2021/10/22 18:45

三方幸せな必然的邂逅──バンドとして深化したSACOYANSの2年間

宅録アーティスト・SSWのSACOYANは、宅録で音源を制作、インターネットで発表、ライヴではアコギで弾き語りという活動を2010年ころから断続的におこない、熱狂的な支持を得てきた。彼女が2019年10月に結成した4人組バンドがSACOYANSだ。今回、彼女とメンバーとの出会い、バンド結成、2枚のアルバム制作、SACOYANの歌がSACOYANSの楽曲になる過程などについて、4人にたっぷりと話をきいた。SACOYANSは11月のライヴ後、SACOYANの産休・育休により、しばらく活動を休止する。濃密な2年間を振り返る貴重なタイミングでのインタビューをお届けします。

衝撃のファーストから1年、セカンド・アルバム『Gasoline Rainbow』をハイレゾで

INTERVIEW : SACOYANS

昨年リリースされたSACOYANSのファースト・アルバム『Yomosue』は、これまでのSACOYANファンとロック・ファンの双方に大きな驚きと喜びをあたえた。以前からのSACOYANファンたちは、バンドというかたちでの活動開始に驚き、待ち焦がれていた彼女との再会を喜んだ。かたやオルタナ、シューゲイザー、ギター・ロック、グランジといったロックのファンたちは、懐かしくて新しいバンドの登場を驚きをもって迎え、美しいメロディ、印象的なヴォーカル、ギター・ベース・コーラスによる重層的なハーモニー、ヴォーカルと互いに空間を補い合うドラム、音圧……そういったものを高く評価した。
 昨冬のリリース・ツアーでふたつのグループが一堂に会する。東京のライヴは、人数が制限されているとはいえ、受付開始後数分で予約が埋まったという。終演後ライヴハウスのスタッフの方が「お客さんがみんなすっごいいい顔で帰っていく」と言っていた。どちらのファンも満足し、幸せな気持ちで帰るライヴだったのだろう。
 そしてファンと同様に、いやおそらくはそれ以上に、バンドを楽しみ、バンドである喜びを噛みしめているのがSACOYANSの4人だ。結成に至る道筋は奇跡のようでもあり、なるべくしてなったようでもある。豊穣な福岡ロック・シーンの土壌が培った果実であることも確かだろう。SACOYANファンとロック・ファンとSACOYANS、3者すべてに幸福と希望をもたらした道程をインタヴューでたどる。

インタヴュー・文 : 高田敏弘
写真 : chiyori

UTEROのお客さんに「職場にSACOYANがいた!」って言われて

──おひとりずつ自己紹介をお願いします。

SACOYAN : ヴォーカル、ギターのSACOYANです。これまでは宅録で音源を作って発表していました。いままでちゃんとバンドを組んだことがなく、今回よいタイミングがあり、心機一転、SACOYANSというバンドをはじめました。

Yamamoto Takeshi (以下、Takeshi。インタヴュー中メンバーからは “たけちゃん” と呼ばれる) : SACOYANSではギター、他ではベースを弾くことも多いです。他にやっているバンドはマクマナマンとかSEA LEVELとか。あとソロでもすこし。

みわこ : ドラムのみわこです。他にもいくつかバンドに参加していますが、おもに活動しているのはmiu mauです。

原尻 (メンバーからは “店長” と呼ばれる) : ベースの原尻です。以前は百蚊というバンドをやっていましたが、いまは活動休止中です。ライヴハウス福岡〈UTERO〉の店長をしています。

──SACOYANには宅録アーティスト・SSWとして長い活動歴がありますが、今回のインタヴューはバンドがはじまるところから伺います。きっかけは東京出身のSACOYANの福岡移住ですね。

SACOYAN : 2011年に東京から福岡に引っ越しました。それで福岡に来てはじめての弾き語りのライヴでUTEROに出させてもらって。

原尻 : UTEROによく来るお客さんから「自分の職場にSACOYANがいた! ぜひライヴに誘ってほしい」と言われたんです。俺はそのときSACOYANのことを知らなかったけど、YouTubeで聴いたらめちゃめちゃ良くて、すぐオファーしたのがはじまりです。

Takeshi : 俺はたしかその最初のライヴから観てます。店長から「今日は来たほうがいいよ」って連絡がきて、じゃあ行こうかなって。それが2012年。そのあともSACOYANのライヴは何回か観ています。

