしょ~。
Q. 最後に、1年後のあなたたちへメッセージを
吉田 : 「たくさん良い曲を産み、たくさんの人に褒められ、たくさんの人を救ってください。」
佐藤 : 「シンセ弾けるようになった? あと衝動的に変なもの買うのやめてください。」
細川 : 「好きな音楽を好きなようにやって好きに生きるんだよ!」

(Some photos courtesy of 市川実果)
MUSIC VIDEO
LIVE SCHEDULE
Twitter、オフィシャル・サイト等をご覧ください。
PROFILE
plums
吉田涼花 (Vo.,Gt.) / 佐藤達基 (Gt.) / 細川葵 (Ba.,Cho.)

2013年小樽にて結成。現体制へ。Vo. 吉田涼花が独自の視点から描く、日常に零れる「愛」のかたち。北の匂いを孕んだ、激情と揺らぎを行き来するシューゲイズ、ドリームポップサウンド。凛と立つ、澄んだ蒼白の歌声。――そのすべてを届ける、北海道は小樽よりplums。
Official Site : https://www.plums-otaru.com/
Twitter : https://twitter.com/plums_band
Instagram : https://www.instagram.com/plums_band/
plumsの作品
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