2022/11/04 21:00

downtって何者なんだ!?──この3人だから出せる “美しい音” が鳴る瞬間

downt

幸福なことに素敵な音楽は枚挙にいとまなく我々の耳を訪れる。だが数年に一度、良し悪しを超えた心のざわめきをもたらすアーティストが不意にあらわれる。昨年のdowntが私にとってそれだった。突如リリースされたデビュー作にしてセルフ・タイトル・アルバムの『downt』。ぽつぽつと流れてくるライヴの映像、ライヴを観たひとびとの感嘆の声。12月にようやくライヴを観て、感じた心のざわめきに間違いはないことは確信できた。しかし1年が経ち、2作目がリリースされてもなお疑問は解けない。端正な音の構成。音がデカくて音が良くて演奏が良い。埋もれず浮かび立つヴォーカルに流麗な歌メロ。はたしてこのバンドは、この音楽は、どうやって生まれたのだろう?

downtの最新作『SAKANA e.p.』をロスレスで

INTERVIEW : downt

2021年3月に結成されたdowntが同年10月に最初の作品である『downt』をリリースしたとき、私を含めて多くのひとが「downtって何者なんだ!?」と騒然としていたことを覚えている。昨年から今年にかけては、ストイック過ぎるほどのライヴ活動を重ねて、現場でも大きな波紋をもたらし、さらに今年の〈FUJI ROCK FESTIVAL '22〉に “ROOKIE A GO-GO” 枠で出演したことで、彼らの名前はより広く知られるようになった。現在リリースされているのは今年6月に出た『SAKANA e.p.』を含めた2作品のみ (この2作品を同時収録したLP『ANTHOLOGY』もリリースされている)。彼らはいったい、どんな精神性を持って活動する、どんなひとたちなのか? メンバー全員に話をきいた。

インタヴュー・文 : 峯岸利恵
写真 : 斎藤大嗣

この3人でどんな音が出せるのか

──downt結成に至るまでの流れは、どういうものだったんですか?

富樫 (Gt.&Vo.) : 私はもともと京都に住んでいたんですけど、バンドをやりたくて上京したんです。自分で作った楽曲のデモをSNSやバンドメンバー募集サイトに投稿したら、いろんなかたからメッセージをいだたいて。そのなかでいちばん文章がきちんとしていたのが河合さんで……

河合 (Ba.) : かなり適当に送った気が。

富樫 (Gt.&Vo.)

富樫 : 送られてきたなかでは、いちばんちゃんとしていた記憶があります。そこから河合さんとスタジオに入ったんですけど、このひとは断然レベルが違うなと思いましたし、一緒にやりたい! とお願いしました。そこからドラムのかたとも何人かスタジオで合わせてみたんですけど、あまりしっくりこなくて。それで河合さんに、ロバートさんを紹介してもらいました。

河合 : ロバートとは以前1回スタジオに入ったときに、envyやsans visage、killieとかの話で盛り上がったから、一緒に激情ハードコアバンドをやろうって話をしてた。出音が好きだったのと、人間性とか、3人のバランスや関係性がよいかなと思って、声をかけた。

──河合さんは富樫さんのどこにビビっときて、一緒にバンドを組むことにしたんですか?

河合 : はじめてデモを聴いたときやスタジオで合わせたときには、特に何も。バンド組むの、はじめてなんだろうなと思ったし。ただ音の取捨選択が良いなとは思った。最初に連絡したときに、俺が別でやっているバンドの音源を送ったら、やりましょうって返信がきた。

河合 (Ba.)

富樫 : そうそう。そのときも河合さんは自分のやってるバンドの名前とか一切言わずに音源だけ送ってきて。本当に正体不明だったんですけど、その音源を聴いた瞬間にもう、あまりにカッコよくて感動しちゃったんですよ。自分がバンドとして鳴らしたい音にジャストだったからとかそういうわけではなく、なんかよくわからないけどカッコいいなって思いました。

河合 : 俺も同じことを思った。アンサンブルも構成もぜんぜんまとまりがないけど、聴けるなって感じたのを覚えてる。パンクでカッコいいなと。

ロバート (Dr.) : 僕の最初の印象も、同じくカッコいいなと思いました。一緒にスタジオに入ったときは本当に初対面でしたし、富樫の第一印象も “声が小さいひと” で、そのときは正直どういうひとなのかも全然わからなかったので。でも、楽曲がカッコよかったし、直感に導かれるまま一緒にやることにしました。

ロバート (Dr.)

──そうした経緯を経て2021年3月にバンドを結成し、同年10月にはファースト・フル・アルバム『downt』をリリースされていますが、制作当時は作品として「こういうふうにしたい」といったイメージはあったんですか?

河合 : まったくなかったし、あえてそういう話はしなかった。富樫がバンドを組むのがはじめてだったこともあるし、自分たちはどんな音を出せるのかを知りたくて作りはじめた音源。ファーストの楽曲は、富樫が「こういうものをやりたい」というイメージのもとで作ったメイン・リフとメロディを共有して、スタジオで合わせつつ、DTMでアレンジや構成を固めて、スタジオで文句を言ったりしながら作った。楽曲のクオリティにこだわるよりも世界観というか空気感を重要視した気がする。曲数的にはEPサイズなんだけど、ファースト・アルバムは事務所が力を入れてプロモーションをしてくれるから絶好の機会がくるまで出さないほうがいいっていう話を聞いて、ムカついたからアルバムって表記にした。

富樫 : そのぶん、2作目の『SAKANA e.p.』は結構こだわったよね。

河合 : そうだね。作りかたも変えた。セッションして合わせたものに歌を乗せたり、俺がオケを作ったものに歌を入れてもらったり、いろんな手法で。何度も言ってるけどバンドの作曲をギター・ヴォーカルの閃き待ち頼りにするのは嫌だし。

──富樫さんは、バンド活動として作品を作り上げていくことがはじめてだったと思うんですけど、どうでした?

富樫 : 『downt』制作時はバンド活動に生活のすべてを懸けていたので、私生活とのバランスがうまく取れなくて、仕事もせずにのめり込んでいました。なので、バンドってこんなに時間をかけてやるものなんだ! と思ったし、アレンジをこだわればこだわるほど、良いものになっていくということを知りました。

ロバート : 僕自身もdowntでの活動は新鮮でした。スリー・ピースという形態や、少ない音数の楽曲だということもあり、ここではいままで自分がやってこなかったドラムの叩きかたをしなければならなかったんですよね。ベースやギターを引き立てる役割を果たさなければならないというところに、カルチャーショックのようなものを感じました。なので、結構苦しんだ思い出があります。

河合 : 少ない音数を目指したわけではなくて。俺はドラムのことはよくわかないから、叩きかたを変えればもしかしたらなんとかなったかもしれない箇所も、とりあえず削りまくった。ギターも。いらねえだろその音って。だからどんどん音が少なくなっていくっていう。でも俺がひとりで仕切るみたいになるのは嫌だから、ふたりがなにを好きで、なにをしたらテンションが上がるのかを模索しながら作ってる。そこはバンドのおもしろいところだなと。

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