みわこ : 私も弾き語りのライヴをけっこう観たと思う。

SACOYAN : バンド結成前はおもに弾き語りでUTEROに出させてもらっていて、あとは自宅から配信をしたり。でもライヴは10本、15本やったかどうかくらいですね。

ファースト・アルバムが出た日のちょうど1年前

──転機は2019年です。

SACOYAN : 生活の状況が変わって時間的な自由が増えたんです。宅録は自分の好きなタイミングでやっていたぶん、目標も立てづらくて、だらだらとやってましたが、一方でまわりのバンドマンを見ていて、決まりごとがあるなかで音楽をやることへの憧れもありました。これまでそうした音楽活動ができなかったけど、環境が変わってできるようになって。それで、「バンドやってみない?」って何人かに声を掛けたなかに、たけちゃんがいた。

(左→右) Takeshi, SACOYAN, みわこ, 原尻

──Takeshiさんに声をかけた理由は?

SACOYAN : 私は一時期ライヴを休んでいたんですが、2016年に〈MOOSIC LAB 2016〉でグランプリをとったのをきっかけに(『マグネチック』北原和明×SACOYAN )、またちょっとだけライヴをするようになって。マクマナマンと対バンしたとき、たけちゃんが、「バンドやるんだったらベースどう?」とか「マクマナマンをバックにSACOYANが歌ってみない?」みたいに言ってくれたんです。そのときは緊張して断っちゃったんですけど。でも、たけちゃんは協力してくれそうだなって、そのときから思っていました。

Takeshi : SACOYANの弾き語りのライヴはすごかったし、バンドでやったらどうなるんだろうって、ずっと思ってました。SACOYANからDMが来て、ふたりで焼き鳥屋にいって。その場でやるって決めました。それがたまたまファースト・アルバムが出た日のちょうど1年前。2019年の9月16日に連絡が来て、焼き鳥屋に行って、1年後にアルバムが出た。

SACOYANS : すごいスピード感だよね。

──つぎに誘ったのは、みわこさんです。

SACOYAN : みわこさんって言ったのは、たけちゃん。たけちゃんは違うバンドをみわこさんと一緒にやっていて。その焼き鳥屋で、たけちゃんと私ですごく酔っ払って、夜遅くに、みわこさんに電話した。

みわこ : もうベッドで寝てたんですけど電話がかかってきて。その前にSACOYANに弾き語りのライヴを観ていたときも、その後ろで自分がドラム叩くならこんな感じかな、って思い描いたりしたこともあったので、嬉しくて。その場で即答したかは覚えてないけど……

Takeshi : やるって言いましたよ。

みわこ : 即答だったみたいです(笑)。そのあとドキドキしちゃってしばらく眠れなかったです。

SACOYAN : 私は人見知りなのでライヴがおわったら普段はすぐに帰っちゃうんですけど、2016年ころ、みわこさんにむちゃくちゃ絡んだ記憶があって。私が「バンドやるんだったら叩いてくれる?」みたいなことを言ったら、「私、叩きたい!」って返してくれたのを、すごく覚えています。

──そして原尻さん。

Takeshi : 最初、俺はベースで、違うひとがギターで入る予定だったんだけど、その話がなくなり、じゃあ俺がギター弾いてみるかなって。これまでしっかり歌があるバンドでギターを弾いたことがなかったので、どうなるかなって思ったけど、SACOYANの曲のイメージはなんとなく分かる気がしたし。やってみたら、けっこう上手くはまった。

SACOYAN : それでベースが残った。UTEROの2階のバーで、店長がいつも座る椅子があるんですけど、ちょうどその目の前で私たち3人が「ベースどうしようか」って話をしてました。たけちゃんとみわこさんが「店長にしよう」って言って、私も店長でいいや、って。そのときは店長のベース聴いたことなかったんですけど(笑)。店長と目があって「ベース弾いてみない?」って。

原尻 : もともとSACOYANには「バンドでやりなよ」と、ずっと言ってました。まさか自分がやるとは思ってなかったけど。たけちゃんとみわこさんがすごい手練れなことは知ってるので、荷が重いなって遠慮気味で。そしたらその日そのまま、UTEROの隣りのカレー屋〈加藤小判〉に連れていかれて、酒飲まされて。

SACOYAN : みんなで飲んで「店長やろうよ、店長やろうよ」って。店長が「俺やるよ!」って言った瞬間の写真撮ったりしました。楽しかった。2019年10月です。

この記事の筆者
高田 敏弘 (takadat)

Board Director。東京都出身。技術担当。編集部では“音楽好き・ファン目線を忘れない”担当(自称)。

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