2022/11/04 21:00

バンドってこういうものなのか

──制作でもかなり逼迫した状況だったように思いますが、ライヴ活動をかなりタイトにされていましたよね。2021年末には月に17、18本近くライヴを行っていましたし。そこは大丈夫だったんですか?

河合 : 普通に無理だった。

富樫 : バンドってこういうものなのか……って思っていました。よくバンドマンは、お金も時間もないみたいな話を聞くけど、こんな忙しかったら、そりゃそうだよなと。最近はやっとバランスの取りかたがわかってきたけど、当時は本当にキツかった。でも、あれがあったおかげで経験値がかなり上がったと感じているので、まったく後悔してないです。

河合 : ライヴを断るのがもったいなかったというのはあった。やればやるほど3人のバランスが良くなっていったし、富樫も回数を重ねるだけでプレイが良くなっていくのを感じてたから。

──ストイックなライヴ活動を経たことで、『SAKANA e.p.』の制作には良い影響がもたらされた実感はあります?

河合 : 逆に作れなくなった。ひとりの頭の中で鳴っているものを具現化するだけで良かったものが、バンドのグルーヴ感というか、ライヴでの感覚、音の実体験が染み付いていって、イメージと体感が乖離するというか。

富樫 : そうですね。なので最近は、イントロなどの楽曲の一部だけを自分で作って、あとはメンバーに投げることが多くなりました。バンドで活動していく中で、ひとりで作ることの限界を知ってしまったんですよね。バンドで練っていくからこその楽しさもあるし、逆に時間がかかり過ぎてしまうという部分もあるんですけど、私はみんなで作っていくほうが好きです。

河合 :『SAKANA e.p.』はスケジュールもタイトだった。最後の曲 (“I couldn't have done this without you.”) に至ってはレコーディング当日にドラム・パターン変えたり。ほかの楽曲もアレンジは相当悩んだ。とくに “Fis tel”。

富樫 : “Fis tel” は最初のデモからかなり変わっていますね。

ロバート : ライヴ動画を観るとぜんぜん違うしね。

──『downt』と『SAKANA e.p.』を聴き比べると、『SAKANA e.p.』のほうがまとまりがあるというか、最初から最後までの流れがより構築されているように思うんですよね。楽曲単位として捉えられるというよりは、全曲でひとつの作品だという意識のあらわれというか。そういった “作品として世に出すことへの美学” はあるんですか?

河合 : いや、別にない。

富樫 : 曲を作るときはテーマやコンセプトを持たせたりはしていないですし、流れとしての意識は特にはしていないです。でも、まとめあげるときには、いままでやってきたことがきちんと踏襲されているものになるといいな、とは思っていました。

河合 : 音に説得力と一貫性を持たせたいとは思っているけど。

──downtがもたらす説得力というのは、現時点ではなんだと思いますか?

河合 : 全員が気持ちよく、かつ、美しい音を出せているかは気にかけている。けど、誰だってそう思ってるだろうし、特別なことじゃない。不特定多数になにかを伝えようとして音楽を作っているわけでもないし、俺らの音は3人のなかで完結していると思っているので、バンドの中だけで納得できるかの話。

──美しさを求めることと、歪みや音の隙間を作ることは同義ですか?

河合 : 俺はギターやベースをアンプに繋いでボリュームをMAXにして、ドラムも力いっぱい叩いて、要はでかい音を出せればいいと思ってる。でかい音は美しい。アンプのボリューブ・ノブを上げるだけでなく、音の隙間を作ったりクリーン・パートを入れたりすることでも、対比的にでかく聴こえる。なんならそっちのほうがでかく感じる。なので同じだと思う。

──音圧などの話ではなく?

河合 : 音の圧と音のでかさは違うと思ってる。音圧はグルーヴ。一体感による音圧は欲しい。

──最小限の音数のなかで、それができたら最高に気持ち良いということ?

河合 : 引き算が正義とは思ってない。ドラムがめちゃくちゃ音数叩いても、ギターがずっと早弾きしてても、ハマってさえいれば良い。

downt 「minamisenju」 Music Video
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